http://marswatch.tn.cornell.edu/hst96-97.html
ここにはプレスリリースされたHST画像の他にも別の日に撮像された画像が登録さ れていて大変参考になる。
HST画像でプレスリリースされたものは、火星ばかりでないが、最新のものが下記 のサイトにあって、圧縮されたものから、高解像度のものまで幾つかの画像形式で登 録されている。説明の書かれたテキストファイルも存在する。
http://www.stsci.edu/pubinfo/Latest.html
幾つか注目点を挙げると、溶解の進んだ北極冠とその周
辺の様子が良く捉えられていること。シュルティス・マイヨルなど暗色模様の内部構
造の描写も詳細に富んでいること。オリュムプス・モンスは円形の火口を見せ、西側
に白雲を従えていること。タルシス三山に懸かる雲は明るさが北から南へと淡くなっ
ていること。ヘッラスは青白いがまだ真っ白でなく地肌の色も見えていること等で
ある。この日のLsは089゚であった。No187p2030掲載の伊舎堂弘氏のスケッチは
この四日前であった。模様の配置がHSTの像と似ているほか、ヘッラスの様子が同
じ様に見える。
また、HSTは既に三月30日にも撮影を行っているが、また発表されていない様である。
ここに載せる像は、それぞれの像から北極冠のところを拡大して切り取ったもので、
上からω=160゚W、ω=210゚W、ω=305゚W邊りからの像である。Korolevクレー
ターは上の二像に明確であり、リマ・ボレアリスも好く見える(#177p1872の図と比較
されたい)。
今回得られた北極冠の様子を、以前から発表されているマリナー9、バイキング・
オービター等による火星図 (cf CMO #177 p1872 圖2)と比べて見てみると、良く似てい
るのに気が付く。たとえば極冠を取り巻くダークフリンジの外側に小白点が認められ
るが、これは上記火星図にも円形の小白点として明らかであり、円形の火口内部の様
子に見えている。このクレーターはp1872の圖3に明記されている(但し縮小図のため
読みとるのは困難)ようにKorolev (196゚W, 73゚N)と思われる。それを基準にして
見た周囲のオリュムピア雪原の様子も酷似していると言って好いと思う。マリナー9
号の北極冠はは1972年であり、バイキングの探査は1976/77年のことであったから、
二十年以上前と相変わらずに様子が一定していると言って良く、案外永年蒸発せずに
残っているH2Oの氷かも知れないと推測される。
とにかくこれだけ細かく不変である
ところに、長くALPOの流行となったリマ・テヌイス等というものが存在したり存在し
なかったりするものかと思う。
また画像処理にもよるのだろうが、ダークフリンジの内部は濃淡が複雑に出ている。
カスマ・ボレアレは幅広く認められると思う。110゚Lsのドルフュス氏の1982年のス
ケッチ(cf CMO#183 p1985)に見られるダークフリンジ内部の暗線はカスマ・ボレアレ
というよりも、270゚〜010゚W付近の暗線の多いところではないかと思われ、今年
のHSTの画像ではその外側は地肌なのか白く表現されていない。ただし、今回のH
ST像の処理は、昨年の北極冠内の黄雲と言われたものが発見されて以来、北極冠内
の茶系色を強く出すように配慮されていて、白が抜けている可能性もある。