前ページ | 目次 | 次ページ | ||||||
(13) Geotailによるリコネクション
近年、磁気リコネクションは太陽フレアの発生やこれに伴う粒子加速、加熱機構 に重要な役割を果たしていることが徐々に明らかになって来ていますが、 リコネクションにおけるプラズマダイナミクスはまだ未解明の部分があります。 通常宇宙空間ではプラズマは磁場と共に動くという状況(磁力線凍結)が成り 立っていますが、リコネクションの起こる領域(X-line)では磁場が消失するため、 磁力線の凍結が破られ、非磁化プラズマの運動が重要になって来ると考えられます。 地球の磁気圏においてはサブストーム時に生じる磁気リコネクションの過程で 実際にプラズマの磁力線凍結が破れる状況がGeotail衛星により直接観測されており、 その結果はリコネクションのダイナミクスの解明につながると期待されています。 プラズマを構成するイオン(主にプロトン)と電子ではその大きな質量比のために 先にイオンのみの磁力線凍結が破れ、その相対運動からこの領域特有の電流が 生じます。 図1は磁気圏観測衛星Geotailで観測された、この領域での電流を示したものです。 上図は磁気圏尾部を横切る電流です。この領域では電子が磁気中性面から離れた 両側で強い電流が流れていることが明らかになりました。 また下図はX-lineに出入りする電流の観測頻度を示したものです。 プラズマシートの中央ではX-lineに流れ込む電流が、境界付近ではX-lineから 出ていく電流が観測されることが明らかになりました。 理論的にリコネクション領域ではイオンのみ、先に磁力線凍結が破れるため、 電子は磁力線とともに先に加速を受けて先に流れ出し、X-line向きの電流が生じます。 そのために電荷の中性が崩れ、プラズマシート-ローブ境界付近で電子がX-lineへと 流れ込み、外向きの電流を作ります。このように電子が図3で示すように電流の ループ構造を作っていることが予測されていましたが、 これが観測的に初めて定量的に示されました。 これらは強いHall電流の効果の存在を示唆し、この効果によりプラズマシート 内側向きの電場を生じて上図での電子による電流を作ると考えられます。 このような電場の形成は一般化されたオームの法則、特にリコネクション電場の 発生メカニズムの解明、評価の上で重要であると考えられています。
(浅野 芳洋 記)
| ||||||||
前ページ | 目次 | 次ページ | PDFファイル(クリックして下さい) |