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ニュースリリース

ひので衛星によって発見された彩層アネモネ型ジェットについて
2007年12月7日


左から、柴田 一成 理学研究科附属天文台(花山天文台)教授、滝澤 寛 理学研究科附属天文台(花山天文台)技術補佐員
左から、柴田 一成 理学研究科附属天文台(花山天文台)教授、滝澤 寛 技術補佐員
 柴田 一成理学研究科附属天文台(花山天文台)教授の研究チームは、昨年、わが国のJAXA/宇宙研より打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」(Solar B)の観測により、太陽の彩層と呼ばれる層(太陽表面の上空の大気層)が非常に小さなジェット現象(細長い高速の流れ)に満ち満ちていることを発見しまし た。この研究成果が米国科学誌「サイエンス」に掲載されることになりました。


論文のタイトル:Chromospheric Anemone Jets as Evidence of Ubiquitous Reconnection(ユビキタス・リコネクション(普遍的に存在する磁気リコネクション)の証拠としての彩層アネモネ型ジェット)
著 者:柴田一成,1 中村太平,1 松本琢磨,1 大辻賢一,1 岡本丈典,1, 2 西塚直人,1 川手朋子,1 渡邉皓子,1 永田伸一,1 上野悟,1 北井礼三郎,1 野澤恵,3 常田佐久,2 末松芳法,2 一本潔,2 清水敏文,4 勝川行雄,2 Tarbell, T. D.,5 Berger, T. E.,5 Lites, B. W.,6 Shine, R. A.,5 Title, A. M.5
(1:京都大学, 2: 国立天文台, 3: 茨城大学, 4: JAXA宇宙科学本部, 5: 米ロッキードマーチン太陽天体物理学研究所, 5: 米高高度研究所)


 昨年、わが国のJAXA/宇宙研より太陽観測衛星「ひので」(Solar B)が打ち上げられ、太陽の驚くべき素顔が明らかになってきました。中でも興味深い発見は、太陽の彩層と呼ばれる層(太陽表面の上空の大気層)が非常に小 さなジェット現象(細長い高速の流れ)に満ち満ちていることが発見されたことです。彩層は誰が想像していたよりも、ずっとダイナミックだったのです。爆発 やジェットに満ち満ちていたのです。とりわけ、そのような小さなジェット現象のうち、ジェットの足元が、「アネモネ型」(イソギンチャク型)をしている ジェットが多数発見されたのは驚きでした。


図1 ひので衛星搭載の可視光望遠鏡で見た彩層の様子。太陽の縁近傍を見てい る。黒い楕円の領域は黒点。無数の微小ジェットが見える。その中で、足元が光っているジェットが、アネモネ型ジェット。2006年12月17日カルシウム II H フィルターによる。


図2 ひので衛星で発見された彩層アネモネ・ジェット(ひので衛星搭載の可視光 望遠鏡のカルシウムHフィルターによる観測)。2007年1月14日世界時12時14分から約2分ごとの画像。1”=720km。
 アネモネ型ジェットは、今から16年ほど前、わが国の打ち上げたようこう衛星の太陽X線観測により、X線ジェットとしてコロナ中で多数発見されました。 ジェットの足元の形が、イソギンチャク(sea-anemone)そっくりなので、このように呼ばれます。アネモネ型の形状から、コロナのX線ジェット生 成機構が磁気リコネクション(磁力線つなぎかえ)と呼ばれるメカニズムであることが判明しました。今回発見された彩層のアネモネ型ジェットは、コロナのア ネモネ型ジェットの数10分の1程度の長さしかなく(長さ=2000−5000km)、速度も遅い(10−20km/s)ですが、形がコロナのX線アネモ ネ型ジェットとそっくりなのです。このことから、ジェット発生のメカニズムが、磁気リコネクションであると考えられます。ジェットは彩層中、普遍的にいた るところに存在するので、このことは、磁気リコネクションが太陽彩層中で普遍的に起きていることを示唆します。ユビキタス・リコネクション(普遍的に発生 するリコネクション)が発見された、と言っても良いでしょう。


図3 彩層アネモネ・ジェットの発生機構の想像図。X のところで磁気リコネクションが起きていると考えられる。

図4 (左図) コロナのX線アネモネ型ジェット(1992年、ようこう衛星に よる)。(右図)アネモネ型ジェットの概念図。ジェットの足元が、イソギンチャク型をしている。

 磁気リコネクションは太陽面爆発(フレア)の発生機構であることが知られています。一方、太陽の謎の一つであるコロナ加熱機構の有力な説の一つに、微小 リコネクション(ナノフレア)説(パーカー1988)があります。今回発見された彩層アネモネ型ジェットのエネルギーはまさにナノフレアのエネルギー程度 なので、ユビキタス・リコネクションの発見は、コロナ加熱のナノフレア説をサポートする、と言えます。




 産経新聞(12月7日 26面)、朝日新聞(12月6日 35面)、京都新聞(12月7日 30面)、毎日新聞(12月7日 3面)、日刊工業新聞(12月7日 25面)及び中日新聞(12月7日 33面)に掲載されました。



 
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