CMO/ISMO 2016 観測レポート#05
2016年二月後半と三月前半の火星観測 (λ=110°~123°Ls)
南 政 次・村上 昌己
CMO
#445 (
♂・・・・・・ 今期五回目のレポートは2016年2月後半と3月前半の観測報告をまとめる。この期間には火星は「てんびん座」で順行を続けて、明け方には南中を過ぎるようになった。視赤緯Dは17°Sから20°Sとやや下がっているが、視直径はδ=7.7"から10.0"と大きくなって眼視観測にも十分な視直径になった。季節はこの期間にλ=110°Lsから123°Lsと変化した。このころピークとなる午後の山岳雲がタルシス・モンテスやオリュムプス・モンス、エリュシウム・モンスなどで捉えられている。南に位置するアルシア・モンスは少しピークが後にずれるために活動は初期の段階にある。赤道帯霧も捉えられているが、手軽さかカラーカメラの使用が多くなり、B光画像が少なくなってきたのは問題である。また、λ=120°Lsを過ぎたこれからは、北半球高緯度の朝方の渦状雲現象が注目される。マレ・アキダリウムやウートピアの朝方が要注意である。近内氏によるとESA探査機のMars Express
Visual Monitoring Camera画像には3月に入ってたびたび捉えられている。中央緯度はφ=12°Nから08°Nとなったが、まだ北向きで残留北極冠が小さく捉えられている。南極地は春分前で陰っていて判然としないが、ヘッラスは降霜で明るい時期になっていて目立っている。位相角はι=37°から少し戻って35°となった。
♂・・・・・・ この期間には以下のように、12名の報告者から37件の報告を拝受した。日本では近内氏が観測を開始して、ヨーロッパからの報告もはいるようになった。北半球では冬場のシーイングの悪さで報告数は少ない。南半球でも天候の悪さか観測数は伸びていない。国内からは2名5観測、アメリカ大陸側から4名11観測、ヨーロッパから3名4観測、オーストラリアから2名5観測、南アフリカから1名12観測の報告だった。
マルク・デルクロア (MDc) トゥルヌフーイユ、フランス
1 Colour
+ 1 IR Images (
デニス・フェル (DFl) ケネディ、サスカチュワン、カナダ
1 Drawing (
ビル・フラナガン (WFl) テキサス、アメリカ合衆国
2
Sets of LRGB Images (27 February;
36cm SCT @f/23 with a PGR GS3-U3 32S4M-C
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
11
Colour + 12 IR Images (17, 20.~22, 26, 27, 29 February; 1, 3, 5, 6,
36cm
SCT @f/33 with an ASI224MC
マーク・ジャスティス (MJs) メルボルン、オーストラリア
3
Sets of RGB Images (21 February; 1,
近内 令一 (Kn) 石川町、福島県
1
Drawing (
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
1
Colour Image (
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
7 Sets of RGB Images (17, 19, 23, 29 February; 1, 13,
森田 行雄 (Mo) 廿日市、広島県
4
Sets of LRGB Images (2, 7,
クリストフ・ペリエ (CPl) ナント、フランス
1
Colour Image (
ジャン=ジャック・プーポー (JPp) エソンヌ、フランス
1
Colour Image (
アンソニー・ウエズレイ(AWs) ニューサウスウエールズ、オーストラリア
1
Colour + 2 IR Images (12,
♂・・・・・・ 今回も日を追って觀測順に紹介する。
先ず、クライド・フォスター (CFs)氏がL-colour像とIR685像をω=019°W、φ=12°Nで与えた。やや夕方は暗く見難くなっているが、シヌス・メリディアニの二つ灣は確認出來るし、ブランガエナも見えており、良像である。オクシア・パルスの形状も上等で、インドゥスもやや見えている。ニリアクス・ラクスの南部の詳細も見え、ニロケラスも片鱗が見えている。マレ・アキダリウムは大きく北半球を占め、北西部の三角形暗部は濃く出ている。イアクサルテスも見え、ヒュペルボレウス・ラクスも北極冠に接して濃い。朝縁のarc状のゴーストはどうにかならないものか。クリュセは明るくなく、南部のモヤモヤ模様は好く出ている。南端には小さい明部が在り、朝型のカンドル邊りは真っ白だが、水蒸氣かどうか、正式なB像がないので判らない。R、G、B像はカラー像を分解したものであろうが、矢張りB像だけでも別に撮る必要があり、むしろ分解像は要らない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160217/CFs17Feb16.jpg
エフライン・モラリス (EMr)氏がR、G、Bセットと合成像をω=083°Wで示した。Rではチトニウス・ラクスとオピルが確認されソリス・ラクスも見えている。マレ・アキダリウムは既に横になって夕端に引っ掛かっているか。北極冠もRで確認出來るが、合成像では鮮明ではない。Rではタルシス山系が見えているようだが、B像が不調で、合成像では明確ではない。但し合成像には、赤道帶の霧は幅広く走っているようである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160217/EMr17Feb16.jpg
近内令一(Reiichi KONNAÏ)(Kn)氏の今期初、新41cmSCTに依據するカラースケッチで、ω=271°Wである。シュルティス・マイヨルの濃淡が描かれ、南端にはヘッラスが円く明るい。北極冠や夕端の白霧の分布などの描冩は抜群である。今後が楽しみである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160218/Kn18Feb16.jpg
EMr氏がω=096°Wで一組を与えた。R、G、Bそれぞれが独自の特徴を出していて、必ずしもその特徴が合成像に直ぐ明らかではない。但し、G、Bの影響で夕方のクリュセ-クサンテから朝方に伸びる赤道近くの白霧帶は合成像では非常に明白である。角度の所爲でソリス・ラクス周邊の暗部は周邊減光で見難いが、R、G像の對應から明るいオリュムプス・モンスが見分けられる。G光像の暗部からタルシス山系の様子が判り、アスクラエウス雲が白く明るいのが明白である。アルバ・パテラも同定できるが、ここには水蒸気は少なく、合成像では平凡である(周りの砂漠の色は好い)。北極冠はよく判るが、形は惚けて冩っている。濃いヒュペルボレウスの痕跡が陽に(explicitに)出なかったのは惜しい。なお、南北線が垂直になっているか疑問。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160219/EMr19Feb16.jpg
CFs氏がω=343°Wでいつものセットを与えた。L-colourでシヌス・メリディアニが非常にリアルに描冩されている。爪は西側のものが細い。ここからゲホン運河が北へ走ってオクススに合同するところは些し太い。オクシア・パルスも明確で、ここでインドゥスとオクススに分枝する。オクススは北へ流れ、曲折を経てマレ・アキダリウムの東北端の外側にある顕著な小班点に連なっている。マレ・アキダリウムの描冩も好く、内部の淡い部分(アキッリス・ポンス跡)と濃い部分が分離する。イアクサルテスの邊りはやや異常で、確かにヒュペルボレウス・ラクスとは繋がっているが、もう一本西に枝が分かれ、これは緩く東側へ拡散する。北極冠は明白だが、ヒュペルボレウス・ラクスの東側がひどく濃く北極冠のフリンジのように見え、その南側は砂塵が横たわるようにやや明るく異常である。夕端のシュルティス・マイヨルは周邊減光だが、アエリアに相当するところに濃い白霧の塊がある。L-colour合成像ではクサンテ南部が白く見えるが、これもB像がほしいところである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160220/CFs20Feb16.jpg
CFs氏がω=315°Wとω=323°W (φ=11°N)で同じ様に二組を撮った。第一組のL-colour像は朝方にマレ・アキダリウムが化けたような円弧型のゴーストがあって堪らないが、内部ではシヌス・メリディアニの二重爪は見事に出ているし、夕方のシュルティス・マイヨルは太く北部は霧に覆われて青味を帯びて描かれている。特にヘッラスは西端が白く濃く東側は減光している。北極冠は明白である。IR685像ではヘッラスは全く目立たないが、北極冠は痕跡が覗える。
第二群も30分差で然程変わっていないが、マレ・アキダリウムの東北端がより顕れ、ヘッラスの東側は沈んだようだ。シヌス・メリディアニは同じような現れ方だが、些し見栄えが好い。オクシア・パルスは独立した。シュルティス・マイヨルの北部の白霧は殘っている。北極冠は綺麗。なお、ColourからのB分解像は模様が顕れすぎのようだ。また、30分差なら40分まで待つことも出來たであろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160221/CFs21Feb16.jpg
マーク・ジャスティス (MJs)氏から良像が來た。ω=207°Wで、R、G、Bを撮り、合成像を得た。中央にエリュシウムがピンク色で明るい。RとBで強く明るく、Gではやや弱い。対して、北極冠は真っ白に見える。R、G、Bで揃っているからであろう。Bで窺えるが、赤道部夕端の様子は合成像で淡い霧を齎している。南ではマレ・キムメリウムがやや青味を帯びて濃く見えるが、東部は減光である。西部では未だそれほど鮮明ではないが、Rではアリンコの脚(東側の脚がゲールGale・クレータを先端とし、右側がクノーベルKnobel・クレータが先端)やメン玉(ハーシェル・クレータ)の位置などがわかる(Walter
F GALEは澳大利亞の銀行家・天文家1865~1945、1892年に火星を観測している)。マレ・テュッレヌムもRではマレ・キムメリウムとヘスペリアを挾んで、分離して見え、もう少しでシュルティス・マイヨルが顕れる頃である。B像に顕れている明るい縁は朝霧の影響であろう。40分後の画像が欲しいところ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160221/MJs21Feb16.jpg
CFs氏のL-colour像とIR685像でω=331°Wで撮られている。この角度ではヘッラスは周邊減光暮れ泥む。シュルティス・マイヨルの北部には白霧がありアエリアに染み出す。 シヌス・メリディアニの形は些し悪くなった。マレ・アキダリウムの北東部は大きく出始めている。北極冠は明確。問題は朝方のクリュセあたりの白さは真の Bフィルターを使っての結果ではないから水蒸氣に依るかどうかわからない。Rでも明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160222/CFs22Feb16.jpg
EMr氏がω=056°Wで一組の像を撮った。R像が好く、ソリス・ラクス周邊やチトニウス・ラスク、オピルなど好く描冩されている。オピルはBやGでは然程反応はなく、合成像ではピンク色の地肌が明るく出ている。夕方のマレ・アキダリウムではタナイス邊りが目立って濃く、ヒュペルボレウス・ラクスも同様に濃く、後者とはイアクサルテスが緩く繋いでいる。ニロケラスの二股も見えている。B像では赤道帯の霧が明白で、クリュセ、クサンテ、タルシス、朝縁への流れが好く出ている。クサンテのアウロラエ・シヌス近くには割と濃い霧が目立つ。更にBでは夕端に明るい霧が出ているが、合成像ではこれはアッキリス・ポンスの東側に存在する夕霧の濃い塊だと判る。ソリス・ラクスの南方(南端)には朝の白雲が出ている。北極冠も明白である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160223/EMr23Feb16.jpg
ジャン-ジャック・プーポオ (J2Pp)氏の口徑を上げての久々の登場。ASI
224MCでのω=325°Wカラー像である。シーイングは悪いようで、像も小さく全體赤茶けている。但し、夕端のヘッラスは白く垣間見られる。シヌス・メリディアニの分解能は然程出ないが、マルガリティフェル・シヌスとはきっちり離れている。シュルティス・マイヨルが夕端で、マレ・アキダリウムは可成り朝方に出ている。北極冠も見える。赤道帶の霧は やや見えるが、矢張り補助的にB像が必要か。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160225/JPp25Feb16.jpg
CFs氏が ω=286°WでL-colour像とω=287°WでIR685像を得た。ヘラスは円く白い(像が些し粗い)。シュルティス・マイヨルはど真ん中で大きく、シヌス・サバエウスが朝方の方に垂れ下がっている。シヌス・メリディアニは朝縁に入ったところだが、未だarc型のゴーストに惱まされる。エドムはIRで些し明るいか。夕端からシュルティス・マイヨルにかけて夕霧がやや弱く窺える。北極冠も見え、その東側が気になるが、リマ・ボレアリスの暗部が見えない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160226/CFs26Feb16.jpg
CFs氏がω=283°W、φ=10°Nで同じセットを得た。前日に比べ、ヘッラス内のZ字型の特に明るく白い部分が見えている。シュルティス・マイヨル南部のホイヘンス・クレータ邊りも見え始めるのかもしれないが、未だ視直徑不足か。IRではボレオシュルティスやノドゥス・アルキオニウスなどは前日同様見えている。北極冠の周りの暗帯は未だ明確ではない。シヌス・メリディアニの遙か北方に朝霧があると思われるが、ゴーストの所爲か出ていない。 エリュシウムの残滓の夕霧も描写が弱い。B像が必要であろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160227/CFs27Feb16.jpg
ウィリアム(ビル)・フラナガン(WFl)氏の、ω=046°W、δ=8.5"での登場である。R、G、B共に特徴を捉えた良像で、LRGBに纏められている。Rでは夕方のマレ・アキダリウムの内部やニロケラスの割と細かな濃淡が捉えられている。マレ・アキダリウムのタナイス方面の三角濃部は明確で、短いイアクサルテスによって、最大の濃部ヒュペルボレウス・ラクスに連結している。北極冠は平たく見える。タナイスとヒュペルボレウス・ラクスの間には白霧があるようである。B、Gではニリアクス・ラクスまたはアッキリス・ポンスの東側には夕雲の塊が見られる。南半球の模様もRで可成り明確で、アウロラエ・シヌス、チトニウス・ラスク、ソリス・ラクスの描冩などはこの視直徑では満点と思う。オピルは明るい。マルガリティフェル・シヌスの方ではオクシア・パルスは明確だが、本体は可成り暮れ泥んでいて、シヌス・メリディアニはほんのちょっぴり殘っているのが見える。G、Bで南端には小さい雲が見られる。朝端ではアスクラエウス雲が白く明るく見えている様だ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160227/WFl27Feb16.jpg
CFs氏がω=250°Wでいつものセット。 シュルティス・マイヨルが朝方に移り、ヘッラスが朝縁で真っ白。Rに落とすと、東岸の凸凹が際だつ。エリュシウムは夕方に白い。北極冠は平たく白く、リマ・ボレアリスの暗部の延長らしき暗部が北極冠に接して見え、オリュムピアが沈みつつある様だ。暗色模様ではシュルティス・マイヨルの濃淡が好く見え、マレ・テュッレヌムがCMに近く、シュルティス・ミノル辺がうまく描冩されている。マレ・キムメリウムの西部もヘスペリアを挾んで対岸に見える。ハーシェル・クレータ邊りの暗部は好く出ている。南ではウトピアのとんがりが明確でノドゥス・アルキオニウス斑點が明確。 エリュシウムに後続して、アエテリアの暗斑が通常通りに見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160229/CFs29Feb16.jpg
EMr氏が ω=325°Wで一組撮像した。シヌス・サバエウスが中央で、シヌス・メリディアニは辛うじて二本爪。ヘッラスは夕縁で白い。Bでより顕著。一方、シュルティス・マイヨルの北部は夕縁で綺麗な青色である。これはブルー雲ではなく、白霧が殘っているのだが、GとBで冩り、Rでは暗部として出るため、白霧が浅葱色になったものである。マレ・アキダリウムは朝に入ってきている。オクススも捉えられている。北極冠は真っ白。南端にも淡い靄がある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160229/EMr29Feb16.jpg
CFs氏が ω=249°Wでワンセット。前日のω=250°Wとほとんど同じで、コメントも同じように出來る。ただ若干、今回の方が好い印象。ヘッラスの明部も今回の東岸の凹みは明確である(マレ・ハドリアクムへの被さりの違いか)。シュルティス・マイヨルやマレ・キムメリウムの暗部の具合も今回がやや優れている。ただ、朝縁のゴーストが顕著になった。二日間で本質的な現象の違いはない様に思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160301/CFs01Mar16.jpg
EMr氏はω=351°Wで一組。シュルティス・マイヨルは既に没している。見かけ上シヌス・メリディアニがCM近くに見える(ι=37°)。Rではシヌス・メリディアニは綺麗な二本爪だが、G像でシーイングが劣化したか、暈けが入り、合成像のシヌス・メリディアニは惚けている。オクシア・パルスもRでは綺麗な點だが、RGBでは冴えない。Rではオクススの濃淡と曲がり具合は良く描冩されている。マレ・アキダリウムは殆ど顔を見せているが、arc型のゴーストが邪魔である。北極冠は真っ白。Bに據る赤道帯の霧は鮮明ではないが、朝方まで延びてクサンテ(既に中に入っている)が白い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160301/EMr01Mar16.jpg
MJs氏がω=118°Wで一組撮った。ほぼ100°違いで地球三方向から撮られたというのは幸先良い感じである。黄雲の擴がったときにこうした可能性があるのは有り難いことである。MJs氏のセットでは B、Gでの白雲の描写が好く、オリュムプス・モンスの西山腹の雲はRでも出て、RGBでは真っ白である。アスクラエウス雲も白く好く見え、クサンテからチトニウス・ラクスの北を抜けてタルシスに伸びる夕雲も顕著である。北極冠も明白で、その朝方にはオリュムピアが上ってきている。なお、南部では暗色模様としてマレ・シレヌムが見えている。なお、この圖と2012年のFreddy WILLEMS氏の画像を並べる。季節は稍浅いし、φも可成り違う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160301/MJs01Mar16.jpg
森田 行雄 (Mo)氏が久しぶりに結果を得、二組のR、G、B、LからLRGB像とRGB像を得た。それぞれ、ω=124°W、ω=129°Wである。これらの像では、クサンテなどの夕霧は程よく出ていて綺麗なのだが、オリュムプス・モンスが淡く、詳細は判らない。印象としては前者のB像は好く、オリュムプス・モンスの前方を縦切る暗帯は私どもの記憶にあるとおりで、これはRGBにも反映されている。然しRGBとしては後者の方がしまりがある。後者のRGBではオリュムプス・モンスの雲はコットンボール型。口徑はあるのだから、像が柔らかいのは矢張りシーイングの所爲でしょうか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160302/Mo02Mar16.jpg
CFs氏がω=229°WのIR685像だけを提出した。ヘッラスが南朝縁に顔を出している。シュルティス・マイヨルが朝方に在り、マレ・テュッレヌムに続いている。マレ・キムメリウムなどは然程シャープでない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160303/CFs03Mar16.jpg
WFl氏がω=346°W、φ=09°N でワンセットを撮った。シヌス・メリディアニが南中近いが、LRGBでは可成りの良像で、本体は濃淡を見せ、アリュンの爪の様子も完璧に近い。ブランガエナも見える(Rでの像とやや異なる)。LRGBではオキシア・パルスの形状が細密で、L像のおかげか、アラム・カオス(Aram
Chaos、2.6°N,
21.5°W)がクッキリ出ていると思う(Google
Mars で、Search欄にOxia
PalusとAram
Chaosと別々に記入すれば指示が出る)。Rではニリアクス・ラクスとインドゥスで繋がっている。尚、マレ・アキダリウムの東、オクススの手前の明帯の中に、たとえば2014年の三月四月の接近期に「ブリッジ」と称し、後にOxus
Dark Segmentと称した「暗線or暗點」(001°W, 36°N邊りか、CPl氏がピクで撮った像に出て話題になった)が見えていることに注意する。
マレ・アキダリウムは殆ど見えているが、イアクサルテス近邊に關しては上の20
Feb 2016のCFs氏のω=343°W像で指摘したような異変が残っている。つまり、マレ・アキダリウムから北へ突き出る運河が二本あり、先行する鮮明な一本は北極冠の方に流れず、西へ流れ、その両側に異常な明部を見せている。Rで強く出ているのに対しBでは見えないので砂塵系かと思われる。後行するもう一本はイアクサルテスのようだが、ヒュペルボレウス・ラクスが然程大きくなく、その前方が矢鱈濃く北極冠のフリンジのように見えているのが顕著である。 前号報告の5
Feb 2016のMark
JUSTICE(MJs)氏のω=354°WやMaurice
VALIMBERTI(MVl)氏のω=355°Wでの様子はノーマルと思うので、この異常は注目に値する。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160304/WFl04Mar16.jpg
ここで、17 March 2014のDon PARKER(DPk)氏のω=345°Wの画像を並べてWFl氏像と比較する。但し、DPk像は季節がλ=103°Ls、d=13.4"、ι=17°、特にφ=20°Nと大きく違っている。DPk氏の像ではヒュペルボレウス・ラクスが濃く明確であるのに対しWFl氏像では寧ろ先行する北極冠のフリンジの方が濃い。これは砂塵=黄塵の所爲かもしれない。なお、イアクサルテスに先行する分枝はDPk氏像でも条件に依っては可能性がないことはない、と考えられる。尚、WFl氏像ではιの違いでDPk像のようにシュルティス・マイヨルが最早見えないが、その南部をかすめる白霧はアエリアに見えている。Bでは淡く朝まで延びる白霧の帶がチェックでき、朝縁の霧も赤道近くでより白い。
CFs氏が ω=200°Wでワンセットを撮った。L-colour像は良像で、特にマレ・キムメリウムの描写が優れている。内部だけでなく、ゲール・クレータを先端とするアリンコの脚も明確である。ハーシェル・クレータも見えると思う。エリュシウムの周りも詳しいと思う。但し、北極冠の邊りは切れが悪い。 比較のためにB像が欲しいところ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160305/CFs05Mar16.jpg
CFs氏が前日と殆ど同じ角ω=199°Wで撮った。内容は殆ど同じだが、北極冠の上にオリュムピアが出ているかと思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160306/CFs06Mar16.jpg
デニス・フェル (DFl)氏がω=336°Wでスケッチを行った。ヘッラスが隠れようとしている。 シュルティス・マイヨルが夕端にあって、シヌス・メリディアニと共にシヌス・サバエウスが中央に横たわっている。マルガリティフェル・シヌスも見えていて、マレ・アキダリウムも朝方に見える。砂漠も淡い濃淡で、塗り残しがない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160306/DFl06Mar16.jpg
Mo氏がω=054°WでL、R、G、Bのワンセットを得た。LRGBの方がRGBより切れが良い。L像によってソリス・ラクスの北側がやや詳しく見え、チトニウス・ラスクも締まって見える。オピル・カンドルからチトニウス・ラスクの北に掛けてV字型に明るく見える。ニリアクス・ラクスからニロケラスに掛けてR像はやや詳細に富み、マレ・アキダリウムの北半分は可成り濃い。テムペは稍明るいか。北極冠の描冩はRでもLでも弱く、宜しくない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160307/Mo07Mar16.jpg
Mo氏がω=019°W、φ=08°Nでワンセット。 シヌス・メリディアニが左端に出てきていて、LRGBではアラムの切れ上がりが好く、クリュセの描冩も特に南部が暗示的だが、全体にシャープさに欠ける。マレ・アキダリウムも全體が出ていて大きな特徴が判る程度。ガンゲスは太く、アウロラエ・シヌスは可成り濃い模様。折角p----f を記録しているが南北線は正しくないように思う。南端に淡い雲。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160311/Mo11Mar16.jpg
フランク・メリッロ(FMl)氏がω=229°Wの単一カラー像を提出した。ヘッラスが朝方に大きく明るい。エリュシウムも白い部分を持ち、アエテリアの暗斑が西を押さえている。北極冠地区も白いがオリュムピアは分離できない。シュルティス・マイヨルが這いってきているかもしれないが 不分明。その北のリムは白い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160312/FMl12Mar16.jpg
アンソニー・ウェズレイ(AWs)氏がω=023°WのIR像を送ってきた。シヌス・メリディアニは夕端近いが、アリュンの爪は東側が太い形で明確、ブランガエナも見える。クリュセの南端の細かい模様は揃って見える。アウロラエ・シヌスも好く見えオピルは明るく、アガトダエモンもチトニウス・ラスクの一部と一緒に屈曲して見える。オクシア・パルスはインドゥスでニリアクス・ラクスと繋がりマレ・アキダリウムの明暗もほどよく出ている。北極冠は明るく描冩されないが、ヒュペルボレウス・ラクスは濃くイアクサルテスは短く見える(fの所爲)。その東側はよく判らないが、4MarchにWFl氏の像に顕れた構造を保持しているようにも見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160312/AWs12Mar16.jpg
マルク・デルクロア(MDc)がピクでω=158°Wのカラー像とω=161°Wの赤外画像を齎した。前者には夕方にオリュムプス・モンスの西山腹に白雲と先行するタルシスの雲が夕縁に冩っている。朝にはエリュシウムが白く輝いて入ってきている。プロポンティスIなど濃い。プレグラは茶系統か。北極冠は明確ではない。IR像でもオリュムプス・モンスの雲は見える。アエテリア暗斑は入ってきている。マレ・キムメリウムは描冩不足であろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160313/MDc13Mar16.jpg
クリストフ・ペリエ (CPl)氏の今季初の觀測でδ=9.8"であった。カラー畫像で、ω=167°Wに撮られた。北極冠は確固とはしていないが、邊りは白く、その南の暗色模様も大きく出ている。夕方のオリュムプス・モンスの白雲はしっかり撮られ、朝方のエリュシウム内部にも白雲が顕著である。ケルベルスからフレグラに掛けての陰影も大きく見え、プロポンティスIも明確である。マレ・シレヌムが夕方に來て必ずしも形状は明確ではないが、後行するマレ・キムメリウムの形も朝方で好く、ワルハッラもチェックできるようだ。南端朝方にはぼやっとした雲があるようだ。
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EMr氏がω=188°Wで一組を撮り、RGB像を合成した。北極冠、夕方のオリュムプス・モンスの雲、エリュシウムの内部の雲が白く描かれている。アエテリアの暗斑は可成り濃くなったが、形状までは出ていない。マレ・キムメリウムも存在は明確だが、詳細はない。
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AWs氏が、ω=007°WでIR像、ω=009°Wでカラー像を撮った。IR像は浅く綺麗に仕上げている。シヌス・メリディアニも非常に綺麗で、二つ爪の特徴が出ておりブランガエナへの流れも好い。オクシア・パルスの形も好く、アラム・カオスも出ているようだ。クリュセ南端のハーフトーンのぶら下がり模様も綺麗に表現されている。ニリアクス・ラクス→ニロケラスの濃淡も好く、マレ・アキダリウム北部の濃淡さも巧い。ヒュペルボレウス・ラクスは濃くイアクサルテスが繋いでいる。但し、北極冠と南端の靄はIRで無理である。カラー像では、南端の靄も北極冠も白く見えるが、φ=08°Nだから、南北厚の描写は覚束ない。WFl氏の 4
March 2016 at ω=346°Wと比べると、まだ北極冠傍に黄塵の名残があるようだが、もっと観測が欲しいところ。
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CFs氏が ω=113°WでLカラー像とIR685像を提出した。CM前にオリュムプス・モンスの雲が見え、西山腹は真っ白である。アスクラエウス雲が未だ顕著に殘っている。アルシア・モンスの雲も些し西山腹に見える。チトニウス・ラスクから北に掛けては夕雲が可成り大きく強い。IR像を参照するとソリス・ラクスが半分没している格好。アルバ・パテラも稍白い。マレ・シレヌムは全て朝方に入って居る。北極冠はIRでも明確で、L-colourでは可成りはっきりとしていて、その南には靄が漂っている。
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EMr氏がω=229°Wで一組拵えた。ヘッラスが朝方に大きくて真っ白。エリュシウム・モンスの雲もどの像でも明るく、RGBでは白く顕著。北極冠も白いが、形は明確ではない。暗色模様はRで好く見えている。シュルティス・マイヨルは全體ディスクに入って居て、形好く、シュルティス・ミノール邊りの描冩も好い。ヘスペリアもマレ・キムメリウムとの連携の役割が出ており、マレ・キムメリウムはアリンコの脚が出ている特に先行するゲール・クレータ側の脚が明確。 ウトピアの暗部も好い感じ。ノドゥス・アルキオニウスも明確である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160314/EMr14Mar16.jpg
到頭、視直徑δは10秒角になった。MJs氏がω=351°Wでワンセット。南端の朝雲は好く捉えられるようになった。シヌス・サバエウス、シヌス・メリディアニが格好いい。シヌス・メリディアニから南にネウドゥルスNeudrusIとIIが二本立ってパンドラエ・フレトゥムに走っているように見える(RとGで見える)。ブランガエナからオクシア・パルス、ニリアクス・ラクス邊りまでの描冩も好い。マレ・アキダリウムの北西部は濃い。尚、4 Marchの欄で述べたOxus
Dark SegmentがこのMJs氏の30cm鏡の像には既に出ている。北極冠は真っ白だが、ヒュペルボレウス・ラクスは未だ顕著ではないので霧が出ているか。北極冠の南隣は些しワインカラーっぽい。面白いのはB像の描冩に依るか、赤道帶直ぐ北に霧の塊が浮遊し、夕方のアエリア上だけでなく、エデン邊り、ヒッデケルとゲホンに挟まれた邊りからオクススに掛けて白霧の塊が見えている。興味深い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160315/MJs15Mar16.jpg