南 政 次
★1958年十一月にどういうことが起こっていたかというと、火星の中央緯度sub-Earth點、と太陽の「下」、火星から見て太陽が天頂に來るsub-Solar點が一致し、その緯度が13゚S〜14゚Sにあったのである。尤も、兩者が一致したとしても、位相が多くの場合ずれている譯だから、太陽光と我々の視線の方向がずれている。從って一致は目安に過ぎないが、チェックするには好い目安なのである。
★1958年のAlmanacを繙くと
sub-Earth | sub-Solar | Ls | app diam | |
15 Nov 1958 | 13.30゚S | 13.64゚S | 324.55゚ | 19.04" |
17 Nov 1958 | 13.67゚S | 13.26゚S | 325.65゚ | 18.93" |
となっている。ティトニウス・ラクスとソリス・ラクスの間は10゚S〜20゚Sと言えるから、可能性がある。福井氏の観測は10Nov15:05(GMT)で、中央子午線からは外れているが、「位相」と「鏡」の向きの範囲であろう。
★今年の場合、φ=sub-Solar pointは次のように起こる:
sub-Earth | sub-Solar | Ls | app diam | |
08 June 2001 | 1.91゚N | 2.36゚N | 174.51゚ | 20.10" |
12 June 2001 | 2.69゚N | 1.41゚N | 176.74 | 20.44" |
および
sub-Earth | sub-Solar | Ls | app diam | |
09 Dec 2001 | 23.58゚S | 24.28゚S | 287.13゚ | 7.05" |
13 Dec 2001 | 24.20゚S | 23.92゚S | 289.58゚ | 6.91" |
後者は、ι が大きいから可成り不確な上、緯度も高く視直徑も小さい。然し、10June前後の方には2゚N邊りで可能性がある譯である。φ=2゚Nといえば、エドムがその範囲に入る。ι は5゚であるから、少し狂うが、10Juneにエドムのω=350゚Wとなる時刻は9:50GMT邊りである。09Juneなら、概略40分前であるから9:10GMT、11Juneなら10:30GMTであろう。殘念ながらいずれも日本の範囲でない。アメリカであって、フロリダにキャンペーンが出るというのはこのことによる。
★然し、10Juneには日本からは13hGMT(ω=037゚W)頃から觀測可能であるから、エドムは未だ見えている。六月の上旬には觀測開始のころ注意するとよいだろう。「ずれ」を考えるとその後も可能性がある。
★エドムの輝きについては佐伯恆夫著では1954年と1956年が挙がっている。1954年は2001年型であるから、似ているところもあり、φ=sub-Solarは
sub-Earth | sub-Solar | Ls | app diam | |
18 June 1954 | 0.29゚S | 0.22゚S | 180.54゚ | 21.09" |
と同じくシーズン外れてから
sub-Earth | sub-Solar | Ls | app diam | |
11 Dec 1954 | 22.57゚S | 22.59゚S | 289.12゚ | 7.36" |
佐伯氏の怪光は少しずれて1 July 1954で、φは2゚Nでいいが、sub-Solar pointは3゚Sである。この時のLCMはω=320゚Wであった(ι=6゚)。今年(2001年)は2゚Nの機會は多いのであるが、3゚Sとは出會わない。
★C McCLELLANDの24 July 1954はφ=4゚Nでsub-Solarは8゚Sである。
★A DOLLFUSの場合は1956年である。12 Oct 1956を採り上げると、φ=21゚S、sub-Solar=24゚Sとなっている。9 Oct邊りで一致するのであるが、φが深くエドムは相當ずれる。DOLLFUSの場合は瞬時的なものでなく、可成り永續的な雲の輝きであったようで、上の場合と違うのかも知れない。
(below) McCLELLAND observed that Edom was flashed for about one
minute on 24 July 1954 at 4:32 GMT.
He used a 33cm refractor
at the Pittsburgh University Observatory.
尚、1956年には
sub-Earth | sub-Solar | Ls | app diam | |
04 Aug 1956 | 19.77゚S | 19.65゚S | 235.81゚ | 20.71" |
06 Aug 1956 | 19.69゚S | 19.95゚S | 237.09゚ | 21.07" |
に起こっている。ソリス・ラクス邊りが可能であったかも知れない。
★序でに1986年と1969年にはどうであったかをみると、1986年は
sub-Earth | sub-Solar | Ls | app diam | |
01 July 1986 | 7.46゚S | 7.35゚S | 197.31゚ | 22.21" |
05 July 1986 | 6.82゚S | 8.33゚S | 199.68゚ | 22.64" |
であった。
また、1969年は
sub-Earth | sub-Solar | Ls | app diam | |
27 May 1969 | 6.40゚N | 7.09゚N | 162.86゚ | 18.94" |
29 May 1969 | 6.79゚N | 6.66゚N | 163.93゚ | 19.10" |
★更に遡って、1937年と1939年は
sub-Earth | sub-Solar | Ls | app diam | |
17 May 1937 | 11.65゚N | 12.14゚N | 149゚ | 18.02" |
19 May 1937 | 12.02゚N | 11.77゚N | 149゚ | 18.15" |
sub-Earth | sub-Solar | Ls | app diam | |
10 July 1939 | 9.80゚S | 9.28゚S | 205゚ | 22.78" |
12 July 1939 | 9.50゚S | 9.74゚S | 206゚ | 23.06" |
★1937/1939、1954、1969、1986年を比べて判るようにエドムの5゚N〜5゚Sに落ちるというのは可成り稀であって、1954年に次いで今年はその稀な例になるわけである。47年か79年周期ということになろう。但し、1954年の「ずれ」を考えると、今年確かに可能性はあるものの、「ずれ」を豫言するのは簡單ではないと思う。
★それにしてもDOBBINS達は可成り前から準備していたのだとは思うがS&T五月號にこの記事を出せたというのは見事なものであると思う。