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(15) フィラメント噴出の加速と宇宙天気予報学への応用

太陽ダークフィラメント噴出の三次元速度解析は、 リムプロミネンスに比べて、周辺磁場や他波長観測データと の比較が容易かつ正確に行なえ、1)加速に対する周辺磁場や磁場 以外の力の影響 2)加速方向と周辺磁場強度分布との比較 をすることが出来ま す。これらの結果はそのまま、地球に飛来するCMEを予測する宇宙天気 予報学に直接応用することが可能です。私達は、中心波長及びウ イングでも太陽全面像をパトロール撮像している飛騨天文台フレア監視望遠鏡 (FMT)の特性を活かし、フィラメントの速度解析を行ない上記2点の課題の解明を 目指しました。

まず、磁場の力の影響についてです。従 来からフィラメントはその加速の大きさによって2つの種類があると考えられて いました。一つは、太陽のコロナ下部において非常に強い加速を受け、数分程度 で1000 程の速度をえる''Spray Prominence''。もう一 つは、緩やかな加速を受けながら、数時間程度かけて同程度の速度を 得る''Eruptive Prominence''です。これらは、その加速の大きさや見え方があまりに も違うため、それぞれ違う現象と考えられていました。しかし、私達が35例のフィ ラメント消失現象の速度解析を行なったところ、これらの加速は両極端に分かれ ているのではなく、中程度の加速を示すイベントが多く存在すること、また加速 の時間スケールは、周辺光球磁場強度を用いて導出したアルフヴェン波伝播時間 スケールに良く一致することが分かりました。

磁場以外の力の影響としては、重力の影響が一番考えられています。磁場の力に 比べて、非常に小さいことは確かなのですが、自由落下運動の時間スケールより も長い時間かけて加速される''Eruptive Prominence''タイプの噴出では、無視 できないと考えられて来ました。フィラメントは噴出時に、そのプラズマの一部 ないし大部分が光球に落下することで質量を失います。私達は、フィラメントが 失う量を概算し、その結果、フィラメントがより多くの量を失うと、加速が大きくな る傾向があることを突き止めました。

フィラメントの噴出方向ですが、フィラメントの速度解析から得られた噴出方向 を周辺光球磁場強度分布とを比較することにより、フィラメントは磁場の弱い方 向へと噴出するという結果を得ました。私達はこれを更に発展させ、光球磁場デー タだけを用いて、フィラメント噴出方向を度程の精度で予測するモデル を作ることに成功しました。

(森本 太郎 記)


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