Ten Years Ago (217)

 ---- CMO #272 (25 May 2003) pp3559~3622 ----

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn3/cmo272/index.htm


の年の五月連休中には福井市自然史博物館で「今年の夏は火星!!」と題された一般向けの講演会や十一回目となった惑星観測者懇談会が開催されたが、その様子がトップページで、英文のコラムの簡略な形で、紹介されている。4日昼間の一般向け講演では、かなりの聴衆を集めた。まず中島孝氏が、1938年にアメリカ国内で起こったオーソン・ウエルズ(Orson WELLES)のラジオ番組(H G WELLS原作「宇宙戦争」 )に起因する大混乱の様子を取り上げた。続く岡野邦彦氏は核融合の専門家として、核融合プラズマを推進力とする宇宙空間ロケットの可能性に関して講演された。最後に筆者(Mk)がクロマニヨン人の時代以来の記録的大接近となる今回の2003年の火星接近に関する紹介をおこなった。4日夜の、CMOメンバー懇談会では岡野氏がCCDカメラのチップの感色性やフイルターワークなど、正確な色の再現に必要な情報を披露された。5日には穴水ローヱル会議の先駆けとなる集会があり、佐藤利男氏(OAA歴史課長)、高成玲子さん(富山大学)、坂下(穴水町)の皆さんからパーシヴァル・ローヱルに関する種々の発表がおこなわれた。メンバーは3日・4日の早朝には自然史博物館天文台で火星合同観測をおこなっている。

 

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn4/CMOMeet.htm#CMO_Meeting_2003_Fukui

 

 

 2003 Great Mars CMO Reportは七回目の報告となり、2003年四月下旬と五月上旬の報告が取り上げられている。視直径はδ=10"を越え観測報告者は増加して22名となった。日本からは10名、アメリカから5名、ヨーロッパは3名、アジア・オーストラリアから4名と、アジア-ヨーロッパ間が手薄だが観測が繋がる様になってきた。この期間に火星はいて座からやぎ座に入り赤緯が高くなってきた。季節はλ=169°Lsから185°Lsに進んで2001年に大黄雲の発生した時期になった。視直径はδ=8.4"から10.6"と大きくなり、位相角はι=43.1°とこの期間に最大に達した。傾きはφ=14°Sから19°Sとますます南向きに大きくなり、南半球が大きく見えてきた。

 レポート(CMO 2003 Great Mars Report #07)Mn氏の英和両用の記述になる。まず、ワールドワイドに観測の繋がった16Aprの様子を取り上げ、次いで南極冠の様子から対象毎に北へ向かって状況が記述されている。南極冠にはλ=170°Ls過ぎから内部に翳りが生じてきた。ダークフリンジも見え始めている。五月始めにヘッラス西部の明るさが森田行雄(Mo)氏・熊森照(Km)氏のCCD画像では捉えられたが、懇談会の時の合同観測では眼視的には目立たなかった。朝方のシュルティス・マイヨルは朝靄の中でなかなか見えてこないが、ToUCamの画像では青色光にリークがあり見えてしまうのが拙いとしている。夕方のタルシス山系のW型雲に関して、西側の淡化したソリス・ラクス、マレ・エリュトゥラエウム辺りの淡化なども取り上げている。傾きは南に大きくなっているが北極雲や吹き出しも時々認められている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmohk/2003repo/07/07j.html   

 

 LtEには、国外からEric NG (呉偉堅, Hon Kong), Jeff BEISH (FL, the USA), K C PAU (鮑國全, Hon Kong), Dave MOORE (AZ, the USA), Damian PEACH (the UK), Maurice VALIMBERTI (Australia), Don PARKER (FL, the USA), Frank MELILLO (NY, the USA), Christophe PELLIER (France),  Bill SHEEHAN (MN, the USA),  Don BATES (TX, the USA), Paolo LAZZAROTTI (Italy), TAN Wei-Leong (陳韋龍, Singapore), Carlos HERNANDEZ (FL, the USA), Ferruccio ZANOTTI (Italy), Erwin van der VELDEN† (Australia) の各氏、国内からは、岡野邦彦(東京)、渡辺 (富山)、熊森照明(大阪)、牧野彌一(富山)、日岐敏明(長野)、森田行雄(広島)、長 兼弘(石川)、中嶋秀夫(石川)、岩崎 (北九州)、高成玲子(富山) 保男(滋賀) 伊舎堂弘(沖縄)、佐藤利男(東京) の多くの各氏から寄せられたお便りが掲載された。内容では 五月連休中に福井で行われた懇談会関連の他、使用が増えてきたToUCamでの青色光画像の緑色光漏れの問題や、Great 2003 Mars Coming (8)で取り上げた、熊森氏考案のウエッジプリズムによる低空時の大気分散の補正の話題が取り上げられている。

 

TYA#9320年前のCMO #133 (25 May 1993)の内容が日岐敏明氏により綴られている。この期間には1992/93年接近期は最終盤となり、視直径δも5秒角台まで小さくなっていた。季節はλ=067°Lsから079°Lsまでの変化で、北半球と北極冠の様子などが伝えられている。また、デンマークからCMO会員のエリーザベト・シーゲル(ESg)さんがご主人(現代作曲家)の武生国際音楽祭参加に伴われて来日され、足羽山や三国で福井のメンバーと交流を持った時の様子が、紹介記事として掲載された。シーゲルさんとの邂逅は廿年前ということになる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn3/272tya93.htm

 

 

なお、第一シリーズの印刷版の発行はこの号で中断している。梅雨をさけて沖縄に遠征観測をした南政次氏が連日の観測と多くのe-mailの対応で編集の時間がとれなくなったためで、後日になりWebPageCMO#289 (25 March 2004)までの続編が掲載された。

村上 昌己 (Mk)


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