CMO/ISMO 2016 観測レポート#14
2016年八月の火星観測 (λ=196°~214°Ls)
南 政 次・村上 昌己
CMO
#454 (
♂・・・・・・ 今回からは一ヶ月間の観測報告をまとめて取り扱う。今期十四回目のレポートは2016年八月中の期間となる。火星は「てんびん座」から順行を続け「へびつかい座」をかすめて「さそり座」へ入った。24日にはアンタレスの北を、翌25日には土星の南を通過していった。夕空の南の空でこの三星の作る三角形が日々変化して面白い眺めであった。
視直径はδ=13.1"から10.5"と小さくなり、欠けも大きく観測後半の様子となった。位相角ιは42°から46°に増加している。傾きはφ=13°Nから07°Nと正面に戻ってきた。季節はこの期間にλ=196°Lsからλ=214°Lsとなり、南半球の春の黄雲発生の時期も進んでいる。視赤緯D はさらに南に下がって22.5°Sから25.1°Sまで低くくなって、北半球での観測可能時間はさらに短くなってしまった。
八月にはさすがに報告数も減って稠密な解析は難しくなってしまった。RGB単色光画像の報告の少ないことも要因で、カラー画像やIR画像では水蒸気の分布は捉えがたく今後の課題である。
南極冠は傾きが正面を向きつつあることによって南縁に明るくはっきり捉えられるようになってきた。周囲には暗帯があり区切られている。ヘッラスは地肌が見えていると思われ、下旬までは北西部の周囲がはっきり捉えられていたが、月末になって周囲の明るさが拡がり始めていて、九月の黄塵活動に繋がっていったものと思われる。 アルギュレは南極冠からの吹き出しで逆三角形に見えるアルゲンテウス・モンス状態になっていたが極端に明るくは捉えられていない。20日には、ニロケラスの暗斑付近で黄塵が発生して南のクリュセ方面に拡がったが、発展することなく数日で沈静化した模様で、MRO
MARCI Weather Report の画像でもそのことがうかがえる。オリュムプス・モンスやタルシス三山は朝方で暗点に捉えられていたが、エリュシウム・モンス域は良い画像が少なくはっきりしない。午後の山岳雲活動は欠けが大きく捉えられなくなった。北極雲はB光画像が少なく、だいぶ陰りにも入っていてはっきりしないが、マレ・アキダリウム、ウトピア、プロポンティスTの北側には引き続き明るいところが認められている。55°N以北は北極フードになっているのではないかと思われる。
注) アルゲンテウス・モンス関しては以下のCMO WebPageに記述がある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmohk/266Note12/indexj.html
♂・・・・・・ この期間には以下のように、14名の報告者から129件の報告があった。国内はこの夏は天候がすぐれず報告数は延びなかったが、アメリカ側の観測数は増加している。追加報告は九月25日〆切として3名52件で、デミアン・ピーチ氏のバルバドスでの観測やポール・マキソン氏の観測が多く含まれる。国内からは4名18観測、アメリカ大陸側から6名85観測、ヨーロッパからは2名3観測、オーストラリアから1名3観測、南アフリカから1名20観測の内訳である。
マルク・デルクロア (MDc) フランス (Pic du Midi Observatory*)
1 RGB
Colour + 1 IR Images (8 August 2016) 106cm Cassegrain* with an ASI174MM
ビル・フラナガン (WFl) テキサス、アメリカ合衆国
2 Sets of RGB
Images (24, 25
August 2016) 36cm SCT @f/17
with a PGR Flea3 ICX618
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
20 Colour + 20 IR
Images (1, 2, 4,~7, 9,~ 12, 14*,~16*, 18*,~ 21*, 27*,~ 29* August 2016)
36cm
SCT @f/33 with an ASI224MC & ASI290MC*
マーク・ジャスティス (MJs) メルボルン、オーストラリア
3
Sets of RGB Images (15, 29 August 2016) 30cm Spec with a DMK21AU618
近内 令一 (Kn) 石川町、福島県
6 Colour
Images (1, 9, 11, 12, 21, 24 August 2016)
41m SCT with an ASI224MC
熊森 照明 (Km) 堺市、大阪府
3 LRGB
+ 3 B Images (1, 12, 31 August 2016) 36cm SCT @ f/38 with an
ASI224MC & ASI290MM
ポール・マキソン (PMx) アリゾナ、アメリカ合衆国
7 Sets of RGB +
7 IR Images (7,~ 10, 12, 14,
15 August 2016)
25cm Dall-Kirkham with an ASI290MM
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
14 Colour
+ 9 IR* Images (3, 9, 14, 15, 20, 22, 23, 24/25, 26/27, 27 August
2016)
25cm
SCT with a ToUcam pro II, DMK21AU618.AS*
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
11
Sets of RGB Images (3, 4, 9, 9n, 16, 18, 20, 23, 28, 29, 31
August 2016) 31cm SCT with a Flea 3
森田 行雄 (Mo) 廿日市市、広島県
4
Sets of LRGB Images (11, 24,
27 August 2016) 36cm SCT with a
Flea 3
大杉 忠夫 (Og) 小松市、石川県
5 Colour
Images (3, 11, 13, 14, 18 August 2016) 25cm Dall-Karkham with an ASI290MC
ロバート・シュルツ (RSz) オーストリア
1 LRGB
Image (7 August 2016) 20cm SCT with an ASI290MM
チャルレス・トリアーナ (CTr) ボゴタ、コロンビア
1 L
Image (21 August 2016) 25cm
SCT @f/27 with an ASI120MM
♂・・・・・・ 今回も日付順に各報告画像をレビューする。
1 August 2016 (λ=196°Ls, δ=13.0"~12.9",
φ=13°N, ι=42°)
Reiichi
KONNAÏ (Kn)氏がω=037°Wで ASI
224MC像を撮った。Lフィルターを使用しているので、L-colour像に分類すべきかと思う。今夏は日本の氣象は最悪に近く、昔は特に七月の終わりから八月初旬に掛けては関東ではシーイングが非常に好いと(多分近内令一氏の地盤であった東京で)言われていたものだが、最近ではこの伝説は終焉したのではないかと思っていたが、近内氏のこの画像には當時の抜群のシーイングが再現したような気配で、微細など 美事である。ただし、今年も太平洋高気圧は弱く、實際のシーイングは然程ではなかったであろうと推察されるが、スタッキングの技術の革新でボケボケからどの像にも潜む現実の濃淡を抽出したものと思う。微細に関するスタッキングの成果は例えば、ネウドルスの二重運河、ブランガエナ、オクススの複雑骨折、Odsの検出、マルガリティフェル・シヌスの中心を貫く暗線の可能性、アウロラエ・シヌスの人型(当然イウウエンタエ・フォンスの検出)、マレ・アキダリウムの東岸の複雑さなど、眼視観測者からみると名人でもウッカリ落としそうなものまで易々と開陳されるのである。アリュンの爪は未だ不完全(特に右の爪)だが、ニロケラスのニッパーは標準以上である。昔の近内氏の鋭眼とスケッチ技法と40cmの口徑を以てすれば、好シーイングの下では、これらはすべて押さえられていたであろうと思われるものが並んでいるのである。但し、模様の色彩は陰気で良シーイングにつきものの綺麗さが無い。
この日のシーイングについては、近内令一氏は「Seeing
was still terrible, but some improvements in squeezing out some detail from the
blurred images.」と書いているのであり、後の機会(9 August)には「昨夜は、台風5号“Omais”が東北地方太平洋岸を掠めて抜け去り、大気を派手にかき回してくれてエライこっちゃの激悪シーイングとなりました。蠍の心臓に迫りつつある火星は肉眼で気が狂ったように瞬き、望遠鏡の眼視では全く何も見えません。PCのFireCaptureのモニターでは火星像がコマ落とし動画のアメーバのようにグネグネと形を変えて動き回り、なんも写らんだろうなと期待極薄で4万フレームほど撮像しました。それでも画像処理で大まかな模様の輪郭が焙り出されてくるのは驚きで、魔法のようですね。シーイングがいくら悪くても休むな、ということだと理解いたしました。
筆者達は、近内令一氏のこの像は決して無防備に矢鱈にスタックをしたのに成功したとは思っていない。シーイングに見合った撮像枚数の範囲を間違いなく決め、捨てるものは捨て、兼ねてから必要不可欠なものがスタックで残るように案配していると考える。シーイングが悪くても休むな、というのは福井でのモットーであり、これは全く別な意味だが、得るものもあったことは事実であり、「神任せ」という感じなら、下手すると瑕疵が紛れ込む危険もあるが、そこは誰かが見守らなければならないわけである。
扨て、全体を見て、先に述べた詳細の他に看過してはならないのは、南半球の暗色模様の場合で、マレ・エリュトゥラエウムのような茫洋とした模様はスタックの神様は捨てるのではないか、という疑いがあるし、それに対して(ソリス・ラクスが未だ明確でない爲に指標が無いのだが)アウロラエ・シヌスの遙か南に濃色部があり、南極冠の後方と作用し合っている風情であること、マレ・アキダリウムもニリアクス・ラクスは可成り濃いが、マレ・アキダリウムの本体は淡く、マレ・アキダリウムの濃い北端部には北極域の雲が大きく支配し、その中にマレ・アキダリウムから暗線が入り込んでいるという風景が珍しい。この濃い暗線はイアクサルテスとは方向が違うようなので、北極冠域の雲の層の間に出來たものかもしれない。これには単色光のingredients像が欲しい。
なお、これはカメラの所爲であろうと思うが、南極冠は綺麗には描冩されていないし、夕端縁の黄色い明部は物理的なものではない、何かの欠陥だと思うが如何か。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160801/Kn01Aug16.jpg
Teruaki
KUMAMORI (Km)氏はω=060°WでL-colour像を得た。シーイングは2~3/10で、加減を考えて好いところで作像していると思う。ガンゲスとニロケラスは褐色で、北極域に擴がる雲の様子も好い。ソリス・ラクスはかなり入ってきたが、その先行するところがかなり濃い。南極冠も白さがよく、水蒸氣の覆いも出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160801/Km01Aug16.jpg
Clyde FORSTER (CFs)氏はω=117°Wで224MCによるL-colour像、IR685像。タルシス三山や、オリュムプス・モンスは容易に見える。フォルトゥナのリングは正午頃か明るい。然し全体に杳く、エアボーンの所爲かと思うが、微細がひねり出されている印象。北極域の雲は活気のない描冩。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160801/CFs01Aug16.jpg
2 August 2016(λ=196°Ls~197°Ls, δ=12.9"~12.8")
CFs氏がω=106°Wで224MCによるL-colour像を得た。表現では昨日とほとんど変わらないが、暗色模様を囲んで光輪が目立つ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160802/CFs02Aug16.jpg
Frank
MELILLO (FMl)氏はω=248°WでTou-cam
colourとω=244°WでDMKによるIR720像を得た。カラーでは南極冠による白部と北極域の白雲を好く捉えていてヘスペリアの切れ目も明確である。IRではエリュシウムの輪郭が判る。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160803/FMl03Aug16.jpg
Efrain
MORALES (EMr)氏がω=245°WでRGB合成像を作った。暗色模様としてはマレ・キムメリウムの西部がCM過ぎに強く出ているが、アウソニアの弱い赤味が出ているものの南極冠が白くない。Rでは明確なので、G像の所爲かとも思う。北極域の雲は綺麗である。エリュシウムの輪郭はRで明確。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160803/EMr03Aug16.jpg
Tadao
OHSUGI (Og)氏はω=023°Wで290MCカラー像。粒子が粗めだがブランガエナからオクススは格好よく出ている。但し肉付きが宜しくない感じと、相変わらず南極冠の白さが無く、北極雲域の滑らかな白雲も出ていない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160803/Og03Aug16.jpg
4 August 2016(λ=198°Ls, δ=12.7"~12.6")
CFs氏の連続觀測の一環。ω=099°WでL-colour像とIR685像。チトニウス・ラクスの暗點など毛羽ケバしく無く出て感じが良い。ガンゲスはもう少し褐色が勝つと思う。オリュムプス・モンスは朝縁に近いが褐色が窺える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160804/CFs04Aug16.jpg
EMr氏のω=210°WのRGB合成作業。Rで見ると可成り細かく冩っているが、合成像では緩やかな感じの好い像。ワルハッラが見えている。トリウィウム・カロンティスが大きく濃い。南極冠も綺麗で北極雲域の雲も滑らかで大きい。左端際の処置は巧い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160804/EMr04Aug16.jpg
5 August 2016(λ=198°Ls~199°Ls, δ=12.6"~12.5",
φ=12°N)
CFs氏がω=090°WでL-colour像とIR685像を得た。前日の像と比べて、些し斑點が目立ち、陰気である。ガンゲスの褐色も好く発色していない。北極域の雲の五日間での動きは調べる必要があろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160805/CFs05Aug16.jpg
6 August 2016(λ=199°Ls, δ=12.5"~12.4")
CFs氏の像はω=071°WでL-colour像とIR像である。ソリス・ラクスも分離しないまま南半球の一角を占め、その前方も杳い。マレ・アキダリウムとニロケラスの根元の間に黄塵が出ているような気がする。マレ・アキダリウムの南部もダストで淡くなっていないか。南極冠は明るいが純白ではなく黄色みが感じられる。南極冠の夕方から北に三角の吹き出しが出ている。北極域雲は弱い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160806/CFs06Aug16.jpg
Paul
Maxson (PMx)氏がω=237°Wで優れたRGB合成像とそのエレメント、及びω=239°WでIR685像を与えた。マレ・キムメリウムは可成り詳細が出ており、マレ・テュッレヌムの西部も好く描冩されている。エリュシウムの前方、トリウィウム・カロンティスからプレグラも自然で、後部のアエテリア暗斑は些し弱く(Rでは明確)これに先行する明るいストリークは一時の地肌の輝きを落とした(ιの所爲か)。中央の縦筋は割と明確。南高緯度ではアウソニアが赤っぽく、南極冠の白さも窺える。北端には白雲の塊が顕著。カラー像の粒子はざらついた感じであるのはどうしてか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160807/PMx07Aug16.jpg
CFs氏の像はω=064°WでL-colour像とIR像。陰気臭い火星面であるが、汚れているんでしょうな。ガンゲスの褐色も陰気。北極域にはマレ・アキダリウムの北に極雲が屯している。目立つのは南極冠の明るさで、南極冠からアルギュレの方に逆三角形の吹き出し(水蒸氣混じりのダストだろう)が見えている。これは恒例である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160807/CFs07Aug16.jpg
ウイーンのRobert
SCHULZ (RSz)氏がω=112°WでASI290MM像だが、カラー像だけの提出。ソリス・ラクスのあたりは分離も悪く小班點に分解しないし青色が支配している。南極冠が捉えられていなくて、北極域の雲も不定形。ニロケラスやタルシス三山は確認出來ないことはない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160807/RSz07Aug16.jpg
PMx 氏は R,
G, B and IR ingredientsを撮り、RGB compositeをω=227°Wで作像。 (加えて
IR685 imageも). マレ・キムメリウムは紺色で詳しい。ヘスペリアは霧か? アウソニアは赤っぽい。エリュシウムの西端の明るい筋は前筆に比べて顕著で、ピンク色。北極域の極雲は綺麗に出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160808/PMx08Aug16.jpg
Marc
DELCROIX (MDc)氏がPic du Midiの106cm鏡を使いω=121°W で174MM像のカラー像とω=117°WでのIR685像を提出した。カラー像は南極冠の形状も悪く、タルシス三山他小班點は並またはそれ以下である。IR像では細かく出ているようだが正則ではない。北極域を覆う白雲の描冩はきれいである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160808/MDc08Aug16.jpg
9 August 2016 (λ=201°Ls, δ=12.2")
FMl氏はω=183°WのTou-camカラー像とω=179°WのDMKによるIR720像。南極冠に接する南半球の暗色模様は濃く、北半球ではプロポンティスTなどが褐色で濃く見えている。北極域の極雲も見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160809/FMl09Aug16.jpg
EMr氏がω=185°WでRGB合成像を作った。両極に南極冠、北極域の白雲が大きく見える他は、穏やかな火星像。プロポンティスTなどはRで捉えられている。午後側のオリュムプス・モンスなどは不明だが、明るいところがあることは確か。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160809/EMr09Aug16.jpg
PMx氏はω=214°Wで290MMによるRGB各成分像とその合成像、IR685による赤外像を提出した。いずれも良像である。合成像では南極冠のキレは悪いが、マレ・キムメリウムやその南側の模様配置は綺麗で、北側ではワルハッラが見られる。エリュシウムはプレグラや中央の縦暗線と共に見事に纏められている。面白いのは北極域の白雲で、G, Bでは鋭角二等辺三角形の形をしていて、底辺を夕端に於いて二等辺が南西方向に伸びている。従って、朝方に白雲は欠損している部分があり、残りは薄暗い。RGB合成像でも白雲は三角形の切れ込みのように南西に幾何学的に延び、朝方のウトピアの邊りは雲が見えなくなっていて、その境は直線状である。IRでは三角形の雲は見えないが、雲と無縁なウトピアの一部(arctic領域)は薄暗い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160809/PMx09Aug16.jpg
Kn氏がω=319°WでL-colour像。シーイングは0~1/10で肉眼では何も見えないはず。わずかシュルティス・マイヨルからシヌス・サバエウスの上空から撮っていることが判るだけで、その先は欲張るとおかしな結果が出るだろう。ヘッラスの明るさは自己の本分を守っていると思う。暗色模様に比較して、南極冠の白さは出ない。北極域の雲の描冩も十分ではない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160809/Kn09Aug16.jpg
CFs氏がω=042°Wで黄色みが強いが標準的な像。南極冠は強烈で、アルギュレの方に三角形の吹き出しは出ている(稍小型に見える)。IRではクリュセ南端の模様など好く出ている割に、RやL-colourでは弱いので短波長を吸収するような靄などが強くなっているのかもしれない。ブランガエナやオクスス邊りは好く見えるようだ。マレ・アキダリウムの北は北極域のアークティック雲がこんもり。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160809/CFs09Aug16.jpg
本日 EMr氏の再登場である。ω=165°WでRGB 合成像を拵える。前像と20°W違いでよく似ていて滑らかさがあって、感じのよい画像、 前回に比べてゴルジ・ドルスムGordii
Dorsumが極めて明確で、その為にオリュムプス・モンスなども配下に入る。ワルハッラが見える。パウォニス邊り?に緑色の発光がある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160809/EMr09Aug16n.jpg
10 August 2016 (λ=201°Ls~202°Ls, δ=12.2"~12.1")
CFs氏が、ω=030°Wで
L-colour像他を撮った。サムネールでは大変印象がよいが、實際にはシヌス・メリディアニとオクシア・パルス邊りまでは明解だが、後は杳く沈んでいて、黄色みが支配する。南極冠は明白、強烈でフリンジの外に霧を伴っていて、取り巻いている感じ。北極域の雲はマレ・アキダリウムの北に横たわっていて、東端に雲塊。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160810/CFs10Aug16.jpg
11 August 2016 (λ=202°Ls, δ=12.1"~12.0",
φ=11°N)
Kn氏がω=294°Wで
224MCによるL-colour像を撮った。シュルティス・マイヨルも含む暗色模様の濃淡の分配が綺麗である。ヘッラスは未だ内部の擾亂は盆地内に留まっている。色はベージュ色に近いが全体に黄色が支配的なので微妙なところ。南極冠は分離しない。アウソニアが夕縁際で赤味を見せるか。 北極域の雲塊はウトピアの夕方にある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160811/Kn11Aug16.jpg
Og氏がω=313°Wで290MC像。シヌス・サバエウスが可成り入ってきた。ヘッラスは砂漠の色に近いが、これは色彩認知の幅が狭いからであろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160811/Og11Aug16.jpg
Yukio
MORITA (Mo)氏がω=314°Wとω=321°Wで二組のR、G、B 要素を撮り、二葉のRGB合成像を作った。濃淡に余裕があり、アエリア、アラビア邊りの砂漠地方での(昔なら線状模様として描きたくなるような)モヤモヤした小模様のネットワークの描写が素晴らしい(特にω=321°WのLRGB,
RGBで) 。ω=314°Wではヘッラスの境界が鮮明で内部はベージュ色である。30分後には些し西壁に近いところが明るくなっている。南極冠は明白ではない。北極域の雲も餘り際立っておらず、夕方に雲塊。尚R像は今季のマレ・セルペンティスのあたりをよく示している例である。
なお、Mo氏は南北軸を垂直にする爲にp←→fラインを併設しているが、實際にこの日のΠ値(36.8°)に據って、ω=321°Wの場合、南北線が垂直になっていることを網掛けで示す。北極冠は極夜(polar night)であることが判る。北極域の雲の明塊の西端はΩ=280°W、Φ=60°N~70°Nぐらいであろうかと思われる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160811/Mo11Aug16.jpg
CFs氏はω=030°WでL-colour像を撮った。カラー像では全体が靄っている如く何處も鮮明ではない。南極冠は明るく、北極の雲も見えるが、模様はどれも磨りガラスで覆われているみたい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160811/CFs11Aug16.jpg
12 August 2016 (λ=202°Ls~203°Ls, δ=12.0"~11.9")
PMx氏がω=187°WでIR685像、ω=188°WでR,G,B各像とRGB合成像を得た。南極冠は上手く分離しないが明るく輝いている。ワルハッラが鮮明。朝方のエリュシウムの描写が素晴らしい。北極域の雲は夕方に非常に濃いことがGとBで出ている。夕方ではゴルジ・ドルスムが明確で、オリュムポス・モンスも褐色系か。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160812/PMx12Aug16.jpg
Kn氏がω=301°WでL-colour像、前日の像より遙かにpoor。南極冠がスタックでも表出しない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160812/Kn12Aug16.jpg
Km氏がω=311°WでL-colour像。Seeingは1~3/10だが像は綺麗な仕上がり。朝方のアラビアなどの砂漠がnormalに出るようnormaliseされていて、昼から夕方は白い靄が懸かったような描冩になっている。北極域の雲はウトピアで濃い。シュルティス・マイヨルの北部は姿を見せているが、南部は淡い。但しベージュ色のヘッラスの輪郭は明瞭。シヌス・サバエウスは些し褐色を呈して朝方に横たわる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160812/Km12Aug16.jpg
CFs氏はω=017°WでL-colour像。相変わらず南極冠は明るいが、全体は酷くくすんでいる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160812/CFs12Aug16.jpg
13 August 2016 (λ=203°Ls, δ=11.9"~11.8")
Og氏がω=298°Wで撮った。ヘッラスは赤味を帯びている。南極冠の邊りは明るいが境界が分離しない。ノアキスは平凡に見える
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160813/Og13Aug16.jpg
14 August 2016 (λ=203°Ls~204°Ls, δ=11.8"~11.7")
FMl氏がω=139°WでTou-cam
colour 像、ω=135°WでDMKによるIR像。NS軸が不確か。カラー像では南北両サイドに白色模様分布。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160814/FMl14Aug16.jpg
PMx氏はω=167°Wで三色分解像の撮像に基づくRGB合成像を、またω=166°WでIR685像を得た。カラー像の地は火星らしい色合いである。詳細は殆ど無く、ゴルジ・ドルスムが見えるのみといった方が好い。ただ北極域の雲は綺麗に描冩されている。なお、タルシス山系で少なくとも一ヶ所は部分的に緑色に見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160814/PMx14Aug16.jpg
Og氏は ω=293°W。シュルティス・マイヨルがど真ん中。南極冠が独立しない。北極域の雲は白いニュアンスを持つが、ヘッラスは砂漠色。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160814/Og14Aug16.jpg
CFs氏はω=354°WでL-colour像を得た。今回からASI
290MC使用。南極冠は依然明白で、ダークフリンジの外には水蒸氣が帶を成している。ノアキスは綺麗である。北極域の白雲は層を成している。
日本とは四時間ぐらいの差。シヌス・サバエウスは一部共有できる。黄雲が出ても一部両方に引っ掛かる可能性もある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160814/CFs14Aug16.jpg
15 August 2016 (λ=204°Ls~205°Ls, δ=11.7"~11.6")
PMx氏は各分解像とRGB合成像をω=156°Wで得た。他にω=159°WでIR685像。マレ・シレヌムが紺色で見えている。CM近くにはゴルジ・ドルスムが明瞭でオリュムプス・モンスも頂上から裾野が明白である(これらはR、IRで明確)。アルシア・モンスには緑色の何かが見える。アスクラエウス・モンスも特異。北極域の極雲は夕方サイドに白く綺麗である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160815/PMx15Aug16.jpg
Mark
JUSTICE (MJs)氏は久々の登場だが、ω=249°Wとω=258°Wの二回、R、G、B 成分を撮り、バランスの取れた優秀なRGB像を40分 離して二葉合成した。南半球の朝方には朝霧が見えていて、特に ω=258°WのRGB像ではその朝霧がかなり内部、ヘスペリア邊りまで及んでいる気配である。R像としてはω=249°Wの方がマレ・テュッレヌムの内部構造をよく示していて美事である。マレ・キムメリウムの描冩も十分であろう。RGB合成像では、エリュシウム周邊が好く描冩されて、アエテリアの暗斑に先行するピンク色の明帯が未だ顕著である(7AugのPMx氏の画像の場合よりvividであるが、8AugのPMx氏の描冩と同程度かと思う)。中央に杳い筋が立っているのが最近の傾向である。南極冠の白色も綺麗だが、北極域のコンモリとした白雲も綺麗である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160815/MJs15Aug16.jpg
CFs氏がω=349°Wで290MCによるL-colour像を撮った。シヌス・サバエウスがど真ん中。ネウドゥルスが見える。南極冠は明るく、手前のダークフリンジが濃い。ただ夕縁際の黄色が気になる。北極域の雲は弱い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160815/CFs15Aug16.jpg
FMl氏がω=103°W、φ=10°NでTou-cam
colour, ω=099°WでDMKによるIR像。前者は色合いが好く、北極域 の白雲も綺麗。後者の720nm像ではソリス・ラクスとマレ・アキダリウムの南部が濃い。当然白雲は出ない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160815/FMl15Aug16.jpg
16 August 2016 (λ=205°Ls, δ=11.6", φ=10°N)
EMr氏がω=113°Wで、RGB各像とRGB合成像。一見して、RGB合成像では全体が鈍く顕れ、まるでダストに覆われているかのよう。多分、SBIG系のCustom
scientific photometric filtersの特徴で、エアボーン・ダストや水蒸氣のcondensatesを好く捉えるのかもしれない。つまり、ZWO系の赤外部を取り込むのとは違って、眼視系のイメージが得られているのかもしれない。北極域の極雲は綺麗である。その他、夕端にも霧が出ている。南極冠は明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160816/EMr16Aug16.jpg
CFs氏はω=333°WでL-colour像とIR685像を得た。 南極冠は明るいが、矢張り黄色みを帯びている。λ=205°Lsだが、ノアキスには異常がない。ヘッラスの輪郭ははっきりしている。北極域には白雲の拡がり、明るさは中程度。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160816/CFs16Aug16.jpg
18 August 2016 (λ=206°Ls~207°Ls, δ=11.5"~11.4")
Og氏がω=241°Wで、290MC像。南極冠が殆ど見えていない。エリュシウムの内部の詳細はない。多分相当シーイングは悪いのであろう。北極域の雲の存在は判る。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160818/Og18Aug16.jpg
CFs氏がω=322°Wで290MCによるL-colour像。南極冠は然程明るくないがフリンジは見える。ヘッラスの西壁に沿ってピンク色。北極域の極雲は拡がりはあるが淡い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160818/CFs18Aug16.jpg
EMr氏がω=077°Wで、各エレメントとRGB合成像。合成像はやはり杳い感じがするが、夕縁際は寧ろ黄色い。南極冠は純白、北極域雲領域がハッキリし綺麗。ソリス・ラクスは輪郭が不明確だが、十分大きい。ガンゲスは褐色である。フォルトゥナの環状が見える。印象としてはエアボーンダストが強いと思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160818/EMr18Aug16.jpg
19 August 2016 (λ=207°Ls, δ=11.4"~11.3")
CFs氏はω=306°Wで290MCによるL-colour像。南極冠は明白。ヘッラスの西壁際は肌色やピンク色ではなく白味のある筋。北極域の雲はウトピアあたりで複雜。IR685像ではウトピアの一部の濃度を雲は落としている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160819/CFs19Aug16.jpg
20 August 2016 (λ=207°Ls~208°Ls, δ=11.3", φ=09°N)
CFs氏はω=293°WでL-colour像。南極冠は輝いているが、画像面は全体が汚れた感じ。ヘッラスは見えるがどんよりとしている。ただし、シュルティス・マイヨルの南部に砂塵の擾亂があるかもしれない。北極域の白雲も顕著ではなくウトピアの一部に見られるだけ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160820/CFs20Aug16.jpg
FMl氏がω=055°W、φ=09°NでTou-cam
colour像とω=052°Wで720nmフィルター使用のDMK像。前者は夕縁のシヌス・メリディアニを映し出して模様は通常に見える。ガンゲスが稍褐色か。マレ・アキダリウムも明確な方だが、北部は北極域の白雲に大きく覆われている。ニロケラスもマレ・アキダリウムから分離するので、邊りにはダストがあるかもしれない。南極冠の内部は純白の様子。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160820/FMl20Aug16.jpg
EMr氏はω=060°Wで魅力的なRGB合成像を得た。良像である。南極冠は純白で、南半球高緯度には白霧が見えている。アウロラエ・シヌスは靄から出ているが、ソリス・ラクスは未だ朝方で白霧が覆う。ガンゲスからニロケラスに掛けては褐色で顕著、高気圧の存在を暗示。北極域の白雲も魅惑的な拡がりと厚みがある。マレ・アキダリウムとニロケラスの間とマレ・アキダリウム西岸には砂塵だまりがある。前者はNilokeras Scopulus (56.2°W, 31.6°N: Scopulus=irregular
scarp)あるいはNilokeras
Mensae (52°W,
31.1°N:
Mensa=A flat-topped prominence with cliff-like edges)等の低地と高地の境目にあると思われる。この砂塵は#453のLtEの最後のあるようにマッキム氏によってdust
stormと呼ばれたものである。しかし、この種のdisturbanceから黄雲は起こることはなく、逆にdust
stormの後に見られるものではないかと思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160820/EMr20Aug16.jpg
21 August 2016 (λ=208°Ls, δ=11.3"~11.2")
Charles
TRIANA (CTr)氏はω=077°Wで120MMによるL 画像を送ってきた。南極冠と北極域の白雲塊は見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160821/CTr21Aug16.jpg
Kn氏はω=197°Wで224MC colour像。シーイングは2/10らしいが、画像は滑らかな處理がしてあり、気持ちの好い画像である。マレ・キムメリウムなどは微細をシーイング程度に押さえて、くびれの描出には成功して、感じが良い。エリュシウムも然程詳しくはしていない。北極域の極雲の拡がり盛り上がりも好く、プロポンティスTの北に及ぶ。
なお、朝方のアウソニアあたりに突起が出ているのではないか、というメモがくっついている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160821/Kn21Aug16.jpg
CFs氏がω=289°Wで、L-colour像。 フリンジ付きの南極冠は明白、ヘッラスはCM近くで西岸の輪郭はきれい。但し内部は白味を帯びた何かで詰まっていて、夕方アウソニアの ピンク色は窺えない。北ではウトピアが見えているが、汚れた雲は更に北に這っている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160821/CFs21Aug16.jpg
22 August 2016 (λ=208°Ls~209°Ls, δ=11.2"~11.1")
FMl氏はω=039°WでTou-cam-colour像。夕端のシヌス・メリディアニを分離している。北極域の白雲が大きく綺麗。南極冠も純白。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160822/FMl22Aug16.jpg
23 August 2016 (λ=209°Ls~210°Ls, δ=11.1"~11.0")
FMl氏はω=028°WでTou-cam colour像。シヌス・メリディアニが些し中に入りマルガリティフェル・シヌスと分離している。マレ・アキダリウムの大半は北極域の白雲の下(但し白雲は夕方の方が濃く見える)。クリュセがかなり明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160823/FMl23Aug16.jpg
EMr氏が同時刻ω=028°WでRGB各像と合成像。シヌス・メリディアニのアリュンの爪も明確。然し南半球全体が少しく霧が懸かったような風情。南極冠は純白で、北極域の白雲も綺麗で夕方は雲が濃密。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160823/EMr23Aug16.jpg
24 August 2016 (λ=210°Ls, δ=11.0")
Bill FLANAGAN (WFl)氏がω=070°Wで RGB各像と合成像を得た。南極冠は純白で綺麗。夕方に淡い三角形の吹き出しが見える。夕縁の描冩が絶妙で、シヌス・メリディアニが幽かに殘っている。マルガリティフェル・シヌスの描冩も綺麗で、オクシア・パルスの北側の運河の流れも巧く出ている。アウロラエ・シヌスの人型は東側の腕が見えないので黄塵が立っているかもしれない。大型のソリス・ラクスも大まかに出ており、 チトニウス・ラクスも細かく描冩。オピルは然程明るくないが、 ガンゲスは稍褐色。ニロケラスの根元はもうぼやけている。マレ・アキダリウムは稍淡く見える。北極域の雲は、マレ・アキダリウムを外す形でその両端が濃い。朝縁にはアスクラエウス・モンスが濃く見えている。なお、Seeingは5/10の表記。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160824/WFl24Aug16.jpg
Kn氏がω=165°Wで、224MC-colourを与える。 マレ・シレヌムの全貌がが濃く出ている。ゴルジ・ドルスムの周りがよくみえる。夕縁近くに白色の筋が見えるが、夕雲にしては早いし、ゴーストと區別が着かない。北極域の白雲は少しだけ。Seeingは2/10。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160824/Kn24Aug16.jpg
Mo氏がω=203°WでLRGBの各像とRGB及びLRGBの合成像。L像がおもわしくなくて、RGB合成像の方が好い。たとえば、南極冠がRGBでは見えており、北極域の雲の拡がりも此方の方が好い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160824/Mo24Aug16.jpg
FMl氏がω=023°W、031°W、037°WでTou-cam
colour像、ω=019°W、027°W、035°WでDMKによる720nm像を得た。何れもシヌス・メリディアニの描写が基準になるが、矢張り最初の像が一番好い。しかし、アウロラエ・シヌス邊りも考慮すると二番目の像が良いバランスである。南極冠域、北極域の雲は夫々出ているが、動きは掴めない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160824/FMl24Aug16.jpg
25 August 2016 (λ=210°Ls~211°Ls, δ=11.0"~10.9",
φ=08°N)
WFl氏がω=058°Wで RGB各像と合成像を得た。南極冠からの三角形の淡い吹き出しは見えている。南半球はところどころに霧靄が出ている感じ。オクシア・パルスは綺麗な形で見えているが、その西側は少しダスティで、砂塵の塊が幾つかある模様(シヌス・メリディアニの直ぐ西にも明點)。アウロラエ・シヌスの人型の西側の腕あたりはやはり鈍い砂塵があるかもしれない。マレ・アキダリウムも透明度が悪い。北極域の白霧は大きくマレ・アキダリウムの北側まで覆っている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160825/WFl25Aug16.jpg
26 August 2016 (λ=211°Ls, δ=10.9"~10.8")
FMl氏はω=354°W、001°W、012°WでTou-cam
colour像を得た。最初の像には夕端際にシュルティス・マイヨルが見える。ヘッラスは夕端で肌色。ω=001°Wではアリュンの爪が割れて見える。三像とも北極域の白雲を描冩している。 Seeingは6/10。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160826/FMl26Aug16.jpg
27 August 2016 (λ=211°Ls~212°Ls, δ=10.8"~10.7")
Mo氏はω=164°Wで、LRGB、RGB合成像をその各成分と共に示した。合成像としてはRGB像が瑕疵が少なく、南極冠や北極域の雲そのほかで比較的に好い。ゴルジ・ドルスムやオリュムプス・モンスはR像で見当が附く。夕端ではポエニクス・ラクスが明確でアルシア・モンスを取り巻く曲明帯も見え、タルシス三山も見当が附く。ここにはまだ午後の雲は掛かっては居ない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160827/Mo27Aug16.jpg
CFs氏はω=231°Wで
290MCによるL-colour像。像は汚れて見えるが、エリュシウム内の西端の明帯は明るく見えている。マレ・キムメリウムの詳細も見える。然し北極域の極雲は描冩されない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160827/CFs27Aug16.jpg
FMl氏はω=352°WでTou-cam
colour像とω=349°WでDMKによるIR610nm像。シヌス・サバエウスが中央に横たわり、シュルティス・マイヨルも夕端際に見える。IR像ではシヌス・サバエウスの尻尾が太く見える。カラーでは夕端のヘッラスとアエリアが靄で繋がっているように見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160827/FMl27Aug16.jpg
28 August 2016 (λ=212°Ls~213°Ls, δ=10.7")
EMr氏がω=355°WでRGB合成像。 マレ・セルペンティスのあたりは正常である。北極域の雲は弱く、Bでやや夕端近くで濃くなっているかという程度。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160828/EMr28Aug16.jpg
CFs氏はω=219°WでL-colour像。エリュシウムはCM近くで、西隅の明帯は見えている。北極域の靄は極めて弱い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160828/CFs28Aug16.jpg
29 August 2016 (λ=213°Ls, δ=10.7"~10.6", φ=07°N)
メルボルンの MJs氏がω=109°WでDMKによるRGB各成分とRGB合成像を得た。像は少しぼやけているが、チトニウス・ラクスの構造などは明解。オピルはピンク色に明るい。ガンゲスの色合いは一寸わからない。ニロケラスは割と濃く見えている。ソリス・ラクスはRで可成り詳細が判る。フォルトゥナの二重環はオピルに次いで明るい。南極冠の白さはボケながら好く判る。北極域の白霧も一様ではなく夕方に濃く、朝方は弱いが中央に切れ目があるようである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160829/MJs29Aug16.jpg
CFs氏がω=211°WでL-colour像。マレ・シレヌムからマレ・キムメリウムに沿って、ワルハッラが見えている(ι=46°)。エリュシウムはIRでは平板だが、カラーでは少し強弱がある。北極域の雲は鈍い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160829/CFs29Aug16.jpg
EMr氏がω=326°WでRGB合成像。 北極域の白雲は滑らかで、夕霧に繋がっているように見える。然しヘッラスは独立していて、ヘッラス内部は肌色である。シュルティス・マイヨルも午後で大雑把に見えるだけだが、南部は靄っているようにも見える(色はヘッラス内部と違う)。南極冠の白さは明白。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160829/EMr29Aug16.jpg
31 August 2016 (λ=214°Ls, δ=10.5", φ=07°N)
Km氏がω=112°Wで224MCによるL-colour像を得た。今年は太平洋高気圧が弱く、異常気象で、大阪も八月後半は火星が見えなかったようで、やっと月末台風一過のあと顔を出したようだが、シーイングはボロボロだった由。Seeing:2~3/10とある。それでも南極冠の片鱗と北極域の極雲は捉えている。夕方だがガンゲスは褐色系かと思う。オピルも明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160831/Km31Aug16.jpg
しんがりはEMr氏でω=307°WでRGB合成像(B成分の輪郭は人工臭い)。シュルティス・マイヨルが中央に近いが、ボケボケで ヘッラスの周邊部との境が出ない。但し、ノアキスとの境ははっきりしている。南極冠は割と鮮明で、北極域の白雲の拡がりも窺える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160831/EMr31Aug16.jpg
♂・・・・・・ 追 加 報 告 9月25日までに、下記の各氏から期間外の新しい報告をいただいています。
マルク・デルクロア (MDc) フランス
1 RGB
Colour + 1 B + 1 IR Images (24
July 2016) 32cm Spec with an
ASI290MM
ポール・マキソン (PMx) アリゾナ、アメリカ合衆国
29
Sets of RGB + 29 IR Images
(18,~ 20, 23, 25, 26, 28 June; 03,~17, 22, 24, 25, 27~29, 31 July 2016)
25cm Dall-Kirkham with an ASI290MM
デミアン・ピーチ (DPc) ウエストサセックス、英国 (バルバドス)
21 RGB
Colour + 6 B Images (23
March; 11, 13, 15,~18 June 2016)
♂・・・・・・・ 追加報告のレビューは、観測シーズン終了後のReportでまとめることとします。
画像は以下のリンクからご覧ください。
MDc: http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/index_MDc.html
PMx: http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/index_PMx.html
DPc: http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/index_DPc.html