偏光分光スペクトルによる新しいプラズマ診断手法を用いた太陽活動現象の研究
科学研究費補助金 基盤研究(A) H22〜H25
メンバー: 一本潔、阿南徹、大井瑛仁、仲谷喜一、木村剛一、上野悟、北井礼三郎、川手朋子(飛騨天文台)、
三浦則明(北見工大)、花岡庸一郎(国立天文台)
研究の目的:
太陽から放たれるスペクトル線は、磁場や電場、輻射場、粒子運動などの空間的非等方性により、
ゼーマン効果、ハンレ効果、スタルク効果、衝突原子励起等の様々なメカニズムで
「偏光」します。
本研究はスペクトルの偏光情報を用いた、新しいプラズマ診断手法を太陽観測に適用して、
太陽に生起する活動現象の磁場・電場・非熱的粒子速度場など、プラズマのより多面的な
物理量を観測的に求めることで、太陽活動現象を駆動するメカニズムを解明することを目指します。
そのため京都大学飛騨天文台ドームレス太陽望遠鏡に、高解像・高精度偏光スペクトルの観測を可
能にする偏光解析装置と像安定化装置を整備します。
観測した偏光スペクトルから太陽プラズマの物理量を導出する手法を開拓することも、
研究の重要な目的の1 つです。
宇宙地球環境に大きな影響を与える太陽面爆発現象や太陽活動サイクルの基礎過程の理解、
さらに実験室プラズマ分野と連携して、新しいプラズマ診断学の進展に貢献することを目指します。
ドームレス太陽望遠鏡レイアウト
DST 偏光校正
AO 光路図
AO 外観図
進捗状況:
・飛騨天文台ドームレス太陽望遠鏡の偏光観測装置(活躍中)
回転波長板と高速読み出しカメラからなる焦点面偏光解析装置、
およびデータ取得のためのソフトウェアの開発をおこない、
スペクトルデータの取得が可能となった。
・ドームレス太陽望遠鏡の偏光特性の取得、(阿南+大井君、偏光特性の時間変化を調査中)
ドームレス太陽望遠鏡の入射口に遠隔操作で回転可能な偏光板タレットをとりつけ、
既知の偏光を入射することで望遠鏡の偏光特性を取得した。
データ較正用の望遠鏡偏光モデルを構築した。
・赤外カメラの制御とキャリブレーション(大井君奮闘中)
・高精度偏光観測を実現するために不可欠な補償光学装置の詳細設計、(仲谷奮闘中)
補償光学装置の光学設計とミラーを保持する光学定盤の機構設計をおこなった。
・補償光学装置の主要部品である可変形状鏡の製作、(ミラーできた)
97チャンネル77mm径の可変形状鏡を米国サイネティックス社にて製作した。
・光学機器の偏光特性を計測するための分光ミュラー行列測定装置の製作。(飛騨で活躍中!)
・ゼーマン効果、ハンレ効果、スタルク効果を用いたジェットの磁場・電場診断、(阿南奮闘中)
・ゼーマン効果、ハンレ効果を用いた黒点周辺のプラズマ流の磁場構造の統計研究、(大井君奮闘中)
・ゼーマン効果、ハンレ効果を用いた黒点磁場振動の測定、(茨城大学の大川君奮闘中)
・ゼーマン効果、ハンレ効果を用いたフィラメントの磁場測定、(茨城大学の澤田君奮闘中)
成果:
論文・研究会発表
協力:(株)ジェネシア