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(II)


 

木の實落つ音も十七文字の日記


2011年以後の俳句帖はこちらをご覧下さい

 



2010



 

數へ日の光を放つ觀覧車

明け星や靴音たちまちに凍る

クリスマスカクタスくちびるの不味し

銀杏散る光に表裏ありにけり

 

            年上の俳句友達冬日燦

 

冬紅葉たつたひとつの蛇笏の碑

 

地球いま暮れてのひらの蜜柑かな

 

白猫の透けてももいろ十一月

 

十三夜指輪たやすく抜けにけり

結び目の解けてゐたり神の留守

 

陽を返す蟷螂(かまきり)といふ葉の欠片(かけら)

星ひとつ透けゐし雲や蚯蚓鳴く

 

 

天の原芒の原に平伏して

 

 

 

閉ぢゆきし時空一条芒原

 

 

花すすきB612小惑星

 

 

 

 

 

 

鈴虫のすずなり星に浪漫など

 

蚯蚓鳴くや締切迫る夜のポスト

しあはせなふりして竈馬(いとど)鳴かぬ夜

 

暮るるより早き星の出鶏頭花

 

草の花呼声いつしか風となり   

 

耳順とは遠き無花果柔き青

 

電線のひとつが揺れて秋ついり

紅茶派となりし土曜日秋の雨

 

 

爽けしや日の透きとほる髪の色

 

潔き背骨一本秋刀魚かな

 

さやけしやうさぎの鼻のよくうごく 

 

 

推敲の一句兩斷初秋刀魚

 

短編の戀の話よ居待月

 

五つまで數へし十指秋燈

じぐざぐの腦内回路小鳥來る

 

 

いきものの息の不規則雨月かな

 

呼び出しの高き聲音や小名月

待宵やすこし濡れゐし髪の先

 

のぼーるの飛んで何方稲の國

「あ」の口の秋の金魚の現るる

 

死は風のやうにつくつくほうしかな

 

ふるさとは水の惑星糸瓜の實

 

ゆふづつの攫はれしかな虫のこゑ

 

しりとりのしりきれとんぼ赤とんぼ

 

丹澤はすぐそこ八朔の朝

八朔や赤穂の塩をひとつまみ

 

草影の時間止まれり祷り虫

二百十日手摺に乾ぶ鳥の羽根

 

秋聲や解きてしやぼん匂ふ髪

 

子規庵のからびし蛮瓜置かれあり

 

爽籟や天壽の果の夢枕

 

月ひとつ星のひとつや風の音

 

盆の月足首細き影ひとつ

 

町の名の神話の謂れ虫すだく

 

ちちろ虫線路向かうの街明し

 

風船葛こころひとつにあらずかな

 

ビー玉の中のみづうみ秋はじめ

バスの子のみな眠りをり白木槿

螺子すこしゆるんでゐたり秋の蝉

秋茜乾ききつたる焔かな

龍神の尾ひとつならず稲光

荻吹くや四尾龍神の水鏡

 

 

 

つくつくし音たてて飲む夕の水

八分の一ささげ持つ西瓜かな

 

火皿貝盆波聲音たてて來し  

 

 

ローマの休日指の先端より愁思

白木槿ひそめし君の顔愛し

吹替のペックのこゑや星流る

銀幕の扉の向かう秋七日

オードリィであらうと敵星の閨

 

 

あさがほの種子まつすぐに落ちゆけり

牽牛子や片割の似て非なるもの

 

支へなきあさがほのそらQuo Vadis

牽牛花日輪落とす空明し

あさがほのとどまるところ宙の果て

水をください蕣とひとひとり

 
夏銀河いのちの水の分岐點

 

(子規の朝顔)クリック可

 

 

新涼や一反木綿枕にし

 

 

けさの秋きのふのいのちかしましき

あをぞらと雲のゆきあひ今日の秋

 

 

グレゴリー・ペック眞夏の夜の夢
君のことグレゴリー・ペックのやうに夏
白髪のペックは嫌ひ夏薊

モノクロームのペック若かり熱帶夜

ヒッチコック劇場冷蔵庫呻る

 

釘を打つ東西南北溽暑かな

やり過ごす昼の電話や風死せり

アスファルト炎ゆ人類の第一歩

 

 

 

生まれ來しけふの光となりて蝉

いまあをきいのちへ蝉のぬけゆくよ    

抜け驅けの蝉色づいてゆく快晴    

うつせみの裂罅(れっか)に風の新しき   

 

 

(←クリック)

 

 

 

子規終焉の間の古柱涼しかり   

 

 

おんばしらしづかに蝉の鳴きはじむ

諏訪大社上社の土俵木下闇

微熱あり草の匂ひの螢かな

くわくこうや信濃にひとつ芭蕉句碑

擬寶珠や水のにほひの風の道

讀みほどく萬葉假名や夏燕

 

 

完熟のバナナ腹筋鍛へをり

 

    どくだみの花救急車止まりけり

 

軸きマルス鉛筆明急ぐ    

 

半夏生狂はぬ時計腕に嵌め    

 

       四つ角の四方山話五月晴

 

  月涼し日附の變はる刻の戀

 

 

里山紀行:栃木県那珂川町馬頭にて-----

みどりの日きつねもなかの賣られをり

草笛の一音山へ還しけり

金星の消えてしまひし河鹿かな

たけのこののこのあたりを揺り起す

夏櫻ふたりで飛ばす竹とんぼ

シャガールの馬飛び立てり竹落葉

(馬頭の廣重美術館のシャガール展にて)

 

ここからは空ここまではちるさくら

 

花埃人間のゐて鳩のゐて

 

さくらちる昼のひなかの烏骨鶏

花冷えやギターの弦のひゆんと鳴る

花あしび海馬の中の反戰歌

 

透きとほる鏡の中の花萬朶

 

スローよりはじまるダンス春の星 (前川光氏への追悼句)

 

數へ日や驛に「こころのクリニック」

 

花束の重き一日あたたかし

五分咲きの空を餘せり西行忌

命日の同じふたりよ花辛夷

 

すれちがふひかりとこだま目借時

 

もう醒めぬことなき夜の雪華かな

 

蟇穴を出づf分の1ゆらぎ

 

觀念のくちびる揃へ目刺かな

 

あしあとにのせしあしおと春の雪

 

春節の紅の豚吊さるる

春節の饅頭(マントウ)にあるつむじかな

魚は氷に上る唇あたためて

 

マントラの高き聲明春立ちぬ

雲いつもあたらしくあり春來る

 

星ひとつ抱へし朧月の暈

日脚伸ぶチャイナタウンの占師

 

ななくさなづな珈琲でおはる朝

太陽のひとつ賜り六日年

崎陽軒牛飯弁当五日かな

拝むための列につきゐし四日かな 

ウェッジウッドアフタヌーンティー淹れ三日

蝋燭の溢るるケーキ二日かな (南政次氏へ)

初暦部分月蝕あるを知る

 

 



2009



心音より生れしオリオン大星雲 

秒針の巡る星圖や霜の夜

 

指で書くいのちのいの字冬の蜂

 

ケンケンのすすむ輪の道秋つばめ

雲ひとつ突つきし秋の金魚かな

くちずさむかの子かの地の鰯雲

性別の片方に○ラ・フランス

十三夜鱗のやうな石畳

 

いざよひやクロスワードの縦のカギ

貝割菜イツモ笑ツテヰタリケリ

衣被夫在りしこと忘れゐし

 

名月やどの遺伝子を起こさうか

 

 

おほぞらの窪み日曜日の蚕豆

十薬の花おかつぱの男の子

 

 

 

     炎天やさくらのいろの桜島  桜島.jpg

 

 

家族欄空欄一匹のかなぶん

被告人起立仙人掌花深紅

炎天の驢馬や横濱開港祭

汽車道を過ぎて馬車道あいすくりん

草餅や生まれなほしてもにんげん

 

 

()ひとつ戻ることなし春の夢 (三月廿日)

 

 

 

 

 

 

 

 

山茶花のくれなゐ纏ふ睦びかな   

 

 

 

 

 

歌いづることも冬木の櫻かな

 

夕空の長き二日や古稀祝ふ (南政次氏に)

 



2008



 

 

目蓋より入る休息歸り花

落葉して靴音高きエトワール

くわりんの實日暮れを待たぬ星ひとつ

坂下りて上れば我が家冬の星

冬隣爪に沈める月と雲

こがらしや何處かで水の漏るる音

かんぬきの開くオリオン星座かな

冬の大三角指組んでねむる

寒すばる神の國には歸らざる

霊長類の指の渦巻冬銀河

 

 

かの子よりうまれし太郎草の絮

 

自在なる光ありけりかたつむり

ラムネ玉成層圏の晴しづか

 

 

おしやべりなK猫膝に星まつり

猫ひとつ還して星の手向けかな

K猫のきゃうだい(まみ)ゆ星の(ねや)

 

 

 

みづうみの水生む音や秋はじめ

かなかなのうへのかなかな神の山

秋雷や鳥獸供養碑のあたり

四尾連湖の四尾振りほどく稲つるび

ともし継ぐ線香花火龍神湖

八月や談合坂の焼だんご

秋立つや物干し台の山ズボン

 

 

 

うりずんやちひさくたたむ島の地圖

ヤマトゥは外つ國茅花流しかな

ひとときもやまぬ海風燕来る

若夏や風に連なる千羽鶴

小満芒種オフホワイトの印度綿

埃匂ふ雨よ沖縄慰霊の日

芒種雨ここよりアブチラガマに入る

白南風やうーじ畑に象の檻

慰霊碑の比嘉よ知念よ大西日

片降の首里駆け下りる涼氣かな

三伏の首里城火星大黄雲

秘めごとのあとの點燈守宮鳴く

島人の親族同胞蝉時雨

含羞草亀甲墓の廟ひとつ

海紅豆やまとのひとと呼ばれゐし

にぬふあ星ひとりの寝間の涼しかり

伊集の花やんばるまでの土Kし

日暮れまで沖縄時間茹小豆

みなみ風ささやくやうに島言葉

夏ぐれや指笛一度だけ鳴らし

2008年第12回「炎環賞」入選作品

沖縄時間

 

 

硬球を吐き出すマシン椎の花

薔薇咲けり人憎らしく憎からず

折鶴の羽の直線夏きざす

萬緑や水よりはじむ進化論

くもりのち時々天使夏木立

 

 

謝謝(シェシェ)と照れずに云へり蓮の花

臺灣語北京語(パイナ)(ップル)熟成

中正像の脇に兵なし花槐(はなゑんじゅ)

 

 

かうもりや一等星の無き星座

風船や息することは生きること

たんぽぽやけふ新しきパスポート

春のゆめまつさかさまとなりてゐし

猫の子の鼻より猫となりゐたり

ひとつ家にみ神み佛寒の星

ふたりよりうまれしひとり室の花

 

 

春寒や屋根の高さの星ふたつ (二月上旬、金星と木星、早暁に合) 

 

その荷よりまづ香の届く水仙花

 

冬ぬくしもみぢが丘の金星碑

 

去年今年一筆書きの星の道

 



2007



 

寒雲や神の子羊とはなれず

知命まで生きて福音クリスマス  

 

 

二丁目の三毛がきてゐしかへり花

十二月母の指輪のちやうどよし

冬凪や三鬼の魚の骨いづく

霜一夜星の歳時記開かるる

こがらしや母といふ字の星ふたつ

 

 

日短し體温のあるたなごころ  

 

秋寂や竹人形の長き髪  

 

落葉掃くからからこころ空の凾

 

シーサーの阿像の舌や秋の風  

 

月の蝕着信メールふたつあり

 

戀多き大神ゼウス秋の聲

今生は夢かもしれず天の川

 

四尾連湖(しびれこ)の早き眠りよ月の舟 

 

 

 

 

 

 

 

三伏のさそり座射抜く米軍機

八月の鐵路何處まで伸びやうか

 

夏の雲息せき切つて犬奔る

あぢさゐや手の甲にある覺書

蝌蚪蛙蝌蚪蝌蚪蛙水うごく

 

いかづちやおのれの中の天地人

剥製の鳥の眸子や夏きざす

ジーンズの穴より素肌薄暑かな

 

 

麥の秋鬼籍の父の誕生日

水の上歩くキリスト麥の秋

 

 

 

 

 

 

 

初花や出してはしまふ玉手箱

花一匁さくらのひらくまたひらく

この街を終の栖と花便り

父の明け星母の夕星さくら咲く

満開の櫻の幹のKさかな

青年の高き裏聲花の昼

閻魔大王となりにおはす櫻かな

花冷えや臍帯のある小抽斗

前生も後生もひとり花月夜

花冷えや苦手なものに針仕事

さくらいろ溶かす透明繪の具かな

さくら散るひとの流れの一欠片

神様に近づく深山櫻かな

花吹雪スイ・ヘー・リー・ベの周期表

花は葉にあしたの夢の置き所

一億のにんげん蘂の雨やまず

休日の時計ゆつくり花は葉に

葉櫻や「ひるのいこひ」のテーマ曲

さくらの實いつか叶へてみせる夢

見守りし樹ひとつさくらプロジェクト

 

       

 

 

 

 

さへづりの影水平に垂直に

ココダケノ話ニシテネ鳥交る

さくら餅草餅思ひ出し笑ひ

蕗の薹明智小五郎動き出す

 

紙ふうせん何ごともなき空のあり

風船のたちまち犬になる眞昼

春眠やいのちの果てといふうつつ

 

菜の花や日暮れに殘す日のにほひ

 

 

春風を纏ふや父の小祥忌

母からの手紙の折り目雛節句

粒ほどのいのちなりけり雛の日

 

     花ミモザ雨のちリれて暮るるかな   

     春風は氣儘寺山修司の句

  

 

那智Kと文蛤(はまぐり)の石草團子

  休日の白の靴下クロッカス

  人差指中指小指羊歯萌ゆる

 

三寒四温しあはせひとつふたつみつ

 

薬包紙ひらく風花日和かな

鉛筆の芯の硬さや(むつの)(はな)

 

冬木立すつからかんと忘れたし

 

食べきれぬ齢いとしむ鬼の豆

ちちははのなきうつし世に鬼の豆

鬼やらひ御主もひとりぼつちかな

 

白すこし遅るるもよし寒の梅

牛の眸のあはきみづいろ日脚伸ぶ

 

向かひ合う星眞南に冬の終

 

吉凶の掛橋いくつ去年今年

星新し胸のリセットボタン押す

 



2006



 

月ひとつもてあそばれて除夜の鐘

大年の枕邊に置く俳句帖

 

すきないろとこたへし冬の星

小鳥來る時間割無き日曜日

白秋忌くもり時々木の實雨

 

あした透く冬の入口切り通し

 

   ヨコハマのジャックの塔や銀杏の實

行合(ゆきあひ)の空や戰爭冩眞展

 

月白や音なきことの胸さはぎ

朝寒や眉に一本白きもの

おしいつく句會の朝の迷ひごと

 

月日星ほろほろ案山子の腕眞直

案山子立つまま神様の云ふとほり

 

 

月餅の高さ一寸白露かな


 

 

風の盆遠きにありて想ひけり

遙かなる星に手翳す風の盆

男をどり夜風の輕く握らるる

差す手皆彼の世に向きし風の盆

 

弓張りの月眞南(みんなみ)に潔し

二百十日凄雨軒より始まりぬ

 

犬ひとり置き去りにしていなつるび

 

さそり座の心突き抜けし揚花火

 

 

 

K猫に白毛のありし殘暑かな

屈むれば猫の擦り寄る十三夜

 

 

人寄せぬ燈臺への道紅雲華 (御前崎にて)

 

 

父母を富士に眠らせ(ひでり)(ぼし)

ちちははの骨語り合ふ艸いきれ

汗の手に骨壺收む紙袋

 

なぬか月落とし天河の高きかな

梅雨明けの空切り割いて琴の星

 

萬年筆のインクブルーに夏休み

炎ゆる日の石の野毛坂大道藝

ひらめいてまた忘れゐて片蔭り

蜘蛛の圍に蜘蛛の無かりし鐵砲雨

黴雨烈し自動扉の向う側

 

サイレンに野球少年散りて夏

敗者より野太きエール夕燒け雲

夕凪や基地のとなりの野球場

夏燕一までの遠かりし

ポンポンダリア球場までの道まつすぐ

声出してゆかう野球部朝曇

 

街忙し鰻の字のひるがへる

朝涼の中この街のひととなる

雷鳴の低きにみなとみらいかな

 

凌霄花明日には明日の戀ごころ

七月の星未だ逢へぬ人ひとり

透かし見る胸の眞ん中かたつむり

一介の詠み人たらむ髪洗ふ

 

あひ見ざる星は雲居に小暑かな

笹の星るることなし小暑かな

 

夏風邪の目蓋に雨の音ばかり

夜の風鈴雨唐突に始まりぬ

 

陽光に重さのありし夏揚羽

明け早しけふも動かぬ風見猫

笹かたぐ子らの早足霹靂(はたた)(がみ)

 

 

ねじ巻かぬねじ花父の忘れもの

 

 

 

 

 



 

 

秒針の動かぬ刹那ごきかぶり

 

殘鶯や夢よりうつつ始まりぬ

 

くちなしの花の朽ちゆく雨優し

グラジオラスまた雨雲の近づけり

萬高竢I點までのものおもひ

 

 

泥らつきよわがこころねのひんまがり

實櫻やおのが隣にひとの無し

 

あぢさゐの藍ほどけゆく雲間かな

 

あぢさゐのいよいよ重き水鏡

紫陽花やはたらきびとの憂き目覺め

 

 

 

あぢさゐやけふはこの路地曲らうか

あぢさゐや時の解決できぬこと

 

 

 

濃あぢさゐ盲の犬の目のKし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九谷色繪陶板画 (43×61cm) 作: 海部公子

(硲伊之助美術館)

 

 

 

 

 

慰靈碑の果て無し梅雨の明け

 

 

夏至の雨ひたひたローカル電車かな

手附かずの仕事の數多夏至暮るる

 

 

慰靈碑にひかるひとすじかたつぶり (平和祈念公園にて)

うちなーの(むら)(ぶし)涼し海鏡 (佐敷町の夜の晴れ間)

ニライカナイ芒種の雨の降りやまず

 

 

 

 

 

 

 

基地のある美ら島イジュの花白し

蒼天に雲立つ沖縄慰靈の日 (沖縄慰の日は623)

翅重き沖縄の蝶雨もよい

シーサーの阿吽のはざま驟雨かな

タッチアンドゴー繰り返さるる朱夏 (宜野湾の普天間基地にて)

 

うーじまたうーじの畑大南風(おおみなみ) (恩納村にて)

指笛のむづかし夏の雲白し

荒南風(あらはえ)やうちなーぐちの唄覚ゆ

 

月桃の花よまた雨降り始む

大雨の穿つ蟻塚首里王城

 

 

 

罌粟の花指先ほどの闘志かな

六月のスタアバックス人戀し

 

薫風や框に立てし父の杖

父の名の殘る表札若葉雨

 

ひとりゐて陰膳ふたつ夏きざす

 

マーガレット音なき町に移り住む

流れゐし光の力しやぼん玉

 

母の手に抱かす人形花みづき

 

せんせいの休み五分よさくら餅

嘘つきて嘘つきとほす(ばな)(いばら)

またひとつ天に近づくさくらかな

 

初櫻空にひとつの指定席

しづかなる天元(てんげん)の石(はな)辛夷(こぶし)

 

骨壺に眼鏡と碁石雲雀(ひばり)東風(ごち)

 

まつさらな敷布の折り目花待てり

糠星や啓蟄の土こそばゆし

 

水温む皿の向かうの犬のかほ

 

父を待つ歩幅となりぬ花菫

 

しりとりのんの字でおはり花薺(ばななずな)

K猫の蹠まつくろ春動く

 

ながらへて紅梅みつよついつつかな

 

うさぎ座の片耳探す霧の花

 

 春立つや點滴ひとつづつ光

 

CTMRI室春動く

病室の窗の眩しき梅一輪

 

春節の逆さ福の字光滿つ

春陽やチャイナタウンの桃饅頭

     

薄鼠の雨で始まる二月かな

二ン月や二十四時間たたかふ日

 

春急ぐモーツァルトの生まれし日 (一月27)

 

むつらぼし天心に在り寒の入り

靜けさや三日のうちの(おほ)き星

 

二日てふ追へば忘るる夢見かな

 

歩き初む雪華の路や戌の年

 

冬ざるる雀はまろき影落とし

初夢の影なき小徑歩き神 

 


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