文獻案内

CMO #234 p2784 – 25 August 2000


MGS found lots of "JUVENTAE FONS"


MGSMOC (Mars Orbiter Camera)がマリナーやヴァイキングでは無理であったような細かな多数の溝地形を例えばクレーターの内壁から多く見つけており、これについての解釋(MOC images suggest recent sources of liquid water on Mars)22 June 1999MSSSのサイトに現れた。これについては直ちに常間地ひとみさんから連絡を受けた(CMO #232 LtE p2759參照)

 

 http://www.msss.com/mars_images/moc/june2000/index.html

 

 ここには30 June 2000(vol 288, No 5475)ScienceMSSSの首謀者MALIN達の解説が出ると予告してあったが、直ぐ佐藤健さんからそのコピーが送られてきた。M C MALIN & K S EDGETT"Evidence for Recent Groundwater Seepage and Surface Runoff on Mars"(Science 288 (2000) 2330)が主要な論文だが、他にR A KERR"Making a Splash With a Hint of Mars Water"と、K L TANAKA"Fountains of Youth"の解説が前段にある。
 最近では S&T Sept 2000 p56 D TYTELL "Martian Mudflows"が出ており、このコピーは村上昌己さんから送られてきた。

 

下、これらの文獻によって概略を紹介する。

 




 MGS-Orbiter1997年に火星に到達して以來、調整を經て1999年の三月以降今年の一月迄に二萬枚以上に及ぶ高解像の表面写真を撮っているようだが、その中の約150枚の写真に約120箇所の問題の影像が寫っていたらしい。解像度は一ピクセルが212メートルに亙る。

 

簡單に云えば、クレーターの絶壁の途中に幾つか穴ぼこがあってそこから複雜な溝が下に流れているのである。場合の1/3はクレータ(例えば、HaleNewtonMaundarなど)の内壁、1/4は南極地の窪み、1/5Nirgel Vallis(マレ・エリュトゥラエウム北部) Dao Vallis(ヘッラスの東)の二谷の壁にある。位置配置に特徴があって、90%30°S以南に存在すること(Nirgel Vだけ例外で27°Sまで降りる)と、内壁でも南極を向いている方に位置する(南半球の春秋や冬には陰に入る方)。南に位置するものの典型は南極邊りに存在するsouth polar pitの内壁にあるもので、70°S75°Sにある。Internetには(71°S356°W)に見られるもので14 July 1999に撮影されている。引用する写真はノアキス南の(55°S343°W)邊りのクレーターの内壁をこちらで勝手に切り取ったもので、横幅が400mほどである(28 Sept 1999撮影、MOCの原像は白黒。Internetに出ているカラーはこれまでの結果から着色されたものである。太陽光は左上から來ている。尚、北半球にもないわけではなく、テムペやマレ・アキダリウム北部、ケブレニア、アエテリアの暗斑とノドゥス・アルキュオニウスの中間等に見附かっている。 見たところ問題の箇所は、大雜把に言って、壁の途中に凹所(alcove)があり、その内部に水の滲み出たと思しき跡と、そこからの溝(channel)の流れ、そしてこの溝は途中で途切れ消滅している、という様相を示している。アルコーヴにも四種類ほどあるらしいし、それに應じて溝の様子も違うようである。 外見からはこの地形は地球の小渓谷(gully)と酷似していて、流れの溢れたと思しき跡や、瓦礫の流れ、似た剔(エグ)れかた、浸喰が見られるようである。そこで、MSSSでは水によるものであると判断した譯であろう。 溢れ出たものが水として、この溝を作るのに2500立方メートルの水が必要のようで、これだと公式プールぐらいの量、大きい小渓谷ならその十〜百倍ぐらいであるようだ。滲み出し口の位置から、水の層は地表から數百メートルの深さでしかない。

 

今度の發表がセンセーショナルであったのは、こうした水路の形成が比較的新しい、若いとされたことによる。火星は十億年前から干し上がっていて、表面での水の流れはあり得ないとされて來ている。然し、今回見つかった溝の邊りには隕石孔が見つからない。そこで、案外、ここ一二年間に出來た「若い泉」で、遡っても數百萬年前迄と云うことになった様である。yesterdayであるかもしれない、だから、次の觀測で違いが出るかも知れないと言明する邊り矢張りMalinSSSはなかなかの企業家である。

 

 溝が30°S以南にのみ多く見附かって、赤道地帯や30°S以南でもクレーターの内壁の北面部分に存在しない點については、滲み出た水があっても氣壓が低い爲に直ぐに蒸發してしまうからだという風に説明される。然し、理解し難い面もある。30°S以南といえば、表面温度は通常マイナス70°Cより低い。數百メートルと云わず、數キロメートルの深さまで水は凍結しているであろう。而も、繰り返すが、溝は寧ろ太陽を背にして南面しているのである。そこで、火星の自転軸の傾きが現在の25.2° ではなくて、45°であった四、五百萬年前には可能であったかも知れないと云う話が出ている(S M CLIFFORDLPI)他、矢張り水だけでは無理で、氷とドライアイスの混合物の塊が轉がって浸食作用があったのではないかという話(M H CARRUSGS)も出ている。何れにしてもyesterdayということはないであろうと云うことになる。現在では水では即蒸発か凍結である。

 

今回の話は、月曜の夕方囁かれた程度だったが、水曜日迄にメディア雀で喧しくなり、木曜朝には一面を飾ったらしい。木曜というのが22 Juneで、MSSSのサイトの發表と合っている。囁かれたというのはNASAからホワイトハウスへ報告されたということと關係があるらしい。常間地さんからの連絡では

 

 http://www.spaceref.com/mars/news.2000.html

 

には#19june00邊りから、そういう火星關係の話(憶測話まで含めて)が紹介されているようである。#20aug00等にも續篇がある。

(Mn)


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