★さて、2003年にこのような現象の可能性があるか、また日本からの観測はどうか、が問題である。2003年の The Astronomical AlmanacのEphemeris for Physical Observation の表によると、(De=Ds)となる期間は、次の二回存在することが分かる。
(1)
(00h GMT) De Ds δ ι
01 Aug 20.12゚S 19.91゚S 22.4" 23.0゚
05 Aug 19.91゚S 20.60゚S 23.0" 20.3゚
(2)
(00h GMT) De Ds δ ι
01 Nov 23.58゚S 23.79゚S 15.0 38.0
05 Nov 24.01゚S 23.38゚S 14.3 38.9
(De=Ds)の値は、それぞれ20゚Sと24゚Sであり、Solis L辺りに発光現象が起きる可能性が考えられる(註1)。
そこで、ω=90゚Wになる時刻を見てみると
(1) 01 Aug 16h20m GMT ω=090゚W
02 Aug 17 00 ω=090゚W
であるから、日本から当該地域が観測出来ることが判る。この頃の南中は夜半過ぎで好条件である。一方、後者は
(2) 02 Nov 00h20m GMT ω=091゚W
であって、日本で火星が南中するのは同日11h20mGMTでω=246゚WであるからSolis Lあたりは観測不可能である。
前者(1)の機会は視直径・位相角・天候を勘案しても条件がかなり好いので、少し詳しく紹介すると、先ず(De=Ds)になる時刻は補間法で、01 Aug 23h GMT (De=Ds)=20.1゚S と出てくる(註2)。
したがって、1 August前後が候補である。しかし、2001年の例を見ると、必ずしも正確に(De=Ds)では起こらないので、相当な幅が必要であろう。
そこで、前後数日のωを示すと、以下のように、この期間には連日Solis L、Tithonius L辺り(Ω=080゚W〜090゚W)の範囲が火星面に見えている(南中時は夜半過ぎ17h GMT頃)
13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 GMT
29 July 067゚W 082゚W 096゚W 111゚W 126゚W 140゚W 154゚W 169゚W 184゚W
30 058 073 087 102 117 131 146 160 175
31 049 064 078 093 108 122 137 151 166
01 Aug 040 055 069 084 099 113 128 142 157
02 031 046 060 075 089 104 119 133 148
03 022 037 051 066 080 095 110 124 139
04 013 027 042 057 071 086 101 115 130
★以上、条件は良く、確認観測の意義は重要であり、この期間の共同集中観測を諸氏の協力を得て是非とも実行したいと考えている。今回はデータの確認で諸氏の興味を大いに喚起するだけだが、現象に向けて観測の態勢作りがこれからの課題である。
尚、「反射」現象は(De=Ds)の時だけが幾何学的には可能な分けではない。(Ds+De)/2の緯度に水平に置かれた「鏡」があればこれに太陽が反射して地球のわれわれの眼に届く。もしこれを考慮し、更に「鏡」の水平からのずれを勘案すると可能性は無限に多くなり、計画を立案するのは煩雑になりすぎるので、ここでは考えない。それに今回の(De=Ds)は2001年の現象の追試として意味があると考えるわけである。
(註1) 1958年の福井實信氏の時はDeやDsは12゚S〜14゚Sであったから事情がやや違う。その他、季節も1958年の場合は325゚Lsあたりであったのに対し、1 Aug 2003は232゚Lsあたりである。
(註2) ビーシュ(Jeff BEISH)氏のプログラム "WIMP v4.0"においては少し違って
01 Aug 12hGMT (De=Ds)=19.5゚S
となっている。