CMO/ISMO 2018 観測レポート#06
2018年四月の火星観測 (λ=152°Ls ~λ=168°Ls)
南 政 次・村上 昌己
CMO
#469 (
♂・・・・・・ 火星は四月には「いて座」で順行を続けていた。二日には土星とM22球状星団の間を通過して、土星を追い抜いていった。『火星通信』に寄せられた報告から、四月中の観測を纏めて六回目のレポートとする。この期間に、火星の出は午前0時台になったが、視赤緯Dは、23°S台から22°S台で、北半球ではなかなか高く昇ってこない。西矩を過ぎているが、夜明けも早くなって日の出時には未だ南中に届かなった。季節はλ=152°Lsから168°Lsと、だいぶ南半球の春分に近づいてきて、黄雲の発生時期が近づいている。視直径δは、8.5"から11.0"に増えて眼視観測にも十分な大きさになってきている。傾きはφ=06°Sから12°Sとさらに南を向いて南半球がこちらを向いてきたが、位相角ιは最大の41°台になって南半球夕方側の欠けは大きい。
♂・・・・・・ この時期初期(λ=150°Ls〜)に顕著に見られたことは、λ=100°Ls前後に真っ白な最盛期を誇ったヘッラスが内部の氷晶が溶けてしまい、ヘッラス内部の地肌の見える状態に移行して行ったことである。尤も溶解に伴う白霧が漂うし、活動の著しい南極雲がヘッラス南部を襲うから、単純な見え方ではない。ここで一つ注意をしておくと、嘗ては真っ白に輝くヘッラスと南極冠は区別されていたが、最近では両方CO2という観点から必ずしもそうではない。
右図は、CMO#134 (25 June 1993) p1251からの引用で、ヘッラスの明るさが、オリュムプス・モンスとおなじ傾向を示すという面白い論文からのものである。
下図は Marco GIURANNA et al "PFS/MEX observations of the
condensing CO2 south polar cap of Mars" Icarus 197 (2008)
386-402からの引用である(CMO#353で採り上げた)。PFSはプラネタリー・フーリエ・スペクトロメータのことで、ESA(歐羅巴宇宙空間機構) のマーズ・エクスプレスMEX に搭載され、南極冠をCO2 の観点からλ=330°Ls からλ=194°Ls迄観測した。この図によると所謂南極冠の外側にCO2仕込みの氷晶が南極冠の延長として広がっているのである。
詳しくはCMO#353 pageSer2-1021 "Shallow Field Lens
I" 「秋冬の南極冠」参照。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/CMO353.pdf
♂・・・・・・ MRO MARCI の四月中の画像には、季節的な変化が捉えられている。たとえば、月初にはまだ活動が見られた午後の山岳雲の発生が弱まっていき、月末にはアルシア・モンスを除いてタルシス山系では山岳雲の活動は至極弱くなっている。エリュシウム・モンスも活動範囲が小さくなってしまった。黄塵活動が各所で見られるようになっていて、マレ・アキダリウム北方、ヘッラス周辺、ソリス・ラクス周辺などに発生があった。また、マレ・シレナム南方からマレ・キムメリウム周辺では、中旬以降たびたび黄塵活動が記録されていて、引用の画像は25日のマーク・ジャスティス氏(メルボルン)の撮影で、24日からエリダニアの南で活動を始めた黄塵が、25日にマレ・シレナム西方のゼフュリアに共鳴発生した黄塵を捉えている。この活動は、ヘスペリア方向にも共鳴したが、29日には拡散気味になっている。30日には、クライド・フォスター氏は北半球中緯度の夕縁近くに明点を撮影していて、始めはオリュムプス・モンスかとの指摘もあったが、のちにアマゾニスに発生した黄塵活動を捉えたものと同定されている。英文LtEを参照されたい。
北半球高緯度のサイクロン現象は捉えられていないが、午後のタルシスあたりに明るい白雲の残っている日もあり、発生が疑われる。ウトピアあたりには目立った白雲は見えなかった。赤道帯霧の活動も弱まって、午後のシュルティス・マイヨルを大きく覆うものは見られなかった。
♂・・・・・・ 四月になって、日本では天候は周期的に変化して、寒気が南下してシーイングのすぐれない日も多く、熊森氏は連続した観測が難しかった。視直径が10秒角を越えたこともあり、ゴルチンスキー氏、ロッゾリーナ氏(アメリカ合衆国)やジャスティス氏(オーストラリア)、カルダシス氏(ギリシャ)などの常連のメンバーからの報告が入るようになった。国内からは、広島の森田行雄氏と、大阪に居を移したヘフナー氏からも久しぶりの報告が寄せられている。
寄せられた観測数は、日本からは4名19観測。南アフリカのフォスター氏から13観測。オーストラリアから2名7観測、アメリカ大陸側からは4名で24観測、ギリシャから1名3観測の報告があり、合計12名から66観測であった。
阿久津 富夫 (Ak) 常陸太田市、茨城県
2 RGB
+ 2 B+ 2 IR Images (1, 13 April 2018)
32cm Spec with an ASI 290MM
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
13 Sets of RGB + 13 IR Images (7*, 14,~ 16, 18, ~21, 23,~25, 27, 28, 30 April
2018)
31cm SCT* @ f/25, 36cm SCT @ f/27 with an ASI 290MM
ピート・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国
5 Sets of RGB
+ 6 IR images (14, 21~24 April 2018)
18cm Maksutov Cassegrain with an ASI 290MM
ロバート・ヘフナー (RHf) 大阪市、大阪府
2 Colour Images
(20. 28 April 2018) 23cm SCT with
an ASI 224MC
マーク・ジャスティス (MJs) メルボルン、オーストラリア
4 Sets of RGB
Images (7, 17, 25, 30 April 2018)
30cm Spec with an ASI 290MM
マノス・カルダシス (Mkd) アテネ、ギリシャ
3 Colour Images (3,~ 5 April 2018) 36cm SCT with an ASI 290MM
熊森 照明 (Km) 堺市、大阪府
7 Colour*
+ 7 R + 7 B Images (2, 8, 9, 18, 21, 30, 31 April 2018)
36cm SCT @ f/40 with an ASI 290MM & ASI 224MC*
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
4 Sets of RGB
+ 4 IR Images (1, 5, 16, 19,
26 April 2018)
31cm SCT with an ASI 290MM
森田 行雄 (Mo) 廿日市市、広島県
1 Set of LRGB
Images (29 April 2018) 36cm SCT with an ASI 290MM
デミアン・ピーチ (DPc) ウエストサセックス、英国 ( チリ・スコープの遠隔操作観測 )
6 Sets of RGB +5 colour + 2 R Images
(4, 5, 15,~20, 27, 28 April 2018)
Chilescope (100cm Ritchey Chretien)
マイケル・ロゾリーナ (MRs) ウエストバージニア、アメリカ合衆国
2 Colour Drawings (14, 21 April 2018) 35cm SCT, 326×
モーリス・ヴァリムベルティ(MVl) メルボルン、オーストラリア
3 Sets of RGB
+ 3 IR Images (2, 21,
30 April 2018)
36cm Richey
Chretien @
f/22 with an
ASI 290MM
♂・・・・・・ 以下に各観測を短評する。
1 April 2018 (λ=152°Ls~153°Ls, δ=8.5")
先ずEfrain
MORALES (EMr)氏がω=228°W、φ=07°SでIR685像を得た。31cmSCT、ASI
290MM 使用。シュルティス・マイヨルがまるっぽ円盤内に入ったところ。マレ・キムメリウムやマレ・テュッレヌム(+シュルティス・ミノル)は確認出來るが。微細はない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180401/EMr01Apr18.png
Damian PEACH (DPc)がChilescope teamとの遠隔 共同作業でω=233°W、φ=07°SでR,G,B各像とRGB合成像を得た。 観測時刻は19分の違いでEMr氏の構図と似ている。但し、詳細はまるで違い、。マレ・キムメリウムなどハーシェル・クレーター、ゲール・クノーベル・クレーターとの架け橋が如実に出ている。南アウソニアが赤っぽい。その南に南極雲が擴がる。ヘッラスとの関係が気になるところ。アエテリアの暗斑が二つに分裂していることが如実。エリュシウム・モンスの山岳雲が地べたに降りている。Bで顕著。ノドゥス・アルキュオニウスが明確。北極冠附近は白い靄。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180401/DPc01Apr18.png
Tomio
AKUTSU (Ak)がω=008°W、φ=07°SでRGBを構成したが、模様の分布はω=010°WのIR685像で朧に判る。シヌス・メリディアニが夕端に残り、マルガリティフェル・シヌスが格好良く、朝方のマレ・アキダリウムも形を成す。RGBではR の力が足りない。使用機器は32cm反射、ASI 290MM。フィルターはIDAS LRGB Type2.
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180401/Ak01Apr18.png
2 April 2018 (λ=153°Ls, δ=8.6")
Maurice
VALIMBERTI (MVl)氏がω=327°W、φ=07°Sで三要素とRGBコンポジットを構成した。シヌス・サバエウスが太く表現されていて。全体落ち着いた印象を与える。ヘッラスの白霧は最早の暮れ泥む夕方には存在が無きが如し。シュルティス・マイヨルは暗く見えるだけで詳細は出ない。Rでは、マルガリティフェル・シヌスが朝方に見えていて、マレ・アキダリウムも細く朝縁近くに見える、眼を惹くのは南極近くの領域で、特に朝方が濃く出ている。Bでは南極雲が途中で屈曲して一方はアルギュレに被っているように見え興味深い。使用機器は36cm Richey Chretien @f/22、ASI 290MM、フィルターは、Astronomic Type IIc RGB filters とIRにはCustom Scientific Bessell IR filter。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180402/MVl02Apr18.png
Teruaki
KUMAMORI(Km)氏は
Derotation法で、ω=355°WでのL-colour像とω=360°WのB像とω=007°WのR 像を得た。36cm SCT, @ f/40 ASI 224MC, ASI 290MMを使用。(細かい處理のディテールは画像の著者の書きコミを見られたい。)
L-colour 像はあっさりと仕上げられて、沙漠が様々なところで、色合いが少しずつ変わって描冩されているのは興味深い。暗色模様としてはシヌス・サバエウスが好く出ているし、マレ・アキダリウムも朝方で綺麗である。マレ・エリュトゥラエウムの邊りも濃く、その南には南極雲が二重層になって見えているが、南極雲がアルギュレに出っ張っているという趣。筆者に特に興味があるのは、50,000フレームでスタックしたω=007°WのR像で、シヌス・メリディアニの濃淡が嘗てのピク・ディ・ミディ邊りの像を想起させるし、マレ・エリュトゥラエウムの北のマルガリティフェル・シヌスの分布などやマレ・アキダリウムの様子など佐伯恆夫氏のスケッチを思い起こさせる點である。アラムが稍明るくて、オキシア・パルスの形も新しい特徴があるが、古典的に思える。直線運河がそこかしこに暗示されるのも佐伯流というべきか、コントラストも當時の画像を思い起こさせる逸品である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180402/Km02Apr18.png
3 April 2018 (λ=153°Ls, δ=8.6")
Manos KARDASIS (MKd)氏が ω=116°W、φ=07°SでRGB合成像を作った。36pSCT使用、カメラはASI
290MM使用。模様はソリス・ラクスあたりをふくむとおもわれるが、南半球高緯度の模様は詳細が判らない。その南に南極雲を淡目に描冩。砂漠地方はまるで夕陽を受けているように鮮やかな橙色(日本語では夕陽で真っ赤に染まると表現可能)。然し淡い模様が散らばっていて、オリュムプス・モンスは確認出來そう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180403/MKd03Apr18.png
4 April 2018 (λ=154°Ls, δ=8.7")
MKd氏の一日後の像でω=102°W, φ=07°Sでの RGB合成單像。砂漠の色は正常な黄土色に戻った。暗色模様としてはソリス・ラクスの邊りは判別できると思う。南極雲は淡くなって見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180404/MKd04Apr18.png
DPc氏がChilescopeとのコラボで ω=195°W, φ=07°Sで可成り良質の像を得た。マレ・キムメリウムに關するところでは、ゲール・クレータとクノベル・クレータとのマレ・キムメリウムへの繋がりが明確。アウソニアの南部が稍赤っぽい。南には南極雲が被さるが輪郭は出ない。エリュシウムの邊りは面白く、ケルベルスからプレグラに掛けて淡いながら太さが目立つ(淡い焦げ茶色)。エリュシウム内部の西端は可成り明るい筋に見え、アエテリア暗斑の描冩も好い、暗斑は音叉の如く二本に美事に分かれていてこれまでに描冩の中では最優秀。ケブレニアは空いて居て、北極域には 靄が蔓延っている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180404/DPc04Apr18.png
5 April 2018 (λ=154°Ls, δ=8.8")
MKd氏は引き続きω=094°W、φ=07°Sで撮像した。ソリス・ラクスの本体が今度は明確でその北のチトニウス・ラクス邊りも暗示される。南極雲は目立たなくなった。オリュムプス・モンスの同定は難しいが、その邊りには可成りの淡い暗色模様が出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180405/MKd05Apr18.png
次いでEMr氏の ω=187°W、φ=07°Sの像が來る。マレ・キムメリウムなどの詳細は然程ないが、マレ・キムメリウムの藍色系の色合いとは、著しく違って違ってケルベルス、カロンの三叉路、プレグラの褐色系が目立って興味のある画像である。アエテリアの暗斑が入ってきておりこれは藍色系か。白色の南極雲は40°Sのラインまで張り出しているように見える。北半球の夕端にはR光で明班が出ているが、同日のMRO-MARCI画像を見てみると、オリュムプス・モンスの北西に明るいダストの活動が見られる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180405/EMr05Apr18.png
DPc氏がChilescopeとのコラボでω=194°W、φ=07°SのRGB合成像と各エレメントを表示した。マレ・キムメリウムのゲール・クレーター邊りの描冩は完璧で、ヘスペリア方向へのトゲも好く出ている。先攻のEMr氏とは25分遅れで、例えばDPc氏ではシュルティス・ミノルが画面に入ってきているし、アエテリアの暗斑の二筋に分かれている部分の詳細も捉えられている。但しカロンの三叉路の際立った褐色系は特別に著しくはない。プロポンティスIも然程目立たず、Rで整理が出來るかといったところ。Rではアエテリア暗斑の東が明るい筋になっておりケブレニアも稍明るい流れ。南極雲はBで著しいが輪郭はハッキリしない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180405/DPc05Apr18.png
7 April 2018 (λ=155°Ls~156°Ls, δ=8.9"~9.0")
Clyde
FOSTER (CFs)氏が λ=155°Lsで、ω=066°W、φ=08°S のR,G,B画像群とRGB 合成像(及びIR685像)を与えた。臨時に31cmSCT使用。カメラはASI
290MM、フィルターはBaader。朝縁の處理は好くないが、南極雲、ソリス・ラクスなど色合いは綺麗。チトニウス・ラクスも纏まっており、オピル-カンドルが矢鱈北へ延びている。ニロケラスの邊りの複雑さも暗示。IRで明確。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180407/CFs07Apr18.png
Mark
JUSTICE (MJs)氏(メルボルン)がδ=9.0"
、λ=156°Lsで活動開始。30cm反射×3倍バーロー。ASI
290MM使用。フィルターはエドモンド。画像はω=309°W、φ=08°S。シュルティス・マイヨルが夕方で、Rでホイヘンス・クレータが見え始めというところ。シュルティス・マイヨルの北端は船底型。ヘッラスはヤオニス・フレトゥムがみえるが、白い基盤は見えなくなっていて南端は弱い南極雲に接する。ノアキス高緯度は暗色模様。シヌス・サバエウスはシゲウス・ポルトゥス邊りが濃く太い。南極雲はBで出ているが、その朝縁は更に濃い(thick)。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180407/MJs07Apr18.png
8 April 2018 (λ=156°Ls, δ=9.0")
Km氏がω=295°W、φ=08°S でL-colour像を与えた。10分derotationで、多くのstackingをやっているが殆ど効果がない。シュルティス・マイヨルも含めて暗色模様は鮮鋭度がない。B像でも南極雲の明度が出ていない。Seeing:2/10
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180408/Km08Apr18.png
9 April 2018 (λ=157°Ls, δ=9.1")
Km氏がω=285°W、φ=08°SでL-colour像を撮った。Seeing:4/10で昨日よりマシ。ヘッラスは殆ど氷解し、ヤオニス・フレトゥムが南に延びて濃くなっている。南極雲もω=290°Wのstacked
B像では 然程強くはない。11分derotationのR 像(ω=293°W)ではNアルキュオニウス、カシウス、ボレオシュルティスの三点セットは明確になっている。シュルティス・マイヨル北端は船底型。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180409/Km09Apr18.png
13 April 2018 (λ=159°Ls, δ=9.4")
Ak氏がω=231°W、φ=09°SでRGB像を提出、然し、模様の判断が付かない。但しω=232°WのIR像を見るとシュルティス・マイヨルが円盤に入ってきているのが読み取れる。その為マレ・キムメリウムなどの位置も知れる。尚RGB像では南極雲の存在が判るが、輪郭は判らない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180413/Ak13Apr18.png
14 April 2018 (λ=159°Ls, δ=9.5")
CFs氏が36cmSCT使用で再出発、ASI
290MMでω=355°W、φ=09°SのRGB合成像を目指すが、R,
G, IRの何れでも朝縁處理が悪く、折角の詳細も浮かばれない。ブランガエナも出て居る上、オクスス周邊も微細に富んでいるが、朝縁の奇妙さに附いて行けない。殘念なのは、南極雲の西側に興味ある切り込みがR,G両方で見られるが、傍にゴーストがあるのではどうしようもない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180414/CFs14Apr18.png
Peter
GORCZYNSKI (PGc)氏の登場である。器機は18cm
Maksutov Cassegrain、ASI 290MM、フィルターはAstronomik
RGB と赤外は
IR742 filterである。像はω=100°W、φ=09°Sで撮られ、RGB合成を試みた。附属してIR742像も撮っている。RGB 合成像は気持ちの好い色合いで、南極雲の拡がり具合も好く表現されている。ただ、角度がソリス・ラクスが夕方に近い所爲で、詳細の分解能が発揮できないのは殘念である(殆ど同じ角度からの像をDPc氏が以下15 Aprilに提供するので參照比較されたい)。R像ではオリュムプス・モンスの邊りの淡い模様の分布が見られるので、視直徑が上がれば、この角度でも描写が豊富になるであろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180414/PGc14Apr18.png
Michael
ROSOLINA (MRs)氏が ω=105°W、φ=09°Sで眼視観測を行った。 南極雲が大きく描かれ、模様の少ないところだから、他は沙漠色である。夕縁には少し青みがかった夕雲が見えるらしい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180414/MRs14Apr18.png
15 April 2018 (λ=159°Ls~160°Ls, δ=9.5"~9.6")
CFs氏がω=313°W、φ=09°SでRGB 合成像を拵えたが、三成分共に朝縁の處理が拙く、南極雲の描冩などにも影響が出ている。南極雲は可成り北まで張り出している状況。シュルティス・マイヨルは北部が濃く、中間層はヘッラスの残骸まで含めて東側は砂埃を被っている様子。シヌス・メリディアニは二本爪に見えている。 ホイヘンス・クレータはR と IRで確認出來るかと思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180415/CFs15Apr18.png
DPc氏がChilescopeとのコラボでω=097°W、φ=09°SのRGB 合成像を一葉作像した。 夕方のソリス・ラクスが大きく出ており、その北にはチトニウス・ラクスが見え、カンドールには白い霧が出ているか。ポエニキス・ラクスとアルシア・モンスは、並んで見える。オリュムプス・モンスの輪郭も朝方に確認出來る。南極雲は大きく見えるが然程thickではない。その北にはアオニウス・シヌスからマレ・シレヌムが見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180415/DPc15Apr18.png
16 April 2018 (λ=160°Ls, δ=9.6"~9.7")
CFs氏がω=334°W、φ=10°SでRGB 合成像を、各三像(+IR685像)と共に示した。R像の朝縁處理は未だ覚束ないがRGB合成像では可成り好くなって、良像をアッピールする。シヌス・メリディアニは二つ爪であるし、シヌス・サバエウスは豪快。一方ヘッラスは底地が見えているようだ。アラムは明るく、その北は赤っぽい。オクススと入ってきているマレ・アキダリウム東岸の間は可成り赤っぽく明るい。北極冠域は白色。南極雲は少し青みがかって迫力がない。但し40°Sまで張り出しているか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180416/CFs16Apr18.png
DPc氏はChilescope
teamとの共同観測でω=078°W、φ=10°SでのRGB合成像を各三色分解像と共に発表した。多分、これらの像は今季最上の火星像であると思う。先ず微細構造を受け持つR像では、ソリス・ラクスの異常なほどの膨らみが眼を惹く。その北の複雑なチトニウス・ラクスへはゲリュオンを通じて繋がり、チトニウス・ラクス の構造は今期はじめて仔細が得られたと思う。オピル-カンドルが白雲で掃かれた様な様子も珍しい。ユウェンタエ・フォンスの描冩も完璧。ニロケラスの描冩も好いが、夕縁近くは詳細が杳くなる。もう二點注意:先ず南極雲の中央部が欠けているように杳い。Bでは南極雲の外輪も複雜。もう一點は 北極冠の周りに大きな白雲の渦が見られること。G、Bで顕著。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180416/DPc16Apr18.png
EMr氏がω=081°W、φ=10°SでR、G、Bを撮り、RGB 合成像を作った。DPc氏と10分違いである。ソリス・ラクスやチトニウス・ラクスは解像度は及ばないが、存在は判る。特にIR685画像では明確。北極冠回りの大きな渦雲はちょっと判らない。オピル-カンドルの白雲の筋は明白。南極雲の天辺の凹みは描写が弱い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180416/EMr16Apr18.png
17 April 2018 (λ=161°Ls, δ=9.8")
DPc氏の矢張り優れた畫像でω=079°W、φ=10°SでChilescope
teamとの共同作業で撮られた。ソリス・ラクスの南側のタウマジアに接する邊りが綺麗に見えている。南極雲は50°S邊りまでおりているか。驚くのはアガトダエモンなどはカスマの形として顕れ、崖の線が両方二重で見えていることである。チトニウス・ラクスの西部もよく描冩されているから何れMGS画像などと比較してみたい。ネクターの邊りは夕方で微細が見えないが、パーシスなどは斑點群で出ている。オピル-カンドルもこの時期案外白雲を付けるらしい。アルシア・モンスには此のLTでは雲が懸からない。南極雲の構造は面白い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180417/DPc17Apr18.png
MJs氏がω=185°W、φ=10°Sで優れた三色合成像を作った。先ず南極雲の様子が珍しい。G像、B像に注目。マレ・キムメリウムが輪切りになっているのも今期初めてと思う。Rではゲール・クレータの担い手邊りが一つの切れ目。エリュシウムは未だ朝方で雲は出ていないようだが、地肌の明るさは目立つ(但しBではエリュシウム北部に雲か)。カロンの三叉路の邊りは褐色で肥大している。プロポンティスIもアエテリア暗斑も朝方ながら濃い。Gの Bの夕端ではタルシス・アルバ系の夕雲の殘りが見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180417/MJs17Apr18.png
18 April 2018 (λ=161°Ls~162°Ls, δ=9.8"~9.9")
CFs氏がω=292°W、φ=10°SでRGB 合成像を作像。R、G起源の朝縁ゴーストの所爲でRGB像の値打ちを下げているが、いろいろ細かいところも出ている。ホイヘンス・クレータが確認出來るし。デルトトン・シヌスの殘りカスも出ている。ヤオニス・フレトゥムとヘッレスポントゥスが高緯度で矢鱈濃い。ヘッラスは地肌が見えるが弱いガスも出ている。シュルティス・マイヨルの北端はRやIRでは船底型。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180418/CFs18Apr18.png
DPc氏の連作、でω=073°W、φ=10°Sであるから、前作と6°違い。ソリス・ラクスとチトニウス・ラクスは細かいところも出ているが、明らかに前作よりもSeeingは悪そう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180418/DPc18Apr18.png
Km氏のω=202°WのL-colour像はマレ・キムメリウムの輪切り構造を暗示するが、模様の濃淡が緩んでいる。一方ω=211°WのR像(60,000組のスタック)の方が模様のメリハリが好い。此方は南アウソニアを描いているが、L-colourでは不明。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180418/Km18Apr18.png
19 April 2018 (λ=162°Ls, δ=9.9")
CFs氏の連作で前作と2°違い、ω=294°W、φ=10°Sだが、未だ朝縁処置が拙い。お蔭で内部も疑義を受けるが、ヤオニス・フレトゥムとヘッレスポントゥスが分かれて見え、ホイヘンス・クレータがより良く見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180419/CFs19Apr18.png
EMr氏の良像のセットで ω=042°W、φ=10°S。ソリス・ラクスは濃いが、未だ分離しない。チトニウス・ラクスはよい形。オピルが明るく、ガンゲスからルナエ・ラクス、ニロケラスの描写が好い。南極雲はBで濃く出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180419/EMr19Apr18.png
DPc氏がChilescope teamとのコラボでω=051°W、φ=10°SのRGB 合成像を得た。しかし、暗色模様の詳細は得られていない。ユウェンタエ・フォンスも覚束ない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180419/DPc19Apr18.png
20 April 2018 (λ=162°Ls~163°Ls, δ=10.0"~10.1")
CFs氏は依然朝縁ゴーストと格闘。ω=285°W (01:51GMT)、φ=10°Sで撮像。ヘッラスの地肌が見えるほか、Rでホイヘンス・クレーターが明確で、ヤオニス・フレトゥムも巧く描冩。南極雲が面白い形で、ヘッラス南部に侵入。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180420/CFs20Apr18.png
DPc氏がChilescope
teamとのコラボでω=041°W、φ=10°SのRGB 合成像單像を得た。しかし、暗色模様は ユルーク再現されていて、各暗色模様に細かい詳細は附属せず、全体にぼやけた擴がりが見えるだけ、ただ、チトニウス・ラクスの東方壁の模様は見事なものである、他にユゥエンタエ・フォンスやアウロラエ・シヌスから出るグラブの指のようなトゲ明確に何本も出ている。ソリス・ラクスからマレ・エリュトゥラエウム邊りの暗部も出ているが細かくは分離しない。マレ・アキダリウムも南半球のCM附近で幅広く見えるが面白い形のニロケラス以外然程詳細はない。 シヌス・メリディアニは夕端近くに分離できる。北極冠邊りは可成り向こうを向いているが、白霧が北極冠域を覆っている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180420/DPc20Apr18.png
Robert HEFFNER (RHf)氏登場、お久しぶりです。RHf氏は24cm
SCT使用、ASI
224MCでカラー撮像。ω=195°W、φ=10°S でマレ・キムメリウムが面白い形に見える。分離が悪いがへスペリアの内部構造が見える。南アウソニアに少し明るいところ。北半球ではエリュシウムが明るいケルベルスからカロンの三叉路邊りは褐色系。アエテリア暗斑も可成りの濃度、プロポンティスIも明確。南極雲の白色系が巧く出ていない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180420/RHf20Apr18.png
21 April
2018 (λ=163°Ls, δ=10.1"~10.2")
CFs氏は未だ朝縁ゴーストと格闘中。ω=295°W
(03:10GMT)、φ=10°Sで各成分を撮像し、RGB 合成像を成した。シュルティス・マイヨルの ホイヘンス・クレーターの邊りの詳細暴露はすすんでいるし、シュルティス・マイヨル北端の暗部内の濃淡も捉えられている。ヘッラスは多く溶けて地肌の見えるところがある。南極雲はヘッラス南端部に覆い被さっている。ヤオニス・フレトゥムは明確(RとIR )IRでは雲が冩らないからヘッラス全体はのっぺりしている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180421/CFs21Apr18.png
PGc氏はω=030°W、φ=10°Sで各成分を撮像し、RGB合成像を作った。Rでソリス・ラクスあたりが濃く、南極雲がアルギュレの方にはみ出しているのが判る。然し未だ暗色模様がシッカリと出ず、マレ・アキダリウムも正中ながら淡い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180421/PGc21Apr18.png
MRs氏が ω=046°W、φ=10°Sでスケッチ。ソリス・ラクスの邊りが暗く、マレ・アキダリウムが夕方に見える。南極雲は大きい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180421/MRs21Apr18.png
MVl氏がω=157°W、φ=11°Sで各成分を撮像し、RGB合成像を得た。他にIR像。RGB像での南極雲は綺麗に出ている。B像では夕方に固まった白雲が二つ捉えられている。一つはアルバ、もう一つはタルシス系かと思う。暗色模様はどれも確固とした痕跡が見当たらない。朝方に褐色のプレグラ邊りが見えているかと思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180421/MVl21Apr18.png
Km氏が ω=170°W、φ=11°SでL-colour
像。Seeing
4~6/10で10分derotation。カロンの三叉路からプレグラの描写が秀逸で、プレグラが二重に分離し、プロポンティスIも分裂しているように見える。南半球のマレ・キムメリウムなどは輪切り型で複雑に出ているが鮮鋭度は無い。ワルハッラが割と強く出ている(ι=41°)。南極雲も中央の蔭が好く見えている。夕端にはアルバ系の白雲が見える。ω=181°WでのstackされたR像では、マレ・キムメリウムの輪切りが好く捉えられている。ゲール・クレータ関係箇所も明確。南極雲の中央の蔭も明瞭で、このR合成像は秀逸である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180421/Km21Apr18.png
22 April
2018 (λ=163°Ls, δ=10.2")
PGc氏はω=021°W、φ=11°Sで各成分を撮像し、RGB合成像を得た。IR685とIR742像も附属。RGB像はマイルドに仕上がっているが、R、IR像ではシヌス・メリディアニが夕端に殘っていることが見て取れる。R像ではマルガリティフェル・シヌスとニリアクス・ラクス/マレ・アキダリウムの繋がりも見え、アウロラエ・シヌスから南へソリス・ラクスも含めて濃い姿が捉えられている。南極雲がアルギュレにはみ出しているのも明確。南極雲が見かけ上、雲であることはR像とB像の南極地方の違いで判る。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180422/PGc22Apr18.png
23 April
2018 (λ=164°Ls, δ=10.3")
CFs氏がω=270°W、φ=11°Sで作像。未だ朝縁処置 は完璧ではないが、ヤオニス・フレトゥムを含むヘッラス部から南極雲に掛けて興味深い描冩。ヘッラスの地肌が見え砂塵色が支配する。南極雲内の不統一性はRGB像で見事。Bでもそのように見える。リビュア邊りで淡い夕雲。ホイヘンス・クレータはいつでも見えるようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180423/CFs23Apr18.png
PGc氏はω=012°W、φ=11°SでIR像を含む各成分を撮像し、RGB合成像を作った。Rでも南極雲の様子が可成り出ていて、雲の裾野の分布が一様でないのが判る。シヌス・メリディアニは可成り内部で捉えられ、RGBでも見える。Rではアウロラエ・シヌス邊りが濃く見える。 RGBでは南半球の沙漠が稍赤っぽい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180423/PGc23Apr18.png
24 April
2018 (λ=164°Ls, δ=10.4")
CFs氏は ω=258°W、φ=11°Sで作像した。RGB合成像のヘッラスを見ると、砂塵の基が地肌に撒かれたような感じがするが、G像やB像では地肌の出ているところが稍明るく出るので依然水蒸氣も少し混じっている可能性もある。一方、南極雲と覚しき白雲には餘りボケがないので、逆に氷晶が混じっているかという思いもする。南極雲の向こう側の蔭は強すぎる恐れがある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180424/CFs24Apr18.png
PGc氏はω=356°W、φ=11°Sで、IR像を含む各成分を撮像し、RGB合成像を作像した。暗色模様は二つ爪(R像では明確)のシヌス・メリディアニやマルガリティフェル・シヌスが好く捉えられ、朝方のマレ・アキダリウムも分解されたように淡く、濃淡混じりで見えている。ニリアクス・ラクスの一部が濃い斑點に見える。一方、デウカリオニス・レギオは稍赤っぽい。アラムも然り。南極雲の描冩も單純ではなく、南極中心に厚い白雲が盛り上がり、周邊に淡い目のかすみが取り巻いているような風景である
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180424/PGc24Apr18.png
25 April
2018 (λ=165°Ls, δ=10.5")
CFs氏は ω=227°W、φ=11°Sで作像した。シュルティス・マイヨルが円盤に入ったところだが、ゴースト・ラインが邪魔である。RとIRではマレ・キムメリウム並びにゲール・クレータとの接続などが好く出ている。ただ、RGB合成像ではその邊りから南の方は黄砂が漂うような気配である。エリュシウム内では、地肌の赤っぽい部分が描冩され、エリュシウム・モンスの白雲も若干見える。南極雲はBでも輪郭は明確では無い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180425/CFs25Apr18.png
MJs氏がω=134°W、φ=11°Sで優れた三色合成像を得た。大変重要な観測で、第一にマレ・シレヌムの西端部、多分ゼフュリア・トルス邊りに明るい黄塵が見えていることである。殘念ながらISMOからのこの追跡はなく、次の日も翌々日も観測がない。MRO MARCI Weather Report for the week of 23
April 2018 – 29 April 2018を参照すると前述の如く、この砂塵擾亂は24 Aprilから見られ、25 Aprilに最も強くなり、然し27 Aprilには逸散した様に見える。
尚このMJs氏の画像の第二の秀逸點は南極雲の描き方にあって、確かに極点近くでは明るさを落とすが、きっちり全体を、R,G,B共に描いてRGBでも好いグラデーションを保っていることである。その他、アルシア・モンス、アスクラエウス・モンスやオリュムプス・モンス、アルバ・パテラの白雲を強く描き、パウォニス・モンスの淡い雲もG,Bで暗示している。オリュムプス・モンス邊りの詳細も可成り見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180425/MJs25Apr18.png
26 April
2018 (λ=166°Ls, δ=10.6")
EMr氏のセットは ω=336°W、φ=11°Sで作像され、三色像の他IR685像も添付。シヌス・サバエウスが中央だが、RGBではRやIR像のシヌス・メリディアニ程も鮮鋭ではない。 R像ではブランガエナも見えているが、RGBでは白い朝靄が立って暗色模様を消さんが許りである。これは北極域まで及ぶ。南極雲も鮮鋭度はないが好い色合い。デウカリオニス・レギオの赤っぽさも出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180426/EMr26Apr18.png
27 April
2018 (λ=166°Ls, δ=10.7")
CFs氏は ω=227°W、φ=11°Sで作像したが、再び朝縁のゴーストが強く出て、朝縁のシュルティス・マイヨルを潰している。然し、シュルティス・ミノル邊りや、マレ・キムメリウムの西北端邊りの描冩は好くできている。南アウソニアの赤っぽさも見事。エリュシウム内の描冩は先の観測の再現。アエテリアの暗斑の二本に分裂の様子もOK。ノドゥス・アルキュオニウスも明確。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180427/CFs27Apr18.png
DPc氏はChilescopeとのコラボで2葉のRGB 合成像をω=331°W、ω=345°W、φ=12°Sで作像した。両者ほぼ一時間を置いて撮られている。両者の画像の特徴は、シヌス・メリディアニの北側のテュミアマタ邊りに微小斑點が散らばっている様が新しい要素として記録されている事である。RGB合成像の他にR像が添付されているので、微小斑點群を見るにはR像で十分である。勿論、シヌス・メリディアニの詳細に關しても西側の爪の先の割爪様の模様の様子や東爪の東端など新境地である。ブランガエナも單純ではない。尚、微小斑點群の中にOxus Dark Segmentも含まれる。また、ω=345°Wでは(屢々観測されていることだが)シヌス・メリディアニの南端西よりに二本の運河が真っ直ぐ にパンドラエ・フレトゥムを越えて南向きに奔っている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180427/DPc27Apr18.png
28 April
2018 (λ=166°Ls~167°Ls, δ=10.8"~10.9")
CFs氏は ω=218°W、φ=12°Sで作像、前日より朝方縁の處理は好くなって、朝を迎えたシュルティス・マイヨルが稍青色でシャープに見えているが、處理の内実は完全ではないようだ。マレ・キムメリウムなどの描写力は前日より落ちている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180428/CFs28Apr18.png
DPc氏はChilescopeとのコラボでRGB 合成像をω=298°W、φ=12°Sで作像。シュルティス・マイヨルは殆ど中に入っている。シヌス・メリディアニは朝縁を離れたところ。アリュンの爪の東側の縁には詳細がある。シュルティス・マイヨルの像を見ると画像が横ずれしたような感じで落ち着きがない。ホイヘンスの邊りも解像が難しい。氷の消えたヘッラスを囲うヤオニス・フレトゥムは明確。南極雲はBで見ると多重構造を成している様に見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180428/DPc28Apr18.png
RHf氏が ω=116°W、φ=12°Sで224MCに據るカラー像を得た。南極雲の向こう側は落ち込んでいる。マレ・シレヌムは好く出ていて、25Aprilの黄雲の残滓も見えない。ソリス・ラクスなどは夕端近くで暗部に沈んでいるが、中へ入るとアオニウス・シヌスなどが見える。ポエニキス・ラクスとアルシア・モンス は暗點として見える。チトニウス・ラクスの西部は確認出來る。色のコントラストが弱いから、山岳雲は見極めが出來ないがアスクラエウス・モンス邊りは白さが出てきているか。オリュムプス・モンスの邊りは未だ雲は難しい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180428/RHf28Apr18.png
29 April
2018 (λ=167°Ls, δ=10.9")
Yukio
MORITA (Mo) 氏が ω=074°W、φ=12°SでR、G、B像を基にRGB像を合成した。他にL像も撮って居る。望遠鏡は36cmSCT,カメラは ASI
290MM。表現としては些しくすんだ感じがするが、南極雲の形など向こう側の蔭も含めてどの像も纏まっている。ソリス・ラクスも淡いながらCM近くに見える。アガトダエモンからチトニウス・ラクス東部は確認。Rでオピルは明るい筋。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180429/Mo29Apr18.png
30 April
2018 (λ=168°Ls, δ=11.0"~11.1")
CFs氏は ω=198°W、φ=12°SでRGB合成像を作像した。朝縁の処置は最後まで不具合が殘っているが、中央部は細かいところまで表現されていて見事である。ゲール・クレータ、ハーシェル・クレーター邊りの表現はこの視直徑では見事で、へスペリアへの張り出しも面白い。エリュシウム内の描冩も色分けが出來ている。なお、南半球の夕端に小さいが明部がある。Bで弱くRで明確であるから何らかの黄塵が隠れるところであるらしい。アエテリアの暗斑はシャープとは言えない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180430/CFs30Apr18.png
MVl氏がω=062°W、φ=12°Sで三成分を撮像し、RGB合成像を得た。他にIR像。MVl氏のRGB像での南極雲の外縁の描冩は綺麗で、南極雲内部の蔭へのグラデーションも綺麗。ソリス・ラクスは形は明確だが濃くはない。チトニウス・ラクスも稍明るいオピル・カンドルと共に異常なく描冩されている。ニロケラスも淡いながら見え北極縁は白い。もう少しの時間でタルシス山系も明確になる感じ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180430/MVl30Apr18.png
Km氏はω=073°W、φ=12°SのL-colour像。南極雲の蔭の部分や南極雲の縁の凸凹を巧く表現されている。ソリス・ラクスも大きく濃く出ているが最も濃くは無い。チトニウス・ラクスもラフながら好く出ていて、その西にはポエニキス・ラクスとアルシア・モンスが並び、タルシス三山も朝方で暗點として見えている。アウロラエ・シヌス近くも描写が好く、カンドルとガンゲスの並びも綺麗。ルナエ・ラクスは稍淡い褐色で、その東にはニロケラスが明確。ω=081°WのR像は メリハリが効きすぎだが、 ソリス・ラクスなどの内部構造が更に知れる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180430/Km30Apr18.png
MJs氏のω=078°W、φ=12°Sでの三色合成像は秀逸である。南極雲がしっかり内部も外縁も好く描冩され、特に外縁が白く明るく際立つ。ソリス・ラクスは然程濃く仕上げず、その南の暗色模様に流れを記述。アガトダエモンからチトニウス・ラスクの描冩は印象的。タルシス三山も暗點の連なりとして見える。ニロケラスも明確。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2018/180430/MJs30Apr18.png