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はじめに平成13年度は、当天文台にとって、更なる発展に向けた記念すべき年となりました。 当天文台の新しい特別設備として、太陽活動総合観測システムの飛騨天文台への設置が、 13年度の補正予算で認められました。本設備は、既設のドームレス太陽望遠鏡の性能を 更に向上させるためのマルチチャンネル高分解能撮像装置と、太陽全面の及びベクト ル磁場を同時に世界最高分解能で取得する太陽全面像望遠鏡から構成されております。こ の装置の導入によって、飛騨天文台は世界最先端の太陽地上光学観測所としての機能を、 更に一段と強化することになります。本特別設備の予算獲得にご尽力を戴きました、文部 科学省と京都大学各位に厚くお礼を申し上げます。また更に、この設備の性能を十分に発 揮させる為にも、長い間の懸案となっております、ドームレス太陽望遠鏡の塔体表面冷却 システム改修工事の早期実現に、一層のご理解をお願いする次第であります。 花山天文台では、長年にわたる懸案であった建物等改修工事が認められ、本館と別館の 外装を中心とした改修が行われました。屋上外壁の防水工事、腐食した窓枠・扉の取り替 え、外壁の化粧直しによって、内装その他残された課題は依然として多くあるものの、昭 和4年(1929)の創立以来73年ぶりに、見違えるようにきれいになりました。この第一期 大改修の実現にご尽力戴きました京都大学本部・理学研究科各位に対し、ここにあらため てお礼を申し上げます。 花山天文台で活動する若者の数は、最近急に増加して、かってなかったと思われるくら いの活況を呈しています。例えば2001年4月10日の05時UTに発生した大規模な太陽フ レアは、花山天文台別館のザートリウス望遠鏡で、技術補佐員の鴨部麻衣氏によって見事に 撮影され、大学院生の浅井歩氏らによって解析されて、2002年1月にハワイで開催された 国際学会で発表されましたが、そこで最も注目を集めた研究発表の一つに選ばれました。 花山天文台創設以前に購入された92歳のザートリウス望遠鏡が、新しいフィルターと CCDカメラを得て蘇り、若い研究者や技術員によって最先端の研究成果が得られたことは、 現在の花山天文台を象徴する好例でした。今後更に、他機関を含む多くの研究者、大学院 生及び学部学生が活躍する場として、青少年をはじめとした、一般の人々の生涯学習にも 開かれた場として、飛騨及び花山天文台の施設設備を一層整備拡充して行きたいと考え ております。 他に13年度に特筆すべきこととしては、柴田一成氏が「宇宙ジェット・フレアにおけ る基礎電磁流体機構の解明」において、日本天文学会から林忠四郎賞を授与されました。 柴田氏の開拓している太陽宇宙プラズマ物理学における独創的な教育研究の成果が認めら れたもので、これを機会に更なる活躍が期待されます。 一方で、時代の流れを感じさせることとしては、飛騨天文台の赤羽徳英氏が13年3月31日を もって停年を迎えられ、退官されました。飛騨天文台創設当時から、火星の観測 的研究の先頭に立たれ、太陽系物理学の教育研究に尽力され、火星気象学の分野を開拓さ れました。長年にわたるご活躍とご指導に感謝と敬意を表しますと共に、今後も引き続き 当天文台における太陽系天体の観測的教育研究に対して、別のお立場からご指導とご協力 をお願いしたいと願っております。
平成14年 9月
京都大学大学院理学研究科 附属天文台台長 黒河宏企
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