★マレ・アキダリウムの北は北極冠から離れていて、北極冠を取り巻く濃いヒュペルボレウス・ラクスとは隔絶しているのは好くみられる光景だが、實際は單純ではなく、場合よってはイアクサルテス運河などで聨結している。これはスキアパレルリの時代から知られていることで、運河の命名は彼による(1881/82年、カザフスタンのタシケントの近くからアラル海にむかって流れるシルダリヤSyr-Darya川の舊名。アラル海に注ぐもう一つのAmu-Darya川がオクスス)。
★1997年の接近の折りには伊舎堂弘(Id)氏によってその詳細が何度か検出されている。#201p2244掲載の最接近頃のId氏の30Mar(094゚Ls)ω=069゚Wでのスケッチにはこれが出ているので參照されたい。
★ #191 p2093では12May(117゚Ls)ω=034゚WでのId氏の觀測について觸れた。ここではそのスケッチを引用するが(Fig. 1)、構圖の點から、また期日の點からも、HSTの17May(119゚Ls)の像と比較すると好い(#193 p2137)。
Fig 1: ISHADOH's drawing on 12 May 1997
(117degsLs) at LCM=034degsW when the apparent diameter =10.6"
★Id氏のこの領域の早いスケッチは#186 p2018に25Feb(082゚Ls)のものが出ているが、イアクサルテスは未だ出ていない、だけでなく切れ目は目立たない。
★マレ・アキダリウムとヒュペルボレウス・ラクスの切れ上がりは、例えば、1935年に佐伯恒夫氏は200×8cm反射によって141゚Lsで觀測している(δ=10.9":『火星とその観測』1968年版7頁参照、筆者が直にお聞きしたところでは、キリッと分離が見えたのでサッと消しゴムで消したそうである)。Fig.0。
★この間隙は必ずしも何時も明白ではなく、ここではHSTによる30Dec(058゚Ls)と27June(139゚Ls)のその領域の見え具合を比較しておこう。實は、この断絶は多くの場合白雲の彷徨によって形成されていると考えられる。
30 Decの場合は霧の少ない場合(實際には青色光で部分的に見られる)。逆に些かの白雲のときはイアクサルテスなどが運河状に見える、とみるのが適當であろう。更にこの邊りの白雲が強くなれば、そのためにイアクサルテスなどが消えてしまう。HSTの27June (139゚Ls)の像はそれに當たる。#193 p2137での17May(119゚Ls)との比較で明確だが、Fig.2の擴大圖で、白雲でイアクサルテスの隠れていることが確認されよう。
Fig 2: HST images of the area on
30 Dec 1996 (058degsLs) (left) and 27 June 1997 (139degsLs) (right)
青色光では白雲は明白だが、同時にマレ・アキダリウムなどが周りに溶け込んでしまう。逆に赤外色の例としては、ジム・ベル氏のCCD像がある。#185p2011。17Feb (080゚Ls)。切れ目が見えない。
★同じような切れ目の構圖のスケッチは#162(25Mar1995)p1645にある。筆者(Mn)のもので20Apr1995(087゚Ls)のものと、21Mar1982(101゚Ls)のものである。
★イアクサルテスにはもう一つ注目されるべきことが、クアッラ氏などのSGPGの16Marω=008゚WでのCCD像に出ている(#188p2054/55)。これは#199p2214でも指摘しているが、イアクサルテスがヒュペルボレウス・ラクス内まで延長していて、濃度は寧ろ反転していることである。これはHSTでは必ずしも明確でないが、ヴァイキングの影像などで見ると、ヒュペルボレウス・ラクスには襞がある(例えば#177p1872の圖3參照)。面白い現象で、畫像處理の問題か、濃淡差による見え具合か、今後の課題で多くの影像が期待される。
Fig 3: SGPG's CCD image on 16 Mar 1997
(091degsLs) at LCM=008degsW by a 42cm refr at Torino