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(10) 飛騨マグネトグラフでの観測

12年度も前年度に引き続き、ドームレス太陽望遠鏡に付設している太陽表面 の磁場ベクトルを測定する「マグネトグラフ」の精度向上実験観測や、海外を 含む他観測所との協同観測などを行ないました。

中でも、重要な2件の協同観測の例を以下に御紹介します。

(a) 飛騨・乗鞍協同偏光同時観測 (2000年8月28日 9月1日)

マグネトグラフは、観測したい太陽表面上にスリットを置いて少しずつ場所 をずらし(スキャンし)ながら測定して行くため、広い領域をカバーする様な 観測を行なおうとすると時間が掛かってしまいます。そこで、将来的に人工衛 星等も含め複数の観測施設と協力し合って時間間隔の短いデータシリーズを得 る事が求められます。そのための準備観測として、私達は前年度より国立天文 台乗鞍コロナ観測所の磁場測定用装置との協同観測を行なって来ています。同 一の黒点領域の同じ場所にスリットを配置し、各々からどのような器械的な個 性を持った磁場の物理量が得られるのかを検証し合い、最終的に解析ソフト等 も含め、互いのデータを共有しあえる様にデータの質を規格化し、かつ向上さ せて行く事を目的としています。下図に、観測した領域の画像や、求めた磁場 の性質がかなり一致している様子を示します。

(b) 飛騨・SacramentPeakObservatory・Yohkoh協同 観測 (2000年11月14日 23日)

この協同観測は、太陽のコロナ中で見られるX線を放出するような様々な サイズの爆発現象が、より下層大気の磁場のどのような振舞いと関係しているの かを突き止めるために行なわれました。飛騨天文台 やSacrament Peak Observatory(アメリカ)においては太陽表面の光球の磁場の 大きさや方向などの変化を追う観測を行ない、X線望遠鏡を搭載している 人工衛星Yohkohからは、より上空のコロナの構造の時間変化をX線にて 撮影する、と言う観測を平行して行ない ました。この協同観測において飛騨天文台のマグネトグラフから得られた磁場 の視線方向成分のマップなどの例を次ページに示します。

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(上野 悟 記)