96/97 report 016

1996/97 Mars Observation Reports -- #016--

1997年七月後半・八月前半(16 July〜15 August)の火星面觀測


『火星通信』同人・南 政 次 (Mn)
♂・・・・・・・・今號は今季十六回目の報告で、16Julyから15August1997までの觀測を扱う。 ますます觀測は困難になっているが、薄明中に上手く火星を捉えれば、未だ觀測は可能である。 困難の理由は視直徑よりも、火星が天球を南に降りているからである。 逆行中で、既にスピカの東へ出て、八月中旬で南緯12度となり、大接近並みの低さで、 ボヤボヤしていると直ぐ西南に陥ちてしまう。視直徑δは16Jlyには6.9秒角、15Augでも 6.0秒角で、それほど小さいわけではない。季節はこの間149°Lsから164°Ls に延びた。中央緯度φは25°Nから22°Nに降りてきている。位相角ιは40°から39° と回復しつつある。

♂・・・・・・・・觀測者名簿は英文の欄を参照されたい。この一ヶ月間の報告者は7名、報告數は 82點、その他石橋氏の写真觀測を含め追加報告がある。


 日本から

  日本からはこの期間マレ・アキダリウムの見える位置から、その後シヌス・サバエウス、 シュルティス・マイヨルを經てω=160°W邊りまで觀測可能であった。

 18Jly(150°Ls)にはIw氏は11:30GMT(ω=082°W)であるが、福井では10:00GMTから開始、 九州は福井より遙か西だが、それでも一寸差がある。ω=060°W(Mn)、ω=065°W(Nj) で兩方ともアウロラエ・シヌスが濃く、エオスには黄雲の殘滓を認めない。 南端(アルギュレ)は明るい。この日は600倍使用。福井ではω=089°W(Mn)、ω=094°W(Nj) まで觀測。Mk氏ω=075°W:クリュセ-クサンテが夕端で明るい(Mk氏クリーム色)。 沖縄は更に西でId氏がω=102°Wで觀測。南端から朝縁が明るい(Mk氏も白味)。 午後端も明るい。マレ・アキダリウムは夕端に來ても濃く、北極冠も見える(Nj氏:小粒で白く明るい、 Iw氏:輝く、Mk氏:青白い、Id氏:小さく円く明るい)。

 19Jly:Mk氏ω=048°W(09:50GMT)、マレ・アキダリウム南中、その夕方側はクリーム色で明るい。 續いてω=058°W、067°W、テムペが圓味を帯びた明部。午後端はクリーム色。 北極冠領域は青白い。福井ではω=055°Wからω=089°W(これが限界)まで。 ω=055°Wではノアキスからテュミアマタまで午後端が明るい。エオスは明るくない、 など。タルシスには朝靄。

 20Jly:Mk氏ω=048°W、058°W:クリュセ-クサンテは特別明るくない。南端と朝方に明斑。 午後端はクリーム色に明亮。後者ではテムペは圓い。Nj氏ω=060°Wなど :観測開始が遅れるほど稍薄雲があるが、マレ・アキダリウム明確、北極冠輝く。 アルギュレ明るい。Iw氏ω=063°W:薄曇りで兩端に霧を認めない。この觀測は今期 Iw-169Dで、岩崎徹氏通算2001號のスケッチ(1984年以來)、新しい出發である。 更にω=072°W、マレ・アキダリウムは午後だが濃厚。Id氏ω=068°W: ニロケラスからガンゲスが捉えられるがエオスはっきりしない。北極冠不明瞭。

 21Jly:Iw氏ω=053°W、ω=063°W、薄曇りで北極冠は輝かない。アルギュレ認める。 エオスが抜けている(感じ)。朝方テムペの一部が稍明るい。

 22Jly:Mnはω=021°Wからω=060°Wまで。ω=021°Wではシヌス・メリディアニ 充分ディスク内。朝方クリュセ霧状、テムペは鈍い。夕方ノアキスも鈍いがアルギュレ 明白で、北半球午後端も明るい(ι=40°)。ヒュペルボレウス・ラクスは難しい (hazed?)。ω=031°W、北極冠明確だが、ヒュペルボレウス・ラクス不明。テムペ稍白くなった。 Gフィルターではアルギュレ、午後端、北極冠明瞭。ω=041°WではO56 でアルギュレ明確、アウロラエ・シヌスは濃厚でエオスは切れているかも知れない。 Int光では北極冠青白く円い。アルギュレも白。Gでは朝方クサンテは靄っている。 Iw氏:ω=043°W、アルギュレ白い。テムペに朝靄。北半球午後端が明るい。ω=053°W、 午後端のリム光が強い。アルギュレは自転で動いている。

 23Jly:この日の福井は薄雲もありシーイング悪く、マレ・アキダリウムがやっと。 アルギュレは明るい。

 24Jly:Iw氏がω=024°Wとω=033°W、北極冠は小さく輝いている。 マルガリティフェル・シヌスは淡い。ω=024°Wマレ・アキダリウムの西に靄。東のリム光を認めない。

 25Jly:Iw氏ω=014°W、シヌス・サバエウスは明確。南端には“アルギュレがらみの白雲”、 マレ・アキダリウムの朝方には霧。マルガリティフェル・シヌスは淡い。

 29Jly:Hk氏ω=330°W、ヘッラスは明るく、シュルティス・マイヨルは濃いようだが、 シヌス・サバエウスが認められない。ノアキスが暗い。マレ・アキダリウムは出てきているようである。

 30Jly:Hk氏ω=318°W、ヘッラスは著しくはない。シヌス・サバエウスは西半分を確認。 Iw氏ω=325°W、まだシュルティス・マイヨルは充分濃い。ヘッラスの明るさが稍残る。 ノアキスは鈍い。シヌス・サバエウスは左半分が淡い。東端に白く明るい雲。 ω=335°W、シヌス・メリディアニは朝方から濃い。

 1Aug(157°Ls):福井は19日の梅雨明け宣言後、夕方は天氣不好。この日はMn ω=286°Wでシュルティス・マイヨル南中から。ヘッラスが然程明るくない。ω=296°W、 午後端は明るく、G光で朝霧も見える。ω=306°Wでマレ・セルペンティスが濃く見えている。 北極領域は大きく明るいが、北極冠は何れもはっきりしないが、ω=316°W になって白さ確認。シヌス・サバエウスが見え出す。

 2Aug:福井はω=281°W(Nj)、ω=286°W(Mn)から。ヘッラスは然程明るくなく、 北極冠が更に青白い。ヘッラスは午前9時頃である。Nj氏はアエテリアの暗斑を見ている。 この日はω=306°Wまで。ヘッラスは然程明るくならない。北極冠はシャープに見える。 午後端は細く明るい。

 3Aug:Mnω=262°W(09:50GMT)、南端アウソニア・アウストラリスにかけて白い。 北極冠も白い。シュルティス・マイヨルは既に濃い(最早朝霧はないらしい、ι=40°)。 マレ・キムメリウム午後で濃くその北の午後端は明るい。ω=272°W、ヘッラス は見えるという程度、など。この夕は、下界では恒例の福井の花火大會。 1994年の行事を想い出した。Mk氏は20cmでの觀測でω=267°W、ω=277°W: 矢張り初めからシュルティス・マイヨルが明確、南部が濃い。但し、アエリアに朝霧があるか。 アウソニア・アウストラリス邊りが明るい。エリュシウムは東端でも認められない。 ウトピアは明確。

8Aug:Mnω=213°W、エリュシウムが認められない。

11Aug:福井ではω=186°W(Mn)、ω=191°W(Nj)から。兩者ともエリュシウムの位置は確認できるが、 明るさは認めない。プロポンティスTの形状も難しい。東端は明確に核を持つようなリム光。 ω=206°W迄。Hk氏ω=194°W、プロポンティスTの邊りの暗部認める。北極域は仄かに明るい。 箕輪28°C。

 14Aug:Id氏ω=187°W、午後端の北側が特に明るい。朝方も南側に靄があるか。

15Aug:福井ではω=157°W(Nj)、ω=162°W(Mn)から。午後端の北半球部は特に明亮。 タルシスからアルバに掛けてか。


海外の観測から 

 アメリカからはRSc氏のものだけで、
3Augω=135°W、ω=145°W :午後端に明斑があり、北極冠程ではない由。暗色模様は不定。
6Augω=120°W:午 後端の明部が長くディスクに入っていて、最も明るい。もう一つ孤立した明斑がCM赤道邊りにある。 JWr氏はテネリフェ(カナリー諸島)にドブソニアンを運び上げての觀測(LtE參照):
27Jly(155°Ls)はω=134°W、北極冠は青白い、南端は大きくクリーム色に明るい。 午後端に二つの明斑。
4Augはω=061°W、マレ・アキダリウムが見えるが、南半球の 暗色模様の南に大きな明斑、黄色味があり、像の中では明るく一番目立つ。北極冠は 惚けている。2080mの高山、18°Cで低くないが氣壓は790hPa。


追加報告から

 獨逸のRBg氏のスケッチはダイアゴナル使用なので、甚だ判断し難い。
15Janω=199°WにはプロポンティスTが孤立點として出ている(δ=9.1")。 エリュシウムも形は判る。
2Febω=025°Wではオクシア・パルスを黒點として描いている。
この人は丸點が好きで、27Febω=154°Wで、午後のオリュムプス・モンスを黒點と して描いている。
4Marω=097°Wでは北極冠に亀裂が縁に並行に入っており、リマ・テヌイスとしているが、 カスマ・ボレアレであろうか。テムペに明斑。ソリス・ラクスの邊りはリアルで無い。
6Marω=028°W等ではニロケラスから西へ流れる暗帯を太く描いている。
17Marω=319°Wでヘッラスが出ているのはこれのみか。B625でのみ明るい由(092°Ls)。
10Jneω=212°Wはケルベルス-ステュックスが濃く出ている。

Is氏の追加報告は次のようである:
23Febがω=017°Wで、B390ではテュミアマタ南 部は明るいが、北はマレ・アキダリウムが膨張したように暗い。北極冠は赤では不明瞭だが、 B390では明白。
4Mar(086°Ls)ω=336°Wではシヌス・サバエウス、シヌス・ メリディアニが明確。シュルティス・マイヨルの北部はB390では夕雲が掛かっている。 B390ではヘッラスが少し見える。B390では矢張りキュドニア邊りは全體暗く、マレ・ アキダリウムが呑み込まれている。朝縁は靄で明るい。
1Aprω=024°Wでも23Febと同じようにB390ではマレ・アキダリウムが東へ出っ張ったようになっている。 テムペの方は未だ朝だが、稍トンでいる。衝前と衝後では兩側の冩りが違う。
10Apr(102°Ls)ω=310°WではB390で當然ヘッラスが明瞭、シュルティス・マイヨルは消えているが EBCは難しいところ。
27Apr(110°Ls)ω=163°WのB390ではタルシス夕雲が著しい。尚前號報告の逆ナイキ型の模様だが、 EBCのことではなく、タルシス雲に限定された話だったようである(今號LtE)。もう一度拝見したが、 印画では判らない。
28Mayはω=124°W。30Mayはω=194°WのB390ではタルシスの他エリュシウムが朝方で明るい。 TPのIntにもにもエリュシウムは出ており、プロポンティスTが分離し、ケルベルス-プレグラが暗帯 (δ=9.2")。
尚、分類上7組であるが様々なフィルターワークとフィルム交換で57齣の印画からなっている。

EKm氏の觀測は5Marω=045°W、CLk氏の觀測は5Marω=043°W、7/8Marω=045°W、 054°Wで何れもマレ・アキダリウムが南中した圖柄。PVk氏の觀測は1Febω=013°Wで マレ・アキダリウムが朝方、北極冠が大きい。

次回のレヴューは、25 Sept號に發表される豫定。(文中LtEは『火星通信』Letter to Editor欄のこと)


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