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(18) コロナループの Alfvén Wave 加熱

太陽コロナは数100万度にも達する高温プラズマで、光球に比べ2桁も高い この高温を実現する加熱のメカニズムが太陽物理学の大きな謎となっています。 また、コロナは磁気圧優勢のプラズマであることが知られているので、加熱は 磁場と関連しているはずです。そこで現在有力な考え方として、磁場を伝わる 波動、Alfven waveによってエネルギーをコロナへ運ぶ[Alfven wave説]、 小さなフレア(磁場のつなぎかえで起きるエネルギー解放現象)が頻繁に起こること でコロナを加熱する[微小フレア説]の2つがあります。

ところで、最近の研究、Kudoh&Shibata(1999)によると、光球上の ランダムな1km/sの運動が、光球からコロナへと抜ける磁束管の足下を 捩じることでtorsional Alfven waveを発生させれば、静穏コロナを加熱 させるのに十分なエネルギーがAlfven waveによってコロナに伝えられる ことがわかりました。そこで今回、Alfven waveによるコロナ加熱を実現 すべく、Kudoh & Shibata(1999)と同様の手法を10万kmの浮上磁気ループに応用し、 それに放射冷却、熱伝導も加えた1.5次元MHDシミュレーションを行いました。

その結果、初期に1万度であったプラズマを100万度以上の温度まで加熱することに 成功しました(右図)。加熱の仕組みは、torsional Alfven wave(非圧縮の横波)の 非線型効果によって圧縮波(縦波)が励起され、shock waveに成長し、その shock heatingで加熱するというもので、shock waveはループの両側から絶えず 伝播して断続的にプラズマを加熱し、それと熱伝導、放射冷却がつりあって 準定常状態が得られました。

さらに、このシミュレーション結果をTRACEの171 フィルターで 観るとどのように観測されるか計算すると、コロナループの頂上について、 shockによる断続的な加熱を反映する激しい時間変動を示しました(下左図)。 これはまるで小さなフレアが頻発しているかのような振る舞いで、この増光の 統計をとってみると、その規模と数とが、power-law型の分布を示し(下右図)、 まさにフレアが従っている頻度分布と同様のものです。

微小フレア説は現在、観測されるフレア全てを足し合わせてもコロナを加熱する エネルギーに足りないことから、さらに小さな、今の観測機器では見つからない くらいのフレアを想定する段階にありますが、本研究によれば、将来そのような フレアが観測されても、もはや Alfven wave 加熱と区別することができない ことになります。

今回、Alfven wave による加熱に成功しましたが、このモデルが正しいか 判断するには、次世代のさらなる高精度な観測(Solar-B)によるAlfven waveの 直接検出等が待たれます。


(森安 聡嗣 記)



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