CMO/ISMO 2016 観測レポート#09
2016年五月後半の火星観測 (λ=153°~162°Ls)
南 政 次・村上 昌己
CMO
#449 (
♂・・・・・・ 今回は五月後半の観測報告をまとめて九回目のレポートとする。この期間に火星は20Mayに「衝」となり、30May(22hGMT)に「最接近」となり視直径はδ=18.6秒角に達した。この大きさになるのは、2005年の接近以来のことであった。星座間の動きは逆行で「さそり座」から「てんびん座」にもどり、出現時刻も早くなったが視赤緯Dは21°S台で変わらず、地平高度はなかなか高くならなかった。季節はλ=153°Ls~λ=162°Lsと進んで、南半球の春分にだいぶ近づいてきた。そろそろ南極冠の出現で、黄雲の季節のはじまりも近い。視直径はδ=17.9"から18.6"の最大となり六月はじめまで続いた。傾きはφ=09°Nから12°Nと北向きに戻っていって、一時見にくかった残留北極冠が再び見えるようになってきた。位相角はι=06°から最低の01°となり08°にもどった。欠けの方向は朝方に移って、今後は夜明けのターミネーターを観測することとなる。
♂・・・・・・ この最接近を含む期間には報告者も増加を見せたが、ヨーロッパ、アメリカ側のベテランたちからの報告が少なかった。やや天候が悪くなってきたようだが南半球からの報告は順調に入信し、オーストラリアからは詳細を捉えた画像が多く寄せられている。
この期間に南極域ではフードが見られているが明るさは一定せず経度によってばらつきが見られる。まだ南極冠らしい輝きは見られなかった。アルギュレは明るさがあるが、ヘッラスはすっかり明るさを落として地肌が見えている。山岳雲は発生が夕方になり午前中は雲がかからなくなっている。オリュムプス・モンスは衝効果で周囲の山腹が明るく輝き円環状に見えていて見事であった。
赤道帯霧はだいぶ薄くなって、エリュシウムからシュルティス・マイヨル北部に伸びるものは目立たなくなった。朝夕霧も目立たなくなっているが、クリュセあたりにはまだ霧の漂っていることがある。南北ともに中緯度に霧が見られることがあり、南半球ではノアキスへ朝方からの伸び込み。北半球では、マレ・アキダリウムの東岸からイスメニウス・ラクスをぬけてボレオシュルティスまで帯状に、またテムペから西に向けて伸びるものがあり、プロポンティスTの北側には霧溜まりがある。傾きが北向きに戻り北極地の詳細も見えているが、ウトピアあたりでは北極地から白い吹き出しが出ていて北極域には大きく明るさが拡がっていた。
♂・・・・・・ N.B.1: (この稿、Mn記) いよいよλ=150°Lsを越える季節の領域に入ってゆく。λ=145°Ls~λ=150°Lsというのは例えばヘッラスの内部の氷霜が消えて南極冠が南極雲の下とはいえ、圓形構造を取り戻す時期で(CMO
#353 page Ser2-1022の図参照)、また小黄塵が南半球奥で頻繁に起こり始める時期でもある。また、λ=180°Ls(北半球の秋分)頃には水蒸氣による赤道帶霧などは顕れなくなり、南半球の黄雲の季節に入る。2001年は今年と似た火星が眺められた年であるが、早々とλ=184°Lsで大黄雲が発生した。この時期は未だ先であるが、実は2001年の場合既にλ=143°Lsの時點で、ノアキスとヘッラスの東側に小黄塵が立ったことが、MGSの結果で知られている(8April 2001右図、上が南である。右下にシヌス・サバエウスの尻があり、その左の大きなクレータはホイヘンス・クレータである)。このときは未だヘッラス内に氷霜が殘っている(なお、ヘッラス内の黄塵は氣壓が高い底面で起これば、通常は外には出てこない)。つまりこうした表面の黄塵は現在でも南半球のあちこちで起こっているはずであり、λ=150°Ls前後から、これがエアボーン・ダスト(風媒塵)となり大気を汚している可能性があるのである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmohk/268Note15/indexj.html
以下の観測で、そういう大気を汚すエアボーン・ダスト乃至風媒塵というものを察知させる観測はそろそろ出ても良さそうなのであるが、未熟な画像は本質的に汚れたものである可能性があり、指摘は難しいので、顧みないこともあるかもしれないが、ご容赦願いたい。なお、筆者は昔の肉眼觀測で毎日火星の大気が汚れていると感じていた場合として2003年の經験がある。実際それがクリアになるとどうなるかを体験したのは4July2003(λ=215°Ls) at ω=336°Wでデウカリオニス・レギオの東側で黄雲の發生を目撃したときであった。この黄塵はシヌス・サバエウスを綺麗に二分したのであるが、同時にシヌス・サバエウスの右半分は濃いチョコレート色を示し、その北の砂漠は所謂reddishに戻り、この邊りは下降流が起こってエアボーンダストを低気圧部の黄雲の方へ追いやって、綺麗な大気が部分的に回復したということが実感できたのである。次の14Julyの稿參照 (CMO#275 10th Report):
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn3/275OAAj/index.htm
♂・・・・・・ 五月後半には、国内からは7名30観測、アメリカ大陸側から6名30観測、ヨーロッパから6名9観測、オーストラリアから6名31観測、南アフリカから1名9観測の報告で、合計では26名から109件の観測報告だった。2名からの追加報告8件も含まれる。以下に個人別のリストを上げる。
阿久津 富夫 (Ak) 那須烏山市、栃木県 (*宇都宮大学天文台)
9 RGB Colour + 9 B
+ 9 IR Images (18, 19, 23*, 25, 28* May 2016)
36cm SCT, 40cm Cassegrain* with an ASI174MM
浅田 正 (As) 宗像、福岡県 (PPARC# : 東北大学: ハレアカラ山、マウイ島、ハワイ)
1 Set of RGB Images
(27 May 2016) PPARC# 60cm Reflector with an
ASI120MM
スティーファン・ブダ (SBd) メルボルン、オーストラリア
4
Sets of RGB Images (20, 24, 27, 30 May 2016) 41cm Dall-Kirkham with an ASI120MM
ルイス・フェルナンデス=ナバッロ セビリア、スペイン
2 Colour Images
(21, 28 May 2016) 20cm SCT with an
ASI120MC
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
9 Colour
+ 9 IR Images (21,~24, 26, 28, 29 May 2016) 36cm SCT @f/33 with an ASI224MC
ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国
6
Sets of RGB + 6 IR images (20, 23, 27, 29 May 2016) 36cm SCT @f/11 with an ASI290MM
石橋 力 (Is)
相模原市、神奈川県
5 Colour Images (18,
22 May 2016) 31cm Spec, with a SONY
HC9 Video
マーク・ジャスティス (MJs) メルボルン、オーストラリア
8 Sets of RGB
Images (20, 24, 30 May 2016) 30cm Spec with a DMK21AU618
マノス・カルダシス (MKd) グリファダ、ギリシャ
1 Colour + 1 IR Images
(
シルヴィア・コヴォッリク (SKw) ルードヴィヒスブルグ、ドイツ
1 Colour image (21 May 2016) 15cm
Macsutov Cassegrain with an ALCCD5L-IIc
熊森 照明 (Km)
堺市、大阪府
9 LRGB
+ 9 B Images (18, 20,~23, 28, 30 May 2016)
36cm
SCT @ f/30 with an ASI120MC & ASI178MM
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
5 Colour
Images (17, 20, 21, 26, 29 May 2016)
25cm SCT with a ToUcam pro II
フィル・マイルズ(PMl) クイーズランド、オーストラリア
1 Set
of RGB + 1 L + 1 IR Image (18 May 2016) 51cm Spec, with a Grasshopper3
GS3-U3-3254M
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
9 Sets of RGB
Images (18,
20,~24, 29, ~31 May 2016) 31cm SCT
with a Flea 3
森田 行雄 (Mo) 廿日市市、広島県
2
Sets of LRGB Images (21, 26
May 2016) 36cm SCT with a Flea 3
西田 昭徳 (Ns) あわら市、福井県
1Sets
of RGB Images (20 May 2016)
20cm refractor* with a Skyris 618M
*福井市自然史博物館天文台
大杉 忠夫 (Og)
小松市、石川県
3 Colour
Images (18, 20, 28* May 2016)
25cm Dall-Karkham with an ASI224MC & ASI290MC*
ミカエル・ロゾリーナ(MRs) ウエストバージニア、アメリカ合衆国
1 Colour
Drawing (25 May 2016) 35cm SCT,
330×
ロバート・シュルツ (RSz)
ウィ−ン・オ−ストリア
1 Colour
Image (26 May 2016) 20cm SCT
with an ASI 224MC
ジョン・スーセンバッハ (JSb) ホウテン・オランダ
2 RGB
Colour Images (26, 31 May 2016)
36cm SCT @f/18 with a QHY5L-II
モーリス・ヴァリムベルティ(MVl)
メルボルン、オーストラリア
10 Sets
of RGB + 10 IR Images (20, 24, 27, 30 May 2016) 36cm SCT @f/24 with an ASI120MM
ヨハン・ヴァレッル (JWr) スウェーデン
2
Sets of RGB Images (20, 27 May 2016) 22cm speculum @f/23 with a
DBK21AU618
デビッド・ウェルドレイク (DWd) ニューサウスウエールズ、オーストラリア
4
Sets of RGB Images (20, 23 May 2016) 13cm refractor @f/40
with an ASI120MM
アンソニー・ウエズレイ(AWs)
ニューサウスウエールズ、オーストラリア
1 Colour Image (17
May 2016) (51cm Spec)
ティム・ウイルソン(TWs)
ミズーリ、アメリカ合衆国
2 Colour
+ 2 IR Images (19, 22*, 23, 29* May 2016) 28cm SCT with an ASI120MC &
ASI120MM*
PPARC # (Planetary
Plasma and Atmosphere Research Center ) 東北大学: ハレアカラ山、マウイ島、ハワイ
♂・・・・・・ 以下、五月後半にISMOメンバーが観測した画像のそれぞれをレヴューする。
画像は
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/f_image.html
に納められている。
17 May 2016 (λ=154°Ls, δ=18.0"~18.1", φ=10°N)
Frank
MELILLO (FMl)氏がNYでω=292°W、φ=10°Nで撮った。シュルティス・マイヨルがCM近くで、ほぼ暗色模様は見える。問題は南極附近のガスで、ヘッラスを未だ侵しているかどうかであるが、判断はできない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160517/FMl17May16.jpg
Anthony
WESLEY (AWs)氏が澳大利亞でω=093°Wで大きな良像(カラー單像)を与えた。衝直前のι=04°で衝効果が考えられ、模様描冩には迫力はないが、深い斑點などは、明確である。ソリス・ラクス内部も好く捉えられ、アウレア・ケルソなどの様子に言及できるのは今囘初めてである。10年ぶりのδ=18"で、アウロラエ・シヌスやチトニウス・ラクスの斑點構造も好く捉えられている。オピル内に淡い暗色の細血管風構造が見られるのも今期の特徴である。オピルの北側やイウウェンタエ・フォンスの支え棒にも局所的な雲が懸かっている。マレ・アキダリウムは夕霧の中に埋没しているが、夕霧はクサンテから些し南まで、ソリス・ラクスから東は晴れている。南極のガスは55°Sまで張り出しているが、中央部には明るさはない。マレ・シレヌムの南は濃いガスである。オリュムプス・モンスの環状台地は一応明確で、中心の構造も見える。タルシス三山も淡いが確認出來、パウォニス・モンスのリングはハッキリし、アスクラエウス・モンスの環状は些し歪である。アスクラエウス雲はこの角度では見当たらない。北極冠の周り南西方向に白霜斑點の集合が存在する。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160517/AWs17May16.jpg
18 May 2016 (λ=154°Ls~155°Ls, δ=18.1"~18.2")
Efrain
MORALES (EMr)氏がカリブの島からω=291°Wで三基本画像とRGB合成像を送ってきた。暗色模様は黒々とし、エッジがシャープではないが、RとGの所爲でシュルティス・マイヨル西北端のバルデ・クレーター辺りが、完全ではないが、好く見えている。B像の効果も好く、RGBで霧や靄の分布が綺麗に示されている。エリュシウム雲は夕端で明るく、そこから南方、マレ・キムメリウムの先端部から靄がシュルティス・マイヨルの方に押し駆けているのが判るが、シュルティス・マイヨルがあまりに濃く、その先は判らない。朝方イスメニウス・ラクスの北を白霧の帶がボレオ・シュルティス 迄太く走っている。ウトピアにも霧の塊あり。朝のデウカリオニス・レギオからノアキスに掛けても朝霧。ヘッラス内は殆ど干されているが、ヘッラス最南端と思われるところのガスが最も濃い。λ=160°Ls頃には南極冠の非対称性は崩れている筈だが、南極冠の縁の後退は55°Sあたりまで進んでいると思われる。しかし、Tiltと斜光の關係で南極冠が捉えられるのは些し先になるだろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160518/EMr18May16.jpg
Tsutomu
ISHIBASHI (Is)氏はω=053°WでVideoによるカラー像を得た。シヌス・メリディアニが東端にマルガリティフェル・シヌスと分離して見えるが、それ以上の微細は無理。南極雲が大きく南極に被さっている描冩。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160518/Is18May16.jpg
Teruaki
KUMAMORI (Km)氏がω=056°Wとω=079°WでL-colour
像とそれぞれB像を得た。熊森氏に依れば、シーイングは良好だったようだが、であればもう少し軟調に処理できなかったのだろうかと気になる。 例えば、二囘目のω=079°Wでのチトニウス・ラクスあたりの描冩ではK點模様の周りにはすべて輝くような縁取りが取り巻いていて、これはゴーストを生む過剰處理にあたる。このことは一枚目の画像と比較しても、明らかに微細を出そうという意欲が先に立っている。既に一回目ですら處理の過剰さは見られる。夕方のマレ・アキダリウムなどの淡化は、マレ・アキダリウムは真っ黒のまま沈むという佐伯説に反するようだが、淡化にはそれ相応の理由がある筈で、もう一押しというところではないのであって、ι=03°で滿火星に近く、ここは強制處理で勝負するときではないと思う。 ω=056°Wでは衝効果で淡く見えるマレ・アキダリウムの本体より、北端のイアクサルテス附近やヒュッペルボレウス・ラクスの珍しい詳細の新描冩に成功しているから、もう一歩下がるべきところであろう。ただ、像のサイズにも據る不合理もある。実は、サムネールの像は劣化しているはずだが、このサムネール像は魅了的で、元像の優秀さを前もって示している。ω=056°W像で驚くのは ブランガエナは然程シャープではないのに、ネウドルス二重運河が、実にクッキリと南まで伸び南極ガスの縁まで辿り着いていることである。南極ガスは中央付近に収縮が見られる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160518/Km18May16.jpg
Tadao
OHSUGI (Og)氏はKm氏と殆ど同時刻のω=057°Wで224MCでのカラー畫像を得た。25cmミューロンである。ソリス・ラクスの様子をはじめ、アウロラエ・シヌス近くやクリュセの南部、ニロケラスの双葉型など隈無く詳細にわたっていて一流の画像であると思う。ただ、暗點や棒状のものが可成り骨太で模様では黒が勝る。これに対して南極雲は白さがない。案外Stackした後に一旦三色分解して、そのB像を少し弄って縁を際立たせるというのはどうだろう。なお、Paul
MAXON (PMx)氏の10
May 2016 (λ=150°Ls)のω=039°Wの画像(δ=17.3")を參照されると参考になることがあろうかと思う。同じ25cmミューロンである。これはASI290MMに據る分解像からB光が好く効いていることの他に、マレ・エリュトゥラエウムの北側の廣い部分が濃淡好く描かれていることである。イウウェンタエ・フォンスも矢鱈黒斑點としてでなく、アッサリ描いていることなども優れている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160518/Og18May16.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160510/PMx10May16.jpg
Tomio
AKUTSU (Ak)氏はω=083°Wとω=093°WでRGB?像とB像、IR像を二組撮った。B像は粗相で(特に後者)、これでは南極雲は白くはならないと思う。IR像では 骨太の骨子は見え、オリュムプス・モンスの位置も判るが、RGBでは詳細も見られず、衝効果も見られない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160518/Ak18May16.jpg
Phil
MILES (PMl)氏はω=094°WでR、G、B分解像を得、これのRGBコンポジット像を作った。更にL 画像、IR685像、IR700像も撮っている。R、G、B三像とも綺麗な仕上がりである。ι=03°であるが、オピルはどの成分でも強くはない。ただBで北側に小さい雲塊がある。過剰處理ではないから、オリュムプス・モンスを含めて、無駄な光輪は見えない。オリュムプス・モンス光輪はRとGで好く見える(朝方だから光輪は楕円形)。一方、RとGではフォルトゥナ環状模様は見えている。ソリス・ラクスは内部構造までみえる。アウレア・ケルソやアウロラエ・シヌスからの派生模様は案外斑點の集合のようだ。RGBではソリス・ラクスのあたりは快晴とは見えない。タウマジアは狭く霧が詰まっているように見える。またソリス・ラクスの直ぐ南には霧の帶が走っているように見える。夕端には霧があり、クサンテでは濃く、マレ・アキダリウムにも被っている。南極雲の中央あたりに濃いところがある。G及びBで顕著。IR像はIR685が穏やか。今回はパーシスが見えないなぁ。北極冠のあたりの描冩も優れている。北極冠西の例の斑点状の残滓も見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160518/PMl18May16.jpg
19 May 2016 (λ=155°Ls, δ=18.2")
Tim
WILSON (TWl)氏はω=290°Wで120MCでカラー單像。ただ、色収差がある上、白が全く感じられない。更にIRの使い方が間違っているようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160519/TWl19May16.jpg
Ak氏が ω=081°W でLRGB型のカラー像と、B像、IR685像を与えた。ソリス・ラクスの南中だが、南極雲も含めて、全体詳細が判らない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160519/Ak19May16.jpg
20 May 2016 (λ=155°Ls~156°Ls, δ=18.2"~18.3")
Peter
GORCZYNSKI (PGc)氏はω=260°WでのRGB像と約10分後のIR像二像を得た。二種のIR像は違ったメーカーのフィルターを使っているので、フィルターによる乱れではないと思うが、IR像、R像ともに南西←→北東に揺らしたような妙な筋が入っている。これまでのPGc氏は優秀で、こんな見苦しい像はなかったので、火星の高度がCT州からは酷く低い所為か、290MMというカメラの所爲か。RGB像では北極冠またはオリュムピアからの吹き出し雲が出ているような感じ。ただ、B像によってRGBではエリュシウム・モンスの雲が独立して見えるし、RGBでもアエテリア暗斑の南部分裂は見えているので潜在能力は高い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160520/PGc20May16.jpg
EMr氏がω=265°W でRGB合成像を得た。眩いばかりの白で、北極冠の直ぐ東南、リマ・ボレアリスを越えて物凄い明るい白雲が出ている。GとBで明らかである。同じくエリュシウム・モンスの雲も真っ白、その割に、衝直前の所爲かその南東の夕霧は淡い。同じ傳で、南極雲にも東側に明るい部分がある。南極冠の一部が露呈しているのかもしれない。暗色模様も標準以上の現れ方であるが、いろいろなクレータなどはキレがいい方ではない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160520/EMr20May16.jpg
Frank
MELILLO (FMl)氏の穏やかな像はω=281°Wのカラー像で砂漠やシュルティス・マイヨルも含めて綺麗な火星の色合いである。エリュシウム雲の白さは夕端に出ていると思うし、EMr氏の像に明らかな北極冠またはオリュムピアからの吹き出し雲は北邊を大きく白くしている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160520/FMl20May16.jpg
David
WELDRAKE (DWd)氏はω=356°Wとω=002°W、ω=010°Wでの三組の労作RGBセットを熟した。像は小さいが、好くまとまっている。衝直前でシュルティス・マイヨルに先行する夕霧の細い姿を捉えている。北極冠も見え、G、B光で南極雲は綺麗で、アルギュレに続くところで濃い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160520/DWd20May16.jpg
Maurice
VALIMBERTI (MVl)氏はRGB像とIR像四組を揃えた。MVl氏はこの日10:46
GMT から14:01GMTまでのgif動画を得た(Façade參照)が、ここでのJpg像は12:20GMT(ω=016°W)、
12:53GMT(ω=024°W)、13:49GMT(ω=038°W), 13:59GMT(ω=041°W)に撮られたものである。Rではシヌス・メリディアニが詳細に富み、アラム・カスマは美事である。ネウドルス二重運河はデウカリオニス・レギオを越えて南に伸びる。オクススは単純な線状ではなく、斑點の集まりで出來ている。オクスス暗點も各像で出ている。RGBではイアクサルテスの内部に入ってくる様子とガスを伴っていることが示されている。南極雲は未だ複雑で、アルギュレを覆っていると察せられる(最早デポジットではないだろう)。ただ、白色が些し濁っているか。RGBではオピルは明るい方だが、ω=038°WのR像では内部の小さな網状のネットワークが窺える。IRは最初の像がポイントをカヴァーしている。なお、これらの像は、南極雲も含めて、エアボーンダストに覆われているような感じである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160520/MVl20May16.jpg
Stefan
BUDA (SBd)氏が半月ぶりの像で、ω=036°Wの各像とRGB像である。細かいネウドルス二重運河やアラム・カスマ、Odsその他、名だたる暗色模様については先行するMVl氏の描冩と同程度であろうが、マレ・エリュトゥラエウムの北の広大な暗色模様の濃淡描冩は些し余裕があって、穏やかに見える。眼を凝らすと少し霧の配置もあって、ちょっと10
May (λ=150°Ls, δ=17.3") ω=039°WのPaul
MAXON (PMx)氏の画像を思い出させる(これについては追加報告で触れるが、先ずGalleryを参照されたい)。北極冠の周りの描冩も納得で、南極雲の描冩も無理がない。R像も含めて、G、Bでの南極雲は濃淡の偏在をよく示している。秀逸な像であると思う。但し、模様の透明度という点では、全体に汚れているという感じで、エアボーンダストが強くなっているか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160520/SBd20May16.jpg
Og氏は ω=040°Wで224MCのカラー像。主な微細模様はおおかた描出していて問題がない(どころかアウレア・ケルソあたりの描冩は満点)が、濃い模様は些し骨太過ぎて、色彩が全体単色に見える。B分光による白の描写が弱いこと(南極雲や北極冠)が致命的。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160520/Og20May16.jpg
Mark
JUSTICE (MJs)氏は二セット作像でω=041°W とω=052°Wで与えている。微細構造はRで見ると申し分ない。ただR光のシャープさがRGBでは弱まる。 我々が注目するのはオクスス附近の細かさで、Ods邊りの様子は過剰處理一歩手前で、好いところで止まっている。ω=052°WではR像のソリス・ラクスからアウレア・ケルソ邊りの構造描冩は魅力的。両者ともフォルトゥナ二重環が見えている。ω=052°Wでは(やや朝方のゴースト・アークが邪魔だが)早くもタルシス山系の二山(多分アルシア・モンスとパウォニス・モンス)の頂上が褐色で並んで朝霧から飛び出して見える。アスクラエウス・モンスは既に朝霧から出ているのであろうと思う。南極雲から朝霧に掛けての白の描冩は綺麗。GとBでは南極冠内の白の濃度の偏在が好く顕れている。但し、模様の全体はMVl氏やSBd氏の場合と同じく、不透明な感じを与える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160520/MJs20May16.jpg
Km氏はL-colour像をω=053°Wで、B像をω=058°Wで与えた。L-colour像は一般的にいえば、詳細が出ているのであるが、 ブランガエナやアラム・カオスの描写が綺麗でないことで判るように、暗色模様のキレは好くないのである。熊森氏によると好く晴れているが北からの冷気が氣流を乱しているようである。ω=053°WはMJs氏の第二像と同じ角度だが、タルシス三山の位置は掴みにくい。マレ・アキダリウムの北部に先行する縁の小さい白雲はMJsと同じように描かれている。 なお、一般的には突き出たpoked-out山頂はBでも濃斑點として出る筈であるが、このBには痕跡がない(MJs氏のBには出ている)。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160520/Km20May16.jpg
Akinori
NISHITA (Ns)氏はω=070°Wで三色分解光で撮り、RGB像を合成した。南極雲の濃淡が些し出ていることで多とすべきか。この日は筆者の片方(Mn)が足羽山天文台にGlint觀測で出掛けていて、このNs氏の撮像に立ち会ったが、気の毒なぐらいシーイングが悪く、stakkertでなければ像が出ないことは明らかであった。ただ、Rの模様は軽く表現しなければならず、Bには細心の試みが必要であろう。RGBのカラーバランスは崩れている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160520/Ns20May16.jpg
Johan
WARELL (JWr)氏はCMOの古いスウェーデンの友人で、プロの天文家(Dr)だが、火星はアマチュアとして観測する。デンマークのエリザベト・シーゲル(ESg)さんと組んで、Nordic
Mars Observersを率いていたが、シーゲルさんが病に倒れ、以後お互いに不知道。JWr氏は毎接近CMOに投稿されている。この像はω=163°Wで22cm反射で撮ったものだが、高緯度で、火星の高度は低いと思われる。南北軸がおかしいと思うが、 夕方に近いオリュムプス・モンスが雲を被っていることがB像の様子から知れる。南極雲はこの角度から見ると西側に傾いているようだ。マレ・シレヌムとマレ・キムメリウムの間が出ている。 プロポンティスIは明確で、朝方のエリュシウムの内部も窺える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160520/JWr20May16.jpg
21 May 2016 (λ=156°Ls, δ=18.3"~18.4")
Luis
FERNÁNDEZ
(LFn)氏はω=186°Wの20cmSCTと120MCによる小さなカラー像を得た。プロポンティスIがCM近くに出ていて、些し明るいエリュシウムが濃いアエテリア斑點で押さえられている。北極雲域も判るが、像はもう少し大きくした方が好い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160521/LFn21May16.jpg
FMl氏のω=244°Wのカラー像。エリュシウムが明るく、濃いシュルティス・マイヨルの東方が稍明るい。南極雲の詳細は判らない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160521/FMl21May16.jpg
EMr氏はω=253°WでRGB三色セットとRGB合成像。良像。R像が好く、マレ・キムメリウムの北西端などはハーシェル・クレータと共に可成り詳しく出ている。アウソニアの西端も何年か前の接近当時の様子を思い出させる。シュルティス・ミノルも好い感じ。ヘッラスはずんべらぼう。RGB像では些し暗色模様は惚けるが、南極冠が出ているらしい様子は綺麗。エリュシウム山には白い雲。アエテリア暗斑の二重運河化は明確。ウトピアも内部構造が見えている。北極冠には吹き出しがある。白が生き生きとして、暗色模様も締まりが好い方で、大氣の汚れは感じさせない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160521/EMr21May16.jpg
Yukio
MORITA (Mo)氏は一連の画像とLRGBとRGB像をω=017°Wで得る。シーイングが悪くて困っているらしい。シヌス・メリディアニなど格好はいいのだが、R、Lなどで暈けが出てエッジが決まらない。RGBで北極冠は見え、南極雲の明るさがアルギュレ南にある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160521/Mo21May16.jpg
Km氏はω=023°Wとω=050°WでL-colour像とそれぞれにB像。シーイングは依然不安定らしい。二像の内、ディテールについては後者が可成り上等。但し、ブランガエナなど南北の伸びが無い。とは言え褐色の色が好い。夕端近くのシヌス・メリディアニに些し白霧が來ているか。ネウドルスは見える。北極冠近くのヒュッペルボレウス・ラクス邊りの描冩は面白い。ただ、中央から朝方に掛けては過剰気味でK點は光輪を見せる。その割にアスクラエウス・モンスは不明。Bでも可能な筈だがしゃっきりしない。南極地方のガスは濃淡が明白。透明度は不明。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160521/Km21May16.jpg
Clyde
FOSTER (CFs)氏は一週間のご無沙汰の後、この日ω=116°Wで、
L-colour像とIR685像。夕方のソリス・ラクスは晴れているようだが、オピルの北部には 雲塊。オリュムプス・モンスは朝方でリング状で明白だが然程明るくはない。タルシス三山はIRで幽かに見えるかという程度。L-colour像では大氣が汚れていると言えば、言えるかなぁ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160521/CFs21May16.jpg
Silvia
KOWOLLIK (SKw)さんの久々の登場。15cmマクストフでω=168°Wカラー單像。観測場所はルードヴィッヒブルクで前と同じ。絵柄はオリュムプス・モンスの雲が夕方に、エリュシウムの明るさが朝縁近くにプロポンティスIと一緒に見え南部にはマレ・シレヌムからマレ・キムメリウムの連なりと、南極雲が淡く見えるというところ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160521/SKw21May16.jpg
22 May 2016 (λ=156°Ls~157°Ls, δ=18.4", φ=11°N)
EMr氏がω=240°W、φ=11°Nでワンセット。B像ではエリュシウム・モンスの雲がクッキリしており、RGBでは明白、エリュシウム西端の地肌反射光もピンク色で目立つ。マレ・キムメリウムの西北部はマレ・テュッレヌムとの繋がりと共に好く出ている。 北極冠と共にその東の霧の拡がりとウトピア内部の濃淡などの描冩も好い。南極雲は後退して明部は南端近くに見える。アウソニアも可成り出ている。良像に見える。元気のいい像で、大氣の不透明さは判らない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160522/EMr22May16.jpg
TWl氏はIR像でω=252°W。IRではエリュシウムの顕著な笠雲も南極雲も見えないという典型。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160522/TWl22May16.jpg
Is氏はω=357°W、006°W、017°W、026°Wとほぼ40分ごとに並べる。南極雲の明るい部分が内部に入ってくる様子は判るが、あとは時期的にチェックするものはないように思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160522/Is22May16.jpg
Km氏は14:05GMTにω=024°WでL-colour像とB像を得た。衝を三時間ばかり過ぎたころで、これからは右端がターミネーターで、朝がマルッポ見えることになる。大阪・境は晴れが続いたようで、今回もシヌス・メリディアニからオクスス北端まで極めて微細に富んでいる。Odsも勿論出ている。ただ、少々過剰處理が見られ、斑點には光輪がつきまとう。L-colourでは南極雲の奥が暗くなっているのは斜光が届かないということか。面白い問題である。北極冠もφが上がって深く見えるはずだが、半分暗い。こういうときは、もう些し夜半遅くまで観測を続けて、比べることが大事であろう。毎日日曜の熊森さんには不可能なことではない。ただ、空の状態にも依存するが。このω=024°Wを見ると朝霧は出ているようで、あと30°Wほどの自転でタルシス三山が朝霧の中を通過するはずで、惜しいことである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160522/Km22May16.jpg
CFs氏がω=111°Wとω=134°Wで いつもの画像を撮った。両方ともオリュムプス・モンスのリングを見せている。ω=111°Wでカンドルの邊りに夕霧の塊が、ω=134°Wでは押し詰まっている。追跡の場合は、一時間以内(通常40分後)に次の撮像をすべきである。火星面が汚れていると言えば、言えないことはない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160522/CFs22May16.jpg
23 May 2016 (λ=157°Ls, δ=18.4"~18.5")
EMr氏がω=221°Wで 分解像を撮り、RGB合成像を作った。R像が矢張り好く、マレ・キムメリウム西北部のディテールは素晴らしい。しかもシュルティス・マイヨルが朝縁近くで予想以上に濃く、RGBでは青色を示さない。これは重要な観測であるかもしれない(但し、もう少し早い時間の観測も必要であったということである)。これは朝霧が既にあまり濃くないということで、北半球の夏に北極地で暖められ、赤道附近に送り出されていた水蒸氣が秋分近くになって弱まって來たということと符合するのかもしれない。所謂赤道帶霧もそろそろ見られなくなるということである。λ=180°Ls(七月上旬)前に朝霧、夕霧の末期を観測することが大事である。但し、Bを見ると朝縁近くのシュルティス・マイヨルを横切る濃い朝霧が見えるが、これがRGBではあまり効いていない風でもある。なお、エリュシウム・モンスの雲は前日のω=240°Wの時より弱いと思う。つまり、この雲は依然夕方には発達する山岳雲であることを示していると思う。また北極冠の直ぐ南にはオリュムピアを源とする霧が動いている。ケブレニアにも霧帶がある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160523/EMr23May16.jpg
PGc氏が ω=234°Wで分解像とIR像、それにR-RGB像を作った。但し、この290MMによるR像自身が宜しくない。ウトピア内の濃淡は示唆的だが、信用が出來ない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160523/PGc23May16.jpg
TWl氏の画像はω=255°Wだが、IRで強調しているために、白い部分が出ない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160523/TWl23May16.jpg
David WELDRAKE (DWd)氏がω=354°Wで120MMによる合成像を示した。些し小さい像であるが、B像は好い感じである。RGB像は南極雲も北極冠も見えるが全体がやや暗い感じで、エアボーンダストに支配されていると言っても好い様な気がする。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160523/DWd23May16.jpg
Ak氏は宇都宮大学天文台で ω=356°Wとω=020°Wで撮ったが、少なくとも前者では火星の高度が未だ低いのではないか。後者のIR像ではネウドルス二重運河がみえているし、シヌス・メリディアニからオクスス北部まで微細が出ていて、Odsもみえる。透明度は判らないが、白霧の出方は正常。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160523/Ak23May16.jpg
Km氏はω=028°Wでいつもの像を得ている。L-colour像はいつもより粗い印象を持つ。Ods斑點には些し色が着いているらしいのは好い点か。北極冠と南極雲は押さえている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160523/Km23May16.jpg
CFs氏がω=097°Wでいつもの像。オリュムプス・モンスはリング状で見えている。北極冠も南極雲も薄汚れた印象。大氣の所爲か? IR像ももう少し軽めに。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160523/CFs23May16.jpg
閑話挿入N.B.2:(ここで、朝霧の下でのシュルティス・マイヨルが蒼く見えないことについてのMnの私感を述べておく。)23MayのEMr氏の画像で、朝縁に入ってきたシュルティス・マイヨルが浅葱色を示さないことについて注目したが、理由は二つ考えられた。一つは、衝日に近いこと、つまり衝効果の一種かもしれないことである。二つ目は、朝縁の水蒸氣がいつもと比べて少ないのではないかということであった。そこで、2014年の衝前後を調べてみようと思って、先ず衝は2014年四月8日GMTであったから、8日以後を繰ってみたら、例えばSBd氏の14April ω=219°Wがあり、これにはシュルティス・マイヨルが浅葱色で出ているのである。このときι=05°であった。続いてKn氏、BCr氏、Is氏、MVl氏と枚挙にいとまが無く、すべて綺麗な浅葱色が出ているのである。実は、遡ると、13AprにはMVl氏の画像があり、ι=04°であった。しかし、それ以前8Aprまでにはドンピシャの画像がない。そこで、Mk氏に他の年で例がないか調べて貰ったところ、次のような結果が知らされた。
「衝前後の10日程度を見てみました。全く青味が感じられない画像はありませんでした。2001年、2003年では、カメラはToUcam中心で、RGB分解像は少なく、色調・解像度共に良くありません。
衝日
朝縁にSyrtis
Mjのある画像
2001年 13 June
(λ=177°Ls) 画像は少ない。 DPk18June01
2003年 28 August (λ=250°Ls) DPk12Aug03, SBd14Aug03, Ak21Aug03,
SBd22Aug03,
Mo23Aug03,
Ak25Aug03, ENg27Aug03, WTn27Aug03
2005年 07 Nov. (λ=320°Ls) DPc27Oct05,
JWn02Nov05, JPh04Nov05, KGr08Nov05
Eos起源の黄雲(20Oct)で南半球は覆われている。
2007年 24 Dec. (λ=007°Ls) CPl18Dec07,
CPl22/23Dec07, DPk30Dec07, WFl31Dec07
2010年 29 January(λ=044°Ls) PGc17Jan10, DPk20Jan10,
WFl22Jan10
2012年 03 March (λ=078°Ls)
Km20Feb12, SGh27Feb12, JWr01Mar12, JWr04Mar12, CPl05Mar12, DPc06Mar12
2010年、2012年には、エリュシウムからシュルティス・マイヨルに伸びる赤道霧帯がある。他の年はリムヘイズ程度で赤道霧帯による朝霧は強くないが、朝縁ではシュルティス・マイヨルに青味がある。エアボーンダストが多かったと思われる2005年でも朝縁のシュルティス・マイヨルは青味がありました。」
ということであった。從って、衝効果説は成り立たないことになり、水蒸氣過少説に移ったのである。
閑話休題。
24 May 2016 (λ=157°Ls~158°Ls, δ=18.5")
EMr氏はω=208°WでRGB合成像を作った。シュルティス・マイヨルはRで見え始めているように思うが、RGBでは痕跡が判らない。Bでエリュシウム・モンスの雲は前回より更に弱い。ウトピア北部に横たわる雲は可成り明るい。エリュシウム西端の明るいピンク色の地肌は衝効果で十分明るいが、エリュシウム・モンスの南側斜面もピンク色で稍明るいのではないか。なお、ピンク色に明るいことそのものは衝とは無関係で、2014年の場合、たとえばBill
FLANAGAN (WFl)氏の 5
May 2014 (λ=126°Ls、ι=21°)のω=254°Wでも明らかで、お馴染みである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160524/EMr24May16.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140505/WFl05May14.jpg
MVl氏はω=344°Wとω=358°Wで二通りのRGBセットを熟した。前者はコントラストの低い形で中央にシヌス・サバエウスとシヌス・メリディアニを捉えていて、細かい描冩である。後者は稍コントラストを上げているが、シヌス・メリディアニからオクススまで可成り詳細に富む。アラム・カオスも綺麗な描冩で、Odsも明確。ただどちらとも南極雲と北極冠の描冩は弱い。風媒塵に覆われている感じである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160524/MVl24May16.jpg
SBd氏がω=351°WでRGB像を作像した。R像が優秀で、シヌス・メリディアニからオクスス北部まで必要なディテールは出ているが、SBd氏は強調處理しないのが好い。Odsなどは自家薬籠中である。ただ、RGB像は全体が稍靄って見え、エアーボーン・ダストが漂っているような印象を与える。これはB像で暗色模様が案外はっきり出ていること(これは昔、衝効果と言われた)と關係があるかもしれないし、先に述べたように實際にλ=150°Ls前後の時點から、小黄塵があちこちで起こっていることに依るかもしれない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160524/SBd24May16.jpg
MJs氏はω=355°Wとω=005°Wで二組の分光像を作り、二葉のRGB良像を構成した。
ω=355°WのRGB像では夕端のヘッラスはずんべらぼうであるが、40分後には南極雲のガスがヘッラスに些し降りているような感じである。色合いが好く、デウカリオニス・レギオの上部は緑がかった様子で、SBd氏像と似ている。南極雲は強くないが、ω=005°Wで稍白い。ディテールは申し分なく、Odsなど明確である。ただ、マレ・アキダリウムの色調など、エアボーンダストの存在を暗示させる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160524/MJs24May16.jpg
CFs氏はω=101°WでL-colour像である。ソリス・ラクスが夕方よりだが、夕霧と無縁であるかどうかは判断がつかない。詳細も詳しくはない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160524/CFs24May16.jpg
25 May 2016 (λ=158°Ls, δ=18.5")
Michael
ROSOLINA (MRs)氏はω=210°W でカラースケッチ。マレ・キムメリウムがでているか。砂漠は黄色い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160525/MRs25May16.jpg
Ak氏は自宅でω=015°WのRGB像、他にB像とIR685像。像は粗い気がするが、色合いは阿久津さん。マレ・アキダリウムなど些し緑が入る。 南極雲はうっすらと。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160525/Ak25May16.jpg
26 May 2016 (λ=158°Ls~159°Ls, δ=18.5"~18.6")
John
SUSSENBACH (JSb)氏がオランダから、ω=150°W でソリス・ラクスが隠れ、エリュシウムが朝に顔を出すところ。エリュシウムの雲は早々と濃い。オリュムプス・モンスは存在が判る程度で氣を入れないと見逃すかも。マレ・シレヌムが中央南に出ているが詳細は判らない。南極雲も薄い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160526/JSb26May16.jpg
FMl氏が ω=198°Wの單カラー像。エリュシウムは内部が些し明るい。夕辺は不詳。南極雲は些し見え、北極冠も存在が判る。以前より一見して砂漠も汚れた感じで、エアボーンダストに據るか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160526/FMl26May16.jpg
Mo氏はω=007°WでRGB,
LRGBを含むワンセット。シーイングが揃わないのは、想像に難くないが、LRGB, RGB像を見ると火星面の濁りがちょっと気を削ぐような感じで、お気の毒です。やはり、綺麗な火星に出会いたいものですが、ここ暫くは駄目でしょうね。ブランガエナとかマレ・アキダリウムの北西部の暗部とか 基本的な部分は見えているようですから、このまま黄雲の發生を待ちましょうか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160526/Mo26May16.jpg
CFs氏はω=079°Wで
L-colourその他。汚れ面ながら、フォルトゥナ二重環、タルシス山系、それに朝方のオリュムプス・モンス等は捉えられている。北極冠の右上には雲。南極雲も分裂していて、アルギュレ邊りに濃い部分。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160526/CFs26May16.jpg
Robert SCHULZ (RSz)氏、初めてではないが(多分2008年以来)ウィーンからの參加である。20cmSCTで224MCを用いてのカラー單像。午後側にアガトダエモンと共に大きくソリス・ラクス、オピルは 夕霧がないが、夕端近くのクサンテは夕霧が濃い。北半球ではニロケラスが殘っている。北極冠の周りは白く明るい。南極雲も白い。テムペとアルカディアが稍明るい。オリュムプス・モンスを出すには粒子を細かくした方が好い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160526/RSz26May16.jpg
27 May 2016 (λ=159°Ls, δ=18.6", φ=12°N)
PGc氏がω=193°W、φ=12°NのR-RGB像とω=196°WのIR685像。コネティカットは NYとボストンの間で40°N線より以北、日本なら青森ぐらいで、火星の低さをお嘆きだが、今回は合成像にさほどの破綻はない。シャープさはないがマレ・キムメリウムが朝方で、エリュシウムも南中のプロポンティスIと共に朝方に見える。オリュムプス・モンスは夕端で淡く見える(Bでは明白)。エリュシウム内は白が目立たないが明るく見え、もう一つアエテリア暗斑の外(西側)にも明るい部分がありこれは注目。南極雲の白いガスっぽさはR-RGBでは珍しい。IR像では模様が荒れて見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160527/PGc27May16.jpg
As氏が遠隔操作で R像をω=289°Wで作成、順次G像とB像を展示。R像ではシュルティス・マイヨルが南中、しかし、バルデ・クレータの様な微細には至らない。アウソニアの西端が暗線で示される。 Gと Bでは南縁に東よりに明部を示す。南極冠の一部か。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160527/As27May16.jpg
MVl氏が、二つのRGB像をω=302°Wとω=306°Wで拵えた。IR像はω=304°Wとω=308°W。RGBではどちらも南極雲の状況は淡く、デウカリオニス・レギオの緯度ではヘッラス域も含めてダスティに霞んで見える。シーイングの程度としては、ホイヘンス・クレータが三次元立体的に見えるほど陰影を写し込んでいてかなり高いことは確かだが、更にアントニアジ・クレータのカルデラ壁に接するバルデ・クレータがつとに明確なので微細も描かれており、潜在的な像の品質は可成り高いと判断され、透明度の低さはエアボーン・ダストに據るものであることは確かである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160527/MVl27May16.jpg
SBd氏は ω=307°Wでワンセットを与えたが、これもMVl像に劣らずホイヘンス・クレータが高品質、立体的で、バルデ・クレータの暗點もキリッと締まって明確なように、高レヴェルの画像である。一方、全体に風媒塵が覆っているように模様を見えづらくしているのも確かである。エアボーン・ダストの擴散は極に來きているようだ。北極冠も明確であるし、南極雲の内、ヘッラス東南の円盤縁には集中が見られ、ノアキスにもガスは降りているようだが、どれも弱くなっている。そろそろ季節感が換わるぐらい風媒塵は気候に影響を与える程であると思う。尚、Bでは北極冠の東南に霧の塊がある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160527/SBd27May16.jpg
JWr氏はω=099°Wで分光像とRGB合成像のワンセットを与えた。午後側のソリス・ラクスが濃く、その南の南極雲の部分が特に明るい。ソリス・ラクスの北ではオピルが明るいが、これはBでは然程ではない。その東側のクサンテの夕霧はは夕端でどの分解像でも明るい。テムペも稍明るく、ケラウニウスが稍陰って、その西の明るさとの境になる。北極冠域も明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160527/JWr27May16.jpg
28 May 2016 (λ=159°Ls~160°Ls, δ=18.6")
Ak氏が宇都宮大学天文台で ω=307°W、ω=321°W 、ω=344°WのRGB三セットを得、その他B像とIR像を提出した。ω=344°Wが23:58JSTで火星の南中が日本では23.5hJSTぐらいであった。像としてはω=321°W が柔らかくて好く、南半球の模様の領域が判る。本人が意識しているかどうか別にして、シーイングの悪さは明らかだろうが、火星面の透明度の低さにも苦労していると察せられる。IR像ではヘッラスの邊りがずんべらぼうである。ホイヘンス・クレータは判るが、過剰處理になる虞がある。 北極冠近邊には極地雲の擾亂があるようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160528/Ak28May16.jpg
Og氏がω=327°Wで290MCによる單像。濃い模様と弱い模様の濃度格差が可成り目立って、暗色模様は強調處理と言われかねないと思う。南極雲や夕霧も黄色っぽく、シヌス・サバエウスやシュルティス・マイヨルも明るい縁取りがゴースト風である。ネウドルス二重運河やホイヘンス・クレータの内部、Odsが出ているのは優秀なのだが、バルデ(Baldet)暗點は分離しなかった。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160528/Og28May16.jpg
Km氏はω=346°WでL-colour像とB像。夕方の乾いたヘッラスと南極雲の端っこの關係が判る好い構図。しかし、シヌス・サバエウスの下縁を白い靄が撫でるのは解せない。マレ・アキダリウムの朝霧が見えている。北極冠も明確。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160528/Km28May16.jpg
CFs氏は二組、ω=057°Wとω=072°WのL-colour像と付随するIR像二葉。L-colour像はディテールに富んでいるけれども、全然綺麗でない像。多分風媒塵に據るのだろう。白さの部分が全く感じられないのは一寸描き足りないのではと思われる。微細構造に絞ってみると、チトニウス・ラクスの邊りはこの視直徑では十分なように思えるが、2003年のMnの私的な經験からはアウレア・ケルソの邊りは未だ先鋭化が可能のように見える。エアボーンダストで汚れているならしようがないが、北極冠も些し吹き出しがあるようで、ω=072°Wから見られる形状は興味深いが北極冠自身の色が悪すぎるなぁ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160528/CFs28May16.jpg
Manos
KARDASSIS (MKd)氏の登場。常連だが、アテネも38°Nに近いので、低い火星には悩ましいだろう。ω=075°WでDBKによるカラー像とIR685像。このカラー像は夕霧や南極雲の色彩が冴えないし、IR像ではオリュムプス・モンスの位置が判り、タルシス・モンテスもどうやら見え、フォルトゥナの二重環も分かり、微細描冩の能力も判るが、カラー像では漠然とする。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160528/MKd28May16.jpg
Luis
FERNÁNDEZ
(LFn) 氏はスペインから一枚の120MC
カラー像を送ってきた。角度は ω=113°Wである。色は冴えないが、南極雲は割と白く出ている。オピルは明るいが未だ夕霧は来ていない様子である。北極雲の傍にはっきりした白雲の帯らしいものが見えるのは興味深い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160528/LFn28May16.jpg
29 May 2016 (λ=160Ls°~161°Ls, δ=18.6")
PGc氏が三組ω=160°W、ω=166°W、ω=170°WのRGB像を並べた。最初の二組にはIR685像が附属している。ω=170°WのRGB像には夕霧や南極雲に關して白色が見られるが、それでも夕縁に黄色いarc状のものが出ているのは気になる。Rでは明るい縁筋である。ω=160°WのB像では、夕方にオリュムプス・モンスの雲とタルシス三山の雲がクッキリ見えている。アルシア・モンスの雲も大きくパウォニス・モンスの雲の間には暗線が入っている。いつもの形。アルバ雲も見える。南極雲の朝型には明るい白色のはみ出しがある。一方、朝方のエリュシウムの雲は最初目立たず、プロポンティスI の北側に雲塊が見え、これはω=170°Wでも白いが、エリュシウム内の明るさはoff-whiteのままである。なお、マレ・シレヌムは可成り濃い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160529/PGc29May16.jpg
EMr氏はω=176°WでRGB合成像を作った。PGc氏の最後の像を継ぐもので、共通性もある。先ず地べたの色が似ているということ。EMr氏の場合、砂漠は明るい茶系統だが、少し濁るとPGc氏像のようになるだろう。風媒塵の所爲だろう。もう一つ、エリュシウム内に這う白雲が見られないこと、プロポンティスIの北側には雲塊のあることも同じ。EMr氏では北極冠の右上にオリュムピアが確固として見えるが、PGc氏のω=170°Wでは雲としか見えなかった。オリュムプス・モンスは綺麗である。南極雲からマレ・キムメリウム東部にはみ出してくる同じく白霧も印象的。マレ・キムメリウムの詳細はEMr氏には見られるがPGc氏像では曖昧なのは、緯度の大きな違いによるシーイングの違いであろう。EMr氏像ではっきりしたのは、オリュムプス・モンスは、未だι=06°だから、光輪は出ているが、夕方に來てOMの東側山麓に雲が上がってきているのが見えることである。 タルシス雲はωが進んで、一体化して見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160529/EMr29May16.jpg
FMl氏はω=185°Wでカラー單像。マレ・シレヌムやマレ・キムメリウムの配置が判る。南極雲はマレ・キムメリウムの東部の南であかるい。エリュシウム内は未だ白くない。オリュムプス・モンスは夕縁に近いであろう
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160529/FMl29May16.jpg
TWl氏はω=196°Wで
IR807像。マレ・キムメリウムの詳細が稍見えるほか、アエテリアの暗斑の二重構造も暗示されている。プロポンティスIは濃い。雲の觀測はこれから重要になるが、それにはB像が必要である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160529/TWl29May16.jpg
CFs氏はω=054°Wで、L-colourとIR像。南極雲が白色で構成されていたら、さぞかし華麗な南極雲が見えるだろうと想像されるが、off-whiteどころか汚れ切った色である。エアボーンダストがhoodより上に漂うということか? 北極冠も面白い形に見えるけれども全く白くない。タルシス三山は斑點として朝方に散らばっているが、これも原則は薄い白霧を透して見えるものの筈である(ただし、2001年の大黄雲の際には7月上旬以降(λ=191°Ls〜)高空の薄い黄雲を透してオリュムプス・モンス他タルシス・モンテスも暗點として一日中見えていた。黄雲の所爲で、白霧が消えることがあるということであるう)。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160529/CFs29May16.jpg
30 May 2016 (λ=161°Ls, δ=18.6")
EMr氏はω=154°WでRGB合成像を拵えた。オリュムプス・モンスは午後側で光輪を見せているが、夕方の雲が懸かり始めたころであろう(地方時は13:50)。タルシス三山の雲は明白だが、アルシアは未だ弱い。アルバも小さく白い。エリュシウムは円盤に入ったところだが、稍内部は白くプロポンティスI北の白雲塊と繋がっている。可成り特徴のある白雲ベルト。北極冠の周りにも朝夕に雲の帶がある。南極雲は白く特にマレ・キムメリウムの東部の南には濃いところがある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160530/EMr30May16.jpg
SBd氏のRGB像はω=267°Wである。マレ・キムメリウムやアントニアヂ・クレータに隣接するバルデ・クレータのあたりはディテールに富んで見える。南極雲は形はよいが、ヘッラスの南部に懸かるガスは感じられる。エリュシウム・モンスの雲は真白い。その北側のlimb上に白点がある。ウトピア内にもoff-whitishの靄があるか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160530/SBd30May16.jpg
MJs氏がRGBのセットを四組、ω=284°W、ω=293°W、ω=304°W、ω=315°Wとほぼ四十分ごとに火星を追った。最初エリュシウムは夕方のリム近くで真っ白だが、次の時點ではリムの上、それから隠れてしまう。そのあとは夕霧が殘っている。暗色模様は最初からシュルティス・マイヨルがCM近くで ホイヘンス-、シュレーター-、バルデ斑點は明確でディテールは優れている。デウカリオニス・レギオの緯度ではシュルティス・マイヨル南部も含めてやや褐色の浮遊物、風媒塵がある。またヘッラス南部は白色の弱い靄があるようだ。ウトピアにも褐色の惚けた部分がところどころに在り、西方に向かって可成りの褐色系が見られる。北極冠は白く安定して見える。南極雲はヘッラスの東南で白さが強いが自転で弱くなって行く。Bではディオスクリア前後に雲帶が、R ではヘッラスの東側の描写が興味を惹く。優れた画像群である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160530/MJs30May16.jpg
MVl氏も連作で、ω=287°W、ω=293°W、ω=297°W、ω=303°Wで作像している。ほぼ廿分ごとである。微細は一定していて例えばシュルティス・マイヨルの北部のバルデ・クレータの斑點はどれにも顕れており、赤道帶は綺麗だと思われるが、20°Sより南は汚れた感じがする。南極雲も然程白くはない。北のウトピア等も茶系統色が勝っていて、北極冠も形は好いが、off-whiteである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160530/MVl30May16.jpg
Km氏はL-colour像とB像をを ω=316°Wで与えた。 パンドラエ・フレートゥムの詳細や、シュルティス・マイヨル内のホイヘンス・クレータの内部構造、シュレーター・クレータの暗部、バルデの暗點などはシャープさはないが好く描冩されている。ノアキスの邊りを見ても今黄塵が出たというところはないようである。ただ、北極冠の南のウトピアから西方に延びる暗部が茶色系統なのはチョイと気になる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160530/Km30May16.jpg
31 May 2016 (λ=161°Ls~162°Ls, δ=18.6")
引き続きEMr氏はω=160°WでRGB合成像を与えた。タルシス雲はだいぶん中に入って好く見えている。但しアルシアは一寸ユニーク。オリュムプス・モンスはリング状の光輪は可成り明るく(ι=08°)、中央丘はきれいな翡翠色。南極雲はマレ・シレヌムの南で真っ白な部分を示す(この明るい部分は29MayのPGc氏のω=160°Wの画像での南極雲の場所と違っている)。エリュシウムは円盤内だが、内部は白くはない。プロポンティスIのあたりは白霧があるようでその西には明るい筋、これがエリュシウムに入っている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160531/EMr31May16.jpg
JSb氏がω=062°Wで單カラー像を与えた。南半球ではソリス・ラクスが濃く、夕方縁にはシヌス・メリディアニの痕跡、マルガリティフェル・シヌスの存在、アウロラエ・シヌスなどが、北半球ではマレ・アキダリウムが夕方に見え、その西北部は濃いが、全体に詳細は判らない。色彩も餘り感じられない。白が弱く、南極雲も北極冠も不明。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160531/JSb31May16.jpg
♂・・・・・・ 追加報告 以下のように、Ak氏、MJs氏、Paul
MAXON氏、Charles TRIANA氏から今回の期間外に得られた觀測の追加報告があった。
阿久津 富夫 (Ak) 那須烏山市、栃木県 (セブ、フィリッピン)
17 RGB
Colour +1 R+ 17 B + 16 IR Images (24, 25, 27,~ 30
April 2016)
36cm SCT with an ASI
174MM
マーク・ジャスティス (MJs) メルボルン、オーストラリア
3 Sets of RGB
Images (15 May 2016) 30cm Spec with a DMK21AU618
ポール・マキソン (PMx) アリゾナ、アメリカ合衆国
4 Set
of RGB + 1 RGB Colour + 5 IR + 1 CH4 + 1
UV Images (10, 11, 12, 13, 15 May 2016)
25cm Dall-Kirkham with an ASI290MM
チャルレス・トリアーナ (CTr)
ボゴタ、コロンビア
1 Set
of LRGB Images (10 April 2016) 25cm
SCT @f/27 with an ASI120MM
♂・・・・・・ 以下日付順にレヴューする。
10 April (λ=135°Ls, δ=13.1") にはCharles
TRIANA (CTr) 氏の觀測が後で報告された。LRGB像でω=306°W、φ=6°Nで得られている。ヘッラスが夕方で白くあかるい。夕霧があって、シュルティス・マイヨルに懸かっており、一部っぽい。シヌス・サバエウスの先にはシヌス・メリディアニが濃く見え、その北からは朝霧に覆われている。北極冠の周りは不明。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160410/CTr10Apr16.jpg
24 April (λ=142°Ls, δ=15.1"): Tomio
AKUTSU (Ak)氏の追加報告はすべてセブにおけるAprilの観測分で、この日の報告分は既にCMO#447Ser3-1101で行ったのであるが、帰国後處理をやり直したということで、このシリーズにも24Aprilを入れておく。この日にはω=288°Wとω=320°Wで観測した。前者ではヘッラス内の西部では未だ氷霜が弱い形だが、二時間後にはヘッラス西の境界(ヤオニス・フレトゥム)まで氷霜が発達した感じである。シーイングの好いω=320°Wでは夕霧の一部がシュルティス・マイヨルの北部を覆って、RGBでは青色を見せている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160424/Ak24Apr16.jpg
25 April (λ=143°Ls) にはAk氏はω=291°W、ω=301°W、ω=323°W、ω=332°W の四セットを撮った。ω=291°Wはシーイングが好いらしく、バルデ・クレータはほぼ見えている。ヘッラス内の白さは東半分が濃く、西半分はoff-whiteであり、ω=301°Wでも然り、ω=323°Wではヤオニス・フレトゥムを際立たせて氷床またはガスが西壁まで來ている様子。このとき朝方ではOdsが見え、夕方ではシュルティス・マイヨルの北部で夕雲は形を成し、これは最後まで見える。最初の像以下、デウカリオニス・レギオの緯度から東方は地が可成り黄色い。北極冠はどれもしっかり見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160425/Ak25Apr16.jpg
27 April (λ=144°Ls)にはAk氏はω=260°Wでのワンセット。ヘッラス内の輝部は東側にある。エリュシウムの白雲は好く見える。シュルティス・マイヨルの北部は藍色がかっている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160427/Ak27Apr16.jpg
28 April (λ=144°Ls)はAk氏がω=275°W、281°W、284°Wの三セット作成。後になるほどシーイングは好いが、平凡。ヘッラスの内部の輝部は東側。ただ、ヤオニス・フレトゥムぎりぎりまで淡い白が來ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160428/Ak28Apr16.jpg
29 April (λ=145°Ls, δ=15.9")にはAk氏:ω=256°W、ω=267°W、ω=280°W、ω=299°W の四セット。この日から、砂漠の色調が変わって、黄色基調から煉瓦色に近くなる。ω=256°Wではマレ・キムメリウムの北西部が好く見え、ハーシェル・クレータが見えている。また北アウソニアの北端がクッキリしている。エリュシウムのモンス側の白雲とエリュシウム西端のピンク色の地肌が対照的。ヘッラスは朝方に向いて、南端部から東側へ氷晶の輝く部分がはみ出している。北極冠ちかくで色収差による赤い線が出ている。ω=280°Wでは、シュルティス・マイヨルを跨ぐ赤道帶霧が東西に走っているのがRGBでもBでも判る。ω=299°Wではシュルティス・マイヨルのクロケア上の白霧だけでなくアントニアディ・クレータ邊りから雲が点々とアラビアの方へ出ているのが判る。興味深い画像。なお、ヘッラスの最輝部は東南角にあるが、そこから両翼を広げる形で、西側はヤオニス・フレトゥムの東側に降りている。ウトピアにも白霧が浮遊している。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160429/Ak29Apr16.jpg
30 April (λ=145°Ls, δ=16.1")には Ak氏はω=230°W、ω=240°W、ω=249°W、ω=280°W の四像。また砂漠の色合いが変わるが、ω=230°Wではマレ・キムメリウムが可成り詳しい。シュルティス・マイヨルは朝縁近くにあって、些し藍色がかっている。舊トリナクリア(北アウソニア)の跡が好く見える。アエテリア暗斑の二重運河分裂も好く見える。北極冠の邊りはゴーストが走っていて馴染めない。ω=240°Wではエリュシウム・モンスの雲が東側に曲がって伸びる。ヘッラスは変わらない。ω=280°Wでは赤いゴーストarc-lineが朝縁を這う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160430/Ak30Apr16.jpg
10 May (λ=150°Ls, δ=17.3")にはPaul
MAXON (PMx) 氏がR、G、B成分とRGB合成像(とIR685像)をω=039°W、φ=8°Nで作成。25cmミューロンとASI290MM使用。この画像には美点があり、それはマレ・エリュトゥラエウムの北の領域が濃淡宜しく、寧ろ軟調に仕上げられていて、意味ありげであることである。類例がないので、いまのところ解らないが何か意味があるでしょうね。前日にはPGc氏の画像があるのだが、質が落ちる。なお、エデン邊りの雲ではないかと思われる白雲の塊が左端に見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160510/PMx10May16.jpg
11 May (λ=151°Ls, δ=17.4") にはPMx氏はRGB合成像をω=026°Wで得たほかにω=027°WでIR685像、ω=029°WでUV像、ω=031°WでCH4像を得ている。前日と同じところは平均化された感じ。稍白霧があるかというのはGとBで窺える。CH4像は火星では何を意味するのか淺田正氏に訊いたが、Mnには埒外であった。でも此のCH4はRに負けないぐらいシッカリした像です。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160511/PMx11May16.jpg
12 May (λ=151°Ls, δ=17.5") にはPMx氏はω=012°WでRGB像とω=016°WでのIR685像。例のところは矢張り些し淡化している。何か異常があるか。デビル・ダストでも起こったか。一度MRO像で調べてみたい。IRは過剰気味だがネウドルス二重運河、ブランガエナ、Odsなど明瞭。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160512/PMx12May16.jpg
13 May (λ=152°Ls, δ=17.6") にはPMx氏はω=001°W, φ=9°NでR、G、B分光像とRGB合成像、他にω=005°WでIR685像。IR像ではOdsが出ている。オクススとマレ・アキダリウムの間はBでも明るい。RGBではシュルティス・マイヨルが夕霧をターミネーターまで追いつめている。R像も綺麗な處理です。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160513/PMx13May16.jpg
15 May (λ=153°Ls, δ=17.5")にはPMx氏はω=347°WでR、G、B分光像とIR像をω=348°Wで得た。オクススの北の方に霧の帶がある。マレ・アキダリウムの北端邊りの風景には見覚えがある。ネウドルスも出ている。Odsも見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160515/PMx15May16.jpg
また同日Mark
JUSTICE (MJs)氏はω=097°W、ω=106°W、ω=115°Wと観測し三組をこなした(φ=9°N)。ω=098°Wでは南極雲の主要部は夕方に傾いている。ソリス・ラクスは霧と無縁で濃く、夕方だが、アウレア・ケルソの邊りが好く見えている。アウロラエ・シヌスには夕霧が懸かっていて、その先は幾らか縁霧が濃い。夕方のテムペにも霧が回って、南の方アスクラエウス・モンス方向に枝霧が延びている。フォルトゥナ二重環がチトニウス・ラクスの北に見える。タルシス山脈は餘り確かではないが、オリュムプス・モンスの光輪は朝方に見えている(ι=06°)。北極冠は形が明確、右上に小さい氷霜の塊が幾つか並ぶ。ω=106°Wでは、明白にアウロラエ・シヌス上の霧はオピル-カンドルの方へ延びている。ソリス・ラクスには未だ夕霧が懸かっているようには見えない。テムペの霧は塊になりつつあるように見える。アルバも霧が固まったか。イウウェンタエ・フォンスの西側とその北に霧が固まっている。この風景はω=115°Wでも維持される。オリュムプス・モンスの光輪は明瞭で然程変化がない。最後の像では北極冠の南に小さい氷霜の塊が動いてきている
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160515/MJs15May16.jpg