Ten Years AGO  (73)   - CMO #109 (25 September 1991) -


 

 火星は、1991年九月には「おとめ座」にあって、十一月の「合」にむけて太陽との離角もわずかになっていた。

 今号には「ときどき- Something Old- (3)」として、「佐伯恒夫氏による1960年代の北極冠」が、CMO FUKUI 御三方の共著で掲載された。次期から火星の傾きは北半球に深くなり、いよいよ見え易くなってくる北極冠の観測についてのオリエンテーションで、北極冠縮小の様子を説く論文の紹介と、佐伯氏単独の観測を基にした1960年代の北極冠の動向と論文との比較が極小曲線図を使って記述されている。

 ドルフュス氏(A DOLLFUS)19461952年のピク・デュ・ミディでの観測を標準的なものとして、ケープン氏達(C F CAPEN & V W CAPEN)1960年代の観測結果のまとめと、今回『火星通信』で測定した佐伯氏の1960年代のスケッチから求めた北極冠の縮小傾向を比較したところ、ケープン氏達、佐伯氏共にドルフュス氏の観測結果とは系統的な誤差が正反対に出て比較にならず判断を中止したとのことである。佐伯氏生前の話である。なお、ドルフュス氏の観測結果は、ボーム氏等(W A BAUM et al)によるスライファー氏(E C SLIPHER)撮影の19051960年にわたる写真からの測定結果や、ヴァイキング探査船の観測結果と誤差の範囲で一致していることは知られている。

 『火星通信』で用いている極冠の雪線の測定法は、火星像中央子午線上の北極冠の深さと火星像の半径とを比較して求める方法で既にCMO#003で紹介されている。中央経度も測定時に参照されるので、フ−ルニエ式の螺旋型極小曲線の作成にも利用できる利点がある。今後の観測時の注意として北極冠の深さの直径に対する割合を正確に見極めることと、スケッチ円に記入時には比率の再現に十分留意をするようにとの注意がある。視直径に対するスケッチ円の大きさにも注意を払う必要があることも述べられている。

 「1990/91年使用の新望遠鏡」には、阿久津氏の32cmニュートン反射と伊舎堂氏の31cmニュートン反射が写真入りで紹介されている。両氏とも今期は望遠鏡の口径を上げて観測に臨まれた。

 LtEには、以下の各氏からの来信が英文訳付きで紹介された。ョ武揚(臺北)、阿久津富夫(栃木)、藪保男(滋賀)Robert L ROBINSON (WV USA)Kermit RHEA (AL USA)

 そのほか、カンパ報告が掲載されている。

村上 昌己 (Mk)


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