Forthcoming 2016 Mars (#12)
経緯度図と視直径 part III
2016年9月〜12月
村上 昌己
CMO/ISMO #453 (25 August 2016)
CMO/ISMO
#448のPert
IIに載ったグリッド図のつづきで、今年の九月から十二月の終わりまでの視直径の変化と欠け具合を二十日毎のグリッド図で示したものです。
この期間に、季節はλ=214°Ls からλ=291°Ls まで進みます。270°Ls(南半球の夏至)になるのは十一月29日のことで視直径δ=6.6"にまで小さくなっています。視直径が10"以下になるのは、九月九日のことです。東矩(離角:elongation=90゚)になるのは九月11日で、以後は日没時には南の空を過ぎて西空へ移ってゆきます。「いて座」に進んで赤緯が最低になるのが、九月23日のことで 25゚54'37.1"Sにまで低くなります。火星面の欠けも大きく、位相角の最大は九月17日で ι=46.1゚になります。火星面中央緯度φが南向きになるのが、九月24日(λ=229°Ls)で、以後は南半球がこちらを向いてきて縮小する南極冠が見やすくなります。
十月始めのλ=235°Ls頃を過ぎると南極冠の偏芯が始まります。視直径は小さくなっていきますが、南極冠の厚みに留意して観測を続けるとλ=250°Ls頃(十月下旬)には偏芯が認められると思います。
早く融け始めるのはΩ=210°W方向でマレ・キムメリウムの南に当たります。融け残るのは反対のΩ=030°W方向でアルギュレの南になります。次回接近の観測対象にもなりますので予習と言うことで気にとめて観測してみてください。
本稿のグリッド図には反映されていませんが、以下の記事が南極冠偏芯の様子を模式図で示しています。中央緯度φによる見え方の違いには注意してください。
CMO#307 Ser2-0130p Forthcoming 2005 Mars (11)
" The SPC on Grid at λ=235°Ls, λ=250°Ls, λ=270°Ls"
「経緯度図で南極冠の偏芯を見る」
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/2005Coming_11.htm
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn2/CMO307.pdf (Ser2-0130p)
また、南極冠の様子は、
CMO/ISMO #439 (
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/439/439_FC2016_02.htm
CMO/ISMO #442 (
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/442/442_FC2016_06.htm
に参考記事としてとり上げた
「2001年の火星(7) 南極冠は何時偏芯するか」
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/01Coming07j.htm
「2001年の火星(6) 南極冠の生成と北半球の夏
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/coming2001/0106/06j.html
「浅信・秋冬の南極冠」
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/CMO353.pdf (Ser2-1021p)
などが参考になります。
年末には、「みずがめ座」中央まで進みλ=291°Ls、視直径5.7"で終わります。この時には夕方の西空で海王星と接近しています。最接近は翌年元旦の7時(GMT)で、ステラナビゲーターで見ると1分角以内のかなりの接近になります。
図でpとある矢印は、運転時計を止めたとき、視野内を火星が動く方向で、この傾きを利用すると火星の南北軸が明らかになり(回転の方向も判ります)、極点が見付けやすくなるわけです。もう一つ、CMOのグリッド図の特徴はN線とM線が表示されていることです。N線は中央子午線とはずれますので、ほぼ火星の地方時を知るのに必要です。M線は陰になっている部分の大円に 垂直な大円の線で、M線とN線の交点がsub-solar-pointつまり太陽が天頂に来る点になるように選ばれています。