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(18) 太陽フレアにおけるリコネクションレイト

太陽面爆発(フレア)は、コロナ中で磁力線がつなぎかわること(磁気リコネクション) による磁気エネルギー解放現象であると考えられています。 磁気リコネクションは太陽フレアのみならず、他の天体活動現象や、 地球磁気圏のオーロラや磁気嵐、核融合プラズマなど様々な宇宙・実験室 プラズマで重要な役割をはたす現象ですが、詳しい物理過程は まだよく分かっていません。その物理過程を明らかにする上で重要な 物理量がリコネクションレイトです。

リコネクションレイトは、リコネクションポイントへの インフロー(流入)速度/アルフベン速度 で定義され、磁気リコネクションが進行する速さに対応しています。 リコネクションレイトが大きい程、磁気リコネクションとそれに伴うエネルギー 解放が速く進むことになります。磁気リコネクションの理論モデルには大きく 分けてスイート・パーカー型とペチェック型があり、それぞれリコネクションレイト を (スイート・パーカー型)、0.01 - 0.1 (ぺチェック型)と 予測しています。しかしながら、リコネクションインフローの直接観測は 非常に困難であるため、これまで太陽フレアにおけるリコネクションレイトを 観測から導出した例はあまりありませんでした。

本研究では、飛騨天文台フレアモニター望遠鏡の線像、 ようこう衛星の軟X線像、及び光球磁場の観測データを解析し、 そこから得られる物理量の関係から、太陽フレアにおける リコネクションレイトを間接的に導出する方法を考案しました。 多波長の同時観測データを用いることで、以前の研究よりも 少ない仮定のもとでリコネクションレイトを導出することができます。 これまでの解析では、リコネクションレイトはという ぺチェックモデルの予想に近い値を得ています。 この結果は他の宇宙・実験室プラズマの物理にとっても 重要な結果であり、太陽の研究がプラズマ物理学の実験的研究としても 有効であることを示す一例です。

(磯部 洋明 記)



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