よくある質問: 望遠鏡を使った本邦初の天体観望会は?

 寛政五年七月二十日(1793年8月26日)に京都の医者橘南谿(1753-1805)の伏見の別宅で遠眼鏡を使った天体観望会が開かれました。場所は地図にありますように、宇治川のほとり伏見城のふもとにあった黄華堂という別荘で、あたり一帯は南に小椋池をのぞみ名月観望の地として知られていました。そのときの様子は橘南谿著『望遠鏡観諸曜記』、伴蒿蹊著『閑田次筆』に詳しく記されています。

 集まったのは橘南谿の友人12人でした。用いた望遠鏡は貝塚の岩橋善兵衛が製作しました遠眼鏡(屈折望遠鏡)でした。月、日、歳星(木星)、鎮星(土星)、太白(金星)を観察し、鬼宿の白気(プレセペ星団)が星の集まり、 奎宿の白気(M31)は遠眼鏡で見ても白気、北斗の開陽星、牛宿の二重星、天の川は「銀河の中の最白きを見れば、細小の星数十百千聚て、紗嚢に蛍を盛ごとし」とあります。これはガリレオの『星界からの報告』の天の川の観察記録とまさによく似ています。


冨田良雄 2009年10月16日(河村聡人 2022年5月11日改訂)

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