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(17) 原始星フレアの数値シミュレーション
太陽フレアと同様の磁場による活動現象は、太陽だけでなく他の天体でも頻繁に 起きていることが知られています。他の天体のフレアのメカニズムを調べる際には, 多波長で詳細な観測のある太陽フレアの理論モデルが基礎になり、一方、違う天体の フレアを調べることで、太陽フレアの観測に基づいた理論モデルを検証したり、 太陽では現れなかった新しい物理を発見することができます。 従って、太陽と他の天体の活動現象の研究は互いに相補的であり、両者の協力は 今後一層重要性を増すと考えられます。 現在フレアを起こす天体として知られているものには、低質量晩期型星、近接連星系、 T-タウリ型星、原始星などがありますが、本研究では、特に生まれたばかりの星である 原始星に注目しました。原始星におけるフレア活動は、90年代に大きく進歩した 人工衛星からのX線観測で発見されました。原始星フレアは太陽フレアとよく似た 光度曲線を示しますが、その温度は太陽フレアの10倍( 1億度)、 エネルギーは10000倍( erg)にもなることが知られています。 そのことから、原始星フレアは中心星と周囲の降着円盤をつなぐ巨大な磁気ループで 起きるというモデルが提唱されていますが、空間分解した観測のできない原始星で それを確かめるには、モデルから予測されるX線光度曲線とスペクトルを 数値シミュレーションによって求める必要があります。 太陽フレアの数値シミュレーションと観測の比較から、フレア時のX線放射には 熱伝導と彩層の蒸発によるプラズマの供給が重要であることが分かっています。 本研究ではこの概念を拡張して、降着円盤の蒸発によるプラズマの供給を考慮した 流体数値シミュレーションを行い、その結果をもとにX線衛星ASCAで観測される X線スペクトルを計算しました。下図にモデルの概念図と計算したX線スペクトルの 例を示します。またシミュレーションから、フレアの強さによっては 降着円盤(=原始惑星系円盤)のフレアループにつながっている部分が全て蒸発して しまうことを発見しました。このことは、星や惑星系の形成過程において 磁気フレアが重要な役割を果たしていることを示唆しています。
(磯部 洋明 記)
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