CMO/ISMO 2016 観測レポート#06
2016年三月後半と四月前半の火星観測 (λ=123°~138°Ls)
南 政 次・村上 昌己
CMO
#446 (
♂・・・・・・ 今回は 2016年3月後半と4月前半の一ヶ月間の観測報告をまとめて、六回目のレポートとする。視直径は10秒角を上回りいよいよ接近してきた火星は、この期間には「さそり座」に入り順行を続けていたが、四月には動きが鈍くなり「留」間近になった。視赤緯Dも20°Sから21°Sと変化は少なく。アンタレスの北に見えていた。視直径はδ=10.0"から14.0"と大きくなって四月下旬には2014年接近の最大視直径を上回ってくる。季節はこの期間にλ=123°Lsから138°Lsに推移して、北半球高緯度に朝方の渦状雲現象に注意が払われた。赤道帯霧も朝方・夕縁のシュルティス・マイヨルを青く見せるなど活動があり、三月下旬にはマレ・アキダリウムの西側に連日霧溜まりが捉えられている。午後の山岳雲現象も引き続き観測されている。中央緯度はだいぶ南を向いて期間末にはφ=06°Nとなったが、ここからまた北向きに戻ってゆく。南極地には四月に入って極雲のフードが目立つようになった。アルギュレTも明るさが出ている。またヘッラスも依然明るく捉えられているが、内部には陰影がはっきり見られるようになった。残留北極冠は小さくなったが未だ判る。位相角はι=36°から25°となりだいぶ欠けが小さくなっている。
♂・・・・・・ この期間には以下のように多くの報告が寄せられる様になった。日本では浅田氏が遠隔観測でハワイからの画像を報告されている。熊森氏も望遠鏡の口径をあげて観測を開始された。阿久津氏からも報告が入り始めた。
この期間も南半球からの報告が多く七割を越している。国内からは4名10観測、アメリカ大陸側から4名19観測、ヨーロッパから1名1観測、オーストラリアから4名50観測、南アフリカから1名23観測の報告で、合計では14名から103件の観測報告だった。
阿久津 富夫 (Ak) 那須烏山、栃木県
2 Sets of RGB + 2 IR Images (22 March;
浅田 正 (As) 宗像、福岡県
5 R
+ 5 B Images (30 March;
スティーファン・ブダ (SBd) メルボルン、オーストラリア
2 Sets of RGB Images (20
March;
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
22 Colour
+ 23 IR Images (16, 19,~21, 24,~31 March; 2,~4, 8,~
36cm SCT @f/33 with an ASI224MC
マーク・ジャスティス (MJs)
メルボルン、オーストラリア
12
Sets of RGB Images (20, 21,
25, 31 March; 2, 3,
熊森 照明 (Km)
堺、大阪府
2 LRGB +
2 B Images (11,
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
7 Sets of RGB
Images (18, 25 March; 3, 4, 8, 9,
森田 行雄 (Mo) 廿日市、広島県
1 Set of LRGB
Images (
デミアン・ピーチ (DPc) バルバドス (ウエストサセックス、英国)
3 Colour + 3 B
Images (27 March 2016) (36cm SCT with a SKYnyx 2-0M)
ジャン=ジャック・プーポー (JPp) エソンヌ、フランス
1 Colour Image
(
チャールズ・トリアーナ (CTr) ボゴタ、コロンビア
1 Colour Image (
モーリス・ヴァリムベルティ(MVl)
メルボルン、オーストラリア
28 Colour Images (16, 20,~ 22, 25,
30, 31 March; 2, 3, 6,
36cm SCT @f/28 with an ASI224MC
アンソニー・ウエズレイ(AWs)
ニューサウスウエールズ、オーストラリア
7 Colour + 1 IR Images (16, 19, 22, 23, 27 March; 1,
ティム・ウイルソン(TWs)
ミズーリ、アメリカ合衆国
8 Colour Images
(21, 28 March; 2, 3, 5, 12*, 14*, 15* April 2016)
15cm & 20cm* SCT with an ASI120MM
PPARC #
(Planetary Plasma and Atmosphere Research Center ) 東北大学: ハレアカラ山、マウイ島、ハワイ
♂・・・・・・ 今回も觀測順に紹介する。
視直徑は10秒角に達した。先ずClyde
FOSTER (CFs) がω=110°WのL_カラー像とIR685像を撮った。白雲は好く見えていて一見良像のように見えるが、暗色系には全体ボヤケがあって同定が稍困る画像である。アスクラエウス雲は明白である。パオニス・モンスの雲は小さく、アルシアの雲はあっても小型で淡い。オリュムプス・モンスの雲も白く著しいが、弛みのためオリュムプス・モンスの西山腹にあるかどうかの判断が難しい(反り方が反對のように見える)。マレ・シレヌムも見えているが、形状は不明。クサンテに続く雲群も出ているがポエニキス・ラクスやチトニウス・ラクスなどが濃度はあるのに形状が自己主張しない。アルバ・パテラも白く見えるようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160316/CFs16Mar16.jpg
Maurice
VALIMBERTI (MVl) 氏も同じカラーカメラで、ω=312°W、ω=316°W、ω=322°Wのカラー三像だが、描冩の浅い像で、ディテールも弱い。多分R像單獨なら、締まりのある模様が再現するのであろうが、三色の蓄積をする間にディテールが解けてしまうのであろう。北極冠と夕方のヘッラスは出ているが、強烈な印象は起こらない。夕方のシュルティス・マイヨルの北部を掠める白い霧も穏やかで 帶の活動域など示されない。B像で押さえるべきものであろう。朝方のシヌス・メリディアニは二股に見えるから、シーイングの条件は悪くないのだと思えるが、シヌス・サバエウスなども特徴がない。全體の砂色の印象も宜しくない。なお、この像では前日にJUSTICE
(MJs) 氏がdetectしたエデン邊りの白霧を含む明部が出ていないことが不満である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160316/MVl16Mar16.jpg
Anthony
WESLEY (AWs) 氏も單像だが、AstrodonのRGBの表示があるから、合成像であると思う。ω=337°Wの像で、ヘッラスを些し残したままだが、北極冠は綺麗に平たく見えている。φ=8°N。
シヌス・メリディアニも綺麗な形で、ブランガエナも見えている。オクススも好く見えていて、前回参照したOxus
dark segment (ODS)も見えている。夕方のシュルティス・マイヨルの北部は白霧を被っていて、これは朝方の同質の白霧に繋がっている気配で在り、途中エデン邊りに明部を見せていて、これは前日のMJs氏像に顕れたものに呼応する。マレ・アキダリウムの北端から東側の様相は前回のFLANAGAN氏像に見られた特徴を未だ維持しているように見える。
なお、マルガリティフェル・シヌスは 可成り濃く、前回の二本のネオドルス運河も見えている。南端朝方には朝霧が出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160316/AWs16Mar16.jpg
Efrain
MORALES (EMr)氏がω=186°Wでワンセットを与えた。B像によるメリハリが効いて、RGB像での白の分布が好く、夕方のオリュムプス・モンスの著しい白雲や、エリュシウム内部の雲、とりわけエリュシウムの外の朝霧の描冩がよい。アエテリアの暗斑は朝だが濃く出ている。マレ・キムメリウムの暗色模様部の描冩は中程度。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160318/EMr18Mar16.jpg
CFs氏がω=047°W、φ=07°NでL-colour像とIR像を与えた。
δ=10.4秒角だが、可成りのディテールがアウロラエ・シヌスからチトニウス・ラクスに掛けて見られる。平たい北極冠に接してヒュペルボレウス・ラクスが濃いが、ゴースト混じり。ニリアクス・ラクス前方に濃い夕霧。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160319/CFs19Mar16.jpg
AWs氏がω=313°W で良質のRGB像と、ω=321°WでIR像。RGBでは夕方のシュルティス・マイヨル北部に懸かる夕霧の微細なメリハリある描冩が最高に好く注目される。この夕霧は朝方まで帶となって続いているようで、エデンの邊りには一寸した明部がある。夕方のヘッラスの描冩も好い。朝方のシヌス・サバエウスとシヌス・メリディアニの描冩も優れている。イスメニウス・ラクスに掛けての朝方のオクススの様子もIRともども微妙に出ていて、ODSも見える。マレ・アキダリウムの北部は案外朝霧を伴わず出てきている。 平たい北極冠の描冩も暈けが少なく印象がよい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160319/AWs19Mar16.jpg
CFs氏がω=069°WでL-colour像とB強調のカラー像、それに IR685像を与えた。カラー像で注目するのはアスクラエウス雲の残滓が濃いこと。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160320/CFs20Mar16.jpg
MVl氏がω=280°W、283°W、289°Wで224MCカラー像を与えた(我々の40分カウンティングでは二像)。ヘッラス内部が安定して描冩されており、シュルティス・マイヨル南部ではホイヘンス・クレータが見えるが、全體に色合いが浅く、魅力は少ない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160320/MVl20Mar16.jpg
Stefan
BUDA (SBd)氏がω=285°Wで120MMによる一セット(フィルターはAstrodon)とRGB合成像。
MVl氏のカラー單像よりも深みがあり印象が好い。ヘッラスの内部も綺麗に明暗が描冩されており(西端部の輝度が高いがその描写が適切)、シュルティス・マイヨルも可成り詳しく、ホイヘンス隕石孔や、北部の詳細が出ている。シヌス・メリディアニとエドムも朝方で綺麗。北極冠も納得で、オリュムピアの残滓が見えているかもしれない。B像には淡い赤道帶霧が出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160320/SBd20Mar16.jpg
Mark
JUSTICE (MJs)氏がω=301°W、ω=308°W、ω=318°Wの三セットとそれぞれのRGB合成像を与えた(エドモンド・フィルター)。いずれも良像である。ω=301°Wでは朝方でアリュンの爪が割れて見えている。ホイヘンス・クレータが明確で、シュルティス・マイヨル北部の描冩も可成り詳しく、B光の所爲で稍青染んでいる。ヘッラスの白部も立体的で西端が非常に明るく白く、その東に暗部が凹んだように見える。北極冠の東にはオリュムピアが見える。イスメニウス・ラクスからオクススは可成り明確。ω=308°Wでは、些しシーイングが落ちているが、シュルティス・マイヨル北部上の霧は青味を帯びている。シヌス・メリディアニは可成り入ってきたが、ω=318°Wとは10°W違いなので様子の違いがよく判る。ω=318°Wではシュルティス・マイヨル北上の夕霧が特別な形を成して、朝霧に通じているが、途中エデンの邊りでは稍霧が明るくなっている。尚、マレ・アキダリウムの北部がどう違って見えるかはR圖を比較すると面白い。B像でのヘッラスの違いも美事である。Bでは南極方向に靄が見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160320/MJs20Mar16.jpg
CFs氏がω=060°Wで、L-colour像とIR685像を得た。マルガリティフェル・シヌスのあたりは暗く沈んで詳細がない。チトニウス・ラスク邊りは要素は揃っているが、些し暈けがある。夕方、マレ・アキダリウムの東側に濃い夕霧。アスクラエウス雲が小さく明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160321/CFs21Mar16.jpg
Tim WILSON (TWl)氏が15cmSCTによる小さなカラー像(ω=173°W)。120MMなので合成像かと思う。夕端近くにオリュムプス・モンスの白雲と朝方にはエリュシウムが明るくケルベルス、プレグラ、プロポンティスTなどが見え、アエテリア暗斑も朝霧の中に見えている。北極冠も明るいが形は出ない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160321/TWl21Mar16.jpg
MVl氏がω=263°W、268°W、271°Wでカラー像を得た。ホイヘンス・クレータなどの詳細は見えるが、暗色模様の色合いの幅がなく、夕方のエリュシウムから延びる夕霧が鮮明ではない。それと朝縁のゴーストが邪魔である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160321/MVl21Mar16.jpg
MJs氏が ω=294°WでRGBワンセットを得た。シュルティス・マイヨルはCM近くだが、既に消えたエリュシウムから発する夕霧が湾曲してシュルティス・マイヨルの北部を侵しているのが判る。これはBで明確でアエリアへ達している。霧の濃淡がBでは窺える良像。但し、エデンあたりは朝方に來て見極めが難しい。φ=7°Nだが、Bではヘッラスの向こう側が見える興味ある像。またヘッラスから北方へ一寸吹き出しが出ている。北極冠の南に暗帯が接している。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160321/MJs21Mar16.jpg
Tomio
AKUTSU (Ak)氏が ω=249°WでR、G、BとRGB合成像, およびω=250°WでIR像を得た。現在日本に帰着されていて、C14使用、カメラはASI
174MM。Rでの暗色模様の締まりがないため、RGB像も暈けている。ただ、夕方のエリュシウムの雲の白さや砂漠の色合いは好いと思う。色合いは阿久津調で懐かしい。なお、IR像は数段上等で、アエテリア暗斑も濃い。R像との格差が可成りありますな。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160322/Ak22Mar16.jpg
MVl氏がω=252°W、254°W、256°W、260°W、262°Wでカラー像だが多く2°W違いだから、最初のω=252°W像と10°W後のω=262°W像を比べる。エリュシウムの内部にU字型の明部が見られるが、詳細は判らない。外に流れる霧は描冩されないようである。ヘッラスはその奥がω=252°Wでは覗けるようだ。ω=262°Wでもヘッラスは同じような感じで、未だエリュシウムのU字型も見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160322/MVl22Mar16.jpg
AWs氏がω=270°W でRGB像のみ。ヘッラスは明るく、奥もMVl氏の像と違って白さが支配しているようだ。エリュシウムの夕霧が湾曲を描いてシュルティス・マイヨルの方に延びているのが判る。北極冠の南に暗帯があり、その南が稍明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160322/AWs22Mar16.jpg
AWs氏がω=273°W でRGB像一像。前日よりシーイングが好かったらしく、詳細に富む。ヘッラスはメインの手前側の描冩だけでなく向こう側の淡い白さも巧く描写している。シュルティス・マイヨルの内部でもホイヘンスだけでなく、シュレーター・クレーターなども濃淡差で出ている。シュルティス・ミノル邊りも暗示的である。 エリュシウムの夕雲からは西南方向へ霧が流れ、シュルティス・マイヨル北部に些し懸かっているようだ。北極冠の南端は暗い帶に接していて、左にはオリュムピアの残滓が見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160323/AWs23Mar16.jpg
CFs氏がω=034°Wで、L-colour像とIR685像を得た。IR像の詳細は平凡に見えるが、カラー像は 可成りダイナミックで、南極近くの雲も捕らえているし、マレ・アキダリウムに先行する夕雲も描写が好い。シヌス・メリディアニは沈むところだが、二本爪が見えるし、ブランガエナも出ている。アウロラエ・シヌス邊りからクリュセの南部の暗色模様は出ている方。但し、ユウエンタエ・フォンスはもっとそれらしく描写できるように思う。ニロケラスの二枚葉は明確。マレ・アキダリウム北部はシッカリしないが、ヒュッペルボレウス・ラクスは濃く見えている。但し、どれも鮮鋭度では満点ではない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160324/CFs24Mar16.jpg
CFs氏がω=021°Wで、L-colour像とIR685像を示したが、描冩内容は前日の像より劣る。 シヌス・メリディアニが中に入って見える分、マレ・アキダリウムに先行の夕雲の配置は好く見え、エデンあたりに濃い塊がある。ヒュッペルボレウス・ラクスの邊りは前日と違って見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160325/CFs25Mar16.jpg
Charles
TRIANA (CTr)氏は南米コロンビアからASI 120MMによるω=096°WでのRGB合成像を一葉寄せてきた。像は小さく、オリュムプス・モンスの白雲は朝方だが、附近の詳細は判らない。但しアスクラエウス・モンスの陰影はハッキリし、その西側の白雲は濃く明瞭。これに先行する夕方の雲も真っ白で、夕方の濃いソリス・ラクスの領域と夕方のニリアクス・ラクスに挟まれるクサンテを含む領域を占めている。アルバ・パテラ邊りも白い。他に南極方面に靄が出ており、北極冠も痕跡が冩っている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160325/CTr25Mar16.jpg
EMr氏がω=098°WでワンセットとRGB像を与えた。オリュムプス・モンスの西山腹の雲が小さく真っ白である。オリュムプス・モンスの形ははっきりしない。アスクラエウス雲も矢張り白く濃い。更に夕方にはチトニウス・ラクスの北あたりに夕雲が擴がっている。オピルも白雲で覆われているか。尚、パウォニス・モンスやアルシア・モンスも陰として見える(前者に弱い西山腹雲)。アルバ・パテラは然程ではない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160325/EMr25Mar16.jpg
MVl氏がω=227°W、233°Wでカラー像を得た。両者とも白いヘッラスの登場を捉えている。マレ・キムメリウムのディテールを捉えているが、暗色模様の色彩が単調である。エリュシウムのU字型の正体がわかる。右側は地面の輝き、左側エリュシウム・モンスに伴う雲である。但し、此の224MCは朝霧に伴うシュルティス・マイヨル上の色彩を再現しないようだし、エリュシウムから流れる白霧の片鱗も顕さない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160325/MVl25Mar16.jpg
MJs氏が ω=252°WでR、G、BワンセットとRGB合成像を与えている。この像群は比較上でも重要で、U字型明部の左辺、右辺の色合いをハッキリ示している。エリュシウム西端の明部がピンク色であるのは地面の輝きであることをよく示す。エリュシウムから霧が漏れ出ていることはB像で明白で、RGBではその侵入を受けてシュルティス・マイヨルの北部は青味を示す。ヘッラスの白部の向こう側はここでは東南に出ているが、南極の薄雲に連なっているわけである。なお、暗色模様の詳細も可成り出ている。シュルティス・マイヨルではホイヘンス隕石孔が見えるし、シュルティス・ミノルを含むマレ・テュッレヌムも興味深い。マレ・キムメリウムでは西北端の描冩やマレ・テュッレヌムとの連携もexplicitである。アエテリア暗斑の今年の傾向に注意。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160325/MJs25Mar16.jpg
引き続きCFs氏はω=008°Wで、L-colour像とIR685像を得た。シヌス・メリディアニが可成り入り込んだほか、前日と殆ど変わりないが、インドゥスが意外とクッキリする。エデンの雲塊は夕端のガスと繋がっている。朝縁にはいやなゴーストは見えなくなった。カラーではマレ・アキダリウムの外周の描冩にはシャープさがないが、IR像では締まって見える。イアクサルテスは見えるが、ヒュッペルボレウス・ラクスはどうか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160326/CFs26Mar16.jpg
CFs氏はω=005°Wで、L-colour像とIR685像。前日と餘り変わらない角度だが、シヌス・メリディアニの南に二本のネウデウスが見える。マレ・エリュトゥラエウムは濃い太い帶で見える。エデンを挾む霧の帶は前日描冩より弱い。南端の霧は不規則分布。マレ・アキダリウムは全體、霞が掛かったようだが、IR685像ではマレ・アキダリウム全體がしっかり描冩されて、その北端部、イアクサルテス、それから東へ流れる運河など出ているし、ヒュッペルボレウス・ラクスの一部も濃く見えているか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160327/CFs27Mar16.jpg
Damian
PEACH (DPc)氏の登場である。ω=053°W、ω=059°W、ω=064°Wでの三つのRGB像とB像のセットである。夕闇に沈んだところを除いて、どの暗色模様も最高の詳細度と言えないまでも描冩されている。ユゥエンタエ・フォンスはこれまでのどの画像よりガッチリ出ている。Bによる霧の描冩は後の二葉では特に素晴らしく、ω=064°Wではクサンテからオピル-カンドルさらにはニロケラスの後方の霧などの様子が詳しく他の画像の検証の手本となる。どの像でもアスクラエウス雲の特別な輝きを捉えている。アルシア・モンスは未だ雲が懸かっていないが、その南には朝霧の帶があるので、このあたりの気象については調べが必要である。アスクラエウス・モンスの些し東方に中央に暗部のある円いボンヤリした明部が見えていて、これは1990年代から気になっているところだが、観測終了後Noteで「Fortuna二重斑點」として纏めようと思う。画像の後二者ではオリュムプス・モンスも朝方に見えている。夕方近いマレ・アキダリウムは夕方の靄の所爲か濃い形を見せないが、西北端の濃度は濃く、ヒュッペルボレウス・ラクスなどと共に濃い。なお、南端の靄の濃淡は注意すべきであろう、
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160327/DPc27Mar16.jpg
AWs氏のショットはω=240°W のRGB像一像だが、41cmで更に詳細を見せてくれる。エリュシウムのU字型明部で、左側にはエリュシウム・モンスと関係すると思われる白斑が見える。シュルティス・ミノルも詳細が見られる。平たい北極冠に接して暗帯が見え、オリュムピアがわずかに分離できる。ヘッラスも可成り中に入って、不思議な構造を見せているほか、外にはみ出す霧状の擴がりが興味深い。マレ・キムメリウムではハーシェル・クレータが明確になった。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160327/AWs27Mar16.jpg
CFs氏のこのω=002°WのL-colour像はもしB單獨像を伴い、もう少しシャープな表現になれば素晴らしい像群になったであろうと思われる。+IR685像。クリュセの南端の細かな模様はR分解像で好く出ているが、元像では可成り惚けて見え、カラー像では鮮鋭度が堕ちる。エデンあたりの雲は鏃型に明るく興味深いが、これは前号の15March2016(λ=123°Ls)のMJs氏の画像に顕れたものと同一物と考えられるのだが、今回は輝度が際だってRや IRでも反応がある可能性もある。これには少なくとも120MMによるB單獨像が必要であろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160328/CFs28Mar16.jpg
TWl氏の15cmSCTによるω=107°Wのカラー像は小さくてよく判らないが、夕端にタルシス關係の夕雲が冩っているか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160328/TWl28Mar16.jpg
CFs氏は引き続きω=345°W、φ=6°NでL-colour像をこなした。この像は全體に好く、Oxus
dark segment (ODS)も示していて秀逸なのだが、エデン邊りの明部は白が弱く、地肌色のみを表現しているか。別個のB像が必要。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160329/CFs29Mar16.jpg
CFs氏はω=330°WでL-colour像+IR685像を得た。シヌス・メリディアニのあたりなど標準以上の詳細を見せているが、全體は寝ぼけている。夕方のヘッラスも迫力がない。エデンのあたりは最早何とも言えない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160330/CFs30Mar16.jpg
Tadashi
ASADA (As)氏が ハワイ・マウイ島のハレアカラの60cm鏡を遠隔操作してω=152°W (14h45GMT)、ω=160°W、ω=170°W(16h00GMT)で撮った(R、B)像のセットである。R像ではマレ・シレヌムの西側のやや異常な様子を傳えている。もう一枚先行する像があれば全体像が判ると思う。第三群のR像ではマレ・キムメリウムの ゲール・クレータを含むアリンコの脚が朝縁近くに見えている。圧巻はω=152°Wでのオリュムプス・モンスとタルシス・モンテスの白雲の顕れかたで、オリュムプス・モンスに附属する雲は二つに分かれている。この状態は2014年にもチェックされているが、改めて今後地勢的な様子を探りたい。タルシス側も眼視に顕れる姿を再現していて面白い。所謂W雲が云々されたのは1954年で、今年は同じ条件だから、このあたりのB像の集積を課題にしていただきたい。プレグラの詳細も出ているし、エリュシウム内の雲と明るい地肌の區別も出來る。ケブレニアが明るい。なお、これらは試作で,G画像も撮っているそうである。
淺田正氏の遠隔操作観測はハワイ・マウイ島のハレアカラ山頂の東北大学の天文台(CMO#432參照)を宗像の自宅で操作して撮像するもので、望遠鏡にはASI120MMとフィルターホイルは取り付けてあり、観測したいとき日本から操作するようになっていて先ずドームとスリットはパソコン制御で、開閉も回転も出來るらしい(多分雨ならドームは開かない、濕度が高くなっても自動的に締まる)。時差があるから、日本では撮れない火星の角度が入って來るというわけで、重要な局面もあるかもしれない。今の場合、宗像では深夜に操作しているようですな。次号で淺田氏直々に解説を書かれます。ご期待下さい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160330/As30Mar16.jpg
MVl氏がω=162°W、176°Wでカラー像を二葉得た。夫々
15h29GMT,16h24GMTだからハワイとクロスする形でハワイの後を押さえている。MVl氏の画像は模様が淡くコントラストが弱いが、マレ・キムメリウムのGaleは見えている。オリュムプス・モンスの二枚雲も見える。後者ではエリュシウムの内部の明部も好く出ているし、アエテリア暗斑も割と濃い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160330/MVl30Mar16.jpg
CFs氏は前日と殆ど変わらないω=332°WでL-colour像+IR685像を得た。差異を云々する現象は無い。像としては稍劣る。IR685ではODSが見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160331/CFs31Mar16.jpg
MVl氏も前日と似たようなω=174°W、178°Wでカラー像を二葉得た。オリュムプス・モンスの西山腹も二枚雲。マレ・キムメリウムなどもC14らしくよく出ているが色彩度で迫力がない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160331/MVl31Mar16.jpg
MJs氏が ω=199°W、206°WでR、G、B二組とRGB合成像を与えた。 オリュムプス・モンスは夕端だが、エリュシウムはCM近くで左側の雲(エリュシウム・モンスの雲を含む)と右端の地肌かダストの浮遊物がピンク色で対照的。この像の特徴は夕方の中央帯の霧を朝方の霧と共に軽く描写していること。マレ・キムメリウムの描写はかなり詳しくなった。南端には凸凹の強い白雲。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160331/MJs31Mar16.jpg
AWs氏がω=195°W のRGB一像で秀像。オリュムプス・モンスの雲は夕端へ。エリュシウムの明部は綺麗でアエテェリアの暗斑も好い。マレ・キムメリウムではハーシェルのあたりが完璧。ヘスペリアの内部も詳しい。平たくなった北極冠の南にオリュムピアが出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160401/AWs01Apr16.jpg
CFs氏はω=303°WでL-colour像+IR685像を得た。夕方からシュルティス・マイヨルの北部にかけて淡い夕霧が出ているが弱い描写。ヘッラスも緩い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160402/CFs02Apr16.jpg
TWl氏がω=055°WでIR像。ソルの湖とマレ・アキダリウムのあたりが潰れているが濃い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160402/TWl02Apr16.jpg
As氏がω=123°W、133°WでRとB像を二組撮った。オリュムプス・モンスの雲はBでは通常に戻り、アスクラエウス雲もかなり大きく出ている。パウォニス・モンスの雲も稍出ていて、アルシア・モンスの雲も出かかっているようだ。この季節のこの辺りからのB像は貴重である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160402/As02Apr16.jpg
MJs氏が ω=167°Wで一組のR、G、BとRGB合成像を得た。オリュムプス・モンスの西側山腹を下る雲が見事である。タルシス山系は夕縁に来た。朝方のエリュシウムは完全に円盤内。プレグラ、プロポンティスTが見事。南端の雲は稍薄い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160402/MJs02Apr16.jpg
MVl氏がω=171°W、174°W、176°Wでカラー像を三葉得た。31Marchの像によく似ている。オリュムプス・モンスの山頂が暗く出ているのが好い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160402/MVl02Apr16.jpg
CFs氏はω=309°WでL-colour像+IR685像を得た。先鋭度は落ちているが、夕霧のシュルティス・マイヨルへの侵入は見える。他にボレオシュルティスの後方が稍明るいようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160403/CFs03Apr16.jpg
EMr氏がω=015°WでワンセットとRGB像を与えた。注目すべきはマレ・アキダリウムの前方がアメリカからも見えるようになりエデン近くの夕雲の塊が見えていることである。南半球ではマレ・エリュトゥラエウムの帯が太く見え、アルギュレが捉えられ、その南に縁雲。北ではヒュッペルボレウス・ラクスが少し見える。φ=6°N。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160403/EMr03Apr16.jpg
TWl氏のω=053°WでのLRGB像。マレ・アキダリウムが見えていて、先行する夕霧も伺える。ソルの湖辺りは少し濃淡のある暗部。先のIR像より遙によい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160403/TWl03Apr16.jpg
MVl氏が小刻みにω=132°W、135°W、137°W、141°Wでカラー像を四葉並べた。CM付近のオリュムプス・モンス雲を狙ったものだが、その先のタルシスあたりの連続観測の方がより意味があるって、ここでもアスクラエウス雲を追いつめているが、これらは単独B像で行う方が好い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160403/MVl03Apr16.jpg
MJs氏が ω=157°W、172°Wで二組のR、G、BとRGB合成像を得た。間隔が飛んでタルシスの沈む前の様子が窺えない。2Aprilのω=167°Wでも遅いぐらい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160403/MJs03Apr16.jpg
CFs氏はω=297°WでL-colour像+IR685像を得た。鮮鋭度は向上していない。ヘッラスはおおかた見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160404/CFs04Apr16.jpg
EMr氏がω=348°WでワンセットとRGB像を与えた。シュルティス・マイヨルの夕端での霧は強くエデン近くに流れているが、霧は強くない。ただし、ニリアクス・ラクスからクリュセにかけての朝霧は綺麗。南極方面の雲は濃く見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160404/EMr04Apr16.jpg
CFs氏はω=296°WでL-colour像+IR685像を得た。前日と殆ど変わらない。夕端からシュルティス・マイヨル、アエリアにかけての薄霧は見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160405/CFs05Apr16.jpg
TWl氏のω=027°WでのIR-RGB像で先の像より上等。マルガリティフェル・シヌスが見え、シヌス・メリディアニが分離している。南極に雲。赤道帯にも霧の帯があるか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160405/TWl05Apr16.jpg
MVl氏が小刻みにω=097°W、101°W、107°W、109°Wでカラー像を四葉得たが、タルシス辺りの雲の配置は描写が弱くて、細かいがとりとめもなくて重要な点がわからない。南極近くの雲は層を成しているようだ。分析には時間が掛かりそう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160406/MVl06Apr16.jpg
CFs氏はω=260°WでL-colour像+IR685像を得た。エリュシウムが夕方にあり、左側の雲はよく出てるが、エリュシウムから山成にシュルティス・マイヨルへ走る霧の帯はもっとexplicitに出せないものか。ヘッラスの様子はデジャヴュだが面白い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160408/CFs08Apr16.jpg
EMr氏がω=316°WでワンセットとRGB像を与えた。夕方のシュルティス・マイヨルの北部はB像から判るように霧で青みを帯びる。B像ではマレ・アキダリウムの北部の先方(東方)にも霧の帯があるようだ。北極冠は未だよく見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160408/EMr08Apr16.jpg
Ak氏が ω=077°WでR、G、BとRGB合成像、ω=079°WでIR像を得た。左上にソリス・ラクスが濃いらしいが、輪郭が出ない。但しIRではチトニウス・ラクスが判る。南端に雲の冠。夕端北半球にマレ・アキダリウムがぼんやり見える。IRではマレ・アキダリウムはかなり明確。テムペは少し明るい(RでもBでも)。クリュセ起源の夕霧が濃い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160408/Ak08Apr16.jpg
MVl氏小刻みにω=078°W、082°W、085°W、091°W、094°W、097°Wでカラー像を六葉並べた。相変わらず夕霧のコントラストが好くないが、ユゥエンタエ・フォンスの周りの夕霧まで追いつめている。ソルの湖の南の雲の層も面白い。夕方のマレ・アキダリウムが殆ど描写されない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160408/MVl08Apr16.jpg
SBd氏がω=089°WでR、G、B一組と合成像を獲た。好い角度であると思う。チトニウス・ラクス辺りのRでの描写が秀逸で、その北の夕雲の配置も明確である。オピル-カンドルも靄っていて、ユゥエンタエ・フォンスも透けて見える。夕霧のニロケラスへの絡みも明白。27MarchのDPc氏の画像にも出ていて仮にFortuna二重斑点とした明斑もアスクラエウス雲の東に見えている。南極を覆う大きな白雲(内部の濃淡)も見物である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160408/SBd08Apr16.jpg
MJs氏が ω=105°W、115°Wで二組のR、G、BとRGB合成像を得た。10°W間隔は理想的である。Rではマレ・アキダリウムが見えており、RGB像にも反映されている。夕端からオリュムプス・モンスまでの幾多の凸凹雲の描写は見事である。「Forutuna二重斑点」にも雲塊が被っている。アスクラエウス雲は未だ大きく明白で、オリュムプス・モンスの西山腹の雲も輝度が高い。南極の雲/霧の分布も複雑でリアル。ニロケラスを横切る明るい雲の筋も今後の話題である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160408/MJs08Apr16.jpg
CFs氏はω=245°WでL-colour像+IR685像を得た。シュルティス・マイヨルがかなり朝方に来た。ヘッラスも朝霧を被ったようで著しい。マレ・キムメリウムも好く出ているし、シュルティス・ミノルも暗示的。注目はエリュシウムからシュルティス・マイヨルに向かう霧の帯。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160409/CFs09Apr16.jpg
EMr氏がω=323°WでワンセットとRGB像を与えた。Rが最上等ではないから暗色模様のディテールは無いが、霧の拡がりは好く描写されている。夕方のシュルティス・マイヨルの北部に懸かる霧はアエリアに出て、更に朝方に続くが、エデンのあたりではさほど著しくない。但し、マレ・アキダリウムの北部はすでに円盤に入ってきていて、その流れの東方にはガスが漂っている様である。特にボレオシュルティスの西側には白霧溜まりがあるようである。ヘッラスは夕方に来ると冴えない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160409/EMr09Apr16.jpg
CFs氏はω=234°WでIR685像のみを提出した。13秒角になったが、アエテリアの暗斑やマレ・キムメリウムに関して、少しディテールが足りない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160410/CFs10Apr16.jpg
CFs氏はω=228°WでL-colour像+IR685像を得た。カラー画像の暗色模様のディテールはマレ・キムメリウムのハーシェル・クレータ辺りやアエテリア暗斑に関しても十分であると思う。南極の白い薄いガスと朝のヘッラスの白色の対照も綺麗である。北極冠の先方にはオリュムピアが見えている。朝方のシュルティス・マイヨルに懸かる朝霧はもう少し濃くても好いかと思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160411/CFs11Apr16.jpg
Teruaki
KUMAMORI (Km)氏のC14を採用しての登場である。ω=074°WでASI224MCによるLRGB像とω=077°WでのASI178MMでのB像である。カラー像に顕れるチトニウス・ラクス辺りやソリス・ラクスの描写は今期これまで拝受した中で最良である。オピルの霧は三段構えである。ユゥエンタエ・フォンスの芯が出ている。Fortuna二重斑点も明白で、アスクラエウス雲に先行している。クサンテからニロケラスへの雲の流れも面白く、ニロケラスの凸凹と霧の関係は今後の課題である。なお、B像は極端に不出来である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160411/Km11Apr16.jpg
CFs氏はω=219°WでL-colour像+IR685像を得た。前日の出来よりも稍劣る。ただ朝縁近くのシュルティス・マイヨルは淡く浅葱色に近い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160412/CFs12Apr16.jpg
TWl氏がω=316°Wでカラー合成を得た(IR-RGBか)。(20cmSCTに変更し)以前より数段上の出来映えでオクススも見えている。しかし、夕霧などの描写は難しいようだ。サバエウス・シヌスは格好好い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160412/TWl12Apr16.jpg
CFs氏はω=212°WでL-colour像+IR685像を得た。カラー像のディテールは上出来ではないが、朝縁近くでの淡い青味のシュルティス・マイヨルは肉眼でもこの角度で見える位置で好い選択である。詳細はIR685像で充分に出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160413/CFs13Apr16.jpg
CFs氏はω=204°WでL-colour像+IR685像を撮った。マレ・キムメリウムとエリュシウムが南中で、かなりのディテールが出ている。左端にはオリュムプス・モンス雲の名残がある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160414/CFs14Apr16.jpg
EMr氏がω=267°WでワンセットとRGB像を得た。エリュシウム雲が夕縁で、ここからシュルティス・マイヨルへ淡いガス。マレ・キムメリウムの北にも霧がある。Rでホイヘンス・クレータ。ヘッラス上空には大きい霧。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160414/EMr14Apr16.jpg
TWl氏がω=296°Wでカラー合成を得ている。前回と同質で、シヌス・メリディアニが入ってきたところ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160414/TWl14Apr16.jpg
J.-J
POUPEAU (J2Pp)氏が224MCでのカラー像でω=184°Wで撮られている。カラーが冴えない。エリュシウムも殆ど描写されていない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160415/JPp15Apr16.jpg
CFs氏はω=193°WでL-colour像+IR685像を作像した。暗色模様はIR685では詳細が出て、プロポンティスTなど好い形であるが、カラー像では暈けが出ている。南極を覆う霧の大きさは可成りのものである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160415/CFs15Apr16.jpg
TWl氏がω=285°WでIR-RGB像を得たが、これはこれまでのTWl氏像の最高傑作である。ウトピアの南にノドゥス・アルキュオニウスが出ている。シュルティス・マイヨルも好い色。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160415/TWl15Apr16.jpg
Yukio
MORITA (Mo)氏は多忙のようだが、駆け込みでω=049°Wでワンセット。マレ・エリュトゥラエウムの暗帯とソリス・ラクスが見えている。暗帯の北は霧で明るい。アルギュレにも霧が懸かっているか。R像はアウロラエ・シヌス辺りはよく示しているが、カラー像では暈けるので、R像をもう少しコントラストをつけた方が好いかもしれない。全面に霧や雲が支配しているのはG像やB像で判る。ルナエ・ラクスの北に斜めに走る霧がある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160415/Mo15Apr16.jpg
AWs氏はω=052°W のRGB一像。アガトダエモンの東方先方には霧の帯が見える。シヌス・メリディアニが出てきているが、辺りは夕霧で、ニリアクスの東にも霧の塊。マレ・アキダリウムはやはりガスっぽい。北極冠はちょっぴりだが明確でヒュッペルボレウス・ラクスの暗帯が見える。オピルもやはり白霧があるでしょうね。南極は大きく青白いガス。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160415/AWs15Apr16.jpg
Km氏のω=059°WでのLRGBカラー像はなかなかの像。ソリス・ラクスとチトニウス・ラクス辺りも詳しい。アガトダエモンの東方の霧帯は明白で、夕端の白霧も可成りのもの。マレ・アキダリウムの北端は好い描写。イアクサルテスが見え、ヒュッペルボレウス・ラクスも捉えられている。ニロケラスやアウロラエ・シヌスに部分的に雲が絡む事は面白い結果で、いつかNoteで。南極の白霧は凸凹。B像は未だ覚束ない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160415/Km15Apr16.jpg