『恒星物理学』 太陽は非常に近くにあるため、明るくかつ詳細に観測することができますが、 本質的には夜空に見える星となんら変わることはありません。そして実は、 太陽というのは恒星の中ではむしろ非常におとなしい部類の星と言えます。 太陽フレアでは最大でも太陽全体の明るさの1%くらいしか 変化が起こりませんが、フレア星と呼ばれる軽くて暗い星々では、 星全体の明るさが100倍以上にもなるようなフレアが実際に観測されます。 しかし、なぜ星自体の明るさに比べてそんなに大規模な爆発が起こりうるのか 全くわかっていません。これらの謎に、太陽研究での知識を元に、 高速分光観測という通常の恒星観測では行われてこなかった手法で 解明に挑んでいます。 また、ブラックホールX線連星や激変星の観測も活発に行っています。 これらの天体はコンパクト星(これがブラックホールや中性子星の場合は X線連星、白色矮星の場合は激変星)と普通の星が お互いの重力で引かれあってお互いの周りを回っている連星系です。 こういう天体では、普通の星の表面のガスが剥がされて コンパクト星の方に流れ込んでいきます。しかし いきなりコンパクト星に落ち込むのではなく、一旦コンパクト星の周りで 降着円盤と呼ばれる円盤を形成し、その中で回転しながら ゆっくりと落ち込んでいくことになります(図1)。 ![]() この降着円盤中で多様な活動性があり、 様々なエネルギー規模・タイムスケールで明るさの変化を もたらします。また、X線連星では高速のジェットが噴き出します。 図2は、2007年4月に爆発した矮新星(激変星の一種) てんびん座GWという星の明るさの変化を表した図です。 緑の線が通常の明るさですが、そこから最大で9等ほど、 つまり1000倍以上も明るくなりました。 この爆発の最中の詳しい観測では、可視光で 数秒から数時間のタイムスケールでの光度変化も観測されています。 ![]() 他にもガンマ線バースト現象や様々な原因で起こる活動現象の 観測的な研究を、我々附属天文台、京大理学部宇宙物理学教室や 広島大学宇宙科学センターなどを中心に、 プロ・アマチュアを含む世界中を網羅する連絡ネットワーク(VSNET) で連携しながら進めています。 また将来の超大型望遠鏡建造を見据えた 分割鏡による日本初の光赤外線望遠鏡を、 京大宇宙物理学教室、国立天文台、名古屋大学 および民間の(株)ナノオプトニクス研究所と産学連携で 岡山に作る計画を進めています(図3)。 この3.8m新技術望遠鏡が完成したあかつきには、 高速測光・分光観測を武器に、これらの天体の激しい活動性の究明で 新たな地平を切り拓くことになるでしょう。 ![]() http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/Kyoto3m/ より。 |