the White-Cloud of Alba


1995年一月のアルバの白雲活動 (051°Ls)


From CMO #179 ( 25 Sept. 1996 )
-- 1994/1995 Mars Note
(13) --



   序  論 

この稿は1995年一月後半に日本からアルバ地方の白雲によるバーストが見られ、白雲は三月まで海外の觀測も含めて追跡されているのでそれを概觀する。物語は26 January 1995 15:30GMTω=140°Wで藤澤のMk(村上昌己)氏がアルバに強い白斑を觀測した事に始まる(051°Lsφ20°Nδ13.3"ι=14°)Mk氏は 27 Jan ω=141°W151°W28 Jan ω=110°Wなどで確認している。一方、Iw(岩崎徹)氏も27 Jan28 Janなどに詳しく追跡している。また、Mo(森田行雄)氏が27 Jan以降三色分解の写真を聨續して撮られていて、大變参考になる。尚、當時福井では天候が悪く,31 Janまで觀測不可であった。從って、この稿を艸するのは甚だしく困難なのであるが、Mo氏の写真を通時的標準として、MkIw氏他の觀測を共時的に並べてみようと考える。

この時のアルバは二月上旬まで日本から見られ、次いで、ヨーロッパに移っていたが、歐州での觀測は多くない。美大陸に移って、パーカー氏やメリッロ氏などの觀測があって、興味深いが、二月下旬にはHSTのアルバが出る。

三月に入り、福井でも好シーイングに惠まれ、未だアルバが白雲に覆われている姿が綺麗に捉えられたし、Is(石橋力)氏の良好な写真もあるが、Mo氏の写真を基準に選べば、一月下旬の場合に比較して、アルバは弱くなっている、と結論せざるを得ない(後述)

明度の判断は難しいところである。写真やCCDでも觀測者の方法が違って、違った結果が出ている可能性がある。シーイングにも依存する。眼視觀測も記憶の持続という點で長期の觀測に弱いことは周知のことである。

この稿を纏めるに當たって、どの様に結論附けるか迷ったのであるが(それ程資料が多くない?)Mk, Iw, Mo氏の一月下旬の觀測に掛かるアルバ白雲はバーストを起こしたと考えてみる譯で、残る問題はその氣象學的な意味とその整合性であろう。これについては別の機會に譲る。
以下,Mk, Iw, Mo, Is氏の他、Mt:松本直弥氏、Aa:淺田秀人氏、Mn: 政次である。

 

   一月末/二月初めのアルバの觀測

25 Jan(050°Ls)には、Iw氏によって
ω=134°W(Iw-092D)

ω=144°W(Iw-093D)
などの觀測があるが、アルバは見えていない。シーイングは好くないが、タルシスは夕端で見える。

26 Jan(051°Ls)の觀測はMk氏のもので、
ω=130°W(Mk-130D)
ではMk氏は未だ気付かない。シーイングが1/5で、この日は四回觀測があり、二回目が2/5と向上し、
ω=140°W(Mk-131D)
がアルバ白雲の最初の觀測となる。圖の様に、以後シーイングは悪くなり、
ω=150°W(Mk-132D)
ω=159°W(Mk-133D)
ではチェックされていない。

27 Jan(051°Ls)Iw氏が早くから觀測開始:
ω=107°W(Iw-094D)
でテムペからアルバに掛けて帯状の明部を觀測、シーイングは56/10
ω=116°W(Iw-095D)
ではアルバが灰白色で明るい。
ω=136°W(Iw-097D)
:透けた感じの明るい塊。
ω=141°W(Mk-134D)
Mk氏のこの日の最初の觀測で、アルバが明確でアルバから西へ明るい帯。
ω=143°W(Mt-011C):44cm
によるカラーだが不明確。
ω=146°W(Iw-098D)
ではアルバが靄状で夕方。
ω=148°W(Mo-112B):non-filter
で明確に写っている(Mo氏は五分前1615GMTに肉眼で確認)
ω=151°W(Mk-135D):
夕方で明瞭(タルシスと分離)
ω=156°W(Iw-099D)
:夕端でくっきりした半円形。
ω=158°W(Mo-113B):
非常に明確(R光よりB光の方が明るい。タルシスと組)
ω=160°W(Mk-136D):
沈み掛け
ω=163°W(Aa001C):
微かに出ている(Provia100) 
 27 Janの最も遅い觀測は18:56GMTMo-115Bω=186°Wであった。

Alba /1996 Jan. 26, 27, 28 (gif 30KB)Figure: A series of the observations of the burst of Alba by Masami MURAKAMI from 26 Jan 1995

28 Jan(052°Ls)の觀測數はやや少ない。
ω=108°W(Iw-101D):
シーイング悪く(1/10)、昨日ほど目立たない。
ω=110°W(Mk-138D):
シーイング良く(43/5)確認(但しタルシスより劣るか)
ω=117°W(Iw-102D):
アルバ灰白色、視相不良
ω=120°W(Mk-139D):#155p1560
に引用。
ω=137°W(Iw-104D):
アルバ夕端、鈍い、然し
ω=162°W(Mo-116B)
では夕端で明るく確認できる (フィルター無し)

◇ 29 Jan(052°Ls)
にはIwMk氏ともシーイングが悪く、
ω=109°W(Iw-106D)

ω=111°W(Mk-142D)
などの觀測があるが、アルバは確認されない。しかし、
ω=129°W(Mo-117B)
にはアルバは明確で、フィルター無しにも、B光にも写っている。然し、タルシスの方が濃い。更に
ω=138°W(Mo-118B)
B光ではタルシスより弱いが、アルバは明確である。

Alba /1996 Jan. 30, Feb. 1,  3 (gif 40KB) ◇ 30 Jan(053°Ls)にはIwMk氏ともシーイングがやや恢復したようで、
ω=100°W(Iw-111D)
ではアルバの中心が明るいか?
ω=110°W(Iw-112D):
アルバは弱くなっている。
ω=120°W(Mk-145D):
アルバ確認、白味、西部が明るい。アルバ南中である。
ω=120°W(Mo-120B):
無フィルターに出ており、Bにも淡く確認される(タルシスより淡い)。
ω=129°W(Mk-146D):
見難いが確認(気温:-0.5℃)
ω=149°W(Mk-148D):
未だ夕端に見える。

31 Jan(053°Ls)にやっと福井(Mn)で確認、但しシーイングは不好:
ω=101°W(Iw-116D):
アルバは視相が落ち着けば明るさを見せる。
ω=120°W(Mk-151D):
視相悪く目立たない。
ω=120°W(Mn-370D):
テムペはタルシスより白味少なく、アルバは明確ではないが、南側を淡い暗部で囲まれている。
ω=135°W(Mn-371D)
:アルバはテムペと区別できない。タルシスより白味は少ない。

1 Feb(053°Ls)になるとアルバは朝方に遷り、夕方のアルバは時間的に遅くなった。
ω=100°W(Mk-154D):
アルバ明部
ω=100°W(Mt-018C):
アルバ中央に写っている。
ω=102°W(Iw-123D):
当該中心灰白色でほの明るい。
ω=109°W(Mk-155D):
アルバ細長い。
ω=119°W(MK-156D):
見難いが、夕方に見える。
ω=125°W(Mo-122B):
孤立斑點として明るく冩っている(フィルター無、G&Bに顕著,Gではタルシスと同等)

2 Feb(054°Ls)
ω=093°W(Iw-129D):
アルバ朝方鈍い
ω=104°W(Aa-002C):
白い斑點が認められる。
ω=130°W(Mn-378D):
アルバに白雲確認。淡暗い境界で西側を囲われている。18:40GMT

3 Feb(054°Ls)にはMk氏が三回追跡している(圖参照)が、アルバはこの邊りが本邦からの最後である(テムペは6 Feb まで觀測)
ω=104°W(Mk-158D):
アルバからテムペまで繋がって見える。
ω=131°W(Mn-389D):
アルバは顕著でないが、コアはある様子。20:40GMTω=150°W

    議    論 


以上、26 Jan發現のアルバ白雲は、以後期間中存在するのであるが、森田(Mo)氏の写真においてタルシスとの関係でアルバの白斑を比較して行くと、Iw氏の觀測の通り、27 Jan邊りにアルバ白雲にバーストがあったと見て好いであろう。Mk氏の15cmに充分引っかかるぐらいの規模であったという事である。必ずしも、その後急激に弱くなったわけではなく、恒常的にアルバに白雲が存在していたことは確かである。而も、全體の觀測から見て、アルバは午後になって顕著になる、というパターンである。

また、25 JanIw氏の觀測にはアルバは引っ掛っていないが、17 Jan(047°Ls)ω=107°Wの唐那・派克氏のCCD(p1673参照)には既にアルバ白雲は出ているので、波動があるものと思われる。ただ、Mk氏發現時の051°Ls1963年などの時期と一致し、季節的なものであると思われる。

    二月の海外でのアルバの觀測



アルバは西へ移っていったわけだが、報告を受けた限りでは、ドイツのグロス(Horst GROSS=HGr)氏が25cmシーフシュピーグラー使用で

 9 Feb(057°Lsω=101°W

にアルバを白斑點として明確に捉えている。更にアメリカに移って、唐那・派克(DPk)氏が

 17 Feb(060°Ls)ω=133°Wω=144°Wω=148°W

でアルバを白く写し出している。また、ウェスト・ヴァージニアのロビンソン(Robert L ROBINSON=RRb)氏が

 18 Feb(061°Ls)ω=130°W

でアルバからテムペに明帯を描いているほか、メリッロ(Frank MELILLO=FMl)氏が

 18 Feb(061°Ls)ω=139°W

TP写真に撮っている。タルシスとは独立して、大きく白斑として写っている。青色光だが、白色に近いのではないかと思われる。

二月末には、周知のように24 Feb(064°Ls)にはHSTの写真が公表されている。これにはアルバに明確に白雲が複雑な形で写っている。唐那・派克氏のCCDと写りは違うが、それ程変化がないように思われる。從って、FMl氏の白雲もこの程度であったものと思われる。

     三月のアルバの觀測


HSTの後、三月にはいると直ぐに当該箇所が日本から觀測可能になっている。

4 Mar(067°Ls)にはシーイングは優れないが、
ω=123°W(Iw-200D)
ではアルバが目立たない。
ω=130°W(Mn-503D):
アルバは弱明、暗帯が後続。
ω=140°W(Mn-504D):
タルシスが遥かに明るい。

5 Mar(067°Ls)の觀測ではMo氏の写真が判断の基準になる:
ω=104°W(Iw-202D)
:テムペに帯状、アルバは弱い。
ω=114°W(Mn-507D)
:テムペとアルバ並ぶ。
ω=124°W(Mn-508D)
:アルバは円く明るい。
ω=132°W(Mk-213D)
:アルバから東へ弱い明帯
ω=133°W(Iw-205D)
:帯状、シーイング56/10
ω=134°W(Mn-509D)
:アルバ弱、暗帯で囲まれる。
ω=148°W(Mo-153B):G
でアルバはやや明るいが、Bでは、タルシスに比べて弱い。
ω=154°W(Mo-154B):B
でも弱く出ている。

6 Mar(068°Ls)
ω=117°W(Mn-511D):
アルバ弱明、南側暗帯。
ω=125°W(Iw-210D)
:アルバ中心ほど明るい。
ω=127°W(Mn-512D):
アルバ帯状に明るい。
ω=131°W(Is-007B):B390
Intでアルバ明確。
ω=134°W(Mo-156B):
アルバ見えるが、29 JanMo-108Bに比べて弱い。Bではタルシスより弱い。
ω=142°W(Mo-157B):
アルバは夕方で見えるが、Mo-112より弱い。
ω=142°W(Mn-513D):
アルバ明、余り大気的でない?
ω=156°W(Mk-217D):
アルバは夕端で明るくない。

7 Mar(068°Ls)は福井では好シーイングであった。
ω=116°W(Iw-215D):
アルバ弱い。
ω=140°W(Mk-140D):
それ程明るくない。
ω=140°W(Mn-517D):
アルバは円形にコンパクト。
ω=150°W(Mn-518D):
アルバコンパクト円形で白味。
ω=160°W(Mn-519D):
未だくっきり見える。然しタルシスの方が遥かに白く濃い。 

   結論と展望 


 三月の結果は何れもアルバが、局所的に依然白雲に覆われてはいるが、やや薄く、夕方のタルシスに比べると弱いことを示している。二月下旬のHSTでの状態と餘り変わりがないであろう。 形状も、小望遠鏡ではコンパクトに円形に見えるが、實際にはHSTに見られる形状のように複雑であろう、と思われ、これは日によって少々の違いがあろうか。

 問題は、二月上旬の状況をどう結論付けるかにある。つまり、三月の状態との比較、また一月27日との比較である。これは、先にも述べたように結論付けは簡単ではないのであるが、一月末/二月初めの觀測結果から総括して、Mo氏の写真の比較、Iw氏の觀察に従って、矢張り、2627 28日に白雲が大きく拡がるようなバーストがあったと結論して好いようである。

 これは多分北極雲から水蒸気が大量に流れ出た爲にアルバ高原で氷結が大規模に起こったと考えられるが、その後更に要素は南の方に昇って行ったという事であろう。その最初の中継點として午後のアルバがあり、それが050°Ls邊りで強い痕跡を残すと言うことであろう。オリュムプス・モンスやタルシス三山との関係でも面白い課題である。

ヴァイキングの結果では例えば、CMO#108 p930, p931の圖に水蒸気餘剰の様子を窺う事は出来、今回の結果と符合するとも言えるのであるが、然し、これらの圖では未だ詳しくはない。

もう一つ、過去の觀測との比較洗い出しであるが、これも別個に試みなければならない。1980年代は確か日本からこの頃はこの地方ではなかったが、1963年には似たような觀測がなされている。また、ドイツの二十世紀初頭の觀測にも見られることは何處かで述べた。

何れにしても小接近前後の重要な課題であり、次回の接近でもアルバからタルシスに掛けての觀測追跡が望まれる。080°Lsを過ぎても要注意である。


(南 政 )


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