96/97 report 010

1996/97 Mars Observation Reports -- #010--

1997年三月後半(16 Mar〜31 Mar)の火星面觀測


『火星通信』同人・南 政 次 (Mn)
♂・・・・・・・・ 到頭最接近期となり、越えた。17Mar08hGMTが黄經衝、18Mar11hGMTが赤 經衝、 20Mar17hGMTは最接近であった。季節は最接近日で093゜Lsであった。視直徑δ は14.2秒角までのびた。 16Marで視直徑は14.1秒角、31Marで14.0秒角であったから、 期間中殆ど変わらない最大視直徑を満喫できたわけである。位相角ιは3゜に始まり一 旦極小になって、西側に11゜迄のびたが、期間中火星は滿月に近い状態で、明るく稍 模様のニュアンスには欠けていた。季節は091゜Lsから098゜Lsまで進捗した。中央緯度 は長く23゜Nであったが、後半24゜Nになった。

♂・・・・・・・・ 19Mar〜22MarGMTはOAAの集中合同觀測日であった。統計は今後に譲るが、 20Marは大方が好い天氣であったようである。但し、Iw氏は二枚で曇られている。Mk 氏は七回、Id氏は五回實行している。Iw氏は22Marに六回觀測している。福井は21Mar 以外好天で、19MarはNj氏とMnで二十一回、20、22Marは十七回行っている。福井は對 衝日の17、18Marも好天でそれぞれ二十一回、十九回觀測している。18Marにはオリュ ムプス・モンスのCMT測定を兩名で行った(後述)。最接近の20Mar17hGMTには(これは 全く意圖しなかったのであるが)、Nj氏が望遠鏡に向かっていた。福井のシーイング は概ね好かったが、27Marが最高であったと思う。

♂・・・・・・・・Is氏のフジクローム400プロヴィアによる写真は、二月後半から好く出て いる(11Janω=136゜Wには北極冠がクッキリ)。23Febω=016゜Wには朝方の霧もしくは霜 がクサンテからテムペにでている。4Marω=335゜Wはクリュセ朝霧が濃厚であり、夕方 のシュルティス・マイヨルも濃いが靄を被っている様である。ただ、色は鮮やかでは 無い。

♂・・・・・・・・今回の『火星通信』への觀測報告者は英文の部を参照されたい。


0)  今回は我々からはシュルティス・マイヨルの朝方から、シヌス・メ リディアニの夕方まで見えたことになる。暗色模様としてはプロポンティスTやソリ ス・ラクス、マレ・アキダリウム等が觀測出來た。暗色模様の少ない地方も多かった のであるが、今回は特に火星が滿月のように輝いて見えた爲に、甚だ見辛い感じもあ った。

1) 夕方のオリュムプス・モンス: #185 p2002 (英文はp2003)で述べたように、 Mk氏、Nj氏、筆者などのFebの觀測では、オリュムプス・モンスは075゜Ls邊りでスミ ス-スミスの意味で非常に活動的(VA)となっていた。午後のオリュムプス・モンスの 頂上を水蒸気の雲が濃く冠っている姿が見られたわけで、如何なる觀測者もこれを見 紛うことはあるまいと思うほど顕著であった。
 9Feb(076゜Ls)を代表に選べば、ω= 155゜W邊りで白く見え始め、ω=175゜W邊りでは真っ白な“綿毛のボール”が浮かぶよ うに見え、ω=200゜W邊りで夕端に來る、といった具合であった(英文の部では、 cotton ballという熟語を合成した。これは筆者の使っている辞書にはなく、勝手な 造語であったのだが、8Marのメッリロ(FMl)氏の写真觀測のObserving Notesにcotton ball-like appearanceというメモをみて驚いた。ただし、彼の場合はCMに近く、筆者 の意味とはやや違うかもしれないので、前號の報告では、そのことに触れず、弱く見 えるとして措いた)。9Febの時點での位相角はι=25゜であった。
 扨て、一巡りした今回、オリュムプス・モンスは遙かに弱くなって見えた。Iw氏は 20Marω=147゜Wで全く認めず、ω=156゜Wで淡く捉えたという程度。22Marω=168゜Wが最 西端で目立たないとしている(ω=178゜Wでは見失った)。Hk氏の20Marの觀測はω=149゜ W、161゜W、173゜Wとカンドル夕雲との對比で追っているが、黄色味を帯びているとし ている。Mk氏は20Marω=176゜Wで矢張り夕雲と分離したオリュムプス・モンスを白い が淡いとしている。Id氏も20Marω=146゜W以後十度毎に捉えているが、ω=185゜Wで白 く感じ輝きが出てきたか、としている程度である(ω=195゜Wでは更に白くなっている)。
 福井での觀測では、衝の17Mar(092゜Ls)の場合、ω=153゜WでやっとInt光で捉えられる 程度(G光やY48では明確)、ω=173゜Wでは明確だが白くない、といった状態で、18Mar、 19Mar、20Mar、22Mar(094゜Ls)でも同じであった(ω=175゜W近邊の筆者の觀測は、 18Marω=176゜W、19Marω=170゜W、20Marω=174゜W、22Marω=176゜Wと押さえ、その前後 をNj氏が觀測している。ωは故意にずらして觀測している。何れも、オリュムプス・ モンスは黄色味を帯びているか、白くても淡いという状態であった)。

 從って、見掛け上はオリュムプス・モンスはひどく弱くなっていたのであるが、こ の考察にはN線もしくは位相角ιを考慮しなければならない(#098p0842で述べたよう に、位相角は便利な代用品であって、正確には正午つまりN線の位置を求めなければ ならない。然し、同根であるから二三度の範囲に留まる。9Febの場合ι=25゜であるの に對し、N線はCMから27゜ずれる)。今假にオリュムプス・モンスの經度をΩ=135゜Wと すると、ι=25゜の場合、ω=175゜Wに真っ白の綿毛が見えたとして、25+(175-135)=65゜ で、オリュムプス・モンスの地方時で午後4時半頃になる。一方、衝の時には午後4時 半とは135+65=200゜を意味するから9Febの綿毛を見るには、ω=200゜Wにならないとい けないということになる。衝の頃のω=175゜Wとはオリュムプス・モンスが175-135= 40゜、つまり午後2時半頃ということになるが、9Febに引き戻すと、40-25=15゜である からω=135+15=150゜Wとなって、9Febでも矢張りオリュムプス・モンスは著しくはな かったのである。
 では、衝の頃の午後4時半、つまりω=200゜Wからの眺望はといえば、矢張りオリュ ムプス・モンスは最早夕端に近いが、その白さは顕著であった。17Mar(092゜Ls)の筆 者の觀測を基準に採ると、ω=192゜Wではオリュムプス・モンスはそれに先行するする タルシスの夕雲と分離されて円いが、夕端雲に比べて白さは落ちる。ω=202゜Wではま だ円く、白くなり、ω=212゜Wでは夕端で輝いていた。ω=222゜Wでは少し残っているが、 ω=231゜Wでは痕跡はなく夕靄に紛れてしまっている。18Marでは筆者はω=206゜W、ω= 215゜Wの夕端で輝くオリュムプス・モンスを見ている。19、20、22Marも同様。Nj氏は 20Marω=198゜W、Mnはω=222゜W(18:40GMT)まで見ている。Ak氏の17Marω=196゜WのB光 のCCDには夕端に強く写っている。從って、見掛け上とは反対に、衝の頃から095゜Ls 迄は未だFebの意味では十分VAの状態であったと考えてよいわけである。
 尚、上の結果は“綿毛”の様なオリュムプス・モンスを観望するにはこの時期が必 要だが、十分でなく、ιが二桁あった方がよい、從ってFeb上旬は絶好の機會であっ たということであり、Marでは内容は変わらないが機會を失していたということを示 す。ιの意味はそれほど大きいのである。
 蛇足だが、衝の頃の南中時からω=170゜W迄のオリュムプス・モンスが全く大氣的に 綺麗かというと、必ずしもそうではないであろう。FMl氏の8Marω=135゜W邊りのWr47 によるTP照片には(前述のように)中央にオリュムプス・モンスが微かに出ているし、 Ak氏の20Marω=144゜WのB光CCD像にも中央近くに仄かに出ている。肉眼でもGフィルターの 方が好く把握できたので、弱いながら靄っていることは考えられる。

2) オリュムプス・モンスのCMT:  17Marは08hGMTに黄經衝であったが、この日オ リュムプス・モンスがCMを通過してゆく様が觀察されたので、Nj氏と筆者は翌日目測 によるCMT測定が十分可能だと判断し、18Marは兩者ルーチン觀測を中断し、紀念の儀 式として交互にオリュムプス・モンスの中央子午線通過を追った。
 未だ通過前が明ら かな11:00GMT(ω=127゜W)から開始したが、奇しくもこの日11hGMTが赤經衝であった。 ところでCM附近のオリュムプス・モンスは必ずしも見やすいものではなかった。矢張 り午後に比べて午前、正午は明るさが弱いのである。そこでNj氏ともどもGフィルターを多 用した。オリュムプス・モンスは當然面積を持っているから、却って難しいのである が、対象が対称なのは助かる。北極冠との関係で“座り”の良さを目安にしたから、 中央點の通過測定と考えてよい。
 測定は試行錯誤で11:47GMT(ω=139゜W)まで兩者合計 二十回行った。結果は11:23GMT(ω=133゜W)迄は“前”、11:41GMT以後は“後”、11: 26GMT(ω=134゜W)から11:36GMT(ω=136゜W)迄は“中央”から區別が付かない状態であ った。從って結果としては中心はΩ=135゜Wと求まったことになる。實際の美國地質調 査所の結果では火口はΩ=133゜Wであるから、少しずれている。光斑と實際の地形には ずれがあるかも知れず、何とも言えないが、儀式としては上手く行った方であろう。
 對衝時にオリュムプス・モンスがCMを通過するという機會には然う然う出逢えるもの ではないし、北極冠との對照という意味では更に難しくなる。アントニアディは1911 年、1926年にそれぞれにΩ=136゜W、Ω=132゜Wを得ているようであるが、何れも大接近 の次の接近で、不安定な南極冠を基準にしていると思われる。尚、アントニアディ圖 のオリュムプス・モンスはΩ=128゜Wぐらいになっている。これは何度も触れたように、 アントニアディの結果ではなく、(彼の火星圖は過去の結果の索引圖という意味で)ス キアパレルリの結果を採用しているのである(#144p1385参照)。逆に言えば、スキア パレルリも好い機會に恵まれなかったということであろう(暦の方の問題だったのか も知れないが)。

3) 夕方のアスクラエウス・モンス:  17Marω=163゜Wでオリュムプス・モンスの前 を暗帯を挟んで別のモンスが分離されたが、これはアスクラエウス・モンス(Ω=104゜ W)で、カンドル夕雲に吸収されるところであった。ω=173゜Wでは非常に白くなった。
 18Mar(092゜Ls)の追跡では、ω=147゜Wでカンドルの夕雲と分離して見え、ω=157゜Wで も同様、ω=166゜Wで、カンドル雲に接觸し、ω=176゜Wではまったく合體、というか夕 雲がアスクラエウス・モンス迄這い上がって來ており、然し暗帯は未だ見えオリュム プス・モンスを従えているという光景であった。ω=196゜Wでは夕端で非常に輝いた。 19Marにはω=141゜Wから確認できた。 20Marにはω=134゜Wから見え、上にパウォニス・ モンスも見えた。22Marω=137゜Wが好シーイングで、暗帯や夕雲の関係など典型であ った。(我々のように經験者でも毎日觀測を重ねるほど好く把握されて來るのがミソ である。)
 アスクラエウス・モンスはオリュムプス・モンスより地方時で三時間ほ ど先行するので早く白くなるが、活動の具合はオリュムプス・モンスと同じと思われ る。矢張り夕端に來て、クサンテやカンドルからの雲に吸収されるとき輝く。Id氏は 20Marω=146゜Wでパウォニス・モンスと共にアスクラエウス・モンスを捉えている。 初めて見る光景の由。Id氏の觀察でもω=173゜Wでは夕雲に吸収された。

4) 朝方のアスクラエウス・モンス: これは殆ど偶然で急に視相が好くなって觀 測出來たのであるが、31Marω=058゜Wで朝縁近くにモンスがクッキリと暗帯にピンチ されて見えた。オリュムプス・モンスには早いのでアスクラエウス・モンスと思われ た。ω=068゜Wは視相がダウンしたのであるが、ω=078゜Wにはやや大きく、ω=092゜Wに は更に大きくなって見えた。たぶん、最初アスクラエウス・モンスは獨立していたが、 次第にタルシス三山を朝雲が覆ったのであろう。ω=102゜W邊りからオリュムプス・モ ンスを従えるのが見られた。この日はω=122゜W迄しか追跡出來なかったが、次第に朝 霧は晴れて行くのだろうと思われる。アスクラエウス・モンスの正午CM通過を見るの は難しい。但し、Nj氏は27Marω=098゜Wで捉えている。27Marω=103゜W(Mn)ではアスク ラエウス・モンスの西側が稍陰って見えた。

5) アルバ:  アルバ・パテラ(Ω=110゜W±005゜W)の白雲活動は已に終わったこと は既報だが、今回も白いアルバは殆ど見えていない。17Mar(092゜Ls)に夕方ω=163゜W で稍白く感じられたが、18Marω=176゜WではGフィルターでしか見えなかった。Id氏は20Mar ω=146゜Wでアルバは弱いとしているが、Id氏はそれ以外アルバに注意を払っていない。 Hk氏も20Marω=173゜Wで地肌を見せて没するとしている。Hk氏のアルバの追求は好く、 24Marω=117゜W、126゜Wで地肌の色で明るいと觀測している。25Marω=103゜Wでも同様。 Iw氏も24Marω=102゜Wでアルバを弱いながら把え地肌と見ている。實際、アルバは午 前から好く確認でき、オリュムプス・モンスなどと性質を異にしている。
 福井では27Marにはω=079゜W(Nj)、ω=083゜W(Mn)で捉えられたし、31Marにはω=078゜WでIntで 確認した。テムペとの絡みもあり、20Marω=115゜Wでは夕端からテムペを含んで親指 状にアルバまで黄色い帯が出來ているような様相になり、同じ圖柄をMk氏が27Marω= 118゜Wで描いている。ケラウニウスが見えるときはテムペとアルバは円形で並ぶ。ア ルバの黄色い明斑の大きさは、視相に依存するが、かなり小さく見えるときもある。

6) 赤い地域と赤黒い帯:  シーイングの好いときには火星の砂漠は赤味を帯びて 見えることは周知であるが、今回20cm屈折で、特にω=100゜W前後でモンスの周りでそ れを幾度か経験した。25Marω=108゜Wではソリス・ラクスからプロポンティスUの範 囲まで入るので、例として挙げると、先ず幾つかのモンスは赤地から除外される。實 はその様子が面白いのであって、赤地の中に穴ボコが幾つか空いたように見えるので ある。

赤地といっても、表現は適切ではなく、どちらかというと珊瑚色に近いと思う が(決してHSTの色のようには見えない、むしろパーカー氏の赤に近い)、ここでは簡 單に赤地としておく。ソリス・ラクスの周りのタウマシアは赤くない。然し、その西 は可成り濃い赤、赤黒いの言うことが判った。實際赤にも濃淡があり、ところどころ 濃く集結していて、例えば、ニロケラスから西に走る暗帯はこの赤黒い帯であり、そ の延長の(1982年から知られ、今回例えばNFl氏などによって指摘されている)オリュ ムプス・モンスとアスクラエウス・モンスに挟まれている暗帯もこの種のものである (從ってHST像には好く出ていない)。更にマレ・アキダリウム以西のテムペやアルバ も含め、その一帯はむしろ赤黒い領域といって好く、アルバやテムペはその明るい部 分である。特にプロポンティスUから北東方面しばらくは可成り濃い赤黒さである。 英文の方ではdensely reddishと呼称しようかと思っている。こうした赤黒い部分は ふつうのシーイングでは濃い部分として映る。ケラウニウスやオリュムプス・モンス に先行する暗帯がそうである。筆者の見るところではタウマシアの西の赤黒さの濃度 は氣になるところである(タウマシアは全く違う、後述)。
 尚、同じ赤黒帯はデウテロニルスがそうであり、ガンゲスがそうであると思う。ま た、ケルベルス-ステュクスやアザニアの邊りもそうである。

7) 夕靄:  珊瑚色の領域から獨立している處として、夕靄に包まれている部分が ある。夕靄はιが減少した爲に濃い部分は細くなった。クリュセからクサンテ、カン ドール、タルシスへと移るパターンは同じだが、たとえ夕靄がカンドールまで出張っ て來ても、ガンゲスが朧気に見える状態で薄い。從って各領域が分別される程度であ る(これが普通で、位相角が大きいときは偏光ががきつい)。アスクラエウス・モンス も結局この靄に呑み込まれる。筆者はこうした様子を赤道帯雲と片づける事には違和 感を持つ。

8) ヘルナンデス効果:  29Jan(071゜Ls)ω=132゜Wでヘルナンデスがタウマシアに黄 雲を見たというe-mailが入って、これは否定されていることは周知であるが、何故こ のような錯覚が出たかにつては問題が残る。この時の特徴はMarsWatchでご覧になっ た方も居ようが、ソリス・ラクスは殆ど完璧に見えているのである。
 福井では25Mar にタウマシアが夕方に來たのであるが、ω=098゜Wで確かにソリス・ラクスは明確なが らそれを取り巻くタウマシアは鈍く黄色系で、夕雲の白色系とも違い、また後續の赤 色系とも際だって違う色合いを見せていた。ω=108゜W、118゜Wでも同様であった。タ ウマシアの南(火星に南端)には白雲が出ている。ただし、この光景は27Marには稍弱 く感じたので、恒常的であるのかどうか判らないが、夕方のタウマシアは特異である と思われ、白雲現象ではない。

9) オリュムピア:  今回は經度の関係でオリュムピアの東部が捉えられやすい状況 にあった。Mk氏は20Marω=152゜W等で見ているようだが、もっと明確には24Marω= 142゜Wで北極冠の西側に觀察している。Id氏も20Marω=146゜Wの北極冠の西側で明白で、 ある得べきところではオリュムピアが出ている。特に、20Marω=185゜Wでは北極冠の 南側に捉えられている。福井でもNj氏と筆者に依ってオリュムピアは数多くの機會に 觀測されている。
 時間的に逆にして、オリュムピアの東側の出現であるが、20cmでの 筆者の紀録では27Marω=103゜Wが一番早いようである。25Marにはω=108゜W、24Mar、 31Marにはω=112゜W(Nj氏は31Marにはω=107゜Wで確認)であるから、このころには十分 明白になるわけである。東端が北極冠の南に廻り、CMを通過するのを觀測するのは先 端が確固としたものではない以上難しいのであるが、22Mar(094゜Ls)の觀測によると、 ω=166゜Wから次のω=176゜Wの間に通過したようであった。從って、Ω=170゜Wぐらいで はないかと考えられる。20Marの結果も似たようなもので、特にMnのω=183゜Wの觀測 ではId氏の場合と全く同じ状況である。Nj氏もω=188゜Wでこれを捉えている。ただ、 オリュムピアは短いものではなく、この邊りが可成り濃い(明るい)ということであろ う。
 注意するのは前號でも触れたがω=200゜W邊りではCM附近にオリュムピアの部分が 存在していて、#183p1984紹介のドルフュス氏の圖(Fig1)とは稍違いがある點である。 ただ、ドルフュス氏のBに相當する雪片は20Marω=134゜W、25Marω=128゜W、27Marω= 135゜W等で觀測されている。

10) その他:   今回は衝効果が現れ、滿火星状態であったから、砂漠地方の微妙な ニュアンスが捉え難かったのであるが、我々からの光景で言えば、例えばケルベルス -ステュクス等が殆ど見えない状態で、前回可成り黒ずんでいたアザニアはむしろ明 るくなって見えるほどであった。一方プロポンティスTはその中にあって逆に際立つ 濃度で、ω=110゜Wぐらいの早朝からから見え始めた。エリュシウム・モンスは朝方で は殆ど目立たない。17Marω=192゜Wで辛うじて見えた程度である。夕端の觀測の機會 はなかった。
 今回は17Marにシュルティス・マイヨルの朝方の出現をω=212゜Wで捉え ている。朝方は當然淡い淺葱色である。マレ・キムメリウムは状態で、濃淡が見えた。 マレ・シレヌムはキリッとして濃い。マレ・ボレウムはプロポンティスUの北側が濃 く、その東は空き間で稍淡い。これは淡い方の赤黒さである。
 尚、これは1982年もそ うであったが、已に述べたようにニロケラスから西へは“赤黒”のバンドが奔り、ア ルバの南を通ってオリュムプス・モンスの東へ入って行くのであるが、特にケラウニ ウスとの交差は可成り濃い斑点になっている古典的にはアスクラエウス・ラクス邊り かと思われるが、これは整理しないと分からない。この為ルナエ・ラクスは特徴が掴 めない。ガンゲスは淡いものであり、その北部はニリアクス・ラクスから“赤黒”の 半暗部が西の方へ覆うその中に取り込まれる。ソリス・ラクスは可成り濃く、茄子型 で、湾曲してアウロラエ・シヌスの方に降りてくる。面白いのはメラス・ラクスから ティトニウス・ラクスにかけて可成り濃く奇形にも見えることである。Id氏が好く捉 えている。クリュセは全體に靄っていて、31Marω=019゜Wではオクシア・パルスの西 にコアが見えていた。

♂・・・・・・・・
 海外は先ずアメリカから:

 TCv氏の12Marω=098゜Wにはアルバが出ているが、 朝方のオリュムプス・モンスが最も明るいそうである。14Marω=102゜Wでは矢張り朝 方のオリュムプス・モンスが今期最もよく見えるとある。ヒュペルボレウス・ラクス が出ている。19Marω=042゜W、21Marω=018゜W。25Marω=348゜Wではシヌス・サバエウ スが濃い。27Marω=300゜Wではリビュアが明るい。30Marω=275゜W ではウトピアが斑点からなる。

 NFl氏の5、6Marω=090゜Wでクサンテ夕雲(G)、17Marω=010゜W、18Marω=0??゜Wでマ レ・アキダリウムの北東、キュドニアに明斑を見ている。CCD像は25Marω=265゜W等、 ご本人の喜びに拘わらず、多くは變哲もない。但し、25Marω=280゜Wの像はエリュシ ウム・モンスが午後に明るく出ていて重要である。スケッチは獨自のREAの形式だが、 データが不足している。

 FMl氏のB光写真(Wr47)は興味深い。17Marω=037゜Wでは朝側(タルシス、カンドル) が非常に明るい。クリュセには弱いヘーズがある。23Marω=010゜WではWr21(橙)では 朝方(クサンテ)が夕方より暗いが、Wr47では逆に朝方が明るく、夕端の明部はコンパ クトである。24Marω=320゜W、B光ではヘッラス、リビュア-ネイトが明るい。28Marω =315゜Wでも同じである。ヘッラスは北極冠より明るい。北極冠は晴れていると言うこ とであろう。

 HSw氏のCCD:Mk氏がダウンロードで閉口した作品集だが、像はどれも不安定である。 16Marはω=053゜W、061゜Wだが、前者ではアルバが朝方に出ているように思う。ソリ ス・ラクスが縁に濃く出ている。北極冠は分からない。21Marはω=002゜Wだが、これ は前回報告のものと同じゴーストが出ている。26Marはシュルティス・マイヨルから マレ・アキダリウムの夜明けまで。

 DTr氏のスケッチ:15Marω=037゜W、16Marω=006゜W(シーイング10/10)、ω=039゜W、 24Marω=301゜W(ヘッラスが明るい)。

 次にヨーロッパ側:

 HGr氏のスケッチは12Marがω=318゜W、31Marがω=153゜W、前者 では夕方のヘッラスが明るい。後者ではプロポンティスTが出ているが、ケブレニア の切れがない。

 ANk氏の17Marはω=325゜W。B、Y、RセットでRが鮮明。BはB+W081とあるが、薄いの ではないかと思う。

 GQr氏のイメージはまたまた秀逸である:13Marω=340゜Wのカラーでは夕方のシュル ティス・マイヨルが夕靄の中で青い。朝霧はB光で強いがマレ・アキダリウムは殆ど 出ているようである。IRではリマ・ボレアリスは濃く太くなっている。15/16Marのカ ラー合成はω=323゜W。夕縁とヘッラスは強い。朝霧はニロケラスの溝で南北二つに分 けられている。既にオクシア・パルスが出ている。IR像は16Mar02:55GMT(ω=026゜W) 迄撮られている。ω=008゜Wは特に締まりが好く、ヒュペルボレウス・ラクスが牛の爪 のように分裂しているのが出ている。淡いイアクサルテスが濃いヒュペルボレウス・ ラクスには入り込んだ形で面白い現象である。像は全體に見事でInternetでご覧にな ることを薦める。 Mars Watch 1996-1997, Image of Mars - March 1997

 ESgさんのスケッチは、17Marω=290゜WではWr47でシュルティス・マイヨルが見える そうである。29Marω=183゜Wではプロポンティスの間のケブレニアは切れに切れてい るがプロポンティスTは分離されて居ない。エリュシウムが朝縁で明るい。31Marω= 158゜Wも同様である。

GTc氏のスケッチ:13Marω=343゜W、17Marω=309゜W(ヘッラス明るい)、21Marω= 238゜W、22Marω=282゜W(ヘッラス明るい)。北極冠が極端に小さい(オリジナルの円が 多分大きい)。

JWr氏のスケッチは16Marω=302゜W、18Marω=271゜W、23Marω=244゜W(エリュシウ ム・モンスが明るい、北極冠が分裂している)、24Marω=246゜Wで、何れもシュルティ ス・マイヨル、ウトピアが主役。


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