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(11) CME衝突現象と複雑な地磁気擾乱の関係について

Coronal Mass Ejection(以下CME)とはフレアやプロミネンス噴出など の活動現象を伴って、太陽の外層大気が惑星間空間へ放出される現象を いいます。CMEの発生とともにX線や高エネルギー粒子などが生成 されるため、地磁気の擾乱やオーロラ活動として地球環境にも 大いに影響を与えます。しかし観測データが太陽及び地球近傍に 限られていることから、惑星間空間中の物理状態や、CMEと惑星間空間 擾乱(ICME)の内部構造の対応などは未だに特定されていません。

最近、速度の異なる複数のCMEが太陽近傍で衝突し、CMEの形状が変化 する現象が報告されました(Gopalswamy et al. 2001)。そのなかでも 2000年6月6日に発生したCME衝突現象は非常に興味深く、約350 km s-1の低速CME1に後から約800km sの高速CME2 が衝突する様子がSOHO衛星のLASCO/C3望遠鏡によって観測されて います(図1参照)。このCME衝突現象に関連するICMEは 約3日後にACE衛星によって観測され、その擾乱中には特徴的な2つの 高密度領域(IP1)が存在していました(図2a参照)。そこで CMEの発生源である活動領域を調べると、CME1はフレアAによる プロミネンスの噴出(EP1)、CME2はフレアCに関連している ことが解りました。しかしそれ以外にもフレアCの約1時間前に発生した フレアBにより、EP1と構造が似ているプロミネンス噴出(EP2)が存在 していたこと、SOHO衛星のEIT望遠鏡の観測から、LASCO/C3の 観測領域以前にEP2とCME2が衝突していることが解りました。 つまり一連の衝突現象には、2つの低速プロミネンス噴出と高速のCMEが 関与していました。

上記の観測結果から太陽近傍での物理量を求め、それをもとに CME衝突現象の一次元MHDシミュレーションを行い、ACE衛星の 観測データと比較しました。その結果は大局的に見て同様の時間的変化 をしていることから、ACE衛星のデータに見られた2つの高密度領域は CME2に先行する2つのプロミネンス物質であると推測できま した(図2参照)。今まで太陽近傍での構造をICME中で対応できた 報告は非常に少ないため、この研究は貴重な結果となりました。さらに 太陽近傍の初期条件のみを利用した簡単な一次元のシミュレーションが ICMEの構造を表せることが解り、今後の理解を大いに深めることになりました。

(秋山 幸子 記)



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