CMO/ISMO 2016 観測レポート#12
2016年七月前半の火星観測 (λ=178°~186°Ls)
南 政 次・村上 昌己
CMO
#452 (
♂・・・・・・ 十二回目のレポートは2016年七月前半の半月間の観測報告を取り扱う。火星は先月末に「留」となり「てんびん座」で順行を続けていて、視赤緯Dは引き続き21°S台を保っている。視直径はδ==16.3"から14.6"と遠ざかりつつあり、位相角ιは30°から37°と増加して朝方の陰りが大きくなって北極域が見え難くなっていった。季節はこの期間にλ=178°Lsからλ=186°Lsとうつり、七月4日にλ=180°Lsと南半球の春分を過ぎて南極に陽が当たるようになった。傾きはφ=16°Nから15°Nと少し南向きに戻った。今後はゆっくりと南半球側へ傾いてゆく。いよいよ黄雲発生の季節となり、南半球の様子に注意をはらって観測を続けることが肝要である。
この期間には、エアボーンダストの影響と視直径の低下で詳細を捉えた画像は得難くなっていった。大域的な現象が捉えられるだけだが、南縁は明るく傾きは大きなものの南極冠の辺縁が垣間見えているものと考えられる。また、夕縁もリムヘイズで明るく捉えられていることが多かった。
北半球高緯度では引き続き北極雲形成の途上で、マレ・アキダリウムの北からプロポンティスTの北側にかけてや、ウトピアの北などには明るい雲が見えているが、まだ斑でフードの様相は見せていない。
高山のタルシス・モンテスやオリュムプス・モンスは朝方ではポークアウトしているのか暗点に見えていた。午後側での山岳雲の活動はほとんど見られなくなったが、夕縁の近くでアルシア・モンスの山岳雲が捉えられている様子はあった。この時は位相角がι=32°と大きな時で真の夕縁は見えず、ローカルタイムはまだ14時前だった。
ヘッラスはすっかり砂色で、明るさが見られるのは南東部だけになっているようである。
♂・・・・・・ この期間には以下のように、21名の報告者から91件の報告があった。観測期後半になってだいぶ報告数が減っている。期間外の追加報告が37件あり、近内氏とゲイリー・ウォーカー氏・ポール・マキソン氏からは画像を多数拝受した。オーストラリアからの報告は激減したが、アメリカ大陸側からの報告は続いている。国内からは4名21観測、アメリカ大陸側から8名49観測、ヨーロッパからは5名7観測、オーストラリアから3名5観測、南アフリカから1名9観測の報告だった。
マルク・デルクロア (MDc) フランス
2 Sets of RGB
+ 2 IR Images (3,
ビル・フラナガン (WFl) テキサス、アメリカ合衆国
5 Sets
of LRGB Images (1, 4, 5, 14,
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
9 Colour
+ 9 IR Images (1, 3, 4,~6, 13,~
ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国
2 Sets
of RGB images (6,
石橋 力 (Is) 相模原市、神奈川県
1 Colour
Image (
マノス・カルダシス (MKd)
グリファダ、ギリシャ
2 Colour Images (3,
近内 令一 (Kn) 石川町、福島県
4 Colour
Images (10,
工藤 英敏 (Kd) ケアンズ、オーストラリア
1 Colour Image (
熊森 照明 (Km)
堺市、大阪府
2 LRGB +
2 B Images (
マーチン・ルウィス (MLw) ハートフォードシャー、英国
1 Colour Image (
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
6 Colour Images (1, 3, 6,
11, 13,
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
8
Sets of RGB Images (2, 6, 8, 9, 11,~13,
大杉 忠夫 (Og) 小松市、石川県
3 Colour Images
(3, 10,
ロバート・シュルツ (RSz) オーストリア
1 Colour Image
(
ゲイリー・ウォーカー(GWk) ジョージア、アメリカ合衆国
4 Sets of RGB Images
(2, 4,
8,
ヨハン・ヴァレッル (JWr) スウェーデン
1 Set of RGB
Images (
アンソニー・ウエズレイ(AWs)
ニューサウスウエールズ、オーストラリア
1 IR Image (
ティム・ウイルソン(TWs)
ミズーリ、アメリカ合衆国
1 B + 1 IR Images (
♂・・・・・・ 今回も日付を追ってレビューする。
Frank MELILLO (FMl)氏がω=205°Wでカラー單像。朝方のエリュシウム内部が稍明るくプレグラが褐色でアエテリア暗斑に負けないぐらい濃い。北極域邊は白く濃い。南北線が出ていないようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160701/FMl01July16.jpg
Bill FLANAGAN (WFl)氏はω=244°W。既にアエテリアの暗斑は明確に濃い。分裂運河の右側が少し変化したようだ。南極冠は少し見える。アウソニアの赤色はAstrodonでも少し弱い。シュルティス・マイヨルは朝方で陰鬱、ヘッラスは朝靄か。北のウトピアあたりは大きくなだらかな雲に支配されている。マレ・キムメリウムは仔細が見えるがズレがある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160701/WFl01July16.jpg
Clyde FOSTER (CFs)はω=086°W。ソリス・ラクスの東方は最早夕霧を避けてはいない。ガンゲスからフォルトゥナの大白斑等はCM附近で出ているが、色彩が濁っている。北極域は白雲に複雑に覆われているが、マレ・アキダリウムなどは好く見えている。ただエアボーンダストの所爲かタルシス三山の山頂は暗く見えるし、オリュムプス・モンスも不気味に朝縁から入ってきている。ソリス・ラクスの北側に霧帶があるのか無いのか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160701/CFs01July16.jpg
Robert SCHULZ (RSz)氏はω=128°W。南極冠が出ていないが、夕霧を赤道帶で見ているか。北極域の雲も綺麗。ソリス・ラクス邊りとタルシス三山を丁寧に。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160701/RSz01July16.jpg
Gary WALKER (GWk)氏はω=201°W。南極冠を綺麗に描冩。朝方のエリュシウムでプレグラの脚を巧く描冩(R、G、Bで揃っている。Bでは模様が出過ぎ)、2001年の黄雲時に見えた形である。ブラウン色に強く、ワルハラも見えている。アエテリアの暗斑も未だ朝方で弱く先行するground-litの明筋も弱い。オリュムプス・モンスは夕方に來ても白くない。北極域の雲の描冩は綺麗。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160702/GWk02July16.jpg
Efrain MORALES (EMr)氏はω=209°W。南極冠は明白だが、南北線が立っていない。エリュシウムの描写が突出していて、太いプレグラなどは焦げ茶色。プロポンティスIやアエテリアの暗斑は普通の濃紺に見える。後者に先行する明筋の左側には暗線が見え、更にその東にも短い暗線が見える。ワルハラも見えるが、マレ・キムメリウムの詳細は然程無い。北極域は深い雲。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160702/EMr02July16.jpg
FMl氏がω=178°W。Colour cam像の三色分解の意味はわからない。案の定プロポンティスIがBで黒々と見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160703/FMl03July16.jpg
Tsutomu ISHIBASHI (Is)氏はω=321°W。シュルティス・マイヨルがボンヤリと見える。北極域の雲の色彩は出ないものか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160703/Is03July16.jpg
Tadao OHSUGI (Og)氏はω=342°W。ネウドゥルスやOdsのような25cmぎりぎりの詳細は出ているのだが、色彩が冴えない。先ず南極冠の白が出ていない。北極域の白雲活動についても発言が出來ない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160703/Og03July16.jpg
CFs氏はω=047°W。色カメラではゴーストラインが出ないと思うが、Lとの合成が悪いのであろうか。更にB系の過分な操作があるのかもしれない。ガンゲスのあたりの描写がもっと綺麗でも好いような気がする。北極域の雲は前線を伴って白雲の連鎖が続いているようである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160703/CFs03July16.jpg
Manos KARDASISI (MKd)氏は ω=097°W。到頭λ=180°Lsに達した。 チトニウス・ラクスの描冩など少し物足りないが、全般に餘り破綻がない。ガンゲスの色合いが気になる。北極域の雲は出ているので追跡が望ましい。この図では夕方のマレ・アキダリウムのお尻あたりに縁雲が白く明るい。CFs氏の撮った一連の雲連鎖のお尻か。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160703/MKd03July16.jpg
Martin LEWIS (MLw)氏はω=106°W。ガンゲスは褐色で濃く、タルシス三山が斑點としてポークアウトしているようだ。オリュムプス・モンスも続いている。MKd氏の見た縁雲は明るく未だ見えている。北極域の霧はこれより可成り薄い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160703/MLw03July16.jpg
Johan WARELL (JWr)氏はω=112°W。夕端は明るい。北にマレ・アキダリウム、南にソリス・ラクス邊りが濃く見えるが、緑がかって、色が全体に浅い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160703/JWr03July16.jpg
Marc DELCROIX (MDc)氏はω=117°W。Rで像が流れたようで、チトニウス・ラクスの形が崩れている。然し縁側の靄は捉えられており、北極域の雲の範囲は大きく、また先ほどからのマレ・アキダリウム北部の縁雲も未だ明るい(Bで顕著)。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160703/MDc03July16.jpg
GWk氏がω=177°W。もう少し早い畫像があれば比較できるのだが、いきなり夕端近くに長細い白雲が出ているが、これはアルシア・モンスの雲であろうか。もしそうなら、λ=150°Ls〜λ=180°Lsでアルシア・モンスの雲がピークを迎えるという四月迄繰り返し述べていた構図にドンピシャである(29May、λ=160°Ls、のPGc氏の画像にはにはアルシアの雲が出ている旨、CMO n°449で述べた)。既にこのGWk氏画像には2001年的プレグラの分枝も出ていて優れた像である。ここにアルシアの雲に關してMk作成の経緯度グリッドを被せてみる。雲はほぼアルシア・モンスの位置(8.4°S、121°W)にある(177-56=121)。問題のマレ・シレヌムの外形などもこのグリッドで推し量ることが出來るだろう。なお、GWk氏は南北線を出しておらず、6°程狂っていた。南北線を出すには唐那・派克氏や森田行雄氏の方法を習って欲しい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160704/GWk04July16.jpg
WFl氏はω=214°Wである。 オリュムポス・モンスが夕端近くに見えるが、白さはない。ι=32°であるから、まだ日の入りまで三時間はあろうが。プレグラの2001年黄雲時の分枝も明確。 矢張りアエテリア暗斑の二本運河は健在。北極域の雲の配置と濃度はBで好く表現されている。。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160704/WFl04July16.jpg
CFs氏の主画像はω=054°Wで。北極域の雲の様子は好く出ている。マレ・アキダリウムの濃い部分に重なるように濃い部分がある。チトニウス・ラクスの様子が少しおかしい。朝方にアスクラエウス・モンスが暗く出ている。フォルトゥナのドーナツ斑も出ている。南極冠の一部は明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160704/CFs04July16.jpg
Tim WILSON (TWl)氏がIR807とB像をω=168°Wで。IRでマレ・シレヌムとプロポンティスIが出ているか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160705/TWl05July16.jpg
WFl氏がω=203°WでLRGB像。アエテリア暗斑からエリュシウム内部、ケルベルス=プレグラ邊りが詳しい。プロポンティスIも詳細があるが附近の白霧は強くなくなった。北極冠域は相変わらず大きな雲が懸かっている。マレ・キムメリウムの北にはワルハラが見えている。 南極冠は白く綺麗である。因みに、前回の21June(λ=173°Ls)と同じように大雑把に公式を当て嵌めて計算すると雪線は56°S辺りに落ちるので、南極冠の北端が3mmほどの幅で見える(半径59mmに対して)場合のケースとして、λ=180°Lsの時点ではそんなものかと思われる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160705/WFl05July16.jpg
CFs氏の像はω=017°Wとω=046°Wである。北極域の雲の様子には大きな変化はないようだが、後者には雲の真ん中に暗い点がある。これは渦巻き型かもしれず、もっと細かく追及すべきだろう。後者の南極冠の縁からは低空に水蒸気が溢れているようで、これは二時間前のω=017°Wにもケがあり、40分間隔で撮っていれば面白い例になったであろう。だが、そういう現場的追及がない。IRでも少し見えるかもしれない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160705/CFs05July16.jpg
EMr氏がω=142°WのRGB像。一見して何處か判らないような構図になっているが、オリュムプス・モンスの面影がCM近くに見え、アスクラエウス・モンスと関係する南東から北西に走る明帯は見えている。アルシアの雲が出るのはもう少し後かもしれない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160706/EMr06July16.jpg
FMl氏がω=160°Wを得た。プロポンティスIなどが出ているかもしれない。しかし、一発カラーの三色分解というのはどうもよく判らない。暗色模様の明確なB像ってなんだい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160706/FMl06July16.jpg
Peter GORCZYNSKI (PGc)氏はω=163°WのRGB。部分的な南極冠は白く、北極域の白霧は正常な状態だが、地面は汚れた黄土色に近い。エリュシウムは円盤に入ってきているし、オリュムプス・モンスの位置も見分けが附く。然しシャープさが無い。お蔭で、マレ・シレヌムが途中で塵雲に侵入された様子も窺えるのだが、明確さが足りない。アルシア・モンスの雲は少し見える(Bで)。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160706/PGc06July16.jpg
Teruaki KUMAMORI (Km) 氏はω=305°Wとω=313°WのL-colour像二葉。例えばバルデ暗點が出るほど詳細を語らないが、両者とも北極域の雲を滑らかに描いていて、全体も明るい像である。シュルティス・マイヨル以東と南極冠の廻りの領域は塵埃混じりの水蒸氣を含んだ霧が大きく覆っているという感じが出ている。Lの被せ方に齟齬はないようで、周邊部も綺麗な仕上がりである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160706/Km06July16.jpg
CFs氏はω=037°W。比較競合対照像がないから、何とも言えないが、火星は塵埃で汚れても、比較的明るいものであろうと思うのだが、CFs氏像は極めて暗く汚れて見える。微細は好く見えているから何が足りないんでしょうかね。北極域の雲は前線を伴っている様子。ここの白さは自然に見えるのだが、南極冠の黄色い輝きはどうも人工臭い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160706/CFs06July16.jpg
MKd氏はω=068°W。DBKによるcolour-cam像の典型という感じで、色模様で火星面が構成されているが、暗色模様の濃淡の意味が掴めない。マレ・アキダリウムの北の雲の描冩は綺麗。アスクラエウス・モンスの頂上は濃い。然しその下の層の擴がりは判らない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160706/MKd06July16.jpg
MDc氏はω=087°W。RGB像は矢張り周縁部がガスで落ち込んでいる。褐色のガンゲスやオピルのところからはあかるくなるが、朝方も暗くなっている。タルシス三山の頂上は出ているようである。マレ・アキダリウムの根本の縁雲は明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160706/MDc06July16.jpg
PGc氏はω=151°W。前日のPGc氏のω=163°Wと似ているが、マレ・シレヌムは回復したみたい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160707/PGc07July16.jpg
Anthony WESLEY (AWs)氏はω=296°Wとω=300°WでR もしくは IR系に長波長系の光による像。南極冠が殆ど見分けがつかない。シュルティス・マイヨルより以南の模様はヘッラスの縁まで一応見えるが、淡くなっている。バルデ斑點は見える。然しノドゥス・アルキュオニウス等は縁にゴーストを見せるので、強調處理かもしれない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160707/AWs07July16.jpg
EMr氏はω=119°W。見るからに、左辺周邊部に人工的なゴーストが趨り、元々はR像に明確なゴーストが出ているものである。ただ、左辺周邊部に 霧が出た様に見える。 特にB像に強いことは確か。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160708/EMr08July16.jpg
GWk氏はω=154°W。GWk氏のRGB像は上のEMr氏像と前日のPGc氏の中間で、GWk氏は最縁部の處理は好いが夕端の霧は弱く描写しており、PGcは更に弱いと思う。ところが南極冠に關してはPGc氏は真っ白に再現し、GWk氏は弱く青白く水蒸氣のように表現している。なお、北極域の雲はGWk氏の場合Bで見ると興味ある形になっている。しかし、これがRでは確固としたものになっていないため、RGBでは青瓢箪のようになったと思われるが、一寸した工夫で白く好くなると思われる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160708/GWk08July16.jpg
EMr氏はω=118°W。再び、R像が周縁ゴーストを示すためにRGBもへんな具合で、南極冠部などが崩れている。B像は好いように思う。中央部でフォルトゥナは綺麗に出ているのだが。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160709/EMr09July16.jpg
Reiichi KONNAÏ (Kn)氏はω=260°Wとω=267°Wで224MC像を撮った。Kn氏の追加報告は別記のように、14
Mayから18 Juneまで11葉のColour像があるのだが、本文でKn氏のスケッチ以外の画像を扱うのは初めてである。どちらもシーイングは2~3/10で朝方のシュルティス・マイヨルも含めてディテールは出ていないが形は認められるし、マレ・キムメリウムの西北部やエリュシウムの構造などは窺える。像自体はは滑らかに表現されており、今後の習熟に期待するが、Kn氏は火星の色彩や濃度について一家言をお持ちで、224MCの能力にフラストレーションを起こされないか心配である。目下、白色の発色が悪く、南極冠の見極めも困難で、僅かに北極域の雲に少しのリアリティがあるのみ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160710/Kn10July16.jpg
Og氏はω=289°Wで290MC像。シュルティス・マイヨルがど真ん中。あらためて、像が粗い感じ。暗色模様に滑らかさが不足している。南端には色収差が出ていないだろうか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160710/Og10July16.jpg
EMr氏はω=109°Wで撮像。夕端がガスで縁取られた感じ。その南端に南極冠らしい明るさ。フォルトゥナの二重環あたりが明るい。ガンゲスの茶色は濃く流れる。タルシス三山は茶系統の斑點。オリュムプス・モンスは東側が少し赤く明るく目覚めた感じ。北極域は白雲。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160711/EMr11July16.jpg
FMl氏がω=123°W。像は小さいが案外夕雲や北極域雲など縁雲がリアルに出ている。NS線を糺すと南極冠も見えていると思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160711/FMl11July16.jpg
Kn氏がω=248°W、250°W、259°Wの三像。最初の像と二番目の像でエリュシウム内に縦線が入る。ただ、右側のピンク色の出が悪いし、アウソニアも少し赤みが少ないのではないかと思う。プロポンティスIは濃く見えるが、その接する夕端の明かりは不自然。南極冠の白さは依然出てない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160711/Kn11July16.jpg
いよいよ2001年の大黄雲の季節に入ってきた。
EMr氏がω=095°WでRGB。フォルトゥナのリングが明るく、ガンゲスが茶色。アウロラエ・シヌスの人型がRでは明確だが、RGBでは夕霧の中、ただニロケラスは霧から出て濃茶。 ソリス・ラクスのあたりも些し霧が被っていて、南極冠と繋がっているかもしれない。ただ、チトニウス・ラクスの南は茶色に見える。 タルシス三山は割と明確なのでこのあたりも低いエアボーン・ダストか朝霧の殘りがあるのかもしれないが、Bでは顕著ではない。オリュムプス・モンスは寧ろ暗く出ている。北極域の白雲は好く描かれている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160712/EMr12July16.jpg
Hidetoshi KUDOH (Kd)氏はω=239°W。夕霧がケルベルスの東まで擴がっているように見える。エリュシウムの西端、アエテリアの暗斑は從來通りでその東側は些しピンク色。暗線を挾んで東側は白く見える。プロポンティスIは濃い。像が小さくて不分明なところがあるが、北極域の雲の広がりは複雜である。南極冠は十分な白さ、アウソニアは些し赤味がある。シュルティス・マイヨルがターミネーターから出るところ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160712/Kd12July16.jpg
FMl氏がω=081°W。シーイングは前回よりも好いようだが、夕縁の色彩変化は乏しい。off-whitishなところが多い。ただ北極域は白く、南極冠の白さもある。ソリス・ラクスは分離しないがマレ・アキダリウムとニロケラスは好く出ている。ルナエ・ラクスも出ていると言うべきか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160713/FMl13July16.jpg
EMr氏がω=084°Wで。縁の靄は夕端方面だけでなく、朝方にも見られる。朝方のタルシス三山でもアスクラエウス・モンスは靄から外れていると思われるが、これだけの暗點に見えるというのはポークアウトの効果だろう。相変わらずフォルトゥナの環は明るい。ガンゲスは茶系統色で、Bでは暗くなっている。アウロラエ・シヌスの人型は夕靄の中だが脚などは見える。オピルはあかるい。北極域は白雲の靄らしいが可成り激しくマレ・アキダリウムの中程まで影響している。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160713/EMr13July16.jpg
CFs氏がω=327°Wで、ほぼ反対側を傳える。左端に見える黄白色の筋帶はKn氏の像に見えるように224MCの欠陥だろうと思うが、全体として縁側には靄が立ちこめて見え、全球的に起こっていると考えられる。殆ど中央だけが層が薄くなり暗色模様などは見えるものの、可成り減衰して見えているものと思う。逆らって、中央を好く見せようとすると陥穽に落ちるだろう。この図では上に層が厚くなっているのが窺える。北極域も白さが目立つ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160713/CFs13July16.jpg
GWk氏の画像はω=104°W。南から北まで夕方は縁は靄っている。174MMによるB像では北極域の大きな白霧層は二層に分かれている。マレ・アキダリウムは一部とニロケラス關係が見えるのみ。オピル邊りまで濃い靄。好く見えているのは褐色のガンゲス以西、フォルトゥナのリングは明白で、タルシズ三山も褐色で窺える。オリュムプス・モンスも暗い朝靄の中。南極冠は窺え、近くに靄が張り出している。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160714/GWk14July16.jpg
WFl氏のLRGBはω=111°W。LRGBでは矢張り全体に縁が落ち込むように靄っている。R像で像が乱れている様に見えるが、斑點などは分別できる。B像が興味深く、 タルシス三山やオリュムプス・モンスの頂上は暗い斑點で(G上でも)、赤道帶は低く靄っていることが判る。北極域の雲は矢張り二層である。Bではガンゲスとその延長は暗くなっていて、晴れに近いか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160714/WFl14July16.jpg
CFs氏はω=321°W。前回と同じように縁側は靄っており、一般には白さは見えないが、北極域は白霧が大きい。ヘッラスの一部も夕縁では靄の侵攻を受けている。中央付近は好く見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160714/CFs14July16.jpg
EMr氏はω=066°Wで。左縁の処置が好く、靄が端から中程まで擴がっている様子が如実。ガンゲスは朝方だが、ここは褐色である。Bでは暗く、晴れていると見做す。Gではニロケラスも暗い。北極域の雲はマレ・アキダリウム北部を包み、滑らかで綺麗。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160715/EMr15July16.jpg
FMl氏の画像はω=072°W。ソリス・ラクスとマレ・アキダリウムは濃く見えている。ガンゲスとルナエ・ラクスが見えていると言うべきか。北極域の白雲は顕著。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160715/FMl15July16.jpg
WFl氏のLRGBはω=102°W。揺れは納まってチトニウス・ラクスの小班點も幾つか分解。但しフォルトゥナの環は詳しすぎて些し歪。タルシス三山の三つの山頂とも形が違っている。オリュムプス・モンスは東側が照って見える。左縁側の靄は綺麗に擴がるが、ガンゲスとその延長は褐色で、Bでは暗く、靄が少ないと思われる。チトニウス・ラクスの内部もBでは暗い。LRGBの大きな北極域の靄はBでは局在化している。南極冠はdepthが薄いが明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160715/WFl15July16.jpg
Og氏はω=208°W。マレ・キムメリウムも濃く、アエテリア暗斑も濃く、プレグラなども分枝が好く出ているが、全體のニュアンスが堅い。北極域のモヤモヤしたものは290MCでは全く白雲らしくない。靄などをそれらしく滑らかに白色も含めて出せるようになれることを祈る。 こういう強調畫像でワルハッラなどが出てくるとゴーストだったかと思いたくなる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160715/Og15July16.jpg
CFs氏はω=310°W。南極冠が綺麗に見える。エアボーンダストの靄により、暗色模様などが滑らかに表現され、これは中央部分から外れると著しい。ヘッラスも地肌を見せている。北極域の雲も幾何学的。Gでこの部分を見ると面白い。割と優美な像。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160715/CFs15July16.jpg
♂・・・・・・ 追 加 報 告 以下の各氏から期間外の報告を多数いただいている。
マーク・ジャスティス (MJs) メルボルン、オーストラリア
3
Sets of RGB Images (
近内 令一 (Kn) 石川町、福島県
11 Colour
Images (14*, 18, 22. 28 May; 1, 2, 10*,
41m
SCT with an ASI224MC & ASI178MC*
ポール・マキソン (PMx) アリゾナ、アメリカ合衆国
9 Sets of RGB + 9 IR
Images (2, 4, ~ 10,
デミアン・ピーチ (DPc) ウエストサセックス、英国 (バルバドス)
5
RGB Colour + 3 B Images (5,
ゲイリー・ウォーカー(GWk) ジョージア、アメリカ合衆国
9 Sets
of RGB Images (25 May; 11, 14, 23, 24,
25,
25cm Refractor with an
ASI174MM
♂・・・・・・・ 今回は追加報告文は割愛し、後のReportに改めて纏めて集積することにする。
画像は以下のリンクからご覧いただきたい。
MJs: http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/index_Mjs.html
Kn : http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/index_Kn.html
PMx: http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/index_PMx.html
DPc: http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/index_DPc.html
GWk: http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/index_GWk.html