♂・・・・・・今回 (16Dec1996〜15Jan1997)は天候が回復して多くの観測を次のように拝受した。
ADACHI, Makoto 安 達 誠 (Ad) 大津 Otsu, Japan 5 Drawings (30 Dec; 13 Jan) 360×31cm speculum AKUTSU, Tomio 阿久津 富夫 (Ak) 栃木・烏山 Karasuyama, Tochigi, Japan 13 CCD Images (20, 30 Dec; 7, 9, 12, 13, 15 Jan) 32cm speculum, Lynxx PC ASADA, Hideto 淺田 秀人 (Aa) 京都 Kyoto, Japan 6 CCD Images (20, 30, 31 Dec; 10, 13 Jan) f/37×31cm speculum, Mutoh CV-04 HIKI, Toshiaki 日岐 敏明 (Hk) 箕輪・長野 Minowa, Nagano, Japan 11 Drawings (20, 23, 24, 29, 30 Dec; 4, 8, 9 Jan) 360×16cm speculum ISHADOH, Hiroshi 伊舎堂 弘 (Id) 那覇 Naha, Japan 19 Drawings (16, 21, 23, 〜25, 27, 29, 31 Dec; 8, 12 Jan) 530×31cm speculum IWASAKI, Tohru 岩 崎 徹 (Iw) 佐賀・諸富 Morodomi, Saga, Japan 14 Drawings (10, 〜12, 14, 15 Jan) 400×21cm speculum MINAMI, Masatsugu 南 政 次 (Mn) 福井/大津+ Fukui/Otsu+, Japan 101 Drawings (23, 24, 26,〜31 Dec; 4, 6, 11, 12, 13+,〜15+ Jan) 340, 400, 480×20cm refractor*/ 320, 400×20cm speculum+ MURAKAMI, Masami 村上 昌己 (Mk) 藤澤 Fujisawa, Japan 40 Drawings (16, 21,〜24, 26, 30, 31 Dec; 4, 8, 10,〜13, 15 Jan) 370×15cm spec NAKAJIMA, Takashi 中 島 孝 (Nj) 福井 Fukui, Japan 29 Drawings (23, 24, 28,〜31 Dec; 4, 11 Jan) 340, 400×20cm refractor* NARITA, Hiroshi 成 田 廣 (Nr) 川崎 Kawasaki, Japan 36 Drawings (16, 17, 20, 21, 24, 27, 〜31 Dec; 3, 4, 6, 〜13 Jan) 400×20cm refr SCHMUDE, Richard W, Jr リチャード・シュムード (RSc) ジョージア GA, USA 1 Drawing (20 Dec) 250×51cm speculum *福井市自然史博物館天文臺 Fukui City Observatory
♂・・・・・・・16DecにMk氏はLCM=330゚ W(16:40GMT)でマレ・アキダリウムの朝方を、
Id氏はLCM=043゚ W (21:40GMT)でマレ・アキダリウムのお昼を観測(オピールは
明るくない)していて、15Janにはマレ・アキダリウムの夕方が見えていたから、この
一ヶ月で矢張り火星面のほぼ全面を観測したことになる。20Dec(054゚ Ls)には
Hk氏がLCM=355゚ Wで観測。北極冠が純白で、丸味を帯びる。21Dec
(054゚ Ls)にはMk氏がLCM=314゚ Wからで、夕端のシュルティス・マイヨル
とシヌス・サバエウスを把え、四拾分毎にLCM=333゚ Wまで追っている。テュミ
アマタ、クリュセの朝霧が顕著である。Id氏の同日LCM=341゚ Wでもクリュセ霧
は強い。Id氏はシヌス・サバエウス、シヌス・メリディアニは完璧に捉える(前者が
やや淡い)。23Dec(055゚ Ls)のId氏はLCM=320゚ W、329゚ Wでシュルテ
ィス・マイヨルの夕方の端くれからシヌス・サバエウスを見ているが、Mk氏は時間
的に早く、LCM=285゚ Wでシュルティス・マイヨルは南中である。23、24Dec
(056゚ Ls)の福井はNj氏とMnの協同観測で、矢張りシュルティス・マイヨルが中
心である。然し、南中時のシュルティス・マイヨルには特別興趣はない。矢張りシュ
ルティス・マイヨルが夕方に來てシヌス・サバエウスが現れるところ(23Decから
27Dec迄のId氏の聨續観測は好例)とか、シュルティス・マイヨルの朝方の観測が肝腎
である。シュルティス・マイヨルの朝端から現れるところは福井では27Decから31Dec
(059゚ Ls)まで聨日觀察出來た(他に4Jan)。LCM=230゚ Wでは赤フィルター
無しでも確認出來るが、これまでの紀録によると衝前にはLCM=215゚ W〜
220゚ Wで眼に入って來るから次回試みられたい。特に、この時季の朝方のシュ
ルティス・マイヨルは淡い淺葱色で、時間的な變化を辿ると好い。一、二月迄は午前
の領域が狭いが(#181p1936の図参照)、衝から衝後は午前の部分が大きく、真に朝の
シュルティス・マイヨルが観測されるから留意されたい。今回シュルティス・マイヨ
ルだけでなく、南半球の海は青色系統で、ウトピアの濃いチョコレート色と好対照を
なしていた。この淡いシュルティス・マイヨルをカラーフィルターで濃く眺めるとい
うのは愚の骨頂である。この點で、RedによるCCD像は肉眼に負けるのである。Mk氏は
朝方のシュルティス・マイヨルを何度か狙っていて、30DecLCM=246゚ W、
31DecLCM=246゚ Wで朝霧から出たシュルティス・マイヨルを見ているが、色彩ま
では判断できなかったようだ。Id氏は29DecLCM=246゚ W、31DecにはLCM=
239゚ Wでシュルティス・マイヨルを描いているが、ノートには霞が掛かってい
るとしている(色彩記述はない)。Hk氏は29DecにLCM=260゚ Wで、30DecにLCM=
254゚ Wで観測しているが稍遅い。Ad氏は30DecにLCM=244゚ W から三回シュ
ルティス・マイヨルを見ている。
年末エリュシウムが観測範囲に入ってきたが、然程の明るさはなく、Id氏、Mk氏、
Nj氏及びMnの観測に大差がない。ただ、Mnが29Dec(058゚ Ls)LCM=214゚ Wで
淡い明帯を見たほか、Id氏が31DecLCM=217゚ Wでやや明るく感じている程度であ
る。但し、後半11Jan(063゚ Ls)以降朝方でプロポンティスTが分離される中で
その西に(リムヘーズも交えて)可成りの明るさを見せた(Nj氏、Mn: Hk氏は既に8、
9Janで同じ様な観測をしている)。他にケブレニアも常態であったが、29Dec
(058゚ Ls)の福井の観測ではケブレニア西部にLCM=204゚ Wから四拾分毎十
度毎のチェックで明斑がチラチラと観測され、LCM=272゚ Wでは夕端で可成りの
光斑になった。O56でも明瞭で、色は非白色系であった。然し、翌30Dec、更に31Dec
の福井での観測では既に常態に戻った。一方Id氏の29Decの観測ではLCM=246゚ W
でケブレニアは明るくない(寧ろエリュシウムが出ている)とし、LCM=275゚ Wで
も記述がない。App Diamは7.9秒角で未だ難しい小ささである。30DecにはAk氏がCCD
でLCM=230゚ W、246゚ W、267゚ W、274゚ W(後二者はR光)でケブ
レニアを撮像しているが、常態であろう。エリュシウムがやや出ている。ここで言う
ケブレニアはエリュシウムの北側だけでなく、アエテリアの北側を指しているが、こ
の邊りはこれからの留心地域である。アエテリアの暗斑はこの期間福井(數度)だけで
なく、Id氏(29Dec)、Ak氏(30Dec)、Aa氏(31Dec)、Mk氏(31Dec)によって捉えられて
いる。ノドゥス・アルキオニウスも屡々見える。
一月に入って暫く天候が整わなかったが、10Jan期待のIw氏が観測態勢に入った頃
から再び安定し始めた。懸案のアルバは、Mk氏は今回、10JanLCM=140゚ W(Mk-
043D)でアルバに白味を感じた他は、殆どアルバ観測が揮わなかった由であるが、
11Jan(063゚ Ls)にはIw氏がLCM=106゚ Wでシーイングに恵まれ、正中のアル
バを丸く捉え、そのほかオリュムプス・モンスも観ている。12Jan(063゚ Ls)に
はアルバは"おとなしい"とし、LCM=116゚ Wでも掴めていない。福井では11Janに
稍良の視相になり、LCM=123゚ W邊りではアルバは明帯の中に見えていたが、LCM
=143゚ Wでは夕端近くになって、こぢんまりした明斑として観測された。同時に
オリュムプス・モンスも瞥見出來た。夕端のタルシスは北側の方が厚みがある。タル
シスとアルバの間から西南に暗帯がカーブして伸びている。これは1967年や1982年等
でのお馴染みの光景であって、これから視直徑が大きくなると更に明確になるので留
意されたい。アルバは當日LCM=152゚ Wでも残っていた。Id氏は同じタルシス、
アルバ、オリュムプス・モンスの三位一體を、暗帯と共に12JanLCM=128゚ Wで既
に正確に捉えている。LCM=119゚ Wではアルバ周邊は帯状である。尚、Id氏はタ
ルシスにはカンドルの明るさも加味されていると考えている。Iw氏も12JanLCM=
096゚ Wでカンドル(+オピル)が明るいと紀録している。
今回もう一つ注目されたのは、クリュセの夕端での振る舞いである。前回の報告の
ように(#182p1967)、8Dec(048゚ Ls)から13Dec(051゚ Ls)に掛けて夕端での
クリュセに溜まる靄はLCM=060゚ W邊りで確固として来る様子が捉えられている
のであるが、今回は13Jan(064゚ Ls)から15Jan(065゚ Ls)に掛けて、この靄
溜まりは寧ろLCM=080゚ W〜090゚ Wで最強になるという風に福井で観測され
たことである。靄が十二月に比較して稍上空に移っている可能性がある。Iw氏も
14JanでLCM=088゚ Wで強く、その後弱まる。15JanにはMk氏のLCM=066゚ W〜
085゚ Wの観測があり、同じ傾向を指摘している。Ak氏にも12、15JanにCCDによ
る連続観測があり、矢張りLCM=090゚ W台で夕靄は濃いようである。
尚、北極冠は福井の屈折では常に白く輝いて見えるが、Id氏は北極冠上の黄雲以來
かなり氣にしていて鈍く感じているようである。16Decでも鈍いと見ているが、24Dec
頃から輝きが増したように記述している。然し、定まらず、時には褐色がかって見て
いるようである。ご自分で、鍍金の所爲か、とも二度ほど注意している。ただ、シュ
ムード(RSc)も20Decで北極冠が、多分黄雲の所爲にして、橙白系としているので困る
ところである。10JanのIw氏の初観測では印象深く、強く輝くとしている。尤も、こ
の頃はId氏にも迷いはないようで、12Janでは明るいとしているが。視直徑のことも
ありますしネ。
[この項を仕上げた段階で、Aa氏の報告がのんびり普通便で届いた。迷惑するが、
體裁は整っていて、像はどれも秀逸である。20DecLCM=339゚ W、LCM=
356゚ Wで北極冠はR光で明確であり、十分明るそうである。30DecLCM=
263゚ Wの夕端も好く描写されている。10JanLCM=135゚ Wには朝方でプロポ
ンティスTが分離し、オリュムプス・モンスが出ている。アルバは弱いがR光だけな
のは惜しい。他にも注目する點もあるが、規約違反なのでここまで。Aa氏はCMOを読
まないので、暖簾に腕押しであるが。]
♂・・・・・・・・次回観測〆切は一月31日です。朔日には三國宛に速達でお送り下さるよう
心掛けて下さい。尤も、この寒波が長引けば裏日本に限らず観測減少となりそうです
が、何れにしてもご一報下さい。Hk氏は表側に移って、晴天に恵まれるようだが、気
温は−10℃とあるから驚きである。対馬暖流に乗って熱帯魚ならぬ錆だらけのタン
カーの端くれが漂着するような三國は、ここまでは降りない。どうぞ皆さん風邪にも
氣を付けてご自愛下さい。