CMO/ISMO 2016 観測レポート#03
2016年一月前半の火星観測 (λ=089°~096°Ls)
南 政 次・村上 昌己
CMO
#443 (
♂・・・・・・今回は2016年一月前半の観測報告をまとめる。この期間に火星は「おとめ座」で順行を続けて、視赤緯Dは期間末には12°Sまで下がった。季節はλ=089°Lsから096°Lsに進み、北半球の夏至を過ぎたところである。視直径はδ=5.6"から6.1"と少し大きくなって、中央緯度はφ=20°Nから17°Nと傾きを南に戻した。位相角はι=34°~36°を推移して、夕方南半球側の欠けが大きい。
♂・・・・・・この期間には以下のように、5名の報告者から14件の報告を拝受した。国内から1名3観測、アメリカ大陸側から1名3観測、オーストラリアから2名5観測、南アフリカから1名3観測だった。
12月の追加報告2件が含まれる。
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
2 Sets of RGB + 1 Colour + 3 IR Images (3*, 9,
36cm SCT @f/22 with an ASI224MC, ASI174MM*
マーク・ジャスティス (MJs)
メルボルン、オーストラリア
2 Sets of RGB Images (6,
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
3 Sets of RGB Images (5, 12,
森田 行雄 (Mo) 廿日市市、広島県
3 Sets of LRGB Images (3,
モーリス・ヴァリムベルティ (MVl)
メルボルン、オーストラリア
1 Set of RGB + 1
IR Images (12 January 2016) 36cm SCT @f/24 with an ASI120MM
♂・・・・・・ 追加報告
マーク・ジャスティス (MJs)
メルボルン、オーストラリア
2 Sets of RGB Images (28,
♂・・・・・・ 今回も日を追って觀測順に紹介する。
Clyde FOSTER (CFs)氏がASI174MMという新しいカメラに依ってω=080°Wでワンセットを撮ったが、RやIRでは朝縁近くに強烈なゴーストラインが出ていて興醒めである。北極冠とかソリス・ラクスは好く撮れているが、Bでの朝縁での明斑は生かされない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160103/CFs03Jan16.jpg
森田 行雄 (Mo)氏がω=349°Wでワンセットを撮った。北極冠など輪郭が明確ではないが、穏やかな像で、LRGBではマレ・アキダリウムの南部がどっしりと朝方に見え、シヌス・メリディアニやマルガリティフェル・シヌスなども判る。シヌス・メリディアニの北方に砂漠の明るいところがあるが、L像に依るようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160103/Mo03Jan16.jpg
5 January 2016 (λ=091°Ls, δ=5.7")
Efrain MORALES (EMr)氏がω=162°WでR、G、Bから合成した像では夕方に明るい雲塊が綿毛のように綺麗に見え、オリュムプス・モンスの雲の可能性もあるが、アスクラエウス雲かもしれない。朝方にプロポンティス I が見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160105/EMr05Jan16.jpg
6 January 2016 (λ=091°~092°Ls, δ=5.7"~5.8")
Mark JUSTICE (MJs)氏の登場である(すでに12月に初觀測は済ませている。後述)。ω=287°Wで、良像である。ヘッラスが白く綺麗である。南極冠とヘッラスの關係は、CMO n°353のp.Ser2-1021の淺信のMn筆の記述をご覧頂きたい。p.1022の圖が役に立つ。λ=090°Lsの頃は南極冠本体から離れて北に氷原が擴がっているのである。北極冠の色とヘッラスの色が違うことに注意。オリュムピアが北極冠と分離して夕方に見える。ヘッラスがR、 G、 Bで違って見えるのは素晴らしい。ヘッラスを覆おう氷雲が割れている。シュルティス・マイヨルやウトピアの像もRでシッカリしている。朝方のゴーストラインの處理も或程度行われている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160106/MJs06Jan16.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/CMO353.pdf
9 January 2016 (λ=093°Ls, δ=5.8"~5.9")
CFs氏が224MMに戻してω=023°WでIR685像付きのセットを撮った。ゴーストライン(弧)も可成り弱くなり、マレ・アキダリウムなど雰囲気が出ている。シヌス・メリディアニは沈むところだが、マルガリティフェル・シヌスなど好い描冩。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160109/CFs09Jan16.jpg
Mo氏はω=283°Wとω=294°Wで二セットを撮った。シュルティス・マイヨルがR、G、Bで現れ方が違うが、ヘッラスの表現は惚けているだけ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160109/Mo09Jan16.jpg
11 January 2016 (λ=093°~094°Ls, δ=5.9")
MJs氏がω=242°WでRGBセットを得た。ゴーストが目立たせずに朝縁のヘッラスを明るく捉えている。注目点はエリュシウム・モンスの夕雲が綿毛状に綺麗であること。アルシア・モンスとアルバ・パテラ以外は大抵λ=100°Ls邊りでピークを迎える。ウトピアも割と詳細が捉えられており、北極冠の前方の抜けているのも好い感じ。ヘスペリアも切れている。N.アルキュオニウスもRで見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160111/MJs11Jan16.jpg
12 January 2016 (λ=094°Ls, δ=5.9"~6.0")
EMr氏はω=107°WでRGB合成像を得た。オリュムプス・モンス山頂の円い雲からアスクラエウス雲を經て多分クサンテに向かう雲帯の流れが綺麗に出ている。通常これはB像で顕著であるが、この場合は然程でなく、むしろGで目立つ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160112/EMr12Jan16.jpg
Maurice VALIMBERTI (MVl)氏はω=214°WでRGB合成像を得、他にω=210°WでIR像を得た。エリュシウム・モンスに懸かる白雲が中央に見える。マレ・キムメリウムが、まるで詳細を暗示するような風景。西方先端がとんがって見える。R、IRではプロポンティス I が明確。ウトピアの南端の波も好い。ただB像が悪く、雲が先鋭化しない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160112/MVl12Jan16.jpg
15 January 2016 (λ=095°~096°Ls, δ=6.1")
CFs氏が224MMでω=312°Wの合成像を作った。シュルティス・マイヨルが夕方で大きく、シヌス・サバエウスが朝方に垂れ下がっている。マレ・アキダリウムは未だ細いが、IR685では形がよい。G,Bでもヘッラスは冴えなくて、合成像でもぼんやり、一方北極冠はR像などでクッキリしている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160115/CFs15Jan16.jpg
EMr氏像はω=051°Wの合成像。不思議なほど白霧が漂っているような感じを与える。B像がシッカリして赤道帶霧が描冩されているのかもしれない。構図としては大きなマレ・アキダリウムが夕方に陣取り、ソリス・ラクスは上の方に暗くみえる。オピールが明るい。北極冠は明白ではない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/160115/EMr15Jan16.jpg
♂・・・・・・ 追加報告は、MJs氏の28 Dec 2015 (λ=088°Ls, δ=5.5")におけるω=016°Wである。むしろ29Dec (ω=359°W)の作品より出来が良く、RGB像ではシヌス・メリディアニなど形好く、マルガリティフェル・シヌスの様子なども好い。マレ・アキダリウムは濃淡がナチュラルである。北極冠も白く出ている。B像は些し出過ぎのような気もする。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151228/MJs28Dec15.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151229/MJs29Dec15.jpg