CMO/ISMO 2018 観測レポート#20
2019年三月の火星観測 (λ=349°Ls ~λ=004°Ls)
村上 昌己
CMO
#483 (
♂・・・・・・ 今期20回目のレポートは『火星通信』に報告のあった三月中の観測を纏める。
火星は三月には、夕空の「おひつじ座」を移動して下旬には「おうし座」に入り、プレアデス星団の南を移動していった。視赤緯 D は15°Nから20°Nをこえて高くなり、没の時刻は22時台とあまり変わらず、日没後の西の低空に沈み残っていた。
三月中に視直径(δ)は5.3"から4.6"と小さくなって詳細はつかめなくなってしまった。季節 (λ) は、349°Lsから004°Lsと火星南半球の秋分を23Marに過ぎて進んだ。傾き(φ)は19°S台から11°Sとだいぶ北を向いてきて、春分を迎える北極雲/冠の動向に関心が向くが、まだ傾きは大きく北縁に白い明るさが認められるだけであった。位相角(ι)は34°台から29°台となり、少し丸みが戻ったが、まだ朝方の欠けは目立つ。
この期間を挟んでの視直径δの変化や、欠けぐあいなどを20日毎のグリッド図でしめす。最接近時のδ-24”台と比べると如何に小さくなってしまったかが感じられる。
先月も触れたが、火星自転軸の北極方向角(Π)が大きくなっている。極冠の把握が難しくなったこの時期には、モータードライブを止めて火星の逃げる方向 p←を正確に見極めて、報告画像では南北方向を正しく出してほしい。
♂・・・・・・ 三月にはさすがに報告数は少なくなり、今接近の観測シーズンの終わりとなった。口径の大きな望遠鏡には暗色模様がまだ捉えられるようである。日本からは天候不順のこともあり報告が入らなくなったのは残念であった。未発表の画像をお持ちの方は追加で報告をしていただきたい。
♂・・・・・・ MRO MARCI の画像では、浮遊ダストは薄くなって、地形の様子が垣間見られる様になってきている。今接近に起きたダスト活動で変化の見られているオクシア・パルス付近の地形を比較して見た。
白線で示した地形が同じところで、オクシア・パルスとマルガリティフェル・シヌスを分断しているアラムからクリュセに達する明部は、アキダリア低地に延びる凹地に相当するように思われる。降下したダストが溜まっているのではないだろうか。
北半球の春分を過ぎて、北極冠周辺のダストや氷晶雲の活動もレポートに取り上げられることが多くなった。マレ・アキダリウム北部から、テムペ−アルバに連なる雲帯も日替わりに変化があるが、だんだん顕著になってきている。アルシア・モンスが含まれるタルシス山系やオリュムプス・モンスにも午後の雲の懸かることがあるようになっている。
♂・・・・・・三月中に『火星通信』に寄せられた観測は、以下のように、ごく少なくなってしまった。
日本からの報告は無く。国外からは、アメリカ大陸側からは1名で5観測、ヨーロッパ側からは1名から2観測の、2名からの7観測だけであった。三月にも日本では天気変化の周期は早く夕方の晴れ間は少なくなっていた。
サイモン・キッド (SKd) ハートフォードシャー、イギリス
2 Colour
Images (18, 28 March 2019) 36cm SCT with an ASI224MC
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
5 Or (610nm) Images (10, 13, 18,
19, 27 March
2019) 25cm SCT with a
DMK21AU618.AS
♂・・・・・・ 三月の観測リスト
三月の観測のリストとリンク先を以下に記します。
10 March
2019 (λ=353~354°Ls, δ=5.1")
MELILLO, Frank J (FMl)氏が
ω=069°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190310/FMl10Mar19.png
13 March
2019 (λ=355°Ls, δ=5.0")
FMl氏が ω=033°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190313/FMl13Mar19.png
18 March
2019 (λ=357~358°Ls, δ=4.9")
FMl氏が
ω=346°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190318/FMl18Mar19.png
KIDD, Simon (SKd)氏が
ω=263°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190318/SKd18Mar19.png
19 March 2019
(λ=358°Ls, δ=4.9")
FMl氏が
ω=321°Wで撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190319/FMl19Mar19.png
27 March 2019 (λ=002°Ls, δ=4.7")
FMl氏が
ω=265°W) で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190327/FMl27Mar19.png
28 March 2019 (λ=002~003°Ls, δ=4.7")
SKd氏が
ω=157°W) で撮影。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/190328/SKd28Mar19.png