(16) 2001年4月10日のフレア
フレア(太陽表面爆発)が起こると、非熱的粒子がコロナ中で加速され彩層や光
球を足元とする閉じた磁気ループに注入されます。そしてこの磁気ループに沿っ
て高速で伝搬し、やがて磁気ループの足元で彩層に突入します。この彩層突入
は、硬X線や電波だけでなく 線でも輝点(H カーネル)となっ
て現われます。また、非熱的粒子の速度が非常に速くほぼ同時に両足元で彩層
突入が起こるため、同じ磁気ループによりつながれた2つの足元では非常に良
く似たライトカーブを示します。 線では硬X線、電波より高空間分解
能での観測が可能ですので、非熱的粒子の彩層突入の場所を特定するのに非常
に有効です。
私達は、2001年4月10日に活動領域NOAA 9415で発生した大規模なフレアを、京
都大学花山天文台ザートリウス望遠鏡を用い、 線で観測しました。
この観測は カーネルの場所やその時間変化をターゲットにして行わ
れ、通常より短い露出時間に調整されました。そのためフレア初期の
カーネルの時間変化といった、フレアリボンの内部構造を極めて詳
細に調べることができました。このフレアは、磁場極性の異なる細長い明部
(フレアリボン)が2つ並んで現われる、典型的なtwo-ribon flareの構造をして
いました。そしてこのフレアリボン内には多数の カーネルが見られ
ました。私はフレアリボンを細かいメッシュに分け、そのメッシュ毎のライト
カーブを描き、2つのリボンのそれぞれから相関の高いポイントの組を選び出
しました(図1)。更に、相関の高い各組について非熱的粒子の彩層突入の時刻
を調べました。個々のカーネルの像光、つまりライトカーブの立上りは、まさ
に非熱的粒子の際層突入によるものと考えられます。この時刻とその組の位置
を順に調べることで、いつどこでエネルギー解放が起こったかを絞り込むこと
ができました。
|
Figure:
図1. 左: ザートリウス望遠鏡で観測されたフレアリボン、
中: フレアリボンを分割するメッシュ、濃いグレーは地場の極性が正、
明るいグレーは負であることを示す、
右: 相関の高い組を線で結んだもの。
|
(浅井 歩 記)
|