CMO/ISMO 2016 観測レポート#16
2016年十月のISMO火星観測 (λ=233°~253°Ls)
南 政 次・村上 昌己
CMO
#456 (
♂・・・・・・2016年十月中の観測報告を纏めて今期十六回目のレポートとする。この期間にも火星は足早に順行を続け、夕方の南西の低空に残っている。「いて座」の南斗の北を通過して視赤緯Dは23°S台にまで回復したが、北半球では沈むのは早く観測時間は短くなった。季節はこの期間にλ=233°Lsからλ=253°Lsとすすみ、南半球の夏至近くになって、過去の南半球の黄雲の発生時期にさしかかっている。視直径はδ=8.8"から7.5"とさらに小さくなったが、傾きはφ=02°Sから12°Sと南向きになって、縮小を始めた南極冠が捉えられている。また、位相角ιは46°から44°と少し戻ったが、北半球朝方が大きく欠けている。
佳境に入ったλ=250°Ls過ぎの黄雲活動に関しては、以下の記事に詳しく纏められている。
* Forthcoming 2007/2008
Mars (7)「黄雲の季節來たる」CMO #331 (25 May 2007) 南 政 次
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/2007Coming_7j.htm
♂・・・・・・十月になっても国内では天候が安定せずに観測出来る日は少なかった。国外からも報告者は限られてきて、良質な画像も少なく解析は難しくなってきたが、この期間には黄塵活動は捉えられていない。
期間中の観測で捉えられたこととして、南極冠に縮小に伴う明るさの不均一さやアルギューレの南の南極冠からの吹き出し、またノウュス・モンスの確認等が下旬にかけて見られたこと、マレ・セレペンテイスの濃化・肥大の続いていること、オリュムプス・モンスなどの高山は確認が難しくなっているが暗点で見られたこと、北極雲はマレ・アキダリウム付近ではやや明るく確認できること、等である。MRO MARCIの画像を見るとアルシア・モンスの山岳雲の活動は、日変化はあるがまだ継続している。
南極冠の縮小とノウュス・モンスに関しては、以下の記事が参考になる。
* 2001年の火星(7)「南極冠は何時偏芯するか」 CMO #240 (25 February 2001) 南 政 次
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/01Coming07j.htm
* CMO 2005 Mars Note (10)「ノウュス・モンスの殘照」 CMO #327 (25 January 2007) 南 政 次
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn3/CMO327.pdf
♂・・・・・・この期間には、8名の報告者から54観測の報告があった。国内からは3名7観測、アメリカ大陸側から4名28観測、南アフリカから1名19観測であった。追加報告は十一月25日〆切として2名13件で、ポール・マキソン氏の九月中の観測等である。
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
17 Colour + 19 IR Images (2,~ 7, 9, 11. 14, 16, 17, 19,~ 23, 25,
27,
36cm SCT @f/33 with an ASI290MC
近内 令一 (Kn) 石川町、福島県
5 Colour
Image (7, 14, 15, 18,
ポール・マキソン (PMx) アリゾナ、アメリカ合衆国
1 Sets
of RGB + 2 IR Images
(1,
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
4 IR
Images (5, 7, 11,
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
9 Sets of RGB Images (6, 10, 16, 17, 22, ~ 24, 26,
森田 行雄 (Mo) 廿日市市、広島県
1 Set of LRGB Images (
大杉 忠夫 (Og) 小松市、石川県
1 Colour Image (
♂・・・・・・ 以下、今回受領の十月の観測について夫々を寸評加えて紹介する。但し、8Oct、 12Oct、13Oct、28Octに關しては報告がなかった。
Paul
MAXSON (PMx) 氏が ω=062°Wで290MM付きのMewlon-250
でIR685像を得た。夕方縁がおかしなアーク状のゴーストに侵されていて困った赤外画像だが、ソリス・ラクスの邊りは複雑に濃く、マレ・アキダリウムの南半分もニロケラス共々割と濃く出ている、両者とも微細が出ているかもしれない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161001/PMx01Oct16.jpg
PMx氏がω=053°Wで290MMによるRGB合成像とω=054°WのIR685像。南極冠は白く明るく締まって見える。ダークフリンジは青緑色で、霧に覆われているようである。アルギュレは明るく、マルガリティフェル・シヌスも判る。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161002/PMx02Oct16.jpg
Tadao OHSUGI (Og)氏がω=150°Wで290MCに依るカラー像を得る。Mewlon-250CRS使用。南極冠は形状が詳しくないがdepthは以前より深く、白い部分が厚く見える。マレ・シレヌムの全体が濃く見え、アルシア・モンスは濃いが他のMonsは曖昧。オリュムプス・モンス邊りは見えているが構造は明確ではない。北極域の雲は記録されていないと思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161002/Og02Oct16.jpg
Clyde FOSTER (CFs)氏はω=239°Wで290MCによるL-colour像。全体黄色みを帯び、色合いが悪く、南極冠もただ白い分があるだけ。ヘッラスは朝縁近くにあるはずだが顕著な様子はない。マレ・キムメリウムの存在は判るが、ヘスペリアなどは好く出ていない。エリュシウムもアエテリアの暗斑が見え、全體の位置が判るだけ。北極域の雲は明白ではない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161002/CFs02Oct16.jpg
CFs氏はω=229°WでIR685像のみ。マレ・キムメリウムは少し詳細が出て。アウソニアが複雑な形に明るい。エリュシウムの内部に暗点。トリウィウム・カロンティスは幅広い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161003/CFs03Oct16.jpg
CFs氏はω=246°WでL-colour像。黄色みに赤味が差している。南極冠附近の像は頂けない。北極域に淡い靄か。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161004/CFs04Oct16.jpg
CFs氏はω=209°WでL-colour像。マレ・シレヌムが十分円盤上に現れていない。南極冠も平凡。エリュシウムは殆ど判らない。マレ・キムメリウムはIR865では可成り詳細が出ている。北極域の靄は定かでない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161005/CFs05Oct16.jpg
Frank J MELLILO (FMl)氏はω=321°WでDMK機によるIR610像。25cmSCT使用。南極冠も程々に出ていて、シュルティス・マイヨルも明確。マレ・セルペンティスの尻尾は幅広く濃化している。ヘッラスは稍明るい圓形。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161005/FMl05Oct16.jpg
CFs氏はω=200°WでL-colour像。南極冠も南半球の暗色模様も穏やかに見えるが、黄色みを帯びてdullな感じ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161006/CFs06Oct16.jpg
Efrain MORALES (EMr)氏がω=323°W でRGB合成像を作像した。南極冠は小型になりしかし明るく、ヘッラスは内部構造が見える。シュルティス・マイヨルとシヌス・サバエウスは大半が出ていて、マレ・セルペンティスの尻尾は幅広く濃化している。北極域の雲は目立たない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161006/EMr06Oct16.jpg
Reiichi KONNAÏ (Kn)氏はω=087°Wで、L-colour像を撮った。Seeing 1~2/10の由で、南極冠も少し大袈裟になっているが、ソリス・ラクス辺りも濃いだけで、詳細はない。チトニウス・ラクスやオピルの邊りも見当が付くだけである。ガンゲスは見えないが、ニロケラスの邊りは濃いか。クサンテも光って見えるが、何か?
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161007/Kn07Oct16.jpg
CFs氏がω=190°WでL-colour像。南極冠はキレが悪い。ゴルヂ・ドルスムとその周りの明るい環が見え、その先にはオリュムプス・モンスの陰影も夕端近くに見える。IR685像では、マレ・シレヌムの東半分が濃い。 エリュシウムの邊りも朝方で微妙。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161007/CFs07Oct16.jpg
FMl氏がω=308°WでDMKでIR610像。シュルティス・マイヨルが大まかに見える。南極冠の方向は明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161007/FMl07Oct16.jpg
CFs氏がω=177°WでIR685像。南極冠も弱いが、マレ・シレヌムの暗部は見当が付く。ゴルヂ・ドルスムの邊りもモヤモヤとしている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161009/CFs09Oct16.jpg
Yukio MORITA (Mo)氏がω=073°WでLRGB、RGB合成像を得た。RGB像の方が好い。Rでは南極冠が割と鮮明で、アルギュレの邊りが稍明るい。オピルも明るく切れ上がっている。ただ、このR像はL像と同じく、朝縁に不自然な幅を持つ太いゴーストが付随している。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161010/Mo10Oct16.jpg
CFs氏がω=157°WでL-colour像。南極冠が幅狭く見える。マレ・シレヌムは確認出來る。ゴルヂ・ドルスムとその周りの扁平光輪、オリュムプス・モンスなどは明確。タルシス三山もチェックできる。相変わらず黄色みの強い画像。北極域の夕端に白雲の塊か。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161010/CFs10Oct16.jpg
EMr氏がω=273°W でRGB合成像を作像。南極冠可成り厚く白い。フリンジも濃く見える。へスペリアが綺麗に切れ上がり、アウソニアからエリダニアに掛けて赤っぽいのが顕著。ヘッラスは朝方でベージュ色。シュルティス・マイヨルの西端は朝闇に泥む。北極域の雲は淡く青味。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161010/EMr10Oct16.jpg
FMl氏はω=269°WでDMKによるIR610像。赤道帶の暗帯は見えているがヘスペリアなどは明白ではない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161011/FMl11Oct16.jpg
Kn氏がω=014°Wで、L-colour像を撮った。南極冠が好い形になってきた。アルギュレの邊りは明確な輪郭は示さないが赤っぽい色合いである。シヌス・サバエウス/シヌス・メリディアニは マルガリティフェル・シヌスと共にボンヤリとみえる。ヘッラスは夕端でやや赤味か。北極域の雲は確認されない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161014/Kn14Oct16.jpg
CFs氏のω=123°WでのL-colour像は南極冠を巧く捉え、こちら側の輪郭が圓形に見える。ソリス・ラクスも詳細はなく、チトニウス・ラクスも案外と不分明だが、その北縁をV字型に明帯が見える(舊タルシス)。一方タルシス三山は明確でオリュムプス・モンスの頂上は褐色に見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161014/CFs14Oct16.jpg
Kn氏はω=005°Wで、L-colour像を撮像。南極冠が円い形。マレ・セルペンティスの尻尾の幅広は出ているか。ヘッラスは夕端でピンク色っぽい。マルガリティフェル・シヌスなども出ているがどれも暈けている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161015/Kn15Oct16.jpg
CFs氏はω=136°WでのL-colour像、南極冠はフリンジに取り巻かれて綺麗で可成り締まって見える。南極冠の中心は既に南極点からの偏芯を始めていて、この時期CFs氏の方向からは手前の雪線は75°S邊りにあると思うが、ω=210°Wの方向からは80°Sぐらいに縮んでいるだろうと思われる。南極冠の北側へはフリンジを越えて白い吹き出しがある模様。ソリス・ラクスも夕縁に傾いて明確ではないし、マレ・シレヌムも濃い部分があるが、全貌は曖昧。ただ砂漠の方では、ポエニキス・ラクスやタルシス三山とオリュムプス・モンスの斑點は割と明確である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161016/CFs16Oct16.jpg
FMl氏はω=206°WでDMKによるIR610像。南極冠は明確ではないが、右側の暗帯はマレ・キムメリウムであり、マレ・シレヌムも些し顔を出している。その他 エリュシウムのプレグラ邊りに濃さがある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161016/FMl16Oct16.jpg
EMr氏がω=223°W でRGB合成像を作像。南極冠の描冩が些し足りないのは、ω=220°Wの方向からは、南極冠が早く後退していて厚みが薄く見える爲であろうと思う。アウソニアの赤味が好く出ており、マレ・キムメリウムの名所アリンコの脚、その先にはゲール・クレータあるいはクノーベル・クレータを持つ脚が見えている。エリュシウムも見え、プロポンティスTも濃い。北極域の白霧も窺え、色彩の好い画像である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161016/EMr16Oct16.jpg
CFs氏がω=089°WでL-colour像。南極冠が好い形をなす。アルギュレの邊りが明るい。ソリス・ラクスはど真ん中で大きく支配するが、詳細はない。タウマジアは少し見える。チトニウス・ラクスもかなりの描冩で、オピルは明るい。アウロラエ・シヌスも好く見えていて、ガンゲスも辿れる。ニロケラスも青黒く、夕縁にはマレ・アキダリウムが寝ている。北極域雲は描冩されない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161017/CFs17Oct16.jpg
EMr氏がω=216°W でRGB合成像を作る。南極冠は白く明るいが輪郭が出ない。マレ・キムメリウムが濃いが暈けている。エリュシウムも描冩不十分。北極域白霧は綺麗に描冩されている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161017/EMr17Oct16.jpg
Kn氏がω=335°WでL-colour像を撮る。シュルティス・マイヨルが入ってきていて、マレ・セルペンティスの尻尾が幅広く見えている。ヘッラス内の西壁内はピンク色。シヌス・メリディアニが朝方の位置。南極冠の描冩は暈け気味。北極域雲は見えない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161018/Kn18Oct16.jpg
CFs氏がω=090°WでL-colour像を撮る。南極冠は形が好く、ディア邊りへの吹き出しがあるようだ。一部ピンク色。南極冠はIR685では小さいので、南極冠の分裂もしくは一部が暗くなっていることの反映かもしれない。ソリス・ラクスやチトニウス・ラクスなどは前日と同程度。オピルの明るさも同じ、 ガンゲス、ニロケラスも同じだが、夕縁のマレ・アキダリウムには夕霧が出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161019/CFs19Oct16.jpg
CFs氏はω=077°WでL-colour像。南極冠の微細が出ているようだ。南極冠のフリンジの外側の明部に注意(IR685像に顕著)。アルギュレは赤味か。ソリス・ラクス/タウマシアの邊りは全貌が出ているが、マレ・エリュトゥラエウムが淡い。オピルは赤味を帯びて明るく、アウロラエ・シヌスからマルガリティフェル・シヌス方面も出ている。夕方のマレ・アキダリウムの前方は夕霧。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161020/CFs20Oct16.jpg
CFs氏はω=069°WでL-colour像。南極冠の描写が好い。吹き出しが見え、ディア邊りが明るい。アルギュレは赤っぽい。夕端にはシヌス・メリディアニが出てきて、マルガリティフェル・シヌス、アウロラエ・シヌスは正常であろう。 ガンゲスは淡いが、ニロケラスからマレ・アキダリウムは濃い様だ。マレ・アキダリウム本体には白霧が夕霧として出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161021/CFs21Oct16.jpg
CFs氏はω=055°WでL-colour像。南極冠はその境界にも微細がある様子で、ダークフリンジを越える吹き出しはリアルである。アルギュレは輪郭がはっきりしないが赤味を帯びている様子。矢張り、マレ・エリュトゥラエウムは目立たない。夕方の明るい筋は2005年の18Oct黄雲の後、同じところに見られた筋に似ている (22 Oct 2005 ω=026°W、031°W、039°WのBill FLANAGAN (WFl)氏の画像參照。) 今回は北極域の白霧が分布して見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161022/CFs22Oct16.jpg
EMr氏がω=162°W でRGB合成像を得る。南極冠が局在化してきた。マレ・シレヌムが濃い。北極域の白霧が廣く見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161022/EMr22Oct16.jpg
CFs氏はω=044°WでL-colour像。南極冠の輪郭は判然としないが、中央へ南極冠からの吹き出しがあることは明白、溢れ出ているような感じ。IR685では吹き出しの部分がダークフリンジで濃いので、吹き出しは水蒸氣の可能性がある。像は暗色模様が淡くなっているが、アリュンの爪が明確であるほか、マルガリティフェル・シヌスも正常に見えるし、アウロラエ・シヌスの人型も出ている。φが南を向いて、マレ・アキダリウムは下がってきたが、北極域の靄を除けば、割と濃い様子。ソリス・ラクスの邊りは朝方で不分明だが、マレ・エリュトゥラエウムは普通の濃度で、アルギュレ邊りはベージュ色で明るい方。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161023/CFs23Oct16.jpg
EMr氏がω=138°W でRGB合成像。南極冠は小さく見えるが白く、ダークフリンジが目立つ。マレ・シレヌムは濃いが、その南は白い靄がある如し。 R像ではオリュムプス・モンスも三山も確認出來るが合成像では明確ではなくなっている。Bで見る限り、北極域の白雲は顕著ではない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161023/EMr23Oct16.jpg
Kn氏がω=300°WでL-colour像を作像。Seeingが 1/10 で相当ぼやけているが、シュルティス・マイヨルが中央で、ヘッラスが円く明るい。南極冠は明るいが形を成さない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161024/Kn24Oct16.jpg
EMr氏がω=144°W でRGB合成像。Tiltがφ=10°Sで南極冠が可成り此方を向いてきた。北側はダークフリンジ。マレ・シレヌムは朝方だが可成り濃い。マレ・シレヌムとダークフリンジの間にもう一本筋がある。マレ・クロニウムの緯度か。像は前日より優れていて、合成像でタルシス三山とオリュムプス・モンスは指摘できる。アスクラエウス・モンスが可成り濃い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161024/EMr24Oct16.jpg
CFs氏がω=027°WでL-colour像。シヌス・サバエウスがかなり入ってきた。アリュンの爪もブランガエナの端くれも一寸見えている。ネウドルス二重運河も見える。南極冠も微細構造を暗示し、 吹き出しも依然好く見える。南極冠夕方にノウュス・モンスが分離して見える。北極域の靄はマレ・アキダリウムの北部を淡く侵している。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161025/CFs25Oct16.jpg
EMr氏がω=115°W でRGB合成像を得る。南極冠はこぢんまりと白く明るいが微細は判らない。ソリス・ラクスは夕方に大きく見え、その西方は赤味を帯びる。オピルは普通に明るい。チトニウス・ラクスの詳細も判らない。マレ・アキダリウムは見えないが、その夕方から北に掛けて白霧がある模様。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161026/EMr26Oct16.jpg
CFs氏がω=343°WでL-colour像。シヌス・メリディアニは朝方で暗みに泥んでいるが、 シヌス・サバエウスからマレ・セルペンティスはCMに近づいて、拡大したマレ・セルペンティスの尻尾は明確。ヤオニス・フレトゥムもハッキリし、ヘッラスの西部は明るく見えている。季節は1956年のノアキス大黄雲の發生時期だが、そういう兆候はない。南極冠の分離は悪いが、白いノウュス・モンスは見えている(Novus Monsの分離はλ=230°Ls頃から起こり、今期は25September邊りから観測されたはずであるが、適当な角度の觀測が無かったわけである)。尤も、λ=250°Ls頃の影像が得られたのは然程遅くはなく幸いであった。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161027/CFs27Oct16.jpg
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N.B. Novus Monsの消長についてはCMOでも早くから注目し、既にCMO#007
(25 April 1986)ではJGR 84 (1979) のP JAMES-G BRIGGSの記事に基づいて "ノウュス・モンスは南極冠の未だ大きいときも内部に明るく見えていること、 λ=242°Ls邊りから南極冠の外に分離して顔を出し、λ=263°Lsで分離し、 λ=270°Ls邊りで消失" というような紹介がある (殘念ながら、佐伯恆夫氏の本にも大澤氏の記述にもNovus Monsについての連続した観測が報告されていない)。もっとも、後のCMO#111などでは臺灣での觀測により分離時期をλ=239°Lsからλ=243°Ls と見做しているほか、消滅時期についてもλ=286°Lsぐらいまで延長されている。当然歳々の視直徑や高度の条件によって値が違ってくる。消滅時期の状況については、CMO #237 (25 Jan 2007)に詳しいので參照されたい。様々な圖が引用されていて、MGO-MROの照片によるNovus Monsの消長も示されている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn3/CMO327.pdf
この後、暫くNovus Monsの消長は追えるので、ここで、1988年のλ=262°Lsに筆者の一人(MURAKAMI)がニコンの10cm屈折で撮ったNovus Monsの姿を再度紹介する。CMO#116 (25 April 1992)の表紙を飾ったもので、當時福井の編集部が百枚に及ぶナマ印画を實際に表紙に一枚一枚貼ったものである。
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EMr氏がω=087°WでRGB合成像を得る。南極冠は内部構造を持つようだが、表現されない。ソリス・ラクスの邊りも暗部としか言いようがない。オピルは明るくガンゲスも見えている。夕方のマレ・アキダリウムは白霧が懸かっている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161029/EMr29Oct16.jpg
CFs氏がω=353°WでL-colour像。Novus Monsは表現されているほか、その先に白い領域が見えている。マレ・セルペンティスの尻尾は明らかに太いヘッラスは夕端で明るい。シヌス・メリディアニなどは詳細に至らない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161030/CFs30Oct16.jpg
CFs氏はω=358°WでIR685像のみであった。Novus Monsは見えると思う。マレ・セルペンティスの様子はよく判る。マルガリティフェル・シヌスも現れてきた。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/161031/CFs31Oct16.jpg
♂・・・・・・ 追 加 報 告:
ポール・マキソン (PMx) アリゾナ、アメリカ合衆国
12 Sets of RGB + 12 IR Images (10,~13, 15,~19, 26, 28. 30 September
2016)
25cm Dall-Kirkham with an ASI290MM
デミアン・ピーチ (DPc) ウエストサセックス、英国 (バルバドス)
1 Set of RGB Images (
♂・・・・・・・ 追加報告のレビューは、観測シーズン終了後のReportでまとめることとする。
画像は以下のリンクから見ることが出来る。
PMx: http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/index_PMx.html
DPc: http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/index_DPc.html