CMO/ISMO 2016 観測レポート#01
2015年十一月までの火星観測 (~λ=075°Ls)
南 政 次・村上 昌己
CMO
#441 (25 December 2015)
♂・・・・・・いよいよ今接近の観測が始まった。来年五月末の最接近時には視直径δが18.6秒角に達する中接近となる。視直径がここまて大きくなるのは2005年の接近以来のことである。観測レポート初回の本稿では十一月末までの観測報告を纏めることとなる。
今年六月に「おうし座」で太陽と「合」になった火星は、十月には「しし座」十一月には「おとめ座」へと進み朝方の空に姿を見せてきた。十月からは木星・金星と並んでいたがまた光は弱々しく目立たなかった。また、十月19日には火星がしし座の4.7等星(χ-Leo)を隠す掩蔽が日本から観測出来る条件だったが、観測報告は入っていない。関東地方は曇で見ることは出来なかった。
十一月末には、火星の季節はλ=075°Lsとなり、北半球の夏至の前である。視直径はδ=4.8"になり、傾きはφ=24°Nと北向きで北極地方が見えている。位相角はι=30°と欠けは大きく今後も少しずつ増えてゆく。
♂・・・・・・この期間には、下記の六名の方から画像が寄せられている。
デニス・フェル (DFl) ケネディ、カナダ
3 Colour
Drawings (20 Sept; 18 Oct; 8 Nov
2015) 15cm Maksutov-Cassegrain ,
180×, 240×, 300×
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
4 IR Images (27 Sept; 18 Oct; 16 Nov; 1 Dec
2015)
36cm SCT @f/22 with an ASI 120MM,
ASI 224MC
マノス・カルダシス (MKd) グリファダ、ギリシャ
1 Colour
Image (18 November 2015) 36cm SCT
with a DBK21
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
1 R Image
(31 October 2015) 25cm SCT
with a Starlight Xpress
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
1 Set of RGB Images (15 November 2015) 31cm SCT with a Flea 3
森田 行雄 (Mo) 廿日市市、広島県
5 Sets of RGB +
5 LRGB Colour Images (3, 10, 14,
15, 28 November 2015) 36cm SCT with a Flea 3
♂・・・・・・ 今回も早い時期から報告が入った。最初の觀測はDenis FELL(DFl)氏のスケッチで、期日は20 Sept 2015 (λ=044°Ls)ω=219°Wであった。δは3.8"であったから、2013年の27July 2013嚆矢のManos KARDASIS(MKd)氏の視直径3.9"より稍早い。しかし、2013年の最初の優れた画像はPeter GORCZYNSKI氏の11Aug2013(λ=005°Ls)、17Aug2013
(λ=008°Ls, δ=4.0")で撮られているから、比較ではなんとも言えない。今回期待のClyde
FOSTER(CFs)氏は27Sept2015(λ=047°Ls、δ=3.9")であった。季節が40°Lsほど違って来ているのは衝のずれに対応しよう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/150920/DFl20Sept15.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/150927/CFs27Sept15.jpg
視直径が小さい内は、模様の同定は易しくない。こういうときは前接近または前々接近の同じ季節、同じωの像を参照すると好い。視直径は少し大きく記録されているからである。たとえば、森田行雄(Mo)氏の3Nov2015(λ=064°Ls)ω=223°Wは見かけ上少し難解だが、2012年の31Jan2012(λ=064°Ls)のJohan WARELL
(JWr)氏の像を参照すると、後者はδが稍大きく、エリュシウムが顕著で、全体像が把握でき、逆にMo像でもウトピアが見えてくるといった具合である。Mo像ではアエテリア暗斑の右が稍薄暗いのが新しいところであろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151103/Mo03Nov15.jpg
31Oct2015のFrank MELILLO(FMl)像の場合どうであろう。これも俄には掴みにくい。λ=062°Ls、ω=156°Wで2012年のGalleryを探すとSadegh
GHOMIZADEH氏の29Jan2012(λ=064°Ls)ω=158°W の像がが適当かと思う。FMl氏像ではオリュムプス・モンスの夕雲は出ていないし、プレグラ邊りの暗帯も出ていないし朝方のエリュシウムも分離していない。ιは殆ど変わらないが、ケルベルス前方がコントラストの都合で黒ずんでいるか。R光だが北極冠が形を成さないのは困る。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151031/FMl31Oct15.jpg
CFs氏の18Oct2015(λ=056°Ls)ω=133°Wは特徴が無いがプロポンティスIが出ている様子である。
DFl氏の二番目のスケッチは18Oct2015(λ=057°Ls)ω=240°Wでシュルティス・マイヨルが描かれているが、模様が周辺に散っている。スケッチ円が大きいからであろう。DFl氏の三番目のスケッチは8Nov(λ=066°Ls)ω=034°Wでマレ・アキダリウムが北極冠の上に描かれている。南端にはアルギュレが少し白く見えているのかも知れない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151018/CFs18Oct15.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151018/DFl18Oct15.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151108/DFl08Nov15.jpg
Mo氏が10Nov2015(λ=067°Ls)ω=154°WでSet像を得ているが、茫洋としている。Silvia KOWOLLIK(SKw)さんの6Feb2012(λ=067°Ls)ω=152°Wと比較すると、オリュムプス・モンス雲やタルシス雲が散在し、プロポンティスIなども見える角度と思われるが、未だMo氏の像には顕れない。中央の暗部などはゴースト臭い。
Mo氏の14Nov2015(λ=068°Ls)ω=117°Wも似たようなものである。タルシスの夕雲は少し出ているかも知れない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151110/Mo10Nov15.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151114/Mo14Nov15.jpg
Efrain MORALES(EMr)氏の15Nov2015(λ=069°Ls)ω=304°Wは最も優れていて、朝方のシヌス・サバエウスの描写は絶妙である。シュルティス・マイヨルもくっきり。北極冠の周りの暗部も好い描写。δ=4.5"である。
Mo氏は同日ω=099°Wで撮った。詳細は出ないが、マイルドでマレ・アキダリウムの残滓と、クサンテあたりの白雲を示している。G,B像で出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151115/EMr15Nov15.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151115/Mo15Nov15.jpg
CFs氏が16Nov2015(λ=069°Ls)
ω=200°WでIR像。マレ・キムメリウムが南端に黒々、エリュシウムが仄かに見える程度。そろそろ分解像が必要だろう。
Manos KARDASIS (MKd)氏が18Nov2015(λ=070°Ls)ω=202°Wで單像を撮った。色は冴えないが、エリュシウムなどよく判り、ケブレニア帶も見える。南端朝方には白雲か。最後に
Mo氏が28Nov(λ=075°Ls)ω=350°WでLRGB, RGB, R, G,
B像を揃えた。R像ではマレ・アキダリウムの位置取りやシヌス・メリディアニのマルガリティフェル・シヌスからの分離などが明確である。明るいクリュセはf端に近い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151116/CFs16Nov15.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151118/MKd18Nov15.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2016/151128/Mo28Nov15.jpg
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