(22) と軟X線フレアループ構造の高精度な比較
大規模フレアに伴って 線でループ状構造が見られることがあり、
これをポストフレアループと呼びます。
飛騨天文台ドームレス太陽望遠鏡(DST)では1992年11月2日のフレアに伴う
ポストフレアループが観測しましたが、
DSTでは現象の初期から観測されており、またようこう衛星の
軟X線撮像装置(Yohkoh/SXT)でも同時に観測されたという貴重なデータです。
線や軟X線でループ構造が見られる原因は次のように考えられています。
フレアによって生成された高エネルギー粒子が磁場に沿って彩層に突入し、
磁気ループは彩層蒸発によって生じた高温のプラズマで満たされます。
高温プラズマ(K)は軟X線でループ状の構造として見え、
これが冷却されて温度が下がる(K)と 線で見られる
ようになると考えられます。
そこで、 と軟X線のループ構造の時間変化を詳しく調べることに
よってプラズマの冷却時間を求めることを目的に解析を行いました。
まず、 と軟X線画像の位置合わせを行ってループ構造を
比較した結果、 と軟X線のループ構造で共通した特徴が
あることがわかり、 の構造は軟X線の構造が冷却された結果
であるという説明が裏付けられました。
次に、ループ構造の対応関係が確かめられた定点について、
と軟X線の明るさの時間変化を求めました(図1)。
この結果は の時間変化はと軟X線よりも遅れてることを示すもので
この遅れはプラズマの冷却時間と解釈することができます。
さらに、Yohkoh/SXTの2種類のフィルターで撮像したデータから温度と密度を求め、
プラズマの冷却時間を概算してみました。
単純な熱伝導と輻射による冷却を考えた計算でプラズマの冷却時間を概算すると、
観測データの解析から求められた冷却時間に近い結果が得られました。
この結果は観測データから求められた遅れが冷却時間時間であるという解釈と
符合するものです。
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Figure:
図1. 左側:同時刻における  と軟X線のループ構造。右側:定点におけるH  と軟X線の明るさの時間変化。
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(神尾 精 記)
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