NGC 4151

NGC 4151

活動銀河核

中心核
NGC 4151の中心核付近
(トップ画像を拡大、レベル調整)

 上の画像の中央に写っているのはNGC 4151という、地球から約6200万光年の距離にある渦巻銀河です。 この銀河の特徴は中心部分がとても明るいことです。 中心核は、それを除く銀河全体に比べて際立って輝いています。 NGC 4151の中心付近を拡大してみると、明るく輝いている領域が狭いことがわかります。

 星の光だけでは、このような狭い領域が銀河全体に匹敵するほどの明るさをで光っていること説明することはできません。 現在では、この中心の明るい光は超巨大ブラックホールの活動によるものだと考えられています。 ブラックホール自体は光を放ちませんが、周囲のガスがブラックホールの強力な重力によって落ち込むと、 その重力エネルギーが光に変換されるのです。 NGC 4151の中心部分が明るく輝いているのはこうしたメカニズムのためです。

 このような銀河の中心部分を「活動銀河核」といい、NGC 4151は活動銀河核を有する銀河の代表例の一つです。 この「活動銀河核」からの光を波長ごとに分けて詳しく見てみましょう。

NGC 4151_kools

スペクトル

 上の画像の(a)は、中心核の光を波長ごとに分けた画像です。(b)は、波長ごとの明るさを縦軸にとったグラフです。 波長ごとに分ける観測を分光観測と言い、撮られた波長ごとの明るさの分布をスペクトルと言います。 スペクトルを見ると、上に突き出たたくさんのギザギザした成分があることが分かります。これらは輝線と呼ばれ、 活動銀河核に存在する様々な元素によって生じています。 (b)に書いてある元素記号は、その輝線が何の元素によって放射されたのかを表しています。 遠く離れた天体であっても、そのスペクトル中で検出した輝線の強度や幅、中心波長を分析すれば、 放射しているガスの温度、密度、元素組成比や運動状態などの情報を得ることができます。 圧倒的な情報量こそがスペクトルの最大の強みです。例えば、656.3nmは水素、500.7nmは酸素が出している光です。 このうち水素がだしている光は波長幅が広い(輝線のすそ野が拡がっている形)ことがわかります。 これは主にブラックホールの強い重力場によって高速に動くガス雲のドップラー効果によるものです。

もう1つの情報-時間変化-

 私たちは活動銀河核の進化やその物理的特性を明らかにするために、NGC 4151のスペクトルモニタリングを実施中です。 長期間にわたってスペクトルを取得し比較することで、 輝線の明るさや形状変化が時間的にずれて起こることからブラックホール周辺のガス雲の分布を明らかにしようとしています。 また、日本が主導しているX線観測衛星XRISM(クリズム)で取得したX線スペクトルの時間変化と組み合わせることで、 NGC 4151の中心部の構造やブラックホール周辺の活動状態の詳細が明らかになると期待しています。

トップ画像
2024年5月4日21時50分(JST)
観測装置:TriCCS
露光時間:g, r, i各バンド 540秒
写野:23.4 x 13.8 arcmin
 (横2x縦2の写野をマッピング)
Ⓒ 京都大学岡山天文台/ 東京大学
高解像度版(4007x2370 pix, 7.8MB)

スペクトル
2024年5月10日23時34分(JST)
観測装置:KOOLS-IFU
露光時間:VPH-blue 720秒
Ⓒ 京都大学岡山天文台