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彩層グレインについて
太陽表面の大部分は静穏領域と呼ばれますが、これは活動領域と比較すれば 静かであるという意味で、静穏領域でも小規模な活動が観測されています。 グレインという現象はまだ統一された定義があるわけではありませんが、 ここでは彩層の線のフィルターを通して観測した画像の中で、 直径1 2 arcsec (1000 km)ほどの黒い粒状の構造を指します(右側の図)。 左側の図は、線付近の分光データです。分光データのドップラー シフトを調べた結果、グレインは狭い領域で6 km/sという彩層としては大きな 上昇速度によって発生していることがわかりました。 太陽表面(光球)の温度は6千度なのに対してその上にある彩層は1万度、 さらに上空のコロナは100万度と高温になっています。これを説明するためには、 彩層やコロナが何らかの形で加熱されている必要がありますが、 どのようなしくみで加熱されているかはまだよくわかっていません。 グレインは上昇運動によって発生する現象であり、太陽全面で見られることから、 彩層におけるエネルギー輸送を考える上で重要な現象です。 グレインの上昇運動が発生する原因としては、音波によるショックや 細い磁束管中のエネルギー解放などが考えられています。 これらの説を検証するためにはさらに観測を重ねる必要があります。 彩層グレインは可視光で観測できるため、高い時間分解能で高分散という地上の 分光観測装置の利点を活かすことができる研究対象です。 また、これまでに多くの観測例が報告されているカルシウムK線、H線のグレインの 性質との関連を調べるためには、複数波長での同時分光観測が必要となるため、 今後ドームレス太陽望遠鏡の水平分光器で観測を行いたいと考えています。
(神尾 精 記)
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