Ten Years Ago (102)
- CMO
#142 (25 February 1994) -- CMO p1355 ~p1370 --
観測シーズンはオフで、巻頭には八月に福井市で開催されることになった「惑星関係シンポジウム」と「OAA総会」のアナウンスがなされた。シューメーカー・レーヴィ第9彗星の木星衝突(16 July 1994)が予報されている最中のことであり、講師には国立天文台の渡部潤一氏が最新の観測情報を提供するとある。「惑星関係シンポジウム」では、岡野邦彦氏によるCCD画像の撮影法と画像処理のデモが予定されている。
"論攷紹介"として、「火星極冠の消長 "Seasonal Variation of the Martian Polar Caps"
田中浩・阿部豊」、が南(Mn)氏より、和文・英文併記で紹介されている。『火星通信』に参加しているのを知った筆者の高校天文部の後輩にあたる阿部豊氏(東大)が送ってくれた論文をMn氏に転送したもので、「火星極冠の消長-二酸化炭素極冠の永続性-」(和文)が原題である。ドライアイス極冠消滅の南極・北極での非対称を、モデルを使って理論的に説明しようとするものである。
「火星の軌道が楕円であり日射量の変化することから、南半球の年間平均気温が北半球よりも低く、南極地のドライアイスの極冠が夏期に消滅せずに永続しやすい。また、極冠の表面のアルベドのわずかの違いで、極冠の永続性には大きな差が出る」ということが、この論文の主旨であるが、実際の観測から得られた南極冠の後退とは差異があり、大気がCO2だけの仮定で、水蒸気や黄塵の含まれていないモデルでは仕方がないかとしている。
『夜毎餘言 XLIII』 は「神武東征と火星」と題して、山本一清博士の太平洋戦争直後の論文「日本古史譚管見」からの紹介である。博士は、天体現象が神話の中に取り込まれていることもあるのではないかと言う推論を展開していて、屢々取り上げられるアマテラス岩戸神話=皆既食などばかりでなく、神武天皇東征譚の行路を取り上げ、それが火星の星座間の運行に似ているとしているのが面白い。南氏は、近年研究が進んでより明らかになってきた世界各地の神話・伝承の様々な同型性に関しても興味深いところがあるとする。
また、「1992/93 CMO Note (14) "HIGA's
Video Images in 1992/93"」として、当時回覧中であった沖縄の比嘉(Hg)氏のビデオ画像 (11 Nov 1992~ 29 Mar 1993) の映像リストが掲載された。
LtEには、A DOLLFUS氏(France)、J DIJION氏 (France)、S WHITBY氏(USA)からの新年の挨拶。森田行雄氏、賴武揚氏(台北)、安達誠氏、D GRAY(UK)、中野勇吉氏、蔡章献氏(台北)、宮崎勲氏、G D GIOVANNI氏 (Italy)、筆者のものが取り上げられている。
(Mk)
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