2013/2014
CMO/ISMO 観測レポート#07
2014年三月の火星観測 (λ=096°Ls~110°Ls)
CMO
#421 (
-(その3) –
3月20日から31日まで (λ=105°Ls〜λ=110°Ls)
20 March (λ=105°Ls): XDp氏がω=256°Wで、CPl氏がω=278°W(IRはω=272°W)で、EMr氏がω=312°Wとω=328°Wで、SGh氏がω=213°Wで撮像した。
XDp氏の像は良像で、シュルティス・マイヨル邊りの濃紺色とウトピアの些し赤茶けた色合いの差を出している。エリュシウムの雲はアエテリアの暗斑から離れ、南北に起っている様子が好く出ている。ヘッラスは未だ朝方だが、ヘッラス内から靄が北西に出ている様子など宜しい。北極冠は割れ目を見せており、オリュムピアは夕方。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140320/XDp20Mar14.jpg
CPl氏の像はシヌス・サバエウスが些し這入ってきた。ヘッラスの描冩も好く、内部の暗部が見えている。北極冠の縁は円くない。北極冠の南西から霧状の筋が出ているか。オリュムピアは未だ見える。シュルティス・マイヨルからマレ・テュッレヌムに掛けては暗斑點の集合体。その中にホイヘンスも入る。エリュシウムはかなり端で白雲が棒のように起っている。
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EMr氏の像はシュルティス・マイヨル東側の夕霧から、全体に朝霧も含めて霧深く描写してなかなか上質である。ω=312°Wではシュルティス・マイヨルには淡く懸かっているが、ω=328°Wではシュルティス・マイヨル北部を覆い、沙漠に出ている。太く弧を描いている様子が好く出ている。興味深いのは、兩像とも北極冠起源と思われる霧が北極冠の南西方向に発展して出ていると見えることである。北極冠は歪である。ヘッラスは夕縁に近いが、ω=312°Wでは輝部内部の濃淡が出ている。
SGh氏像は縁取りを行っているのは頂けない。色は鮮やかだが、黄色の縁がおかしい。北極冠が出ないのもおかしい。
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http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140320/SGh20Mar14.jpg
21 March (λ=105°Ls~106°Ls):
AVn氏がω=251°WのIR像、Stefano
QUARESIMA (SQr)氏はGianni QUARRA(GQr)氏の紹介の掲載であるが、未だこちら側からコンタクトは取っていない。多分今回のことはGQr氏の一存であろう。像はω=258°Wで標準以上の画像。DBt氏はω=328°Wとω=334°Wで撮っている。MKd氏はω=204°Wの観測である。
AVn氏のIR像:ヘッラスはまだ雲か明るくない。エリュシウムの雲も出ず、アエテリアの暗斑の西側が明るいのだけ出ている。アエテリアの暗斑は些し詳細が出ている。北極冠(割れ目あり)の廻りのオリュムピアを含む明帯は好く出ているが、その又外側に帶があるような感じである。マレ・キムメリウムの北部の蟻ンコは好く出ていて。ボレオシュルティスの邊りも少々詳しい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140321/AVn21Mar14.jpg
SQr氏の像は一級品で、ヘッラスは出た許りだが、既に白さに濃淡がある。エリュシウムは白雲とアエテリア暗斑の西側の地肌がクッキリ分離している。暗斑の北部は二本に分かれている。南端近いアウソニアはワインカラー。マレ・キムメリウムの北部とヘスペリアの描冩は興味深い。夕霧はエリュシウムを越えてシュルティス・マイヨルまで達している。朝霧も濃い。ノドュス・アルキオニウスの描冩も興味深い。なお、北極冠の割れ目は斜めにexplicitに出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140321/SQr21Mar14.jpg
DBt氏の兩像はヘッラスの沈むところ。シヌス・メリディアニやマルガリティフェル・シヌスの北部の描冩は綺麗。但し、朝霧が濃く、朝縁のクリュセやマレ・アキダリウムの南部は霧に包まれている。北極冠の形もこの位置特有。ω=328°Wでは夕霧がシュルティス・マイヨルを濃く包み、さらに西へ延びている。
MKd氏の像は單像でエリュシウムが中央寄りだが、分離はよくない。夕端にオリュムプス・モンスの夕雲が濃く見える。南ではマレ・キムメリウムが横たわっているが、分離は好くない。北ではオリュムピアが北極冠の丁度上にきている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140321/DBt21Mar14.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140321/MKd21Mar14.jpg
22 March (λ=106°Ls): Mo氏とKm氏の像のみ。Mo氏はω=094°W、Km氏はω=106°Wで観測。
Mo氏像はLRGBよりRGBが些しメリハリが好いかと思うが、ソリス・ラクスの暗斑やオピル・カンドルの明帯が判る程度。クサンテの夕霧が赤道帶霧となって濃い朝霧に通じているのはB像で判る。なお、北極冠も鮮明ではないが、中央から霧の筋が出ているように見える。
Km氏像はB像もメリハリが効いて、オリュムプス・モンスやアスクラエウス・モンスの東側の雲が明るくクサンテの夕霧に続いている。これはL-カラー像でも見えて、オピルなども霧に入って居るのが判る(イウエンタエ・フォンスも見える)。ソリス・ラクスは夕縁近くだが、ティトニウス・ラクスは明解。ニロケラスの二本鋏も見える。北極冠は複雑そうだが、些し描写力が足りないか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140322/Mo22Mar14.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140322/Km22Mar14.jpg
23 March (λ=106°Ls): D ARDITTI (DAr)氏がω=233°Wで撮像したが、今期二番目の画像のようである。F
WILLEMS (FWl)氏は今期初登場で、ω=283°Wでの撮像、FMl氏はω=313°W、Mo氏がω=064°W、074°W、084°Wの三連像、MVl氏がω=074°W、(092°W)、094°W、Km氏がω=078°Wでccd像、Kn氏がω=080°Wでカラースケッチ、MJs氏がω=093°W、MKd氏がω=177°Wで撮像した。
DAr氏の画像はLRGB單像で、朝方にシュルティス・マイヨルが紺色で出ている。ヘッラスは本体が未だのようである。エリュシウム・モンスは可成り午後に入って居ると思う。雲は縦に見えるが殆ど明るくない。マレ・キムメリウムやウトピア邊りは詳細が出ている。オリュムピアは見えるが目立たない。
FWl氏のRGB像では夕端近いエリュシウム夕雲が顕著で、その南端から霧が吹き出してシュルティス・マイヨルの方に流れているように見える。ヘッラスははみ出す靄で包まれているように見える。大きい像だが暗色模様の詳細はない。
FMl氏像は白く明るいヘッラスが夕端、シュルティス・マイヨルの東側の夕霧が夕端からアエリアの方へ出ている。シヌス・サバエウスとシヌス・メリディアニは出ていて、エドムが明るい。北極冠を含む縁領域は霧で白く、朝霧に続いている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140323/DAr23Mar14.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140323/FMl23Mar14.jpg
Mo氏の處は前日よりシーイングが些し向上した風で(第一、第三像)、ソリス・ラクスからマレ・エリュトゥラエウム邊り、さらにマルガリティフェル・シヌスまで追える。アガトダエモンは顕著でオピル−カンドルは明るい。マレ・アキダリウムも全貌が見え、ヒュペルボレウス・ラクスも濃く、この角度は好い。左端の夕霧がマレ・アキダリウムの南部を通って朝方に向かっているのが見える。アスクラエウス雲が大きく白い様子。Bには赤道帶霧。第二像は詳細に欠くが、全体霧が溢れ出ている様子がある。但し、北半球は地肌が出ている色合いである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140323/Mo23Mar14.jpg
MVl氏像はMo氏の角度の後続で、RGB像で赤道帶霧が判る。朝方にはアスクラエウス雲が見える。ω=094°Wでは、オリュムプス・モンス、アスクラエウス・モンス の西山腹の雲が際だつ。ティトニウス・ラクスの描冩は判る。その北を太い霧の帶。北極冠の割れ目の影響は出ている様子。オリュムピアが揚がってきている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140323/MVl23Mar14.jpg
Km氏のカラー像はコントラストが着いて斑點だらけであるが、何となくリアルである。アウロラエ・シヌスの邊りの詳細は揃っている感じ。B像も面白く、赤道帶に沿って白斑並びは理解できるが、あちこちの小規模の暗い影の部分も興味深い。L-カラーでの北極冠は詳細に富んでいるように見える。なお、アスクラエウス・モンスの西側に雲が既にあり、タルシス山脈も褐色の暗い筋になって見えるが、三暗點には分離していない様に思う。オリュムプス・モンスも同定できないことはない。
Kn氏のカラースケッチは赤道に沿う白霧の太い帶を含んで、綺麗に仕上げられている。リム周邊部の描き方は真似が出來ない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140323/Km23Mar14.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140323/Kn23Mar14.jpg
MJs氏のRGB像で吃驚するのはアスクラエウス・モンスの西山腹の雲が長く南へ伸びていることで、これはタルシス山系に沿っているが、エリュシウムの雲の状態にも似ていよう。タルシス三山は未だ独立して見えているとは言えないだろう。オリュムプス・モンスは西側が明るいとはいえ、全体三次元的で秀逸である。Rを見ると恰も衝効果が現れたかに見えるが、未だι=13°である。北極冠も複雑さを見せ、コアからは靄が吹き出しているようだ。ソリス・ラクスなどの詳細はまだまだだが、ニロケラスの鋏から南の霧の拡がりは魅力的である。G像、B像共に優れている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140323/MJs23Mar14.jpg
MKd氏の像はオリュムプス・モンスの雲と暗帯を挾んで先行するタルシスの雲が白く濃い。エリュシウム雲は未だ形成の途上か、邊りは霧で覆われている。しかし、エリュシウム・モンスの邊りに針のような白い斑点がある。この時點から發達するか。然し全体としては寧ろR像で明るく、筋の區別も着く。プレグラのあたりは褐色。北極冠とオリュムピアの関係は注目。この日δ=14.0"となった。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140323/MKd23Mar14.jpg
24 March (λ=106°Ls~107°Ls):
この日は日本での久々のT
AKUTSU(Ak)氏の撮像があり、此はω=059°W(およびω=061°WのIR像)の作品である。次にSBd氏のω=098°Wがつづく。
Ak氏像は久々の32cm反射での撮像で、B像では夕縁のテュミアマタから赤道帶霧が写され、朝方では白く大きい "アスクラエウス雲" に連結している。暗色模様ではマレ・エリュトゥラエウムからソリス・ラクスの帶、マルガリティフェル・シヌスとアウロラエ・シヌスの流れが見えるが、詳細はない。オピルは明るい。ティトニウス・ラクスには朝方の霧が流れ込んでいる。アスクラエウス雲の北側にワインカラーの部分があって、ここは晴れているが、その後方の朝霧は可成り濃い。ヒュペルボレウス・ラクスは最も濃いが、北極冠も含め、邊りの詳細は無い。
SBd氏のB像での赤道帶北側の雲の並びは面白い。既にアスクラエウス雲は消えているが、オリュムプス・モンスとアスクラエウス・モンスの西山腹の雲の他、夕方のクサンテの夕霧に連なってオピル-カンドルにも霧が立ち込めている。その他アルバにも南西に尾を引く薄雲がある。暗色模様ではソリス・ラクスが夕方に見える。ティトニウス・ラクスは好く見える。ニロケラスは夕霧に侵されている。北極冠の描冩は好く、西側のコアと先行する多分砂色の箇所が分離している。オリュムピアは西側に些し離れて顔を出している。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140324/Ak24Mar14.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140324/SBd24Mar14.jpg
25 March (λ=107°Ls): LAt氏のω=208°W、FMl氏のω=280°W、EMr氏のω=292°W、JKz氏のω=060°W、MVl氏のω=069°W、BCr氏のω=080°W+087°W と続く。
LAt氏像は單像で、オリュムプス・モンスの沈んだ跡の弱い夕霧と濃い朝霧が白い。中央にエリュシウムが明るいが白い雲とは言えない。オリュムピアもガスっぽく白い。マレ・キムメリウムなど詳細はないが、ウトピアの上にノドゥス・アルキオニウスが見えているのは感心。
FMl氏の像はシュルティス・マイヨルがど真ん中で、ヘッラス、夕端のエリュシウムが真っ白。北極冠も白く見え、オリュムピアが東側に見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140325/LAt25Mar14.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140325/FMl25Mar14.jpg
EMr氏像では、シヌス・メリディアニのアリュンの爪も中に入っている。シュルティス・マイヨル南側はホイヘンスも含めて斑点状に見える。ウトピアの濃淡も面白い。ヘッラスは真っ白だが、濃淡がある。IRで氷床を見たいところ。なお、ヘッラスから東へも西へも靄が洩れている。エリュシウムは夕端で真っ白だが、南西の域外に靄が起っている。この霧はBではシュルティス・マイヨルに向かい、更に西に抜けている。その先の朝霧は強くない。北極冠も内部が複雜に面白く描冩されている。オリュムピアは沈むところだが可成り明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140325/EMr25Mar14.jpg
JKz氏像は單像で、西縁の處理は完全ではないが、朝方にアスクラエウス雲も濃く出ている他、タルシス三山とオリュムプス・モンスの山頂が褐色點として分離して見えているが、像としては今期最初ではないかと思う
(これは早くはない。1997年にはλ=096°Lsからアスクラエウス・モンスの暗斑點は観測されていたし、有名なPaulo
TANGA氏の三頂暗点観測はλ=104°Lsであった。1996/97 Mars
Sketch (3) CMO #201 (25 March
1998) を見られたい)。暗色模様は、テュミアマタからの夕霧がマレ・アキダリウムの南部を暈かしているほか、ソリス・ラクスの邊りへも朝霧に先立つ霧が及んでいて、どれも鮮明ではないが、大概のものは出ている。シヌス・メリディアニは夕端に沈むところである。ヒュペルボレウス・ラクスは切れ込みの入った北極冠を抱き込むような形である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140325/JKz25Mar14.jpg
MVl氏像ではアスクラエウス雲が際だつ。タルシス三山もぼんやり見える。シヌス・メリディアニは未だ沈みきらない。アウロラエ・シヌスからティトニウス・ラクスに掛けての描冩は好い。ヒュペルボレウス・ラクスに抱かれる北極冠はJKz氏の北極冠に比べてピントが好い感じである。R像が手助けする。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140325/MVl25Mar14.jpg
BCr氏の像はまた朝方の雲の配置を新鮮にする。ω=080°Wで、既にアスクラエウス雲は分散し、タルシス山脈の西側に白く濃い筋を作り、またオリュムプス・モンスの東側に矢張り東西の筋雲を作っている。ω=087°Wで見るとオリュムプス・モンス全体は金環状になって見える。これは23MarchのMJs氏のω=093°Wの像と比較すると面白い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140325/BCr25Mar14.jpg
なお、BCr氏の北極冠附近も明解で、北極冠の南端の複雑さが好く出ている。右側のオリュムピアと思われるところのものは、オリュムピアの切れ端であるようだ。極小期の北極冠のHSTの画像は 1996/97
Mars Sketch (4) CMO #202 (25 April 1998)を見られたい。
26 March (λ=107°Ls~108°Ls): KSm氏はω=200°Wでカラースケッチ、SGh氏はω=160°W、LAt氏はω=177°Wで撮像した。
KSm氏は(00:30GMTだから前日に近い)、殆ど中央でエリュシウムを白く描いている。またオリュムプス・モンスの沈んだか、沈む邊りで夕縁の白雲を描いている。南半球の暗色模様はマレ・キムメリウムであろう。
SGh氏の画像は夕方にオリュムプス・モンスのコットンボールを描き、その先にタルシス関係の白雲が暗部を含んで綺麗。朝方ではエリュシウムの南部に懸かる濃い朝霧を描いている。北極冠は然程明るくないが、同等の明るさでオリュムピアの立ち上がりを見せている、
LAt氏の画像では朝霧に影響されるエリュシウムが些し内側に入り、夕方ではオリュムプス・モンスの白雲が夕縁に近づき、暗筋を隔ててタルシス雲は殆ど夕縁に近い。アエテリアの暗斑の北端とプロポンティスIが同等の濃さで朝方に見える。南では詳細はないがマレ・キムメリウムが格好良い。北では北極冠の南西にオリュムピアがガス状で見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140326/KSm26Mar14.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140326/SGh26Mar14.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140326/LAt26Mar14.jpg
27 March (λ=108°Ls): PGc氏がω=280°W(IRはω=283°W)で撮像、Mo氏がω=029°W、034°W、039°W、044°Wで5°W毎に連写、Ak氏がω=030°W、060°Wで撮像、JKz氏がω=030°Wで撮り、Kn氏がω=040°W、050°Wでカラースケッチ、Km氏がω=049°Wでカラー撮像した。
PGc氏のRGB像は些し荒れた感じだが、ヘッラスからの靄の洩れ、淡い赤道帶霧など記述している。夕端にエリュシウムの雲が真っ白。北極冠の描冩は月並み。IRではヘッラスは北極冠よりやや暗い程度。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140327/PGc27Mar14.jpg
Mo氏のLRGBのω=029°Wではブランガエナも見え、マレ・アキダリウムも標準以上に見えている。その後シーイングは劣化するようだが、ω=039°W以降、アスクラエウス・モンスの頂上が暗斑點で出ている。なお、マレ・アキダリウムとヒュペルボレウス・ラクスは二本運河で結ばれている。北極冠は中央に割れ目。
Ak氏のω=030°WのRGB像で中央のマレ・アキダリウムが相當に淡化していることが出ている。B像でテュミアマタからの赤道帶霧が太く描かれる。IRで、マレ・アキダリウムとヒュペルボレウス・ラクスは二本運河が出ている。ω=060°Wではシーイングが若干悪化、タルシス三山の山頂が見えているようだが、描写力が伴わない。朝霧が濃い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140327/Mo27Mar14.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140327/Ak27Mar14.jpg
JKz氏像は單像だが、日本よりシーイングが良い感じ。南端に小さい白味だが、直ぐ縁のゴーストが続く。大抵の詳細は出ているが、大接近時に親しいアウレア・ケルソが描冩されている。マレ・アキダリウムは北西角を残して全体淡化しており、ヒュペルボレウス・ラクスに抱かれる北極冠は東部の明斑以外、砂塵の影響を受けている様子が描かれている。オリュムピアの雪片も出てきている。タルシス方面の朝霧は強く、アスクラエウス・モンスの斑點も出ているようだが、もう40分後、80分後の影像がないのは惜しい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140327/JKz27Mar14.jpg
Kn氏の二枚のスケッチはシヌス・メリディアニの夕端近くの様子やテュミアマタの夕霧の様子が好く捉えられている。クリュセは黄色みがあり、赤道帶霧の影響であろう。ヒュペルボレウス・ラクスは両者とも捉えている。前者ではテムペの西は些し赤い。南端の白味は小さい。
Km氏のL-カラー像は綺麗な色だが、暗色模様はどれも太い。朝霧が強い。B像の赤道帶霧は明白。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140327/Kn27Mar14.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140327/Km27Mar14.jpg
28 March (λ=108°Ls~109°Ls):
MVl氏がω=010°W、030°W、047°W、052°Wのロングヴァージョン、Ak氏がω=014°W、022°W、054°Wで撮像(Ak氏は折角だが前日との重なりがない)、SBd氏がω=027°W、036°Wで撮像、MJs氏がω=053°Wで、MKd氏がω=132°Wで撮った。
MVl氏の像は淡く仕上げて迫力が無いが、詳細は好く出ている。ω=010°Wではシュルティス・マイヨルが夕端に殘って、夕霧。朝方のクリュセは矢張り霧だが、マルガリティフェル・シヌスからアウロラエ・シヌスに掛けての詳細は出ている。マレ・アキダリウムは矢張り西北角を残して淡く、ヒュペルボレウス・ラクスは濃いが中に砂塵があるようである。北極冠はカスマ・ボレアレの割れ目が出ていて。東端は茶色。ω=030°Wでの収穫は、アスクラエウス・モンスの褐色暗斑が朝縁近くに明確に出ていること。ブランガエナ、ニロケラス、イウエンタエ・フォンス、カスマ・ボレアレ、アウレア・ケルソなど微細構造は綺麗に揃っている。
ω=047°Wでは、アスクラエウス・モンスに加えて、パウォニス・モンスの斑點が出てきた。この像では北極冠のカスマ・ボレアレ附近の描写が抜群である。オリュムピアは可成り伸びてきた。南端に淡い霧か。ω=052°Wでは、夕縁に來てもブランガエナは見えるから、未だ氣流は安定しているのであろう。遂にタルシス三山は揃い踏みになった。此はB像でも如実。アスクラエウス雲効果も出ている。オリュムプス・モンスの山頂も出てきたようだが、アーティファクトな線も出てきて、此は殘念。北極冠とヒュペルボレウス・ラクスの相互作用は美事。MVl氏の労を労いたいくらいだが、40分ごとの撮像ならさぞ好かったのにと思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140328/MVl28Mar14.jpg
Ak氏像のω=014°Wは良像である。然し北極冠の像を見ると氣流は十分でないのかも知れない。ω=054°Wではタルシス山系が出ているのだが、キレがわるい。B像でもクッキリ捉えられるはずである。IRでも痕跡もない。MVl氏像に比べて、暗色模様の濃度が高い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140328/Ak28Mar14.jpg
SBd氏の二像は標準以上で、シヌス・メリディアニの邊りの微細は美事。特にω=036°Wでアスクラエウス・モンスの褐色斑點が確実なのにも拘わらず(兩像のG像やB像でも明確)、近くにゴーストの弧線が見えて殘念である。もう少し後の時刻の影像が欲しいところ。微細構造は例えばアウレア・ケルソ邊りにも見られ。北極冠のカスマ・ボレアレ附近の惚け具合も好い。
MJs氏の像もタルシス三山頂が出ているが、矢張り縁處理が満点ではない。アウレア・ケルソ他の微細も好く出ていて、夕縁に來たシヌス・メリディアニのアリュンの爪が割れているのは凄いし、北極冠の描冩はMVl氏のω=052°Wに比べて仰天である(MJs氏はω=053°W)。南端についてはG、Bで好く描冩。
MKd氏像は白いオリュムプス・モンスが中央附近。アルシア雲を含むタルシス雲からクサンテの夕霧は濃い。アルバもやや白い。北極冠の廻りは興味深いが、シーイングの所爲で描冩不足。南にはマレ・シレヌムか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140328/SBd28Mar14.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140328/MJs28Mar14.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140328/MKd28Mar14.jpg
29 March (λ=109°Ls):
DBt氏がω=247°Wで、EMr氏がω=255°W、LAt氏がω=142°W+162°Wで撮像した。
DBt氏像はヘッラスが顔を出したところで、Bでは朝霧が強く、RGBでは朝のシュルティス・マイヨルは蒼っぽい。エリュシウムは南北縦長に白い。ケルベルスを越えて夕霧が見える。北極冠の東南にオリュムピア。
EMr氏像ではエリュシウムの白雲はアエテリア暗斑から離れている。ここから朝方に掛けて淡い赤道帶霧。マレ・キムメリウムの北部は些し詳細があるが、十分ではない。中央付近のウトピアは禿げたように見える。
LAt氏像ではオリュムプス・モンスの雲が真ん中にみえる。タルシス雲も些し離れて見え、その先の縁に多分クサンテ起源の夕霧が青白く見える。朝方も霧が強く、ω=142°Wではエリュシウムがディスクに入ってくるところで。ω=163°Wでは既に入って居る。プロポンティスIは既に前者で濃いが、後者ではアエテリアの暗斑の北端が濃く見えている。北極冠とオリュムピアは二つ玉のように見える。ω=163°Wではマレ・シレヌムが午後でマレ・キムメリウムが朝方という格好。
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30 March (λ=109°Ls~110°Ls): Charles TRIANA(CTr)氏はコロンビアからω=222°Wと三時間強後のω=269°Wの二像、DBt氏はω=238°Wの像、MJs氏はω=020°Wの像を投稿。
CTr氏像は、シュルティス・マイヨルの入ってくるところとCMに近づいているところの二像。前者ではシュルティス・マイヨルは細く蒼い。エリュシウムは白雲と地肌に分かれているみたい。オリュムピアは北極冠の南にある。マレ・キムメリウムやヘスペリアの描冩も好く、アリンコの様子は出ている。後者ではヘッラスが入ってきている。エリュシウム雲は夕方に近い。ウトピアは淡く描冩。オリュムピアは夕方。
DBt氏像は前日とほぼ10°W違い。コメントをすると殆ど同じになる。Bでは些し暗色模様が出過ぎのように思う。
MJs氏の像は既にタルシスを過ぎた。シヌス・メリディアニの邊りの描冩、北極冠の近傍描冩は優れている。マレ・アキダリウムは淡い。左端の夕霧内に微細構造がある模様。南端は目立たない。右端處理は拙いと思う。
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http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140330/DBt30Mar14.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140330/MJs30Mar14.jpg
31 March (λ=110°Ls): この日視直徑はδ=14.7"であった。Km氏はω=353°Wで、Mkd氏はω=100°Wで撮像した。なお、この日筆者の一人(Mn)は西田昭徳(Ns)氏の介助を受け、足羽山の福井市自然史博物館天文台の20cm屈折で二年ぶりに、今期初観測を行った。2012年に倒れた時の条件を考え、氣温の低い時期は避け、気候の好くなる時期を待ったわけである。
Km氏の像はいつもより質を落としているが、シーイングの所爲であろう。シュルティス・マイヨルの北部に夕霧が懸かっている他、ヘッラスの名残が些し見える。朝霧は濃いが、マレ・アキダリウムの北部の朝方にも濃い雲がある様だ。シヌス・サバエウスの詳細はない。
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MKd氏の画像は興味ある様相で、アスクラエウス・モンスの西側山腹には濃い雲があり、オリュムプス・モンスも円環形に見える。位相角ιは7°になったから、そろそろ衝効果で輝く時期だが、B像には山腹雲が冩っているから、この円環は気象的なものであろう。尚、この像にはソリス・ラクスの詳細がいくらか見えていると思う。その南には霧。ティトニウス・ラクスも好く出ている。クサンテからの夕霧は可成り伸びている。興味あるのは北極冠で、カスマ・ボレアレも見えるが、その東から靄が起っている。
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Mnの眼視観測はω=004°W、014°W、026°Wで行った。アイピースはイエナの6mmで、最初想像以上に大きい像で、相當長く見つめたのであるが、なかなかカンは戻らず、その内マレ・アキダリウムが中に入ってきてしまった。三回目になると、直覗きであったため、首が痛くなった。次回からペンタプリズムを使うことにする。なお、スケッチは右手がぎこちなくて、鉛筆捌きが拙く、絵にならず、メモのような具合以上にはならない。シヌス・サバエウスやヒュペルボレウス・ラクスなどは濃く把握したが、朝霧だけでなく火星面は相當霧状のもので覆われて居るという印象が強かった。通常のccd像は矢鱈増感されていると思う。なお、Ns氏は四月に入って撮り始めた。五月の連休には淺田正(As)氏のお世話で飛騨へ行くそうである。
(村上 昌己/南 政 次)