98/99 Mars CMO Note (10)

1998/99 Mars CMO Note
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from CMO #232


-- 下午のオリュムプス・モンス --


 ◆午後のオリュムプス・モンスが山岳雲を被って綿毛のボールが浮かんだように見える時がある。これは時間的にも又、季節的にも變化するから何時でも觀望が可能ではないが、1997年と1999年の觀測で、その幅を捉えていると思う。
 ◆オリュムプス・モンスの午後の山岳系雲が輝くのは、070°Ls〜130°Lsの範囲であることは好く知られている(CMO #134 p1251參照)。

 ◆1997年には衝前の8、9 Feb (076°Ls,ι=25°)に福井で、村上(Mk)氏と中島(Nj)氏、南(Mn)が文字通り眞っ白な綿毛のボールのようなオリュムプス・モンスを觀測した[#185 (25 Feb 1997) p2002參照]。ω=174°Wで、丁度オリュムプス・モンスの地方時(LMT)は16:30邊りであった。10 Feb 1997 (076°Ls)には更に好い条件で、ω=145°W (14:30 LMT)からω=204°W (18:30 LMT)迄、東端に沈むまで觀測された。この年のオリュムプス・モンスの午後の動向についてはCMO #201 p2243のNoteを参照されたい。
 ◆1999年の輝くオリュムプス・モンスの初期(δ=10.3")の觀察については、伊舎堂(Id)氏の1 Mar 1999 (104°Ls)ω=177°Wでの觀測など#214 p2442に圖入りで報告してある。Id氏のこの場合オリュムプス・モンスの山頂の地方時は17h LMTであった。次のラウンドの四月中旬の觀測は#216 p2479に矢張り圖入りで示してある。Mk氏(122°Ls)とId氏(124°Ls)のスケッチともオリュムプス・モンスの地方時は13h LMT邊りである。

 ◆從って、1999年にはオリュムプス・モンスの活動の後半が觀測された。以下に比嘉保信(Hg)氏のVideo像から、三月、四月、五月の像を選んで掲載する。未だ活動の顕著な期間に属している。
 ◆この圖は、それぞれの日で、どのように午後時間が進むに連れて、どう變化するかを示すが、季節の違いを比較するにはLCM(ω)に依ってはいけないことに注意する(LCMは實際の反射角度に關係するから、微妙な判定には必要な因子だが、ここでは考慮しない)。

 ◆例えば、LCM(ω)で比較すると、3 Mar ω=158°Wと13 May ω=156°Wが對照になるが、ここで後者では雲が大幅に衰退していると判断してはいけない。地方時(LMT)が違うからである。そこで、3 Mar ω=148°Wの6 Aprの對應する像を選ぶとすれば、地方時の對應から6 Apr ω=167°Wであろう。稍角度が違うが、オリュムプス・モンスの輝きは然程違ってないことが判る。同じように3 Marのω=158°W/ω=168°Wは6 Aprのω=177°W/ω=186°Wにそれぞれ比肩できるから、從って105°Lsから120°Lsまで、午後の活動が持續していることが納得できよう。
 ◆この間を埋める例として、#215 p2461掲載の唐那・派克(DPk)氏の26 Mar (115°Ls,ι=22°)ω=138°Wの像があるので、持續中の例として参照されたい。13:50 LMT邊りである。

 ◆一方、13 May(138°Ls)のω=185°WはLMTの對應から3 Mar (105°Ls)ω=138°Wが比較されべきものである。まだ、138°Lsにおいても14:30 LMTで山岳雲は存在すること、然し、稍弱々しくなっていることが判る。
 ◆13 Mayの一聨の像は最初のω=156°Wが12:30 LMTであるから、午後早くからの様相の變化を傳える。これと3 Marの像を繋げば、稍季節は違うが、Hg氏の觀測は午後全ての状態を捉えている譯である。

 ◆但し、長期に亙る比較という觀點からは毎日の四十分の紀録を相当長く續けないと充分ではないことが判るであろう。ここではHg氏に四像だけ選んで貰ったが、四像では足りないのである。Hg氏は更に23 June (159°Ls,ι=37°)にも重要な像を得ているが、ω=154°Wだけであった。これはLMTは午前である。

◆補足として、唐那・派克(DPk)氏の映像を見ると、29 Apr (131°Ls) ω=169°WのB像には14h LMTの明白なオリュムプス・モンスが冩っている。一方、4 June (149°Ls) ω=186°Wの同じく14h LMT近くの像では、p端近くでは然程の輝きを示していない。この間に、衰退が起こっているわけであるが、完全になくなるのは180°Lsであろう。

◆以上の議論は、火星事象の觀察に關する典型を含んでいるので、同じ方法でそれぞれの觀測の點検などに生かすほか、今後の觀測の幅の設定などの參考にして頂きたい。

(Mn)