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恒星・原始星フレアの数値シミュレーション
太陽フレアは太陽系内最大の爆発現象ですが、宇宙の他の恒星にはさらに激しい
フレア現象を起こすものもあります。これらの恒星フレアのメカニズムを調べる
際には、詳細な観測のある太陽フレアの研究に基づいた理論モデルが基礎と
なります。一方、物理状態の異なる天体のフレアを調べることで、太陽フレア
だけ調べていたのでは分からなかった新しい物理を発見する可能性があります。
このように太陽と他の天体の研究は互いに相補的であり、両者の協力は
近年その重要性が一層増して来ています。
他の恒星のフレアも太陽フレアと同様、磁気リコネクションによる磁気 エネルギーの急激な解放によって引き起こされていると考えられています。 フレアを起こす天体として知られているものには、低質量晩期型星、 近接連星系、そしてT-タウリ型や原始星などの若い星があります。 中でも生まれたばかりの星である原始星では、温度が太陽フレアの 10倍( 1億度)、エネルギーが10000倍( erg)にもなる 激しいフレアが起きていることが、90年代の人工衛星による X線観測で分かって来ました。このような原始星フレアのモデルとして、 中心星と周囲の原始惑星系円盤(降着円盤)をつなぐ巨大磁気ループで フレアが起きるといった猫像が提唱されています(下図左)。 本研究ではこの猫像に基づいて、中心星と原始惑星系円盤を 結ぶフレアの1次元流体シミュレーションを行いました。 下図右は、円盤付近のループにそったガスの密度分布を示しています。 点線がフレアの起きる前で、実線はフレアが起きた後の時間変化を 表しています。フレアは図の左側で起き、そのエネルギーが熱伝導 により円盤に伝わって、円盤中のガスが熱せられて広がっている 様子が分かります。いわば、フレアによって円盤が蒸発している ような状態になっています。シミュレーションの結果、エネルギーの 大きなフレアでは、円盤中のガスが全て蒸発してしまうことも ありえることが分かりました。このような原始惑星系円盤中での 高エネルギー現象の証拠は、現在の太陽系中の小惑星や隕石の 中にも認めることができます。これらのことは、我々の太陽系 における惑星の形成過程においても、磁場によるフレアが重要な 役割を果たしていた可能性があることを示唆しています。
(磯部 洋明 記)
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