直列(Tandem)型 Fabry-Perot Filter の、片側エタロンの 透過特性の誤差による透過率・磁場感度に対する影響 2002.08.10 上野 先ずここで、2つのエタロンの内、厚み 499.91532 micron のものを Etalon1 と呼び、 619.88394 micron のものを Etalon2 と呼ぶ事にします。 (今回は計算を double の精度まで細かくしています。) この厚みに誤差がなければ、2つのエタロン共、中心波長は 6302.499 Åになります。 エタロンの中心波長の変動は、主にエタロンの厚み誤差から来るものと考えられ ますので、ここでは厚み誤差に対する各物理量の変化を見る事にします。 今回は、Etalon2 の厚みのみに誤差が発生する場合を考えました。 また、プレフィルターの幅は5Åで考えています。 得られた結果のグラフは、 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~ueno/SMART/FP/Tandem/tandem_zure.html にまとめて載せてあります。 以下、6つのグラフの解説です。 1) Center wavelength of main-peak 厚み誤差に対応して、比例関係的に Etalon2 の中心波長はずれて行きます。 この厚みにおいては、ほぼ1nmのずれに対して0.01Åのずれ、という 割合になっています。 それに伴い、タンデムトータルのプロファイルの中心波長も、比例関係的に ずれが生じます。 要求仕様の、0.02Å以内にずれを納めるためには、Etalon2 の誤差は 3.5nm以下でなくてはならない事が分かります。 2) Main-peak profiles when error of Etalon2 is 5.0nm 今回計算させた厚み誤差の内、最大に当たる5.0nmの時の、各エタロン 自身のメインピークのプロファイルと、トータルプロファイルとの関係を 示しています。トータルとして波長が Etalon2側にずれ、ピーク透過率も 下がっている事が分かります。 より詳細なプロファイルのずれのグラフはPDFファイルで用意しました。 3) Peak Transmittancy そのピーク透過率がどのように低くなって行くかを示したグラフです。 誤差無しの時に0.45であったものが、5nmの誤差で約0.31に 低下します。 4) Total Width 一方、トータルプロファイルにおけるメインピークの半値幅の変化を 計算したものがこのグラフです。これは逆に誤差が大きくなる場合の方が 増加傾向にあります。しかし、磁場のインバージョン時の補正が必要で ないための要求仕様(幅の誤差は1%以下)を満たすためには、厚み誤差 は1nm程度までに押さえる必要が出て来ます。 5) Summed Intensity では、プロファイルを積分した透過量はどう変化するのか、を示したグラフ がこれです。メインピークだけを積分した値と、それ以外のサイドピークを 全て積分した値、全波長(±15Å)に渡って積分した値、の3種類の透過量 を示しています。 誤差の増加に伴い、メインピークの透過量は減少するが、サイドピークの 透過量は微増し、トータルとして減少している事が分かります。 6) Shapes of main-peak under different errors of Etalon2 Etalon2 の誤差がない場合と、最大の5.0nmの場合での、タンデム プロファイル(メインピークの)を並べて比較したグラフです。 波長のずれ分はシフトさせて重ねて描いてあります。 誤差が大きくなると、ピークは減少して半値幅は広がる、しかし面積は 減少する、という特徴はこのグラフを見れば、納得できます。 さて、上記5番目のグラフの結果から、誤差が大きくなると、メインピーク に対して、サイドピークの面積の割合が大きくなる事が分かりましたので、 これは、連続光の漏れ込み率が高くなる、と言う事で、磁場によるプロファイル の変化についての感度を鈍らせる影響があると予想されます。 その点について確認した結果を、 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~ueno/SMART/FP/Tandem/mag_sens_zure.html に示します。 ここでは、1.0nmおきに0.0nm〜5.0nmまでの6種類の誤差に ついてのみ調べてあります。 これらのグラフから読み取った、σ成分の極値部分のプロファイルの変化が、 想定している観測誤差0.1%を越える時の磁場の変化量は、 厚み誤差(nm):0.0、1.0、2.0、3.0,4.0,5.0 視線方向磁場 : 8G、 8G、 8G, 9G, 9G,10G 視線垂直磁場 :13G,13G,13G,14G,15G,16G の様になります。大体3.0nm程度から影響が出始めると言った所でしょうか。 ただ、感度の鈍り方は、誤差5.0nmの場合でも1.2〜1.3倍程度と、 そう大きい訳ではありません。 以上から、エタロンの厚み誤差によるプロファイルずれの許容範囲を、 中心波長誤差、透過幅誤差、磁場感度、の3点から見た場合、 「透過幅誤差を1%以下に押さえるために厚み誤差は1nm以下」 という条件が最も厳しいものになると言う事が分かりました。 ちなみに、CSIRO社を訪問した時に紹介されていた、研磨精度について の一般的な話では、 Form Accuracy < 20 nm (P-V) for 500mm aperture Waveness 1 - 100 nm less than 1 nm RMS Smooth less than 0.1 nm RMS となっていたかと思います。