(8) モートン波とEIT波のメカニズム
コロナ質量放出(CME)とは、コロナ中の物質が惑星間空間に放出される
現象のことで、それに伴い、浮上磁場、フィラメント噴出、フレア、
II型電波バースト、モートン波、EIT波などのダイナミックな現象が
多く観測されています。
モートン波とは、 線で彩層を観測した時にフレアに伴って発生する
波動現象のことで、コロナ中を伝搬する磁気流体衝撃波の彩層との交点を見ている
と考えられています。
一方EIT波とは、フレアやCMEに伴ってコロナ中を波動のような構造が伝搬する現象で、
太陽観測衛星SOHOのEIT(極紫外線望遠鏡)という装置で発見されました。
EIT波はモートン波と同じ衝撃波のコロナ部分を見ている
とする解釈がありますが、その速度は一般にモートン波の1/3から1/2程度であり、
二つの波が同じ現象であるかどうかすらよく分かっていません。
本研究では、CMEに伴う波動現象の数値シミュレーションを行い、
モートン波とEIT波の発生メカニズムを調べました。
数値シミュレーションの結果から、CMEの噴出に伴い、CMEの前面に
衝撃波が形成されることが分かりました。衝撃波面は彩層と交わるところで
彩層を擾乱し、その速度はファーストモードの磁気音速よりも少し大きい程度
となっています。これがモートン波として で観測されていると
考えられます。左図は、彩層付近の密度変化を表しています。0点がCMEの
発生位置で、付近から高速で伝わる擾乱がモートン波
に相当します。
またモートン波の後方(左側)に、モートン波の1/3程の速度で伝わる構造が見えます。
この構造は前面の密度の高い領域と、その背後の密度の低い領域からなり、
観測されているEIT波の構造ともよく似ていることから、この構造がEIT波に
相当すると考えられます。この構造の伝播は本当の意味の「波動」では
なく、みかけ上密度の変化が伝播しているものです。
つまり、CMEの上昇にともなって磁力線が次々と開いた構造になり、
その擾乱がCME上部から磁力線を伝わって足もとまで伝播した
結果、彩層付近の密度の変化が外側に広がって見えているものです
(右図参照)。
CME上部から足もとまで擾乱が伝播するのに時間がかかるため、
EIT波の速度はモートン波より遅くなっています。
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Figure:
図1. 左:彩層付近での密度分布の変化。時間ごとにに上側にずらして
プロットしてある。
右:C点からD点に伝わるEIT波の概念図。
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(陳 鵬飛 記)
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