98/99 Mars CMO Note (4)

1998/99 Mars CMO Note
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from CMO #228


-- 1998/99年の觀測頻度分布圖の試み --

◆この試みは#118(25June1992)以來のもので、#206 p2307(25Aug1998)の續編である。大まかに言えば、一シーズンを通しての觀測數の多さに關係なく、觀測頻度が毎月視直徑の増減に見合って配分されているかどうかを見るもので、今回は七名の觀測者を例に挙げる。初めてCCD觀測者として、Ak氏とDPk氏の場合を見る。
◆視直徑δの單純な増減は單なる指標で、實際には表面の見え方は面積に依存するであろうから、ここではδの二乗を目安にする。前者はグラフの中で實線で示してあるが、後者は波線で示した様な増減を示す。但し、兩グラフの面積は等しくなる様に取ってある。
◆棒グラフが『火星通信』の各Report欄から讀みとった觀測頻度で、Ns氏の統計による。但し、1999年十二月迄の結果に據った。棒グラフの面積を合計すれば、δ2のグラフの面積と同じになるように案配してある。從って、δ2のグラフから外に外れる分は内にハズれる分と帳消しになっている筈である。その増減が問題となる。


◆Iw氏はこれまでδ2グラフに幾らか逆らっている様な觀測ぶりであったが、今回は好いピークを持っている。但し、觀測開始が遅く、その分最接近集中型になっている。觀測數が、觀測開始の1984年のシーズンの139葉より今年は少ない130で終わっている。1990年には400に達していたのであるから、この凋落ぶりは著しい。逆に言えば無駄のない觀測に落ち着いたというところであろうが、我武者羅なところが無くなっただけ、スムーズなグラフになっていると言え、全體必ずしも効果的ではない。四月下旬のバルティア白雲の追求の際に見られる様に、Mk氏の様な喰い附きが見られない。
◆一方、Mk氏は堅實な觀測で、前回並の觀測數を保ち(前回226枚、今回は二月現在で237枚)、δ2グラフに沿った觀測配分をしている。1998年十二月から翌一月における突出は、15cm鏡から20cm佐伯鏡への切り替え調整と正月休みが重なったものか。八月から九月へ掛けての落ち込みは、本土の觀測者に一様に見られる様で、天候の所爲であろう。

◆この點ではId氏は特異であった。明らかに、δのカーヴに逆らって、後半に觀測のピークが來ている。前回(#206p2308參照)は寧ろ前半にピークがあり、今回とは違っているので、これがId氏のパターンという譯ではない。前半はご心配事があった爲であろうし、後半は天候が好轉したのであろう。

 ◆このグラフはδに依っているから、視赤緯の影響は考慮されない。然し、視赤緯は重要な要素である。實は、今回の接近は前半の方が條件が好いと考えられていたのは、視赤緯の問題であった。火星の南中高度が後半ドン底になることは予め周知であったからで、Nj氏や筆者(Mn)などは前倒しを狙った。つまり前半に觀測を急いだのである。その點でも、Id氏の結果は特異に見える。尤も、後半は沖縄はやや有利ではある。ただ、沖縄と同じ緯度のDPk氏の結果を見ると、彼も前倒し型になっている。フロリダの秋は大規模海陸風の所爲で不安定になるのかも知れない。だから、Id氏の場合は今回は後半幸運であったと言えるかも知れない。

 ◆Nj氏はこの欄に初登場である。大體筆者と同じ動向を示すと考えていたからだが、今回は六百枚近い觀測をこなし、氏の紀録を作ったので、Ns氏にお願いしてグラフ化した。予想通り殆どMnと同じカーヴを示している。三月から四月に掛けて、また六月から七月に掛けて違いが見られるが、後者は例えば、#226のNote(2)でNj氏の觀測が少ないことにも現れている。

◆Ak氏も初登場である。写真などの觀測の場合は、どうしても最接近型になるから、配分分布は意味がないと考えていたのであるが、今回はAk氏は可成り早くから着實に觀測を遂行していたのでグラフ化を試みた。矢張り結果的に最接近集中になったが、幅は充分に廣い。DPk氏も似た様な推移を示すが、動きは平均化されている。前半から秋口に掛けての堅實ぶりは流石である。

◆今回の接近の特徴は、前述のように、後半は南中高度が低くなり、觀測頻度が期待されなかったことであるが、十月のドン底以降は好轉し、而も南半球の暗色模様が見えて來た爲、また黄雲の季節になってきた爲、觀測が捗っている。δの足も前半とは違っている。Id氏のグラフは後半の好条件化を好く捉えている。

◆1998/1999/2000の火星は、甚だ高度が低かった。2001年もこの點は期待できない(13June2001の衝の時、26.5゚Sの低さである。最接近は20Juneに起こりδは20.8秒角)。從って、視赤緯と視直徑の兼ね合いを勘案して、觀測頻度の問題を考えなければならない。

 (圖:西田昭徳、文:南 政 次)