2009/2010 CMO火星通信』火星觀測ノート (6)

何故オリュムプス・モンスは2010年の衝には輝かなかったか。

CMO #378 (25 November 2010)

南 政



 

リュムプス・モンスは2005(或いは古くはスキアパレッリの1879)などにニクス・オリュムピカとして朝から夕方まで輝いていたのに(オリュムプス・モンスが朝から夕方まで輝いていることは1988年にCMOで指摘している)、最近、特に2010年の衝には變哲も無かったことは周知のことである。これはどうしたことか。

 

今回は、衝は29Jan(λ=044°Ls)19.5GMTであった。既に北の春分を過ぎている事に注意する。

 

一方、既に夕方の山岳雲がオリュムプス・モンスの東側に綺麗に出ていることはピート・ローレンス(PLw)氏の17Jan(λ=039°Lsι=11°)ω=184°Wの良像に出ていることで明白である。これは衝を迎える直前である。山岳雲は幾つかの像に現れているがここでは省略する。

 

朝方に移って、PLw氏の25Jan(λ=043°Lsι=05°)ω=110°Wでは盾状断崖内の内部構造は判るが輝いてはいない。朝方でのオリュムプス・モンスの像では23Jan(λ=042°Lsι=06°)ω=085°Wのデミアン・ピーチ(DPc)氏の像から29Jan(λ=044°Lsι=03°)ω=053°Wのパウロ・カスキニヤ(PCq)氏までの像までかなりあるが、輝いているものはない。

 

衝時、ドン・パーカー(DPk)氏の31Jan(λ=045°Lsι=03°)ω=100°Wには朝方少し衝効果が現れている。しかし、Bにも出ていることに注意する。同氏の03Feb(λ=047°Lsι=05°)ω=062°Wでは、朝霧の中で寧ろ暗い。

オリュムプス・モンスとして、中央近くで輝いていない例としては、エフライン・モラレス(EMr)氏の27Jan(λ=043°Lsι=04°)ω=118°Wが好い例で、明らかに矢張り薄雲で覆われている(B光にも出ている)。同日、フランク・メリッロ(FMl)氏もω=132°Wから162°Wまで追っているが、強調處理のオリュムプス・モンスが明るいだけで構造がよく判らず、またB光を伴わない。28Jan(λ=044°Lsι=03°)ω=126°Wのピーター・ゴルチンスキー(PGc)氏の像や、EMr氏の29Jan (λ=044°Lsι=03°) ω=128°Wでは内部構造も見える。Bでは薄雲が見えている。カーロス・ヘルナンデスの同日のスケッチ(ω=131°W139°W)ではこれを強調したもので、衝効果ではないであろう。

 

 

理由はこうであろう。詰まり春分頃からは、夕方の山岳雲だけでなく、既に朝方からオリュムプス・モンス全體に薄雲が被り、火山岩で出來ている頂上・山腹の輝きが失われるということである。勿論、既に分析したように、春分後のタルシス山系は濃い朝霧の中で暗點としてとらえられるのであるが、そのときから或いはその直後から山頂・山腹は薄い霧に囲まれているのであろう。1988年やその他2005年度などは全く霧さえも被らず、火山岩の多分、頂上・山腹を覆う長石類が光り輝いて、朝から夕方まで見えているのであるが、春分前後からは薄雲に支配されるのである。通常、夕方に濃くなるから山岳雲の支配だけ強調されるが、そうではなく、明らかにλ=200°Ls邊りからλ=350°Ls頃までは確かに霧さえなく、朝から夕方までオリュムプス・モンスはスキアパレッリのニクス・オリュムピカとしてときには鋭く輝き明白である(λ=200°Ls邊りからλ=350°Ls頃までならば、何時の衝でも輝くことに注意しておく。ある特定のλでのみ輝くのでは無い。2003年と2005年の場合を比べるだけでも明瞭である)。オリュムプス・モンスの角度は(De+Ds )/2 (De=18°N)にある必要はない。何故なら、山腹は廣く、傾きの角度は大幅に確保できるからである。一方、北の春分後は強い朝霧から出たあとは弱い霧に覆われるということである。これは餘り意識されていない。薄いために存在が確認されないわけではないが、夕方のように強くはないというだけのことであろう。

 

2007年の衝は24Dec at 19.6GMTλ=007°Lsであったから微妙なところである。23Dec(λ=007°Ls)ω=190°Wのアルベルト・ベルデホ(ABd)氏の像には未だ山岳雲とはいえない程度の冩り方である。26Dec(λ=008°Ls)ω=156°Wのイグナシオ・スルトゥサ(NZr)氏の像では盾状断崖までの構造が出ているが、多分(B光がないが)薄雲は出て居るであろうし、同日のフランシスコ=ホセ・フェルナンデス(FFn)氏のω=174°Wではうっすらと雲が出ている。未だ山岳雲としても弱い時期である。

 

今後暫くは夕方以外中央附近では薄雲に覆われたハッキリしないオリュムプス・モンスと附き合うことになる。過剰な處理は禁物であろう。

 


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