Kwasan and Hida Observatories, Graduate School of Schience, Kyoto University English Home page

運営方針

天文学にはさまざまな魅力的な課題がありますが、そのひとつは、われわれ地球以外の生命の存在可能性をさぐることではないでしょうか。そのために世界中の天文学者がしのぎを削っています。その研究にはさまざまなアプローチがありえます。わが太陽・太陽系について深くさぐり、その母星である太陽が地球にどのような影響を過去、現在、未来にわたって与えるのかを理解することもそのひとつです。また遠方の恒星でも太陽と似た惑星系をもっていることが近年わかってきましたが、そのような恒星は、まわりの惑星に、同じようなさまざまな影響を与えていると考えられます。また、さまざまな突発天体・銀河や宇宙そのものの理解も探求の対象です。

京都大学天文台は、これらの課題に挑むべく、岡山天文台と飛騨天文台に世界屈指の望遠鏡を擁しています。岡山には、口径3.8メートルの光学赤外望遠鏡であるせいめい望遠鏡が設置されています。国立天文台の協力を得て運営されており、京都大学だけではなく全国の研究者にも利用されています。超新星爆発・恒星スーパーフレアなどの突発天体や系外惑星の観測で活躍が期待されています。飛騨天文台では、太陽磁場活動望遠鏡(SMART)が稼働しており、それにとりつけられたSDDI装置により、太陽彩層プラズマの運動を詳細かつ高い時間分解能で追跡しています。ドームレス太陽望遠鏡(DST)は、世界でも第一級の分光器を擁することで、ユニークな観測を続けています。

京都大学天文台の最も重要なミッションは、最先端の科学課題に取り組むために、補償光学や偏光分光観測の性能向上などの新しい観測装置を開発し続けることだと私たちは考えています。望遠鏡は丁寧にメンテナンスすることで何十年も使い続けることができますが、そこにさまざまなアイディアや最新技術を投入して、新しい観測装置を開発し取り付けることで、最先端の研究成果を挙げることができます。

京都大学天文台は対外的にも、光赤外線天文学大学間連携の枠組みに参加して、せいめい望遠鏡をはじめとして、全国の大学と協力しながら突発天体現象などで成果をあげています。太陽観測では、JAXA/宇宙科学研究所の次世代太陽観測衛星プロジェクトに参画し、海外大型望遠鏡に設置する焦点面装置提案にむけて検討をすすめています。

京都大学天文台の教員は、理学研究科物理学・宇宙物理学専攻の大学院教育、理学部の学部教育、1・2回生への物理学・天文学基礎教育でも貢献しており、次世代を育てております。天文台で研究して学位を取得した研究者が、世界で活躍しています。そして、社会連携(パブリックリレーション)として、花山天文台を中心として、望遠鏡・施設公開や観望会を開催しております。研究・教育を実行するために全国・全世界の天文学者や周辺分野の研究者の方々と連携協力するだけでなく、分野を超えた融合研究を推し進める必要があると考えております。未来を切り開くためには、さまざまな個性をもった若い学生のみなさん、社会からの支えがなによりも必要です。

以上のように、京都大学天文台では、(1)先端天文学研究、(2)最新技術投入による観測装置開発、(3)内外研究コミュニティ・プロジェクトへの参加協力、(4)次世代研究者の教育や社会連携、を4つの柱として運営してまいりたいと考えています。

2024年10月21日
天文台長 横山央明