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(14) 局所相関追尾法によるラ・パルマ天文台観測画像の解析
太陽光球を可視光で観測すると、米粒のような構造が一面に見られます。 その一つ一つが太陽外層におけるガスの対流細胞であり、粒状斑と呼ばれています。 また、粒状斑の背後には、さらに大きな背景対流構造が存在します。 しかしながら、背景対流構造は、粒状斑と異なり、はっきりした明暗構造を持たないため、 光球画像を見ただけでは判別できません。 直接見ることのできない背景対流構造ですが、その流れに乗って、 粒状斑が少しづつ移動します。 その動きを追跡することにより、背景対流構造を導き出すことができます。 図1は、解析に用いた太陽光球の画像で、2.8万km四方の範囲を示しています。 白い縁取りで強調した黒い構造は小黒点ですが、 小黒点以外の場所には粒状斑が一様に分布していることが分ります。
こうした画像を、局所相関追尾法という方法を用いて 解析することにより得られた背景対流構造が、図2の矢印として表わされています。 また、図2の濃淡模様の白い部分は、背景対流構造のうち、 太陽内部からガスが湧き出している部分を表わしています。 こうして得られた背景対流構造と他の観測結果を比較することにより、 磁場が太陽内部から湧き出している場所に、対流の湧き出し構造が 存在することが分ってきました。 粒状斑はたいへん小さな構造のため、詳細に研究するためには大きな望遠鏡による 精度の高い観測が要求されます。 今回は、スペインのラ・パルマ天文台で観測された太陽画像を用いた 解析結果を紹介しましたが、同様の研究を、 飛騨天文台のドームレス太陽望遠鏡を用いて行なっています。 太陽面上での様々な活動現象の元となる磁場構造を理解する上で、 大型望遠鏡によるこうした研究は、今後ますます重要になってきています。
(高津 裕通 記)
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