CMO/ISMO 2016 観測レポート#11
2016年六月後半の火星観測 (λ=170°~178°Ls)
南 政 次・村上 昌己
CMO
#451 (
♂・・・・・・ 今回は 2016年六月後半の半月間の観測報告をまとめて、十一回目のレポートとする。火星はこの期間に「てんびん座」で逆行を続けていたが、動きを落として30 June には「留」となり、以後は順行に移る。観測期も後半になったわけである。視赤緯Dは21°S台とこの期間も変化は少なく北半球での南中高度は低いままであった。視直径はδ=17.9"から16.3"と一回り小さくなってしまったが、まだ前2014年接近の最大視直径を上回っている。季節はこの期間にλ=170°Lsからλ=178°Lsと南半球の春分(180°Ls)間近になった。中央緯度はφ=15°Nから16°Nとまだ北向きが深く、南極冠出現の確認は難しい状態であったが、21 June (λ=173°Ls)にマルク・デルクロア氏の綺麗に処理されたR像が得られ、南極冠の幅の測定が可能であったことから、向こう側の南極冠が予想されるサイズを示していることが判った。筆者の一人(Mn)は2003年にδ=8.4"、λ=170°Ls (17 April 2003)の時點で南極冠の中心に蔭が出ていることを認めている。λ=180°Ls以後は頻繁に見えている。當時Tiltがφ=14°S→18°Sであったから確認出來たことであるが、南極冠は現在そこまで進んでいるというわけである(南極地域はtiltが南向きになると極地が暖まり中心から溶け出す)。また、この時期、北極地の天気が白雲の往来で可成り荒んでいることが注目された。もともと、いわゆる北極雲は、λ=160°Ls〜185°Ls間に形成されると見做されているが、丁度今回などはその最中に当たる。撮像は北極域の雲を滑らかに巧く捉えることを主眼とされたい。多くは水蒸氣に據る白雲であるが、ダストも混じることがあるので注意されたい。ブルース・カントール達の有名な1999年のMOC像の詳しい調査によると、λ=163°Lsとλ=184°Lsにそれぞれ(Φ=75°N、Ω=323°W)、(Φ=69°N、Ω=310°W)を中心に黄塵が起こり、二週間から九日存在したようである。水蒸氣雲と黄塵雲の相互作用がキャッチされれば、貴重な資料となる。実際、現在のところ北極域の明帯の顕著なものは、特にマレ・アキダリウム付近、北極冠からウトピアの北部へ延びるもの、エリュシウムからプロポンティスTの北へ延び込むものが目立っている。後半には霧の出る範囲が中緯度にも広がって来ている。
山岳雲の現象は季節的にも午後の遅い時間に限られ、位相角の問題からもι=21°から30°と大きくなったこともあり、夕縁近くなってからの活動が見られるだけとなった。午前側では山頂が暗点に捉えられ、立ちこめてきたエアボーンダストが低空に漂っていることによると考えられた。
なお、六月中旬から活動が見られたマルガリティフェル・シヌス南方発現の黄塵は、15 Juneにはコプラテス・カスマ付近で明るくなったが、以後の発展はなかったようで、下旬から視野に入ってきた我が国やオーストラリアからの観測では顕著に捉えられたものはない。
λ=180°Lsに近くなり、赤道帯霧はほとんど見られなくなり、朝夕の霧も目立つものはオピルの夕方くらいで、他には見られなかった。
♂・・・・・・ この期間には以下のように、21名の報告者から75件の報告を拝受した。衝後の観測となり全体の報告数は減少した。日本では梅雨のまっただ中だが、オーストラリアの南部も雨期のようで、常連のメルボルンの観測者からの報告は途絶えた。国内からは5名17観測、アメリカ大陸側から7名32観測、ヨーロッパからは5名9観測、オーストラリアから3名7観測、南アフリカから1名10観測の報告だった。8件の追加報告が含まれる。今期はヨーロッパからの報告が少なく観測がうまく繋がらない。
阿久津 富夫 (Ak) 那須烏山市、栃木県 (*宇都宮大学天文台)
2 RGB Colour + 2 B
+ 2 IR Images (18*,
36cm SCT, 40cm Cassegrain* with an ASI174MM & ASI224MC
フランシスコ・カルディナッリ (FCd) アルゼンチン
1 IR Image (
マルク・デルクロア (MDc) フランス
1 Set of RGB
+ 1 IR Images (
ビル・フラナガン (WFl) テキサス、アメリカ合衆国
2 Sets
of RGB Images (16,
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
10 Colour
+ 10 IR Images (16, 18,~20, 22, 24,~27,
ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国
4
Sets of RGB + 2 IR images (17, ~19, 25* June 2016)
18cm Maksutov Cassegrain, 36cm SCT* with an ASI290MM
カーロス・ヘルナンデス (CHr) フロリダ、アメリカ合衆国
1 Colour
Drawing (
石橋 力 (Is) 相模原市、神奈川県
4 Colour
Images (18,
マノス・カルダシス (MKd)
グリファダ、ギリシャ
1 Colour Image (
工藤 英敏 (Kd) ケアンズ、オーストラリア
1 Colour Image (
熊森 照明 (Km)
堺市、大阪府
4 LRGB +
4 B Images (18, 21, 23,
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
11 Colour
Images (17,~21, 23, 25,
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
9 Sets of RGB Images (16,
17, 19, 23, 25, ~ 27,
村上 昌己 (Mk) 横浜市、神奈川県
3 Drawings (
大杉 忠夫 (Og) 小松市、石川県
4 Colour
Images (17, 18, 26,
ロバート・シュルツ (RSz) オーストリア
4 Colour Image
(21, 23*,
ヨハン・ヴァレッル (JWr) スウェーデン
2 Sets of RGB
Images (18,
アンソニー・ウエズレイ(AWs)
ニューサウスウエールズ、オーストラリア
5 Colour Images
(21,~23, 29,
ティム・ウイルソン(TWs) ミズーリ、アメリカ合衆国
1 Colour + 4 B
+ 8 IR Images (18, 19, 22*, 26,
28cm SCT with an ASI120MM & ASI120MC*
♂・・・・・・ 今回も日付を追ってレビューする。
Efrain MORALES (EMr)氏はω=001°Wで観測した。一日前のマルガリティフェル・シヌス南部の黄塵を追ったかと思いきや、まったくのルーチン觀測であるようである。ネウドゥルス運河以西に痕跡はあるが、出口のエオスあたりは寧ろ砂塵混じりの白雲が出ており、クサンテに強い。ただ、B像では然程でもない。40分後の觀測は無いのだろうか、不甲斐ない話である。マレ・アキダリウム北部より北極地方は13June以降猛烈に氣象は荒れている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160616/EMr16June16.jpg
Bill FLANAGAN (WFl)氏の画像が続くので助かる。ω=034°W で、アウロラエ・シヌス迄の状況が把握できる。見かけ以上にシヌス・メリディアニからアウロラエ・シヌスまで微細に富んでいる。黄塵はエオス・カスマを通ってヒュドラオテス・カオス(0.8°N、35.4°W)の方に降りている。コプラテス・カスマの黄塵は前日の黄塵の拡がりと同じく、エオス・カオス(16.6°S、46.9°W)邊りが一番黄塵は濃い。なお、2005年のようにコプラテス・カスマに黄塵が出ると、アウロラエ・シヌスは「人型」に見えるのだが、アウロラエ・シヌスから飛び出す四本ぐらいのトゲの内、真ん中の二本(西側はムッチ・クレータを含み、東側はオーソン・ウェルズ・クレータを含む) は黄塵に侵されることは無かったようである。西端のもう一本イウウェンタエ・カスマはWFl氏の画像(前回引用)が示すように20 Octには黄塵が入り込んだ。尚、この日は更に西側へベス・カスマ(1.1°S、76.2°W)に黄塵は達しているようである。なお、東側反對のネウドゥルス以東も砂塵色をしている。
マレ・アキダリウムの北部から北極域は相当雲が荒れていて、北極冠は見えない。南極雲は濃淡が激しく、描冩は難しいが、アウロラエ・シヌス遙か南方に穴の開いた渦巻き雲らしいのが見え、GとBで顕著である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160616/WFl16June16.jpg
Clyde FOSTER (CFs)氏のL-colour像はω=233°Wである。シュルティス・マイヨルは朝方だが、浅葱色は示さない。エリュシウムは午後に入って居るが白さは見せない。プレグラは2001年の黄雲時のように二本に分かれている。北極冠は僅かに見えるが靄が懸かっている。南アウソニアは少し赤っぽい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160616/CFs16June16.jpg
Manos KARDASIS (MKd)氏の像はω=258°W。少しブレが感じられるが、詳細は見えている。北極冠は不明確だが、南に向けて吹き出しがあり、夕縁のプロポンティスIの北に白雲(縁雲)、南極雲は惚けて白味がない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160616/MKd16June16.jpg
Carlos HERNANDEZ (CHr)氏はω=329°W でカラースケッチ。 南極雲の擴がりが判らないぐらいに、夕縁のヘッラス上にも靄が懸かり、一部シュルティス・マイヨルの方に降りているようにも見える。
北極冠は見えるようだが、少し傾く。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160617/CHr17June16.jpg
EMr氏はω=342°Wとω=002°Wで画像を拵える。後者は前日の像に対応する。黄塵の痕跡は窺える。 エオスのほうにも降りているが不分明、その先は朝霧か。両者とも53°N以北は靄の中で北極冠は見えない。後者ではマレ・アキダリウムは40°N以北は朝霧のした。尚南極雲は両者とも真っ白な部分を示す。多分南極冠の北端は出ていて、少し北への吹き出しがある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160617/EMr17June16.jpg
Peter GORCZYNSKI (PGc)氏の觀測はω=349°Wである。問題の地域は稍砂色の風情を残しているし、エオス邊りは一日前のWFl氏の像に見られるものと同じように思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160617/PGc17June16.jpg
Frank MELILLO (FMl)氏はω=352°Wの像。痕跡が弱く見える。北極域の様子も弱い。南極雲は明るく見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160617/FMl17June16.jpg
WFl氏がω=024°Wで良像。二本のネウドゥルス運河の間は赤い色。砂塵はネウドゥルス以東をも被っているようである。更にシヌス・メリディアニにも影響しているかもしれない。ネウドゥルス以西は前日に似ており、コプラテス・カスマでも似た分布だが、稍擴散傾向が見られ、アウロラエ・シヌス本体の北部をややボケさせているように見える。黄塵の流れの最も明るいエオス・カオス邊りは変わらない。南極雲の外側の巻き雲は外に出て緩くなったみたい。 北極域は大きく靄っぽい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160617/WFl17June16.jpg
Tadao OHSUGI (Og)氏はω=119°Wで問題の地域には至らないが、このコントラストの高さでは、北極域の靄の状態も描写できないので、無理かと思う。色彩が乏しい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160617/Og17June16.jpg
PGc氏はω=338°WのRGB像。問題の箇所はもう見えない。ヘッラスは砂色、北極冠域は靄って不明だが、南北線が傾いているように思う。パーカー氏/森田 行雄氏の方法を採っていないと、南極冠の偏芯などが追えない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160618/PGc18June16.jpg
Tim WILSON (TMl)氏はω=342°WのIR807像など沢山並べているが、趣旨が判らない。IRで北極冠も出ていない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160618/TWl18June16.jpg
FMl氏はω=342°Wとω=009°Wの二像。後者は黄塵の守備範囲だが詳細は判らない。多分南北線は傾いている。両者とも北極域の靄によるぼやけ具合は良く顕している。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160618/FMl18June16.jpg
Tomio AKUTSU (Ak)氏は宇都宮大学天文台で觀測。ω=098°W。アガトダエモンの東端は一寸様子が違うが黄塵などはキャッチ出來ない。北極域の靄の拡がりは出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160618/Ak18June16.jpg
Teruaki KUMAMORI (Km)氏はω=103°WでL-colour像他。思い切り暗色模様の調子を抑制して、夕縁の靄を強調している。北極域の靄のなかからマレ・アキダリウムの尻が少し見える。オピルが夕霧に包まれ、その東は黄塵域なので夕霧の様子が重要。ソリス・ラクスの東には夕霧が出ていない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160618/Km18June16.jpg
Tsutomu ISHIBASHI (Is)氏はω=109°W。最大エントロピ法を使った方にはオピルとその東の夕霧が綺麗。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160618/Is18June16.jpg
Og氏の画像はω=115°W。北極冠域もザラザラしているが、南極雲の描写が脾弱。その割に暗色模様はザラザラ豪快。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160618/Og18June16.jpg
CFs氏がω=197°WでL-colour他。南極冠の本体が出ているのではないかと思われるのだが、少し黄色味を帯びて南極冠らしくない。マレ・キムメリウムのお尻とマレ・シレヌムの頭の間に二點に分かれたピンク色の小型黄塵が二つ並んでいる。オリュムプス・モンスのリングと翡翠色の中心が夕端近くで見える。北極冠が久しぶりに見えているのかと思ったが、少し入り過ぎの感じもするので並行する雲帯かもしれない。エリュシウムに白雲が出ないのは南中前だからだけではなさそう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160618/CFs18June16.jpg
Johan WARELL (JWr)氏はω=246°W。色彩が不安定。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160618/JWr18June16.jpg
EMr氏がω=315°WでRGB像。踏襲するのは北極域の荒んだ靄の様子、吃驚するのはヘッラス内の白さ。デウカリオニス・レギオの緯度域は砂塵色。南極冠はまるで黄雲を被ったよう。その中でヘッラスの白さは異様。確かにG&Bで明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160619/EMr19June16.jpg
TWl氏はIRとBでω=332°W. ヘッラスは夕端だが、Bでは明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160619/TWl19June16.jpg
FMl氏がω=335°Wで單画像、確かに夕端ではあるがヘッラスは白く明るい。南北線が怪しい。北極域の混乱は垣間見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160619/FMl19June16.jpg
PGc氏はω=338°WでRGB合成像。北極冠は弱い靄内。南極冠は薄く出ていると思う。ヘッラスは夕霧で内部は判らない。ホイヘンス・クレータは見える。マルガリティフェル・シヌスには大きな変動は無い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160619/PGc19June16.jpg
Francisco Arsina CARDINALLI
(FCd) 氏はω=010°Wで IR742像。IRだけでは何とも決められないが、Coprates Chasmaに入り込んだ塵霧は出ているような気配。南北極共に真っ暗。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160619/FCd19June16.jpg
CFs氏はω=205°WでL-colour像他。18 Juneに指摘した二つ玉黄塵はほぼ合体消滅し同じところで均されたようで、Ω=190°W邊りのマレ・キムメリウムの暗色模様を砂地色にした。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160619/CFs19June16.jpg
FMl氏がω=319°Wで撮った。FMl氏の処方でも冩り難くなったようで、 南極雲附近から夕方側、縁の部分は北半球まで白く太く出ている。ヘッラスの位置が掴めないが、ヘッラスの一部は白色の如し。南極雲の區別が附かない。北極冠域は特別で東南へ飛び出しがある模様。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160620/FMl20June16.jpg
CFs氏はω=196°Wの大きなL-colour像がメイン。北極域は靄っているが、北極冠はよく判らない。どうも近くの雲塊とその北側の暗い領域が目立つ。 結局、北極が判らないから、その対極の南極雲も幅狭く大きさが測れない。マレ・キムメリウムの東のお尻にはポツポツと小ダストがある如し。マレ・シレヌムの後方に矢張りダストか。オリュムプス・モンスはリングの左側が少し霧の懸かった状態で夕端近くに見える。朝方のエリュシウムの内部も面白い構成。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160620/CFs20June16.jpg
FMl氏がω=300°Wとω=310°Wの二像。色が冴えないが、シュルティス・マイヨルの南に南極雲があり、その一部がヘッラスに入り込んでいる感じ。北極冠附近も靄っている。シュルティス・マイヨルは濃くウトピア西端とボレオシュルティスなどが分離して見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160621/FMl21June16.jpg
Masami MURAKAMI (Mk)(筆者の一人)の320×20cm Newtonianでの眼視觀測を概略してここに挟む。南中前後のω=070°W、ω=080°W、ω=089°W (40分毎) の三回観測したが、ω=070°Wでは、シーイングは2~3/5。コプラテス・カスマの様子は不明であった。南極雲は少し黄色みを帯びていて、午前側と夕方側が明るい。オピルは明るいが、ガンゲスの濃度は低い。マレ・アキダリウムの濃度も低い。北極冠域は青白い明るさ。ω=080°Wでは殆ど南中。南端に見えているのは南極冠ではないかと判断。夕端も白い。北極部も一部明るいが、北極冠は判らない。そろそろ極夜に入る部分も出てくる。ω=089°W 、矢張り南極冠と判断する。ソリス・ラクスは濃度があるが、マレ・アキダリウムは弱い。オピルから舊タルシスはハート型に明るい。ケラウニウスはテムペとアルカディアを分かつ。北極部の一部は矢張り明るい。シーイングが落ちてきた。
Is氏がω=080°W、ω=089°W、ω=099°Wで三像。三像の中ではω=089°W が最も好い。ソリス・ラクスが最も濃く、その南に南極冠か南極雲が纏まっている。オピルはあかるく、チトニウス・ラクスは好く見える方。北極部の邊りは靄っぽい。マレ・アキダリウムの北西部が割に濃い。ω=080°Wでは黄塵域について何か言えるかもしれないが、像が粗い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160621/Is21June16.jpg
Km氏はω=095°Wがメイン。北極冠が一部なりとも出ているかどうか、南北線が傾いている印象。南極雲/南極冠域は白色が中心。然しω=095°Wならばアウデマンス・クレータ(Oudemans crater)がO=092°Wなので南極雲/南極冠が右に傾いているのかもしれない。もしそうなら、南極冠の一部片側しか見ていないことになるだろう。いずれにしても南北線はいつも重要なので心掛けて頂きたい。 なお、Km氏の画像はエアボーンダストが出てから特徴的な夕方の深い霧が出ている。マレ・アキダリウムは西北部だけが露出。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160621/Km21June16.jpg
Ak氏は自宅でのω=102°Wの觀測だが、像が粗い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160621/Ak21June16.jpg
Anthony WESLEY (AWs)氏はω=105°Wで大きな像。南極雲の深さは狭く、幅は結構ある。北極冠が出ているかは難しいが、北極域を囲む靄は相当に大きく、42°N以北は靄の中である。尚。Ω=105°WにあるClaritas Rupesと北極冠モドキを結ぶと南極雲の中心に行くので、もはや南極冠が明るいのではないかと思える。但し、モドキの分、話が怪しい。この像はCoprates Chasma辺りも好く写しているので重要である。円盤内部の描冩も好くできていてフルトゥナのリング、タルシス三山、オリュムプス・モンスの二重環など明確・明白に出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160621/AWs21June16.jpg
JWr氏はω=219°WでRGB像。然し暗色模様の色彩が緑っぽく宜しくない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160621/JWr21June16.jpg
Robert SCHULZ (RSz)氏はω=228°WでRGB像。高度21°の由で、シーイングの所爲で像は甘いが、南極での輝きは南極冠のものであろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160621/RSz21June16.jpg
Marc DELCROIX (MDc)氏はω=234°Wの像。RGB合成像は少し暗めだが、色彩に深みがある。標準以上の良像で、プレグラなどの描冩も好い。砂漠の淡い濃淡に富む描写は類例を思い着かないほどのもので、Rでの砂漠などの表現が格段に複雜で、それが色彩にも生かされたのだろうと思う。同時にR, Gでは南端のcanopyはブレが無く、Bでも迫力がある。結局、色彩処理やブレのなさ、砂漠の濃淡ニュアンスから、この像は南極冠を表現していると結論して好いのではないかと思う。北極冠は一部極夜かもしれず、全体定かでないが、周りの靄は巧く表現されている。マレ・キムメリウムもRで好い表現。プロポンティスTの北に雲塊。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160621/MDc21June16.jpg
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閑話: MDc氏のR像は仕上がりが好く、次の式を立てて、南極冠の大きさを見てみることにする。但し、南極点は裏側にあって、こういう場合を取り扱うのは初めてだが、基本的に
cos(ψ−|φ|)=1−(d/r)
で与えられると思う。30年前にCMO n°003 (25 February 1986號)において、1) 極冠が円盤の中にスッカリ入って居る場合、2) 極冠が全部は見えないが、極が円盤に入って居る場合を考えて公式導入しているが、今囘の場合は3) 極が円盤内にない場合である。ψは極冠の中心角、φはtilt=DE、dはこちら側から見た極冠の深さ、rは火星像の半径である。雪線は90−ψで与えられる。現在のところdの値が小さく、d/rが不安定だが、上の式を使ったMkの調査では雪線は53°S〜56°S辺りにあると考えられ、λ=173°Lsで雪線は58°S程度と考えられることから、ほぼ現在、MDc像で垣間見ている僅か数ミリの南端の雪片は可成り大きな南極冠を示していると考えられるのである。
なお、南極冠の基本は北極冠と違ってCO2 で構成されるのだが、實際はλ=175°Ls邊りでは南極冠の周邊部はH2Oの霜や氷で出來ていて、その為アルベドが60°S邊りで高いのだが、周邊氷霜や氷塊から水蒸氣の吹き出しが見られることが多いので、周邊部の觀察は欠かせない。
閑話休題
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TWl氏のω=304°Wの120MC像が中心だが、先ず色が悪い。南極冠らしくもなく、色収差が出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160622/TWl22June16.jpg
Hidetoshi KUDOH (Kd)氏の像はω=071°W:コプラテス・カスマの塵雲が少し出ているが黄塵全体は弱くなり分布も違ってきている。人形型が崩れ、オーソン=ウェルズ・クレータのあるトゲが薄く、少し塵雲を被っているみたい。タルシスの描冩を見るとフォルトゥナの二重環が好く見え(20cmでは大成功)、アスクラエウス・モンスを含む三山も見える。ニロケラスも形を変えてきているみたいで、今後注目する。北極域の雲の配置も出ている。南極冠は明部が出ている。南北線を出すことを勧める。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160622/Kd22June16.jpg
AWs氏の画像はω=075°W。こんな像が横に並ぶと、Kd氏の画像さえ、コントラストが高すぎると言わざるを得なくなる。AWs氏の場合、過剰處理が見えないことはなく、明るい縁取りが顕れることがあるが、これを見ると表面は相当汚れていて、押さざるを得なくなるという思いが伝わる。コプラテス・カスマの吹き上げによる黄塵は沈静化し表面に落ちていると考えられる。その分布がアガトダエモンに先行する領域を汚していると思われる。アウロラエ・シヌスの人型模様の淡化もこれに據る。ガンゲス以西は正常で、Kd氏の見たアスクラエウス・モンスや二重環などの更に詳細がわかる。北極域の雲の配置も詳しい。南極冠は外側に未だはみ出しの部分を持っていて、小さな渦巻きが完成しそうな感じである。この種の渦巻きは16JuneにWFl氏が検出している
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160622/AWs22June16.jpg
CFs氏のL-colour画像はω=155°W。注目点はマレ・シレヌムの南側に点在する黄塵だまりの存在で、二点が並ぶ様子はCFs氏検出の18Juneの場合に似ている。拡散している部分もあるようである。南極冠は明確ではないが、纏まっている。北極雲域の白霧の分布はプロポンティスIを含む緯度まで擴がって荒んでいる。タルシス三山のこの時間、山岳雲が現れている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160622/CFs22June16.jpg
EMr氏はω=285°W。綺麗な仕上げだが、先ず微細に拘わらず、浮遊物を強調したのが好い。南極冠の北側にヘーズが出ていてヘッラスさえ越えているが、一方アウソニアはreddishである。ウトピアは殆どヘーズの中。Bでもシュルティス・マイヨルは淡くなる。中央部水蒸氣は減っているが、似たようなヘーズがあるからであろう。Bでも北極域は濃い靄。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160623/EMr23June16.jpg
FMl氏はω=295°W。南極冠が独立してこない。北極域の靄は好く出ている。三色分解像が添えられているが、B像でもシュルティス・マイヨルがばりばり見える。水蒸氣の無い分、やや濃くなるはずではあっても、EMr氏のBと比較すると、これはおかしい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160623/FMl23June16.jpg
AWs氏のω=067°Wの大きな像。この表現をみると、15Juneの黄塵はエアボーンダストと沈殿物を増やしただけという結果に終わったと言えるかもしれない。コプラテス・カスマの上部には太い塵雲がのこっているようで、クサンテ・テッラを含むアウロラエ・シヌスは人型が形を成さないぐらい埃が支配しているようだ。この画面ではガンゲスとフルトゥナのあたりが晴れているだけで、マレ・アキダリウムなども埃っぽい。北極域は北極の位置さえ判らないぐらいどんよりしている。南極冠もキレが悪い。ソリス・ラクスの南にも白霧があり、北にも東西に奔っているがアウレア・ケルソの詳細は見えている。アスクラエウス・モンスの頂上も地を這うガスの所爲でクッキリしているのかもしれない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160623/AWs23June16.jpg
Km氏はω=073°WのL-colour像で埃に塗れた火星像を描き出した。ユゥウェンタエ・フォンス、明るいオピルやチトニウス・ラクスなどは姿を見せているが、オーソン=ウエルズ・クレータなどまで、ガスに沈んでいる。 シヌス・メリディアニが左端に少し見えるぐらいであるから、夕方60°ぐらいの幅をガスが覆っていることになる(ι=26°)。マレ・アキダリウムの北も相当曇っている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160623/Km23June16.jpg
RSz氏とJ STÖGER氏は協同でω=196°Wで一像。朝方のアエテリア暗斑は濃いが、プレグラも太く濃い目。プロポンティスIも暗斑点。ウィーンは48°Nの少し北、ナントより一度ほど北。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160623/RSz23June16.jpg
CFs氏のメイン像はω=129°W。南極冠は光っていると思う。 マレ・シレヌムの邊りははっきりしないが、例の斑點は見当たらない。フォルトゥナの二重環はチトニウス・ラクスの北に割と明白。オリュムプス・モンスも判る程度。北極域はどんより。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160624/CFs24June16.jpg
EMr氏はω=259°Wで、これもボケ具合の気持ちの好い写真である。南極冠は出ているが、ほぼ南緯20°以南は靄に包まれていて綺麗である。南アウソニアの赤みが少し透けて見える。北極域も同じで50°N以北が雲の下である。但し、Cydonus Rupesの北の邊りに大きな穴が開いている。渦かもしれない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160625/EMr25June16.jpg
PGc氏はω=269°Wである。PGc氏の像は餘り劇的ではなく、寧ろ強調に奔ってゴーストだらけである。然しEMr的に読み直すことは出來るだろう。但し、EMr像ではGに強かった南極冠がこのPGc氏のG像では殆ど消えてしまっている。これはどうしたことか。實際には40分の差でこんなことが起きるはずがない。合成の手違いであろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160625/PGc25June16.jpg
FMl氏はω=276°W とω=294°Wの像を並べた。色合いが違って、後者の方が火星らしい色だが、南極冠には白色が出ない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160625/FMl25June16.jpg
CFs氏は歐羅巴勢の不振の中で孤軍奮闘だが、ω=143°Wでいつもの像。マレ・シレヌムの描冩を期待するが、よく判らない。南極冠の輝きは出ており、北邊では雲の流れが好く見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160625/CFs25June16.jpg
FMl氏がω=241°W。右が欠けて來てシュルティス・マイヨルは朝縁にみえる。しかし、當然ながら浅葱色を見せない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160626/FMl26June16.jpg
EMr氏はω=247°WでRGB像。一寸野心が出て來たのか、少し汚らしい火星像。南極冠は輝く。南アウソニア以東は少し赤み。然し夕縁は泥色。エリュシウム・モンスの明かりは見えるが、雲は見当たらない。50°N以北は霧雲。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160626/EMr26June16.jpg
TWl氏はω=267°W邊りで、IR像とB像、どちらも目下の問題には解決を与えない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160626/TWl26June16.jpg
Og氏がω=032°Wでカラー單像。アウロラエ・シヌスの「人型」は壊れたままの配置。南極冠に色収差。イアクサルテス東に雲塊などがあるが、滑らかな霧状靄の描写が出來ていないようである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160626/Og26June16.jpg
Km氏がω=073°WのL-colour像他。矢張り、夕端のシヌス・メリディアニからアウロラエ・シヌス手前まで60度近く靄に滑らかに覆われている。アウロラエ・シヌスの人型は少し回復。朝霧と言えるかどうか、稍靄状の朝方にタルシス三山が立体的に見える。オリュムプス・モンスも3Dに朝縁で見えている。これは凄い。 褐色のガンゲスは目立ち、マレ・アキダリウムも二本脚を投げ出したように見える。南極冠も靄の中に綺麗。B像でも然り。少し粗く見えるのが難だが、秀逸な像。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160626/Km26June16.jpg
CFs氏がω=130°Wでメイン。マレ・シレヌムは好く判らない。南極冠はもっと白い部分があっても好いと思う。オピルは夕端で白くなった。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160626/CFs26June16.jpg
EMr氏がω=252°WでRGB合成像。 R像のコントラストが効き過ぎの様子。靄の廻り具合は好いのだが、暗色模様は不気味である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160627/EMr27June16.jpg
CFs氏がω=091°W、φ=16°Nで作像。珍しいのは、オピルの右半分が明るいことと、フォルトゥナのリングが目立つこと。 ガンゲスの色ももう少し綺麗にならないものか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160627/CFs27June16.jpg
TWl氏がω=238°W邊りで、IR像とB像。両方でエリュシウムは判断できるが、矢張り情報不足。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160628/TWl28June16.jpg
RSz氏がω=144°Wとω=156°Wの224MCのカラー像二葉。しかし、両者とも粗く、これと言った模様を顕していない(後者は高度19°)。南極はキレがわるく、北極域の白雲だけ目立つ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160628/RSz28June16.jpg
AWs氏がω=003°W、φ=16°Nで合成像を与えた。アラム・カオス、Ods、ネウドゥルス運河など微細が見えるが、南半球の暗色模様は汚れて見える。マレ・アキダリウムは朝方だが矢張り色は冴えなくて、北は靄に覆われている。南極冠は白く見える。ヘッラスが夕端だが、ガスでも漂っているか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160629/AWs29June16.jpg
EMr氏はω=225°Wで作像。南極冠が白く綺麗。矢張り南アウソニアは赤っぽいが、全体靄っている。エリュシウムが南中で、色彩が豊富。ケルベルス-プレグラは褐色。ピンクの壁、そしてアエテリア暗斑の分裂した二本の運河の間はreddishである。ウトピアは殆どが大きな白雲で包まれている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160630/EMr30June16.jpg
Og氏はω=002°Wの画像。少し粗目だが、北の雲などの描写が不完全に見える。南極冠はヘッラスの吹き出し霧と区別できるぐらいに白い。前日のAWs氏の画像が参考になろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160630/Og30June16.jpg
AWs氏はω=010°W。前日の画像とよく似ている。少し暗めだが、北極域の靄の様子には変化がある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160630/AWs30June16.jpg
CFs氏がω=114°Wで撮影。ダストの影響を受けている暗色模様は夕縁だけで、ガンゲスなどはクリアに見えている。南極域にはゴーストが入って処理が良くない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160630/CFs30June16.jpg
♂・・・・・・ 追加報告
スティーファン・ブダ (SBd)メルボルン、オーストラリア
1 Set
of RGB Images (
マーチン・ルウィス (MLw) ハートフォードシャー、英国
1 Colour
Image (
ポール・マキソン (PMx) アリゾナ、アメリカ合衆国
4 Set
of RGB +3 RGB Colour
+ 7 IR Images
(24,~ 30 May 2016) 25cm
Dall-Kirkham with an ASI290MM
♂・・・・・・・ 以下日付順にレヴューする。
24 May (λ=157°Ls) Paul
MAXSON (PMx)氏の観測: RGBセット(ω=262°W)とIR685(ω=260°W)の一組、RGB画像では南アウソニアからホイヘンス・クレーターにかけて明暗のニュアンスがよい。B画像ではエリュシウム・モンスの白雲をとらえている。北極冠もあきらか。 (6月28日受信)
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160524/PMx24May16.jpg
25 May (λ=158°Ls) PMx氏の観測: この日は、悪シーイングでRGB合成画像 (ω=260°W)とIR685(ω=252°W)の二葉だけ。両方ともに変わったところはない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160525/PMx25May16.jpg
26 May (λ=159°Ls) PMx氏の観測: この日もRGB合成画像 (ω=242°W)とIR685(ω=242°W)の二葉だけ。シュルティス・マイヨルが朝方に青みを持って濃く見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160526/PMx26May16.jpg
27 May (λ=159°Ls) PMx氏の観測: RGB合成画像 (ω=227°W)とIR685(ω=230°W)の提出が続いている。この日も青みを帯びたシュルティス・マイヨルが朝方のターミネータに見えている。エリュシウム・モンスは地方時午後一時くらいの位置にあるが、すでに山岳雲に覆われている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160527/PMx27May16.jpg
28 May (λ=160°Ls) PMx氏の観測: RGBセット (ω=219°W)とIR685(ω=222°W)で、フルセットに戻しての提出。シュルティス・マイヨルが朝縁ギリギリに青みを持ってとらえられている。プロポンティスTの北には雲塊。エリュシウム・モンスは、ちょうど正午から24分すぎたところだが、すでに白味が出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160528/PMx28May16.jpg
29 May (λ=160°Ls) PMx氏の観測: ω=214°Wで、RGBセットとIR685。この日もシュルティス・マイヨルが朝縁にきわめて近く、細く青く見えている。エリュシウム・モンスは正午近くで、山頂に小さな雲があると思われる。B光画像ではエリュシウムの雲塊がプロポンティスTの北の雲塊とつながっているように見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160529/PMx29May16.jpg
30 May (λ=161°Ls) PMx氏の観測: ω=203°Wで、RGBセットとIR685のフルセット。シュルティス・マイヨルはさすがに隠れてしまったが、替わってマレ・チュレッナムの前部とウトピアの西端がかなり青みを帯びるようになっている。ウトピアは北極雲の分枝に明らかに侵されている。エリュシウム・モンスの雲は認められない。夕縁にはオリュムプス・モンスの山岳雲が入ってきている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160530/PMx30May16.jpg
31 May (λ=161°Ls)
Stefan BUDA (SBd)氏の観測: ω=277°WでRGB元画像三枚と合成画像。RGB像ではエアボーンダストの影響が見られるが、バルデ・クレータ、ホイヘンス・クレータ、シュレーター・クレータ、ハーシェル・クレータ等の詳細がとらえられている。北極冠の南東には小さな雲の凝縮が見られ、エリュシウム・モンスの雲は夕縁近くで非常に明るく見えている。ヘッラスは砂色をしているが南東のコーナーは南極雲からの飛び出しで覆われかなり白く見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160531/SBd31May16.jpg
8 June (λ=166°Ls)
Martin LEWIS (MLw)氏の観測: ASI 174MCによるカラー単画像(ω=350°W)を提出。暗色模様は色彩に乏しいが、リムヘイズは捉えられている。特に朝方のマレ・アキダリウムは半分白い靄に覆われている。北極域からは南に向かって雲帯が上がっている。南極雲は鈍いが、部分的に飛び出しが見られる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160608/MLw08June16.jpg